サメ軟骨はインチキなのか? 暮らしにはびこるニセ科学に騙されるな!

今回は以前YouTubeに投稿した『暮らしのなかのニセ科学』の書評動画の内容を一部補足した記事です。

ニセ科学に対する僕の考えを話しつつ、癌に効くとして昔話題になったサメ軟骨も少し紹介します。

 

目次:
ニセ科学とは何か?】
【サメ軟骨はインチキなのか?】
【なぜニセ科学にだまされるのか?】
【途方もない根拠には・・・】
【なぜか批判側が悪者にされる】

 


【ニセ科学とは何か?】

まずニセ科学とは何かを一応説明します。ニセ科学とは「科学っぽい装い」をしているけれど、とても科学とは呼べないものを指します。たとえばインチキなデータを使っている、存在が証明されていないものを根拠にしている、などきちんとした科学ならあり得ないようなものを基盤に主張されているものですね。

そうしたデタラメに対して、「波動」とか「クラスター」とか「〇〇反応」とかそれっぽい科学チックな用語や理屈で飾り付け、さもそれっぽく見せているもの。それがニセ科学です。

例えば、抗癌サプリ、ホメオパシー、血液サラサラ、水素水、水からの伝言、マイナスイオン、EM菌などなど・・・。ああ、血液型占いを忘れてはいけませんね。

上記はニセ科学のほんの一部ですが、皆さんもどれかは必ず聞いたことがあると思います。僕たちの生活にニセ科学はすでに浸透、いや侵入してしまっているわけです。

ちなみに、科学者が意見を違えたり、有力だった説がのちに反証されることがありますが、これはニセ科学とは言いません。科学は証拠とオープンな議論をもとにして真理を追究し、間違いがあると分かれば直していくエラー修正機能をもちます。偉大な生物学者リチャード・ドーキンスの言葉を借りれば、「意見を変えるためにはどんな証拠が必要か、ということについては誰もが一致」しているのです。

対してニセ科学は、イカサマや都合のいいアナロジーを組み合わせてそれっぽく見せていて、反証が出てきても違う理屈をこねたりしてエラーを修正しない、どちらかと言えば宗教やスピリチュアルに近いものです。この理由から、僕はニセ科学とスピリチュアルに対してほぼ同じ扱いをしています。実際、水が言葉を理解し結晶の形やものの腐敗具合に影響を及ぼすという『水からの伝言』は、科学というより完全なオカルトでしょう。ある程度の教育を受けた大人までもがこんなものを信じているというのは驚きです。


【サメ軟骨はインチキなのか?】

全部のニセ科学を取り上げるとキリがないですが、今回は僕のメインの関心分野、サメについて紹介します。

サメの軟骨に抗がん効果があるという話を聞いたことがあるでしょうか?

ホホジロザメの顎。歯は硬骨ですが、それ以外の部分は軟骨でできています。

海外で生まれた説なので日本では聞きなれない方もいるかもしれませんが、「サメは癌にならず、その秘密は彼らの軟骨に隠されているのではないか」という説が昔話題になりました。映画『ディープ・ブルー』を思い出させる話ですが、実話です(『ディープ・ブルー』ではアルツハイマー病の治療でしたね)。

サメは骨格のほとんどが軟骨でできている生物ですが、その軟骨の粉末などを摂取すると延命や痛みの軽減ができるという説です。

しかし、この説は現在根拠のないものとされています。このサメ軟骨を用いた臨床研究が手術不可能な肺がん患者を対象に行われたのですが、二重盲検法で効果が認められなかったのです。

ちなみに「二重盲検法」とは、薬などの効果を客観的に検定する方法の一つです。これは非常に重要なので解説しておきます。

被験者グループAに本物の薬、グループBに無害だが効果もないニセの薬を与えます。この時、被験者にも、それを処方する医師もどちらが与えられたか知らない状態にして、結果を観察するのです。

これはプラセボ効果(プラシーボ効果)と観察者バイアスを防ぐためです。

プラセボ効果は一般的に偽物の薬を与えられても病気の症状が改善されてしまうことを指します。病気が良くなれば被験者は嬉しいでしょうが、これでは薬のおかげなのか、暗示効果などで改善したのか判断が付きません。

また、観察者である医師が薬か偽薬かどうかを知ってしまっていると、症状の微妙の変化に対し「この患者には本物の薬を与えてあるのだからこれは薬の効果かもしれない」というバイアスがかかってしまいます。これでは客観的な効果測定はできません。

本物と偽薬どちらが処方されたか被験者も観察者も分からない状態で効果を測定することで、純粋に薬の効能があるかどうかを、高い正確性で測ることができるわけです。

二重盲検法はダブルブラインド法、ランダム化比較試験などとも呼ばれますが、この二重盲検法とそれをたくさん集めて統計的に分析したメタアナリシスが、薬や健康食品などの効能を評価するときに最も信頼度が高い判断材料になります。

