海洋プラスチック問題とは何か?

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

今回は海洋プラスチック問題について解説していきます。

海洋プラスチックと聞くと
「ストローがダメ」
「ペットボトルがダメ」
「マイバッグを持とう」
などの話を聞くことはありますが、実際何が問題なのかイマイチ分からない人も多くいるはずです。

今回僕自身の整理をつけるためにもいったんまとめてみましたので、海洋プラスチックの何が問題で、僕たちに何ができるのか紹介していきます。

目次:
【海洋プラスチック問題とは?】
【大量のプラスチック】
【マイクロプラスチックとは?】
【プラスチックの何が問題?】
【僕たちに何ができるのか】
【少しでいいから実践と拡散を】
【まとめ】

 

【海洋プラスチック問題とは?】
僕たちの日常は思い返すまでもなくプラスチックにあふれています。例えばスマホとそのケース、パソコン、メガネ、歯ブラシ、玩具、服もそうですね。だいたいが化学繊維が使われています。どこかしこもプラスチックまみれです。

プラスチックは低コストで作れる軽量で丈夫な素材です。加工次第で形を変えて様々な用途に使われます。金属みたいに錆びないし、耐水性や耐熱性もあって非常に便利です。

ただ、この便利さそのものが、今まさに問題になっているんです。

プラスチックは非常に安定した頑丈な構造の素材なので、生物に分解されず自然界に残ってしまうんですね。

 

放置されたプラスチックごみは土に還ることなくそのまま残ってしまう。

 

海洋プラスチックに警鐘を鳴らすドキュメンタリーでこんな言葉がありました。

Plastic is wonderful because it‘s durable, and plastic is terrible because it is durable.

簡単に訳せば、「プラスチックは耐久性ゆえに素晴らしく、そして耐久性ゆえに恐ろしい」という意味です。なかなか的を射た表現だと思います。

数百年間、あるいはそれ以上のスパン消えることのないプラスチックゴミが海に大量に流れ、生き物が死んでしまったりなど様々な悪影響がでてしまっています。これが海洋プラスチック問題です。

 

 

【大量のプラスチック】
プラスチックが日常にあふれているのはなんとなくわかると思いますが、実際どれくらい作られているのか。

ここ50~60年でプラスチックの生産量は爆発的に増加していきました。その総量は年間4億トン近くになります。

4億トンという数字は大きすぎてかえってイメージ湧きにくいですが、ざっくり言えば毎日スカイツリー30本分相当のプラスチックが作られている計算になります(間違いではないです。1日スカイツリー30本です)。

こうして生み出される大量のプラスチックは風に飛ばされたり、川を流れたり、あるいは意図的にポイ捨てられたり、色々な経緯をたどってやがて海にたどり着きます。

経路はかなり複雑ですが、約80%は陸起源、つまり僕たちが出してしまっているのです。

海に出るプラスチックの具体的な量は諸説りますが、ある試算によれば、多いと毎年1270万トンが海に流れてしまっているそうです。またスカイツリーに換算するなら、352本分です。

毎年352本のスカイツリーを人類総出で海に捨てていると考えると、尋常ではない排出量だというのが分かると思います。

 

【マイクロプラスチックとは?】
海洋プラスチック問題で外せないのがマイクロプラスチックです。なかには海洋プラスチック問題=マイクロプラスチックと思っている人もいるので、ここはしっかり整理していきます。

プラスチックごみが海洋生物に悪影響を及ぼしているという問題は結構前から知られていました。プラスチックごみを間違って動物が食べてしまったり、海を漂うゴミが生物に絡まって死なせたり弱らせてしまうという事例です。

ただ、これは大きなプラゴミ、マクロプラスチックにより起こる問題です。

これに加えて最近注目されているのがマイクロプラスチックです。

マイクロプラスチックは、サイズが5ミリよりも小さなプラスチック粒子のことを指します。

マイクロプラスチックのイメージ。

さらに細かく言えば、一次マイクロプラスチックと二次マイクロプラスチックに分かれます。

一次のものはもとからマイクロサイズだったもので、例をあげるなら歯磨き粉や洗顔料に入っているスクラブです。

海で圧倒的に多いのは二次マイクロプラスチックの方です。これは、大きなプラスチックごみが劣化することで生まれます。

プラスチックは生物に分解されないので水や二酸化炭素などになることはないのですが、太陽の紫外線や熱によって徐々に壊れ、細かくなっていきます。洗濯バサミをベランダでずっと使っていると、もろくなって割れてしまいますよね。あれと同じ理屈です。

