【サメから考える〇〇 ~メディア論2~】

前回に引き続き、サメ社会学のメディア論です。

前回は、何故メディアがサメの悪いイメージばかり報道するのかを「メディアとは何か」という根本に触れながら話しました。

今回はその続きとして、「何故メディアで発信されるサメのイメージが定着してしまうのか」について解説します。

「え、メディアで報じられればそうなるでしょ」という方も多いはず。あるいは、「JAWSの影響がやっぱり大きいでしょ」と言う方もいるかもしれません。しかし、今回はメディアの影響力について分析しながら、もう少し深く見ていきましょう。

 

《人はメディアを鵜呑みにするのか》
マスメディアの陰謀論がよく語られます。僕の前回の記事でも、「テレビなどのマスメディアはあくまで営利団体なので、公正公平な訳ではない」という趣旨の話をしました。

しかし、人々はメディアに影響されることはあれど、常にメディアによってあっちこっちに意見を操作されている訳ではないというのもまた事実です。

とっぴな例かも知れませんが、AKB48を使って解説します。
「AKB?何それ?どこの政府機関ですかー?」という方のためにさらっと紹介します。もともと秋葉原にある小さな劇場から始まったこのアイドルグループは、深夜番組やラジオを中心にメディア露出を展開。代表曲の一つ『River』をきっかけに典型的なヲタク以外のファン層を拡大。秋元康プロデューサーがつくった「選抜総選挙」などの話題性のあるイベントが盛り上がり、今や「国民的アイドル」になりました。
しかし、このグループは万人から愛されている訳ではなく、「低俗なアイドルの曲が何でオリコン1位を獲るんだ」、「全然可愛くない連中がなんでグラビアを独占するんだ」という非難を、人気が出始めた当時から浴びせられてきました。

こうした人々はAKB用語で「アンチ」と呼ばれますが、ここで言いたいことは、アンチはAKBを礼賛し、ばんばん押し出すメディアにさらされてもアンチでいるということです。母体数が多いこともあり、毎日どこかの番組で48グループのメンバーをテレビで見かけます。コンビニで売っている男性向け雑誌の巻頭グラビアは、SKEやHKTなどの姉妹グループを勘定にいれるとほとんどAKBです。それでも、アンチはAKBが可愛くない、今ある地位に値しない、という主張を曲げず、場合によっては低俗な誹謗中傷も展開しています。

AKB研究はサメ社会学者となった私の範疇ではないのでもっと細かい話は濱野智史先生や宇野常寛先生(※1)に譲るとして(笑)、要は、メディアが何かのイメージを垂れ流し続けても、人はそれに影響されて妄信するわけではないということです。先のAKBの話で言えば、様々なメディアがAKBを「国民的アイドル」として押し出していますが、そのイメージに対する人の判断には別の要因が影響しているのです。

 

《メディアの限定効果理論》
人々がメディアからの情報を受動的にただ受け取るのではなく、その情報を自分の主張に合っているかどうか判断したり、あるいは自分の主張や価値観を強固にするメディアを恣意的に選択することを、メディアの限定効果と呼びます。

限定効果理論では、メディアを選択したり、あるいはメディアから受け取る情報をどう判断するかは、メディアではなく「先有傾向」によって決められるとされています。つまり、あらかじめそのイシューに対してもっている意見です。例えば、何らかの理由で産経新聞を購読している家に住むことになったAさんがいるとします。Aさんは毎朝新聞を読みます。産経新聞の社説では安倍政権に拍手喝采です。しかし、Aさんは安否法案に反対で、安倍首相のやり方は民主主義に反しているという意見を持っていました。そのため、毎日産経新聞の社説に晒されても、「新聞ではこう言っているが・・、」と批判的な分析を行うでしょう。あるいは、Aさんは気に食わなくなって新聞を読まなくなるかもしれません(※2)。

では、人々の先有傾向はどのように決定されるのか?限定効果理論によれば、その人の所属集団にいるオピニオン・リーダーと呼ばれる存在によってもたらされるとしています。
早く本題に入りたいのでとてつもなくざっくりした説明をしますが、早い話が右翼的見解をもつ家族の子は自民党支持者になる、よくつるむ女子会仲間で一番オシャレな女子が「今イケているファッションはワンピースにジャケットだよ」と言ったらそう思う、と言った話です(※3)。

 


《限定効果理論と「人喰いザメ」》
さあ、やっと本題です。また長い寄り道をしました・・・。

限定効果理論によれば人はマスメディアを鵜呑みにすることなく、自分の意見をもって情報を判断するはずなのです(それが適切かどうかは問いません)。

しかし、この限定効果理論には、例外があるとされています。
法政大学准教授である津田正太郎氏によれば(2016)、限定効果理論が認める、マスメディアが大きな影響力を発揮する事例は、『人びとのあいだに先有傾向が存在しないトピックを流すときです』(p118)。

