【サメ談話会参加! 学名勉強会】

先日の週末にサメ談話会に参加してきました!

集合写真。©沼口麻子

今回のテーマはサメの学名です。図鑑などをよく見ないとそもそも学名というものの存在すら知らない方もいるかもしれませんが、今回は学名とは何かという基本的なことから学べる貴重な機会でした。

今回の記事では学んだ内容を僕なりにまとめてみました。

※今回の内容は魚の研究者の方がカジュアルにまとめてくださった内容なので、有料セミナーなどの無断転載などではありません。念のため。

目次:
【名前を付ける意味】
【学名が必要なワケ】
【学名は何語か?意味は?】

 

【名前を付ける意味】
そもそも何故生物に名前をつけるのでしょうか。大きな理由としては、共通の特徴をもつ生物をグループ化し、整理しやすくするのが目的だと言えるでしょう。試しに名前を全く使わずに生き物を示してみましょう。「あの黒いやつ」とか「よくあの辺にいるやつ」、「あの細長いやつ」・・・。なんと不便なことか!という訳で、何かと分類した方が便利なことがあるのです。また、そもそも人間には何かと分類したがる癖があるのかもしれません。血液型占いというニセ科学がここまで広まったのも、人間の分類癖のせいかもしれませんね。

さて、そんな生き物の「グループ分け」ですが、学名に限らず色々なものがあります。

・いくつかの種の総称(サメ、エイ)
・種(例:ホホジロザメ)
・成長の段階(例:シラス、ハマチ)
・生態による区別

こうした色々な区別の中に学名があるわけですが、ここで注意したいことがあります。それは、学名は「正式名称」ではないということです(これについては僕もここで初めて学びました)。学名とは生物学で使われている呼称のひとつであり、学名以外は正しくないとか、学名が一番偉いというわけではないのです。

ここで生物学での分類(分類学ですね)について簡単におさらいしましょう。高校生物の資料集に載っている内容ですのでざっくりいきます。

基本的に生物の分類の最小単位は種と言われています(※1)。そして、近縁の種が集まって属、近縁の属が集まって科を作り、以下のように分かれていきます。

種(species)
<属(genus)
<科(familiy)
<目(order)
<綱(class)
<門(phylum)
<界(kingdom)

ややこしく見えますが、要は住所みたいなシステムなわけです(この例えのおかげで僕は分類学がグッと身近に感じました)。例えば僕がお気に入りのバーを紹介するときに「池袋のサンシャイン行くときの通りから少し外れたところ」と伝えれば「雑すぎて分かんない」と言われますし、東京の地名に詳しくない人なら「池袋って何県?」となるでしょう。しかし、住所というシステムがあるおかげで、「東京都豊島区東池袋1丁目23−1 2階」と示せば、少し調べるだけでどこにそのバーがあるのか分かるわけです。ちなみに、この住所は実在する僕のお気に入りのバーの住所です(笑)。

ちなみに、ホホジロザメをこの分類に当てはめて大きなグループから下におろしていくと、以下の通りです。

動物界
脊索動物門
軟骨魚綱
板鰓亜綱
ネズミザメ目
ネズミザメ科
ホホジロザメ属
ホホジロザメ(=種)

※亜綱というものを突然ぶっこみましたが、ここについて突っ込むと訳わからなくなりそうなのでここは割愛します(笑)。

 

 

【学名が必要なワケ】
さてさて、では何故学名が必要なのでしょう。ホホジロザメは「ホホジロザメ」と呼べばいいじゃないかと思うかもしれません。ですが、そうもいかないのです。

ホホジロザメは極地を除くあらゆる海に分布しており、アメリカ大陸東西の海、南アフリカ近海、イギリス近海、日本近海、オーストラリアの海をはじめ、世界中にいます。そうしたこともあって、数々の国々でそれぞれ違った名前がつけられているのです。

ちょっと並べてみましょう。

日本語:ホホジロザメ
英語:Great White shark
中国語:大白鲨(Dàbái shā)
フランス語:Grand requin blanc

写真を見ながら話さないと、全てが同じ種を指すとは到底分かりません。フランス語に至っては僕はなんと発音するのかさえチンプンカンプンです(実は中国語なら少しだけ分かるのですが・・・)。

「なら世界中で通じる英語にとりあえず統一しましょう!」とかなりそうですが、そうもできません。だって、英語にもいろんな呼び方ありますから。White sharkと呼んでみたり、White death, Man-eaterなんてのもあるそうです(Man-eaterはひどいでしょ笑)。実際『赤い珊瑚礁 オープン・ウォーター』(原題:The Reef)では、ホホジロザメのことを現地人が「White pointer」 と呼ぶ場面があります。

さて、もう一つ困った場合があります。それが、日本語の呼び方が存在しない生き物をどう呼ぶのかという問題です。実は現在確認されている500種類以上のサメのうち、いわゆる標準和名がついているのは250種程度です(※2)。日本近海に住んでいないなどの理由から、日本語の名前がまともについていないサメたちが沢山いるのです。この場合の簡単な解決策は英語で呼ぶことです。アクアワールド大洗水族館では、標準和名のないサメに対しては英語のカタカナ読みをそのまま紹介しています(なぜか和名があるのに英語名で紹介されているサメもいますが・・・)。

ですが、これも種によってはややこしい問題を起こします。サメではないですが、ノコギリエイの例で言えば、「Large tooth sawfish」という完全に同じ英名をもつ別の種類がいたりするそうです。先ほどのホホジロザメと同じで、結局同じ言語でも地域によって呼び方が違うと、どの種の話をしているのか混乱しかねません。