他にも化学繊維を洗濯したり、スポンジを使ったりしてもマイクロプラスチック発生します。

マクロプラスチックもかなりの量ですが、結局それらもマイクロプラスチックになり、やがて海がプラスチックまみれになっていきます。

プラスチックは海流や生き物など様々な要因で運ばれ、表層を漂うだけでなく、深海にも到達します。実際にJAMSTECが公開している駿河湾やマリアナ海溝の映像にレジ袋とかプラスチック破片が映っています。

実際の画像。・映像はこちら↓

宇宙と同じように謎に満ちていて様々な生物が住んでいる深海が、もう僕らのゴミだらけになりつつあるんです。

 

 

 

【プラスチックの何が問題?】
マクロ・マイクロ関わらず、プラスチックごみは海の生物に深刻な影響を及ぼします。

まずプラスチックごみは数多くの動物が誤飲してしまいます。よく知られている例をあげるなら、クジラやイルカ、ウミガメ、そして海鳥たちが誤ってプラスチックを食べてしまっています。。

プラスチックは消化することができないので、誤って飲み込んでしまった動物は胃が傷ついたり腸が詰まったりなどして死んでしまいます。

こちらの写真は美ら海水族館に展示されているマダライルカの胃袋です。弱って那覇に迷い込んだ後すぐに死んでしまった個体で、解剖するとこれだけのゴミが詰まっていたそうです。いざ見せられるとなかなかの衝撃です。

他にも、くしの一部がいの中に刺さって死んでしまったと思しきジンベエザメが海遊館で記録されるなど、プラスチックによる海洋生物の被害はたびたび報告されています。

海遊館の記事はコチラ↓

僕たち人間が把握しきれていないだけで、広い海の向こうではもっと多くの生物が犠牲になっていると思います。

 

 

これらの事例はマクロプラスチックによるものですが、マイクロプラスチックが誤飲されることがあります。

イワシやアジ、それに濾過食を行うクジラや二枚貝などの生物がマイクロプラスチックを小さな動物プランクトンと一緒に食べてしまうのです。

マイクロプラスチックも場合により消化器官を傷つけたり詰まらせる危険があります。仮にそこまでいかずとも、栄養のないプラスチックを食べ続けることで生殖能力に異常をきたすなど動物に悪影響をおよぼします。

さらに厄介なのが、プラスチックによって有害な化学物質が体内に蓄積されることです。

プラスチックには酸化や細菌増殖を抑えるために、添加剤という化学物質がつかわれています。この添加剤はプラスチック製品を便利にするためのものですが、摂取すると有害な物質が含まれていることもあるのです。

また、プラスチックは海中の油っぽい汚染物質を吸着するので、POPsと呼ばれる汚染物質を沢山つけて海を漂います。POPsはPersistent Organic Pollutants(残留性有機汚染物質)の略で、自然に分解されにくく、生物濃縮(後述)を起こしやすい、そして人体やその他動物に悪影響がある可能性のある化学物質の総称です。

こうした汚染物質はプラスチックと一緒に動物に食べられることで生物濃縮を起こします。

生物濃縮とは汚染物質が生物の体の中にどんどんたまっていく現象です。疎水性が高い、つまり水に溶けにくい一部の物質は体外に排出されずに脂肪などにたまっていきます。そして溜まっていった物質は食物連鎖を通して高次捕食者に蓄積されてしまうのです。

生物濃縮のイメージ図。

プラスチック自体を糞と一緒に排出できたとしても、汚染物質は体に残ります。小さな動物プランクトンがマイクロプラスチックを食べて、それを小魚が食べ、さらにそれを大きな魚が食べ、どんどん化学物質がたまっていくんです。

四代公害病の一つである水俣病も実はこの生物濃縮が原因の一つです。海に流れ出たメチル水銀が生物濃縮を起こし、水銀を体に含んだ魚や貝を食べて人間が病気になったんです。

