「可愛い!」がカワウソを滅ぼす? “絶滅危惧種のペット” カワウソの実態

先日、カワウソの保護活動に携わっている動物園職員の方の講演を聴く機会があったので、その内容をもとにお話ししたいと思います。

講演タイトルは『空前絶後のカワウソブーム 可愛い!がカワウソを滅ぼす?』というもので、講演者は台湾・新竹市立動物園の岡元友実子さんでした。

主な内容としてはカワウソブームの裏にある問題点そしてアジアの研究や保護の実態についてです。今回は講演内容をの一部を紹介しながら僕の考えを述べたいと思います。

なお、本記事は講演内容を僕の記憶とメモをもとにまとめながら僕の考えを記すものであるため、講演内容全体の議事録ではありません。記載された感想や思想は岡元氏やイベント主催者ではなく僕のものであり、本内容の責任は僕自身にあります。したがって本内容への意見・質問・批判などは僕個人に向けて頂きたくお願い致します。

目次:
【国内に入れば全て合法になる恐ろしさ】
【「可愛い」しか伝わらない日本の行く末】
【中間層、準エリートを構築せよ!】

 

【国内に入れば全て合法になる恐ろしさ】
ます、カワウソの基礎知識から。

世界にはオオカワウソ、ユーラシアカワウソ、コツメカワウソなど13種類がいます(分類にありがちですが諸説あり)。実はラッコもカワウソの仲間です。そのうち、カナダカワウソ以外の全てがIUCNの絶滅危惧種に指定されています。コツメカワウソもIUCNで「Vulnerable」、つまり危機に瀕しているとランク付けされ、CITESに記載されています。コツメカワウソも絶滅危惧種です。

繰り返します。ちぃたん☆とかいって話題になっているコツメカワウソも絶滅危惧種です(ワシントン条約附属書Ⅱ)。

このカワウソのうち、主にコツメカワウソが「ペット」として日本国内でかなりの人気を得つつあります。それに伴い、かつて毛皮目的が主流だったカワウソの生体密輸が近年増えているようです。2017年にバンコクから日本への密輸が多く摘発されましたが、余罪の可能性は十分に考えられます。

では、なぜ絶滅危惧種が密輸され、一般家庭で飼育できるのか?

まず密輸について、巧みな手口で税関を潜り抜けたりするスパイ映画さながらなものもあるかもしれませんが、中には虚偽の申請(動物園間の取引を偽るなど)で国内に持ち込まれる場合もあります。

ここからが問題なのですが、日本では現在カワウソの一般飼育を取り締まるための法整備が遅れており、どんなルートであれ、一度国内に持ち込まれてしまえば所持・飼育が合法になってしまうのです。

さらに、トレーサビリティの仕組みも確立されておらず、正規ルートとして輸入された個体や動物園の余剰個体も、一定の仲介を挟んでしまうとその後どうなったのか追うことができません。

こうして動物取引の闇を経たカワウソたちが、Youtuberやカワウソカフェに流れ、野生で数が減少している絶滅危惧種のペット化を助長するという異常な事態を日本で生んでいるようです。しかも、それを止める法的規制はない。早急に法整備を行わなければ、日本は二ホンカワウソ以外のカワウソの絶滅にも手を貸すことになるでしょう。

 

【「可愛い」しか伝わらない日本の行く末】 
では、カワウソを何故ペットにしたがるのか
。「可愛いから」と言われれば、まあ、その通りです。「可愛いは正義」とはよく言ったもので、可愛いはそれだけで同意が得られる魔法の言葉のように思えます。実際、僕もカワウソはかなり可愛いと思っています。

アクアパーク品川のコツメカワウソ。確かに可愛いです。

しかし、「可愛い」だけにしか目を向けない人間ばかりだと、このカワウソペットブームは残念な結末を迎えるでしょう。「可愛い」しか考えない人間にとって、カワウソは犬・猫と同じ扱いなのでしょうが、人間に品種改良され野生から切り離されたペットたちと、野生から連れてこられている個体数の少ない動物を「フサフサして可愛いから」という理由だけで一緒くたにされては、たまったものではありません。

残念ながら、僕たちの周りには自分に都合のいい側面、見たいものしか見ない人間たちが多いようです。講演には動物園ボランティアやスタッフの方もいらっしゃいましたが、保全の話をしたり密輸などの問題点を指摘するポスターを貼っているにも関わらず「可愛い」「飼いたい」の声はやまないそうです。

こうした話を聞いて、僕はふとウナギのことを考えました。かなり乱獲され絶滅が危惧されていて、その上他国から輸入して世界の資源を枯渇に追い込んでいるにもかかわらず「土用の丑の日にはウナギを食おうぜ」と安いウナギをスーパーで買いあさり「伝統」とか言う日本人(食うなとは言いません。ただ、ウナギが安く買えるというのは異常事態です)。保全の観点で言えばはっきり言ってバカ丸出しです。「美味しい」・「伝統」など聞こえのいいことだけを考えて都合の悪い情報に目を向けないその姿勢が、カワウソペットブームにも表れているのでは、と講演を聴いているうちで恐らくただ一人の魚分野活動家の僕は感じました。

無論、カワウソが可愛いから関心を持つ、可愛いから絶滅して欲しくないといった発想もあり得ますし、カワウソをパンダやイルカのように保護運動のアイコンにして環境保全するやり方もできるので、可愛いと感じることはいいし、それを利用するのもOKだと思います。ですが、「可愛い」の発信だけでは自分の都合しか考えない人間たちの購買意欲を助長するだけです。

 

【中間層、準エリートを構築せよ!】
ではどうすればいいのか?