逆に信頼度が最低なのが体験談です。体験談では嘘をつけるというのはもちろん、製品を売る側がたまたま効果のあった人だけから話を集めている可能性もあります。また、本当に何か改善があった人でも、プラセボ効果や全く関係ない要因によるものをその製品のおかげと信じているだけかもしれません。

ちょっと話がそれましたが、要はサメ軟骨の効能については科学的に立証されているとは言い難いということです。複数の医療機関の見解を調べてみましたが、どれも癌に対する効果は期待できないとしていました。

 

【なぜニセ科学にだまされるのか】
ニセ科学はいろんなところにはびこっています。僕自身、子供のころ学校でゲーム脳について先生に真面目な顔で説明をされ、某企業のセミナーでは講師が堂々と『水からの伝言』にまつわるオカルト話をさも科学的事実化のように紹介しているのを目の当たりにしています。また、いまだに血液型占いを信じている人がどの世代にも多いいることに本当に驚かされます。飲み会や合コンでこれ系の話が出るたびに、自分の顔が引きつっていないか不安です・・・。

こうして世間を侵略しているニセ科学ですが、人々がなぜニセ科学に騙されるのか、考えられる背景を3つ紹介します。

<科学っぽい雰囲気>

例えば「波動」です。波動はもともと空間や物体に加わった変化が伝わっていくことを指す言葉ですが、ニセ科学やスピリチュアルでは超能力的なものを説明する際に用いられます。また、根拠のない理屈に医学用語っぽい名前を付けるのもニセ科学の特徴です。有名なもので言えば「経皮毒(けいひどく)」です。某ネットワークビジネスが悪用したことで問題になりましたが、シャンプーなどの日用品には有害物質があり、それが肌を通して体内に吸収されてしまう(だから安全なこっちの製品を僕から買って使った方が良いよ)というものです。医学ではこんなもの認められていませんが、図解資料とか見せられつつ真面目なテンションで話されればそれっぽく聞こえます。ニセ科学がまさにそう呼ばれる由来ですが、こうした科学チックな雰囲気に多くの人が騙されてしまうわけです。

<教育の在り方>

日本の教育は、クリティカルにものを考えるのではなく、教科書に書いてあること・先生が言ったことは正しいという前提でそれを丸覚えしてテストでそれを測るというものです。根拠を基盤にして自分の考えをまとめて発表したり、他者の主張の問題点を指摘したり議論する機会が圧倒的に不足しています。そうした教育のせいで、悪徳業者、ネットワークビジネス、教祖などが言葉巧みに話すニセ科学やオカルトをコロッと信じてしまう人が多いという側面はあるかもしれません。

<メディアの問題>

ニセ科学やスピリチュアルはテレビから絶大なバックアップを受け、テレビで言うことは正しいものだと思い込む多くに人を引き付けてしまっています。

オウム真理教事件からしばらくテレビではオカルト的な内容が自粛されていましたが、その後しばらくすると「超能力者」、「心霊鑑定家」、「前世が見えるオカマ」、「動物と話せる女」などの怪しい人たちがさも本物かのように取り上げる番組がまたどんどん出てきました。ちなみに僕は地下鉄サリン事件の少し前に生まれていますが、小学生になる頃には心霊写真に有名アイドルが本気で怖がり、写真から「霊波動」なるものが感じられるとほざく「研究家」なる人が紹介されていました。

また、『試してガッテン』や『発掘!あるある大事典』などで、科学的ではない健康法が紹介されるなどして問題になりました。こうした事例を見るだけでも、テレビがニセ科学にお墨付きを与えていることは間違いありません。


【途方もない主張には・・・】

偉大な科学者であり作家である故カール・セーガンさんはこのような言葉を残しています。

「途方もない主張には、途方もない根拠が必要である」

 

EM菌を例にとります。EM菌(有用微生物群)とかいう生物は、1200℃の高温でも死なず、ウイルスを失活させる力があると主張されています。

今風に言えば「大草原ww」ですね。そんなものが本当に発見されているなら生物学における歴史的大発見であり、『ネイチャー』などの著名な科学誌に論文が掲載され、新聞・テレビ・ネットはその話題で持ちきりになり、怪しげなセールスマンの口から洩れる前に絶対に僕らの耳に入っています。

もしそういうとんでもないものを紹介してくる人がいれば、こう聞いてみてください。

「それはすごいですね!それはきちんとした論文がでているはずですよね?学術雑誌に掲載されていますよね?具体的にはどんな風に検証されたのでしょうか?教えてください!」

こう言われてしまえば彼らはごまかすか嫌な顔をするしかありません。主張が途方もないことでも、根拠が弱いかそもそも存在しないからです。近頃「マスザワ内閣」というチャンネルのYouTuberまっすーさんがネットワークビジネスを論破するなどして話題になっていますが、彼にぜひためしてほしいものです笑

ただ、こうやってニセ科学から逃れるには、ある程度の科学の知識や、科学的な考え方を身につけなければいけません。EM菌の例なら1200℃でも死滅しない生物というのがいかにとてつもないことかという生物に対する知識を知っていればすぐに疑問視することができます。それが難しくても、中学・高校レベルの理科の知識で見破れるニセ科学がほとんどです。