ここまで読めば話の流れが分かると思いますが、プラスチック汚染の最大の恐怖は水俣病のように海産物を通して人間にかえってくる危険があるということです。

すでに魚介類は多かれ少なかれプラスチックを含んでいるので、僕たちはすでにプラスチックを食べてしまってるはずです。仮に魚の内臓を食べないことでプラスチック自体を摂取しなくても、プラスチックによって蓄積された化学物質は生物濃縮で溜まっていきます。

これがどれくらい人体に影響があるかはっきりしたことはまだ分かっていません。海洋生物への影響も、複合的な要因で影響が変わったりするので、はっきりと分からないことが多く研究段階であるのが現状です。

ただ、プラスチックを食べることで健康になれることはまずないですよね。そして冒頭でも触れた通り、プラスチックはとんでもない数が毎年生産されるので、どんどん海に増えていきます。

このままの量でプラスチックを作り続け、そして海に垂れ流し続けると、2050年までに海洋プラスチックの方が魚よりも多くなるという計算もあります。仮に今影響が出なくても、このまま増え続ければ、恐ろしい未来が待っているかもしれません。

 

 

【僕たちに何ができるのか】
海洋プラスチック汚染がどれだけまずいかというのはご理解いただけたと思います。今回はプラスチックを食べることの問題にフォーカスしましたが、他にも様々な問題があります。

・捨てられたプラごみや漁具に動物が絡まって殺してしまうゴーストフィッシング

・海を漂流するプラごみが外来種を運搬してしまう

・プラスチックがサンゴを傷つけたり光合成を邪魔したりする

・貨物船や漁船のプロペラや漁具にプラごみが絡まるなどして事故や損害につながる

・海にプラごみが溢れることでリゾート地やマリンスポーツの観光収益に悪影響が出る

ざっと思いつくだけでもこれだけ出てきます。今はまだそこまで被害のない場所でも、プラスチックが分解されないこと、そして膨大に日々生産されていることを考えれば、いつ壊滅的な事態になってもおかしくありません。

 

では僕たちに何ができるのか。

ごみ問題を語るときによく言われるのが3Rです。Reduce、Reuse、Recycle、つまり使う量を減らして、再利用して、出てしまったゴミはリサイクルしましょうというものです。

ただ、プラスチックについてはまずReduce、つまり生産量や使用量を徹底的に減らす取り組みが必要です。

理由は3つあります。

・そもそも生産量が多すぎる

・使い捨てプラスチックが多い

・リサイクルは上手くいっていない

一つ目の生産量は先ほどのスカイツリーの例えで伝わったと思いますが、実は膨大な生産量のうち約半分が使い捨てプラスチックなんです。

例えばレジ袋、梱包材、ストローやペットボトルなどが使い捨てプラスチックに含まれます。一度使われたらほとんどすぐにゴミ箱に直行するプラスチック達です。

極論ですが、明日からレジ袋とかペットボトルを全面禁止にすれば、プラゴミを半分にできる可能性があります。

これ聞くと「いや、そういうの無理だからリサイクルしようぜ」という話になりそうですが、なんと世界のプラゴミの91%はリサイクルされていません。

リサイクルするにも手間とコストがかかります。プラスチックにもポリエチレンやポリスチレンなど様々な材質があり、それらを分別して適した処理をするのは非常に面倒だし設備も安くありません。

それよりは使い捨てプラスチックをどんどん作ってしまう、出てきたゴミはほとんど埋め立てに使ったり燃やしてしまう、というのが世界の実情です。

リサイクルが上手くいっていないのは日本も例外ではありません。

日本はリサイクル率が8割などと高めに紹介されることがあって、一見すごい優秀に見えます。しかし、実はそのうち約67%は焼却しているだけなんです。

詳しくは下記資料のp64を参照↓

 

 

サーマルリサイクルと呼ばれ、燃やすときの熱を火力発電などに利用するのを日本では「リサイクル」としています(国際的には熱回収はリサイクル扱いではないです)。そして残り20%くらいはちゃんとリサイクルしていますが、それもほとんどは他国に輸出してリサイクルさせています。

