サメとエイの見分け方はサメ好きの自慢でしかないのか?

僕の記事を読んでくださる方の多くは、「サメとエイの見分け方は何ですか?」と言われたら即答できると思います。

知らない方のために一応解説すると、サメとエイは鰓孔の位置で見分けられます。サメやエイが含まれる板鰓類(正確には板鰓亜綱)の「板鰓」は鰓の弁が板状に並んでいることから名付けられましたが、その板状の鰓が体の側面にある場合はサメ、お腹側にあるものがエイです。この見方は本HP内の「サメの仲間たち?」ページでも取り上げました。

 

さて、こうした知識は水族館の解説コーナーやバックヤードツアーなどでも取り上げられ、昔の某番組であれば「へえ~」とボタンを押したくなるところですが、それが何の役に立つのか?と言う方もいるでしょう。

この他にも、「コバンザメ、チョウザメはサメではない」とか、「アカシュモクザメとシロシュモクザメは頭の形で判別できる」とか、サメ好きの中には初心者向けから上級者向けまで、様々な知識がありますが、それがどういった意味をもつのか。結局研究者やマニアが「俺たちは一般人が知らない知識を知っているから見分けられるぜ」という自慢でしかないのでは?と思われてしまうかもしれません。

今回は、そんな突っ込みにお応えすべくお話しします。

 

目次:
【生業にする人も見分けている】
【サメイメージアップを正しく行うための分類学】
【分けるは得だが自慢はするな?】

 

【生業にする人も見分けている】
分類学という分野があり、それが学術的に重要であるとか云々かんぬんって話をしてもいいのですが、僕自身が分類学にそこまで明るくないし、一般の方にイメージがわきにくいと思うので、もう少し分かりやすい話をします。

分類学とか学名をつけるなんてことは学者の都合であり、一般人には関係ないと思われる方がいるかもしれません。では、生き物を違う意味で生活の糧にしている方々はどうしているのでしょうか。

例えば、ネズミザメ目オナガザメ科のサメは3種類います。マオナガ、ニタリ、ハチワレですね。

この3種を見分けるのは普通の人ではなかなか難しいです。というか、サメ好きでも難しい。ハチワレは頭を上から見たときの分かれた線模様ですぐに分かりますが、ニタリとマオナガでは至難の業です。

ニタリとして紹介されていたサメですが、マオナガかもしれないと指摘を頂きました。

ところが、漁師さんや加工業者さんにとってこの見分けは重要です。3種の見た目は極めて似ていますが、肉の味に違いがあるからです(ハチワレの肉には酸味や苦みがあるときがあるそうです)。

サメの例ではないですが、関連する逸話をもう一つ。ジャレッド・ダイアモンドの名著『銃・病原菌・鉄』の一部を抜粋します。ニューギニアのフォレ族という部族と行動しフォレ族の一人がリュックいっぱいのキノコを持って帰ってきた際の話です。

「私は言葉を選びつつ、フォレ族の人たちに丁寧に説明した。キノコの中には有毒なものもある。毒キノコと食用キノコの区別はむずかしいから、アメリカでは、キノコの専門家として有名な人が、毒キノコを見間違えて食べてしまい、死んでしまったこともある。だから、われわれはみんな空腹だけれど、命がけで食べなくてもいいのでは・・・・・・と、そこまで話したときである。フォレ族の人たちはかんかんに怒りだした。よけいなことをいわずにこれから説明することをよく聞け、と私にむかっていった。まったく彼らが怒るのも無理はなかった。私は何年もあいだ、何百もの木や鳥の名前を彼らに教わってもらっておきながら、侮辱的な発言をして、彼らに毒キノコと食用キノコを区別する能力がないようなことをそれとなくにおわせてしまったのである。安全なキノコとそうでないものの区別がつけられないほど間抜けなのはアメリカ人だけだというのに」

生業にする、まして売るのではなく直接糧にしている人々にとって、分類は重要というより当然のことです。彼らの分け方やが名付け方が学術書のものと異なるというだけで、自然と向き合う方々も分類を行っているのです。

板鰓類の例で言えば、ぱっと見似たようなサメでも歯の形が違っていたり、背鰭に棘があったりなかったりという違いがあります。非サメ好きが突然生きたサメを扱う機会はあまりないかもしれませんが、どの生き物がどんな特徴を持っていて、それに近い仲間は何か、というようなことを分類と呼ぶなら、どんな形であれ分類は大事だと言えるでしょう。