「政治家が動け」?
「動物園が教育をしろ」?

確かにそれも必要です。一刻も早く法整備を進め、カワウソブームが完全に根付いて手遅れになる前に対策を講じるべきです。また、動物園や水族館は「カワウソ可愛い!」のイメージだけでなく、野生の現状、二ホンカワウソ絶滅の話、カワウソがペットに向かない理由などを積極的に発信するべきです。

ですが、法整備はともかく、啓発活動は動物園や水族館だけでは不十分です。デートや家族サービスで来ている方にどこまで伝わるのかは微妙です。先ほどの話にもあった通り、誰も聞く耳をもたない可能性があります。それに、来場しないと情報が人々に伝わりません。

僕はこうした問題を考える時、いわゆる中間層の重要性を考えます。

専門家は忙しいし数が少なく、パンピーを啓発するには力不足です。もちろん、専門家が無能という訳ではありません。素人活動家の僕はいつも専門家の方には到底敵わないと痛感しています。ただ、フィールドワークに論文や書籍執筆、人によっては学生の指導などに追われる専門家は、知識不足で関心も薄い層に伝える活動に多大なコミットができないのは事実ではないでしょうか?

しかも、これも専門家のせいという訳でもないのですが、専門家の話はたいてい難しくて、日常に流される一般人では受け止めきれない。だから、専門家のような優れたるエリートではなくても、エリートの思想や方向性を理解し、エリートの情報を伝え、自ら動く中間層、僕が準エリートと呼ぶ存在が必要なのです。

この話をした時に、僕が差別主義者だと勘違いする左翼モドキのアンポンタンがかつていたので一応補足すると、ここで言う中間層とは収入や学歴などの階級ではなく、その分野における知識や活動のレベルのことを指します。僕はカースト制のようなものを作りたいわけではありません。準エリートとは、塾考・熟議を通してエリート(単なる霞ヶ関官僚とかではなく、公的目的のために動く人々。宮台真司先生が言う「すごいやつ」)に学び、試行錯誤して主体的に動く人々のことです。エリートに圧力をかけて自分の私利私欲を満たそうとするインタレストグループとも違いますし、天下りを受け入れてエリートに媚を売る連中のことも意味しません。

例えば、これはサメの話でもそうですが、カワウソでもやはり日本語で手に入る情報が限られ、偏りがあるそうです。カワウソで言えば、「カワウソ」とググった時の検索結果の第一位がウィキペディア、続いてが「カワウソの値段から飼い方まで徹底解説」。「そのまま実は啓発する釣りページかな」とほんのわずかな期待を寄せてクリックしたらガチの飼育解説(しかも二ホンカワウソ絶滅の話に触れておきながら!)。これでは一般の見方が偏るのも無理はない。

つまり、英語や中国語などの情報を日本語にして(ガチな翻訳でなくても大枠だけでも)国内で発信すれば、それだけでもカワウソ=ペットのイメージを崩すことができるかもしれません(もちろん、海外=偉いの愚に走るつもりはありません)。こうした活動は専門家でなくても行うことが可能です。

小難しく話しましたが、要は専門家でなくてもやれることはあるんだから、動物園の真面目な説明をシェアするとか、カワウソカフェでウキウキしている友人にくぎを刺すとか、それくらいのことでもいから自分で考えて自分の意思でやれることやろうぜってことです。

僕もそうした準エリートを目指していますが、カワウソについてはまだまだ初心者。せっかくの機会ですので、今後調べてまた発信できたらと思います。また、今回の記事は「そもそも何をもって絶滅危惧種とするのか」や「準エリートはどんな存在でどう役に立つのか」といったことを説明するという課題を残したので、今後触れていきたいと思います。

引き続きよろしくお願いいたします。

 

 

【Writer Profile】
自称サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。2016年から現在の肩書を使って活動。社会人として普通に働きながら、サメ関連イベント参加、水族館巡り、水族館ボランティアなどの活動を通してサメについて学び、サメ、環境、水産、動物倫理などの分野で情報発信を行う。

Youtubeでの動画配信や、第3回ソーシャルドリームコンテスト、もうやん文京などプレゼン・レクチャーイベントで登壇。今後、書籍の出版など活動の幅を広げていく予定。

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