ちなみに、深海のブラックスモーカーから出る熱水の温度が300℃前後、その周辺に住んでいて超好熱メタン菌の仲間は122℃の環境でも増え続け、これが微生物で最も熱に強いとされています。

 


【なぜか批判側が悪者にされる】

今回僕が取り上げた話は、理科教育に携わる左巻健男さんという方の『暮らしのなかのニセ科学』という本をかなり参考にしています。こうしたニセ科学の批判というのは科学者の実績にはならなずお金もあまり稼げないのに対し、ニセ科学を広める人は情報弱者から搾り取ってガッポガッポ儲けているという非常に悲しい現実があります。なので、左巻さんのような科学者に任せきりにするのではなく、僕たち一般消費者がニセ科学が滅ぶように行動を変えていく必要があるのです。
ちなみにこういうニセ科学とかスピリチュアルを批判すると「信じる者は救われる!」って開き直ったり、「信じるのは人の勝手じゃん!」とか言って、まるでこちらが悪者のように言う人もいますが、これは明らかに間違いです。


宗教やスピリチュアルではNOMA(Nonoverlapping magisteria)という考え方が主張されることがあります。科学が「宇宙は何でできているか?」という問いを探求するのに対し、宗教は「宇宙はなぜ存在するのか」という問いに答える。つまり、科学も扱えない真理がこの世にはあり、お互いの守備範囲を尊重しようというものです。しかし、これには大きな問題があります。まず、科学にできないことがなぜ宗教にできると断言できるのか?そしてもう一つ、宗教やスピリチュアルが唱える奇跡、霊能力などはその定義からして明らかに科学の守備範囲を侵害します。

話が長くなるので後者だけ掘ります。『水からの伝言』を例にとれば、「いい言葉を使う方が人生良くなる」と信じるのは価値観の自由ですが、人の言葉に反応して水の結晶の形状が変わるかどうかというのは立派な科学的な問いです。

本当に『水からの伝言』が真実だと思うなら、「ありがとう」と言った時と「馬鹿野郎」と言った時の周波数や音波を分析し、それが水の結晶に影響を及ぼすか検証すればいい。これは意地悪でもなんでもなく科学的検証であり、その結果認められたなら、おめでとう!『水からの伝言』は科学になります。しかし、科学によって明らかに認めらない・可能性が極端に低いものを本当であるかのように主張するのは、よくて勉強不足、悪くて嘘つきです。


そもそも「信じる」という言葉を使った瞬間に、相手はプラセボ効果以外のものを期待できないことを認めているわけですから、その時点で相手の負けです。

「信じることで結果的に人がいい言葉を使ったり気持ちが良くなるならいいではないか!」という戯言も聞きますが、ナンセンスです。こんなことを言う人は、サンタクロースの存在を信じていた子供の時からメンタリティが成長していない。こうあって欲しいという願望およびこうすべきだという規律と現実がこうだというのは完全に別の事柄です。水の形がどうであろうといい言葉を使えばいいし、サンタが空から来るデブの魔人だろうが自分のパパだろうがいい子にしていればいい。

それに付け加えさせてもらえば、天国だと来世だのを「信じる」という行いが地下鉄サリン事件と9.11を起こしたのではないでしょうか。

ニセ科学やオカルトはフィクションとしてなら娯楽になります。僕だってSF映画やホラー映画は大好きだし、都市伝説や陰謀論を中立的に紹介するYouTuberナオキマンさんの動画も毎回楽しみにしています。スピリチュアルの考えも、あくまで神話や童話みたいなとらえ方をするなら役立つかもしれません。

しかし、それらを大真面目にとらえてしまえば、詐欺師やカルト宗教の強力な武器になります。ニセ科学は効果のないダイエットとサプリメントであなたの時間とお金を無駄にさせます。ニセ科学に基づく医療は、拝み屋程度の効果しか期待できないものにお金をつぎ込ませ、科学的に効果の認められた方法から人々を遠ざけてしまう社会の害悪です。あなたはそんな害悪がはびこる社会に住みたいですか?そうした理屈を教える学校に子供を通わせたいですか?

ニセ科学が淘汰されるように意識・知識をみんなで高めていきましょう。

 

今回の記事のもとになった動画はコチラ!YouTubeでサメやその他生き物の紹介、科学系テーマをとりあげたりしているのでぜひチェックしてみてください!

【Writer Profile】



サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。2016年から現在の肩書を使って活動。社会人として働きながら、サメや環境問題などについて情報発信を行なっている。水族館ボランティアとしても活動。主な発信分野はサメの生態、水産業、動物倫理、進化生物学など。

Youtubeでの動画配信や、第3回ソーシャルドリームコンテスト、もうやん文京などプレゼン・レクチャーイベントで登壇。今後、書籍の出版など活動の幅を広げていく予定。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です