さて、ここまで聞いて分かったことがあります。「全部の呼び方を覚えてなんかいられない」、「そもそも呼び方が分からない」。こんな感じで一つの種を示すのは案外大変なんです。そこで、絶対に迷わない、ただ一つの名前があると便利!という話になります。それが学名なのです。

 

 

学名がどういうものか、ホホジロザメを実例に見ていきましょう。

上野で行われた『海のハンター展』で展示されたホホジロザメの液浸標本。

学名を覚えるのが苦手な人でも彼らはやはり有名なようです。

Carcharodon carcharias

種を表す学名は、属名と種小名に分けられます。大文字で書かれた最初の語が属名(ホホジロザメ属)を指し、後ろの小文字で始まる語が種小名(ホホジロザメ属のどの種なのか)を指します。原則この二名法で学名を表し、学名であることが明確に分かるようにどの言語で書くときもこの語はイタリック体(斜体)で記します。

ただし、正確には下記のように書きます。

Carcharodon carcharias (Linnaeus, 1758)

カッコ内の最初は種名をつけた人物(正確には種名を発表した論文の著者)とその年を記載します。ただ、一般向の図鑑などではこの部分を省略することも多いです。

ちなみに、カッコをつけるのは絶対ではありません。ホホジロザメは学名が発表された後に属名が変更になりました。そうして分類が修正された場合、人名と年をカッコでくくるそうです。カッコがついていない例を一つ上げると、シロワニの学名はCarcharias taurus Rafinesque, 1810です。

さらに余談ですが、厳密には界から種までの全てが学名になります。ただ、そんな長く記載することはまずないでしょう。ちなみに、仮に全部書いたとしてもイタリック体にするのは種名(属名+種小名)のみだそうです。

 

【学名は何語か?意味は?】
よく知られている事実なのかそうでないのか僕自身よくわからないのでサラッと言いますが、学名はラテン語(またはギリシャ語)で書かれています。「なんでそんなだれも使わない言語を使うのか」と言いたくなりますが、「誰も使っていない」というのが重要なのです。

言語というのは自然と同じで極めて動的なものです。新しい言葉が増え、使われない言葉が埋もれていき、文法が次々変化します。大学側が平安時代の日本語を読ませるだけで入試問題が作れるのは、それだけ当時と今では日本語が変化しているためと言えるかもしれません。

言葉が変化すると動物を示す語も違和感が出たり、変えざるを得ない場合があるかもしれません。例えば今「ヨゴレ」とよばているサメがいますが、これは鰭の先に白いヨゴレのような模様があり、それを僕たちが「汚れみたいだ」と言える前提があるから成り立つ名前で、あと100年くらいして「汚れ」という言葉が全然違う意味を指したり存在自体が消えてしまったりしたら面倒なわけです(ヘッタクソな例えだったらごめんなさい・・・)。

まあそんなわけで、ラテン語は実質死んでいる言語なので、余計な語が増えたり意味が変わったり文法が変化したりする心配のない、安定感がある言語なのです。

ただ、ラテン語の問題点が一つ・・・。発音が分からない(笑)。

英語読みっぽく言いやすい学名ならまだいいですよ。Carcharodon carchariasは「カルカロドン カーカリアス(カルカリアス)」と読めますし、ミツクリザメなんてMitsukurina owstoniですから「ミツクリナ オーストニ(オウストニ)」と読めば何とかなりそうな気がします。

ラブカとかどうするんですか。Chlamydoselachus anguineusですよ。「カラ・・・、クラミドセラカス アングイネウス・・?」。エビスザメとかマジでやめて頂きたい。Notorynchus cepedianusと書きますが、「ノトリンカス セぺディアナス・・・?」ああ!言いずれぇ(笑)!!!

ですが、今回聞いてホッとした点としては、発音に関してはアカデミックな場においてだんだん緩くなってきているみたいです。なので、正しく発音しようという努力はしつつ、それなりで良いのかもしれません(そうでないと僕は困る!)。大事なのは唯一無二の名前であることです。

ちなみに、学名も意味のない呪文ではなく、きちんとした意味を考えてつけられていることもあり、セットで覚えると面白いかもしれません。

例えば以下の通りです。
※分かりやすいように僕が相当意訳しています。

Carcharodon carcharias →尖った歯の人食いザメ→ホホジロザメ
Somniosus pacificus →太平洋の眠そうなやつ→オンデンザメ
Isrus oxyrinchus →等しい尾と尖った嘴をもつ→アオザメ

どれも実際のサメを連想させる良いネーミングセンスです。あえて写真は載せないので(単なる写真素材不足です笑)、彼らの見た目を知らない人はググってみてください。

 

 

一応今回学んだことを僕なりにまとめると、
・学名とは数ある名前の一つ
・学名には色々ルールがあり更新される
・発音は確かに面倒くさいけど、自分なりでもOK
・学名には面白い由来のものもあり、学ぶと楽しいかも

 

 

これからサメについて学ぶときに、より学名を身近に感じて覚えられそうです(*^▽^*)。

夏は来週末の合宿も含め、サメイベントがまだまだありそうなので、活動レポをあげていきます。

 

次回もよろしくお願い致します!

—————————————————————————————
※1 「種」とは何かという究極の設問はここでは割愛します。一般的には、生殖をして子孫を残せる個体を複製できる場合、その2種は共通の種と言われています。

※2 仲谷先生の『サメ ー海の王者たちー』の巻末リストから和名のついたものを抜粋した時の数が253種でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です