そもそも、僕たちが生き物の見分けをまともにやらず過ごせているのは、農水産や流通・卸、加工・生産のシステムが機能しているからです。「明日から自分で食い物用意しろ。野生からとってこい」って言われたら、普通の人は生き物の捕まえ方以前に、どれが食べられるものなのか分からず途方に暮れるのでしょう。そんな人間が「生き物の分類なんて無意味だ」とか言ってバカにするのは、いかがなものでしょうか。

 

 

【サメイメージアップを正しく行うための分類学】
サメのイメージアップを考えたときも、サメの分類にこだわることは重要ではないかと僕は考えます。

サメ好きの方には「人食いサメ」という偏見を打破したいという方が多く、僕もその一人です。ただし、「サメが人を食べない」と言えば半分は嘘になります。

半分というのは、ほとんどのサメは人を積極的に襲いませんが、襲いかねないサメもいるからです。そもそも500種類以上いて大きさも食性もまるで異なるグループを「サメ」と一括りにして考えるのは、怖がるにしても愛でるにしてもいささか乱暴です。まあ、僕は全部好きなんですが(笑)。

僕が現在考えている理想的なサメのイメージアップは「サメには沢山の種類がいて、そのうち3~4種類くらいが、偶然人を食べちゃうことがあるけど、ほとんどのサメは少し大きな可愛い魚である」というイメージを、サメの多様性を語ることで広めていくことです。そして、多様性を語るのであれば分類学や種の判定についてある程度学んでいる必要があります。その過程で学名も覚えていた方が便利です。

もちろん、ホホジロザメの可愛いぬいぐるみやLINEスタンプをを作ってアイコン化していく方法もありますが、僕はベストな方法ではないと思います。だって、ホホジロザメは現に危ないから。ただしそれは、「ホホジロザメは人を見たら容赦なく引き裂く殺人マシーンだ」という意味ではありません。

ホホジロザメ(?)のぬいぐるみです。

別の生き物を例に考えてみましょう。「ライオンやトラはフサフサした猫ちゃんと捉えることができるけどあくまで猛獣なので、接するときは細心の注意を払う必要がある」と言えば、多くの方が同意するでしょう。僕はこのカテゴリーの中にホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメ、場合によってはヨゴレやアオザメを入れたいのです。そう、種別で分けるのです。だっておかしいじゃないですか。ネコは「ライオンは危ない、マンチカンは可愛い」で分けてもらえるのに、なんでサメは「ホホジロザメは危ない、イヌザメは可愛い」で分けてもらえないのでしょうか(マンチカンは厳密には種ではないですが、そこはどうか突っ込まず)。

ああ、もちろん、大型のサメでなければ舐めてかかってもいいという話ではありません。オグロメジロザメだってレモンザメだって襲ってくる可能性はあります。ネコザメだって噛まれたらきっとかなり痛いです。野生動物相手に細心の注意が必要なことはどんな場合も変わりません。

 

【分けるは得だが自慢はするな?】
某ドラマにタイトルを被せてみました。ちなみに僕の自宅にテレビはなく、未だに新垣結衣さんがどんな顔をしているのかうろ覚えです。

それはいったん脇に置き、結論から言うと分類学や学名というのは役に立ちます。ましてサメ好きでサメのイメージアップをしたい人たちは、ぜひ一緒に学んでいきたいと思います。

ただ、知っているから凄く偉いとか正しいではないということは肝に銘じておくべきかもしれません。

むろん、知っていた方がいいし、僕も知らない人を軽くディスってネタにすることで知識を広めようとするときもあります(実際もうやん文京というイベントの授業ではそういう手法も使いました)。ですが、やり過ぎるとそれこそマニアの自慢話に終わってしまいます。そもそも、サメの分類なんていまだにプロの先生方の間でも意見が分かれているのだから、僕たち非専門家の「知っている」はそこまで誇れるものではありません。

素人も玄人も楽しく混じってサメを盛り上げていければいいなというのが僕の考えです。共感してくれる方は、ぜひ一緒に2018年もサメを盛り上げていきましょう。

引き続きよろしくお願いします(^^)

 

 

【参考文献】
ジャレッド・ダイヤモンド『銃・病原菌・鉄 上巻』2012年 p262~263
田中彰 『美しき捕食者 サメ図鑑』2016年 p33

 

【Writer Profile】
自称サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。
2016年から現在の肩書を使って活動。社会人として普通に働きながら、
サメ関連イベント参加、水族館巡り、水族館ボランティアなどの活動を通して
サメについて学び、サメ、環境、水産、動物倫理などの分野で情報発信を行う。

Youtubeでの動画配信や、第3回ソーシャルドリームコンテスト、もうやん文京などプレゼンイベントで登壇。
今後、書籍の出版など活動の幅を広げていく予定。

 

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