「え?クジラ?サメじゃないの?」と言われそうです。そうです、フジクジラという名前のサメです。実に紛らわしいことこの上ない。
「チョウザメはサメではない」とか「コバンザメはサメではない」というのは色んな人が言っているのでそろそろ常識になって欲しいのですが、フジクジラは逆にサメっぽくない名前をしたサメです。
全く事前知識のない方が名前だけ聞けば、たぶんこんな生物が頭に浮かぶと思います。
まあこれはふざけすぎましたね笑。実際はこんな姿をしています。
僕の画力では伝わりにくいかもしれませんが、フジクジラの仲間は藤色を思わせる美しい深海性のサメです。しかも、フジクジラの仲間は体に発光器を持ち、暗闇で光るその生態から、英語ではlantern sharkと呼ばれます。
去年のミツクリザメもそうですが、
引っ越したばかりで休みを求める体に鞭打って、新江ノ島水族館に向かいました。
「江の島が見えてきた~♬」と歌う気分にもならない寒さですが、海の向こうになんと富士山が!まさに“フジ”クジラを見に行くにはもってこいです。
そして深海魚コーナー、期待と不安を胸に水槽に向かいます。
いました!!
かなり見えづらいですが、青暗い水槽の中に確かにその姿を確認できました!ヒレタカフジクジラです!
ヒレタカフジクジラは大きくても50cm程度のサメです(クジラって名前なのに)。今回展示された母ザメは38cmほど。この写真は13cm程度の、産まれて数日しかたっていない幼魚です。
ヒレタカフジクジラは胎生(卵黄依存型胎生)のサメなので卵ではなく自分のミニチュア版を産むわけですが、親のサイズが元から小さいことを考えるとかなり大きな赤ちゃんです。
残念ながら僕が来た時点でかなり弱ってしまっていて、水槽に横たわるようにしてほとんど動くことはありませんでした。しかし、時々力強くビュン!と泳ぎだすときがあり、映像でしか見たことがなかった深海ザメの遊泳シーンを見ることができました。

このように弱ってしまう深海生物を展示するのを「かわいそう」という人がいますが、こうして水族館に運ばれてくる深海ザメの多くは混獲されてしまってすでに弱っているか、普通に活用されても命は絶たれる子たちです。しかもたいていの場合大した市場価値はありません。
「かわいそう」という感覚自体は否定しませんし僕も切ない気持ちになりますが、普段見れない生物の生態を展示し、死んでしまったものを記録することはやはり啓発・研究の意味で意義があると僕は思います。
むしろ、こうして展示した水族館の努力に応え、この子たちの命を無駄にしないためにも、生き物を学び、環境を守るというのが前向きな姿勢ではないでしょうか。
さて、12月15日で今回のヒレタカフジクジラの展示は終わってしまいましたが、新江ノ島水族館は元から素敵な水族館なので、今回の展示に間に合わなかった人もぜひ足を運んでみて欲しいです。
個人的に今回いい感じに撮れたって思うヒレタカフジクジラ以外のお写真を紹介して今回終えたいと思います。



先日の葛西のイタチザメやアオザメをはじめ、水族館にレア種のサメが展示されるニュースが続いています。大晦日や元旦も珍しい子に出会えるかもしれませんね。
ヒレタカフジクジラが泳ぐ瞬間はこちら↓
【Writer Profile】
サメ社会学者Ricky
1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。
社会人として働きながら、サメの生態や環境問題などについて情報発信。主な発信分野はサメの生態、水産業、動物倫理、進化生物学など。
本HP『World of Sharks』での運営のほか、Youtube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇、水族館ボランティアなどで活動。
メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com
フジクジラは、敵から身を守る為にお腹が光ると聞きました。
その静止画、動画を見ることは出来ますか
静止画は動画から作っているはずなので見られるはずですよ。