サメに関しては、人々が先有傾向を持ちません。多くの人にとって周りにオピニオン・リーダーもいないため、メディアから流れる「サメ=人喰い」のイメージがダイレクトに人々に流れます。それによって、本来オピニオン・リーダーが先有傾向をつくるはずが、マスメディアそのものが先有傾向を作ってしまうのです。

一応念のために捕捉しますが、、「サメが人喰いなことが議論の余地のないことだからオピニオン・リーダーがいないのでは」という意見は完全に的外れです。以前の就活論の冒頭でも伝えましたが、サメは500種以上いて、そのうち人を食べてしまう危険性があるのは3~5種。確かにサメが人を食べてしまう話はペルシア戦争から第二次世界大戦(※4)までありますが、それはサメと人間のかかわりのほんの一部です。サメは食材、刀やアクセサリーの材料、神話に登場するキャラクター、様々な形で人間社会にかかわってきています。

話を戻します。一度人が先有傾向を持ってしまうと、それが適切な考えかどうかは別にして、その意見を変えることは難しいとされています。限定効果理論はメディアに関する一理論なので絶対視することはしませんが、定着した意見を変えにくいということには多くの方が賛成してくれると思います。サメが実は500種類いてそのうち3~5種程度しか人を襲うことがないことも、ネコザメやエポーレットシャークなどペットにしたいくらい可愛いサメがいることも、「サメ=凶暴、獰猛、人喰い」のイメージが強固になってしまうと、なかなか現実味を帯びて伝わらないのです。

 

《オピニオン・リーダーがいるだけでは足りない》
どうすればサメのイメージが改善され、もっと興味をもってもらえるのか?

もちろん、オピニオン・リーダーがその輪を広げることも大事なことです。
僕はサメ関連のイベント以外にも、飲み会や交流会、料理のイベントや意識高い系のセミナーなどいろいろな場所に訪れています(僕の意識が高い訳ではないです)。同世代の友達の間では、「サメといえばRicky」という認識をもらうことも多いです。光栄なことです。

ですが、サメに関するオピニオン・リーダーが活動するだけでは、一度定着してしまったイメージを払拭するのは難しいかもしれません。現に、水族館であれほど優雅で大人しいサメの姿が発信されているのに、サメ=獰猛のイメージは広まったままです(水族館の社会的意義について、いつか調べてまた記事にします)。まして、僕がやっているのはまだまだ影響力が少ない小さな活動です。

正直、全部の答えはでていません。色々やりながら考えてみます。でも、本気でやったら何かにつながっていいことが起きるって信じています。

 

オオセの正面顔とエポーレットシャークの横顔です。可愛い☆~(#^^#)(*’ω’*)~♡

こんな一言を発することも、意味のあることだと思っています。
(写真は両方とも大洗水族館で撮影しました)

 

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※1 濱野先生と宇野先生は、サブカルを中心分野として活躍する社会学者、評論家。お二人とも、『AKB48白熱論争』という本でAKBというある種の社会現象について様々な考察を展開した。濱野智史先生関しては、『前田敦子はキリストを超えた』というAKBの宗教的側面を描いた本の著者でもある。

※2 限定効果理論はあくまでメディアの影響力に関する一理論であり、しかも「メディアが我々を支配している」といった陰謀論の非現実性を指摘するために生まれたような節があるため、この理論を絶対視するつもりはない。この例で言えば、産経新聞を読み続けることで「自分は今までこう考えていたけど、そうか安倍首相の取り組みは日本を守る上で大切なんだ!」とAさんが考えを変える可能性は十分にありうる。

※3 ここで言うオピニオンリーダーとは、その分野に関するその人にとってのオピニオンリーダーであり、決して専門家やその人が妄信するカリスマのことを言うのではない。先の自民党支持者の例を挙げれば、父親が保守的考えにかなり傾いた人間だとしても、家族内で政治に関する話をせず、そうした一面も見せない場合、子供は他の場所でオピニオンリーダーを見つける可能性がある。例えば、子供が大学のゼミで安倍政権に批判的な教授のもとで学んだとしたら、教授がオピニオンリーダーとなるかもしれない。

※4 ペルシア戦争では船を使った戦いが展開され、沈められた船や戦死した兵士の死体にサメが群がったとされる。第二次世界大戦時、アメリカ海軍のインディアナポリス号が沈没し、海に投げ出された船員がアオザメ、イタチザメ、ヨゴレなどのサメに数多く殺されたと伝えられている。

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