プラゴミの話をすると「中国が~」と騒ぐ「自称愛国者」の人がたまに出てきますが、中国から排出された膨大なプラごみの一部は日本から輸出されたものであったはずです。2018年1月に中国は廃プラスチックの輸入をストップしましたが、それでも事態は変わりません。東南アジアやその他の発展途上国に輸出され、処理しきれずにストップがかかるか漏れだすのがオチです。

そもそも仮にリサイクル率が上がってもマイクロプラスチックの発生は防げないし、量が多ければその分漏れも多くなります。リサイクル率向上も大事ですが、いわば「蛇口を閉める」ためにプラスチックの総量を減らすのが重要です。

 

プラスチック使用量削減には僕たちの日ごろの心がけにかかっています。例えば買い物の時にマイバッグを持つ、飲み物はマイボトルで飲むなどです。

レジ袋やストローを店頭で断るRefuseも大事です。残念ながら今のお店では袋がいらない側が断るという工数を踏まないといけないです。これが逆転して、袋が必要な人の方がわざわざ申告してお金も払わなきゃいけないという世の中になればいいと思っています。

 

 

 

【少しでいいから実践と拡散を】
こういう問題啓発をすると必ず出てくるのが、

「でもお前が使ってる●●もプラスチックだ~」
「海の生き物大事とか言ってるのにペットボトル使ってる~」

とかイチャモンつけてくる人たちです。全面的に最大限の努力をしないとダメ、1か0かで考えて揚げ足をとってくる小学生以下の人たちです(こういう人たちに限ってプラスチック削減の努力なんてしていません)。

また、「どーせ排出をなくすのは無理だ!」とあきらめモードになる人もいます。この気持ちは正直分からなくはないです。実際マイクロプラスチックはタイヤのこすれとか化学繊維の洗濯からも発生するので、今の時点では排出ゼロは不可能です。

ただ、それで何もしないというのも間違っていると僕は考えます。「地球もやがてなくなるから自然環境とかどうでもよくない?」とはなりませんよね(なっている人がいたら迷惑なので地球から出ていって下さい)。

まずはできる一歩から初めて、徐々に変えていく、そしてその取り組みの中でプラスチック削減の空気を作っていくのが大事です。

僕の偏見かもしれませんが、日本人は空気に縛られて周りに合わせようとする習性が強いと思います。いわゆる「みんながやっているからやる」です。これは思考停止であり悪い側面と扱われることが多いですが、逆に利用することもできます。

専門家から「プラスチックは良くない」と言われるより「あそこのおうち、まだレジ袋とか使ってるみたいよ」とか近所で噂される方が、環境に興味のない人には効果があります。いじめとかを助長するわけではないですが、「使い捨てプラスチックはダサい、マイボトルはイケてる」のような風潮を全国で作れれば、政府もより効果のある政策や規制を通しやすくなるはずです。

そうして世の中の流れが変われば企業側も対応せざる得なくなり、Redesignが起きます。つまり、使い捨てを前提としない商品やプラスチックを使わない商品の開発と普及が進むんです。

少しずつでもできることを実践して広めていき空気を作っていく。これが今できる解決策だと僕は思います。

 

 

 

【まとめ】
海洋プラスチック問題はかなり重いテーマではありますが、今少しでもできることから始めておくのが大事です。

例えば週一だけでもペットボトル一切使わない日を作るとか、とりあえずマイバッグから始めるとか、徐々に行動するだけでも自分や周りの人の意識が変わると思います。

あとは、自ら発信者になるのが手っ取り早いです。今回の記事はYouTubeにアップした動画の内容を加筆修正したものですが、動画をアップしてから「あそこまで言ってペットボトルをここで買うのはダサすぎる」などの心のストッパーがかかりやすくなりました。

YouTube動画コチラ↓

今後も生き物好きに知っておいてほしい環境イシューを解説していきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

※今回の記事および動画の内容は下記の書籍を参考にしています。海洋プラスチック問題についてもっと深堀したい方は是非読んでみてください。

 

【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

社会人として働きながら、サメの生態や環境問題などについて情報発信。主な発信分野はサメの生態、水産業、動物倫理、進化生物学など。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、Youtube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇、水族館ボランティアなどで活動。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です