幻の深海ザメ「メガマウス」とはどんなサメなのか?

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

 

今回はあの大人気巨大ザメ、メガマウスを取り上げていきます!

メディアで取り上げられてだいぶ有名になったサメですが、「実は深海ザメじゃない」とか「地震の予知するのか?」など議論を呼ぶサメでもあります。

今回はその辺も解説していきますので、よろしくお願い致します。

 

目次:
【どんなサメ?】
【新種の巨大ザメ】
【何を食べているの?】
【深海ザメじゃない?】
【地震を予知する?】
【なぜ急に現れた?】
【まとめ】

 

 

 

【どんなサメ?】
メガマウスとはそもそもどんなサメでしょうか。

「メガマウスザメ」と図鑑には載っていますが、メガマウスでも通じるので今後メガマウスと呼んでいきます。

メガマウスはネズミザメ目というグループのサメですが、同じネズミザメ目のホホジロザメやアオザメなどとはだいぶ異なった頭でっかちな見た目をしています。

名前の由来にもなったメガサイズの口がある頭は丸みをおびていて、全体のシルエットはちょっとオタマジャクシっぽいです。大きさは4~5mになる大型のサメで、大きいものだと6m以上になります。

上の画像は泳いでいる姿をもとに復元された標本です。メガマウスと言えば本記事のアイキャッチ画像みたいに唇を出したような間の抜けた顔が印象的ですが、あれは顎が飛び出たり地上に出ることで潰れてしまったが故の顔です。

 

 

【新種の巨大ザメ】
メガマウスは1976年11月15日、ハワイのオワフ島沖の海で突然発見されました。

米国海軍の調査船がパラシュート型アンカーという船の錨を引き上げたときに、全長4.5mの見たこともないサメが絡まっていたのです。

アンカーをおろしていた水深は165mでした。ダイビングするにはだいぶ深みですが、漁師さんや調査員からしたら普通に魚獲っていた水深です。そんなところから未知の巨大生物が突然見つかったんですね。

今でこそ普通にメガマウスって認識していますが、恐らくネッシーが本当に見つかったくらいの衝撃だったと思います。

正式に新種記載されるまで少し時間がかかってしまいましたが、それよりも先にマスコミが大々的に報道するなどして一気にこのニュースが広まり、でっかい口のサメ「メガマウス」として知れ渡ることになりました。

のちに新種記載された際もMegachasma pelagios、「海のデカい口」をという学名がつきました。

新種が発見されること自体はそこまで珍しいことではないです。例えば昆虫や小さなエビの仲間などは未だに発見されています。多分アマゾンとか東南アジアの木を調べれば新種の昆虫とかゴロゴロ見つかる気がします笑。

そうした新種と大きく異なる点はメガマウスがとてつもなくデカいということです。いくら神秘に満ちた海とはいえ、全長5mクラスのデカい生物が1970年代になって初めて浅い海で見つかったというのは衝撃的です。

さらに興味深いことに、最初の発見以降メガマウスは世界各地で記録されるようになりました。

論文記載された1983年の翌年にはカリフォルニアで漁獲され、そのあともオーストラリア、日本の静岡県で立て続けにメガマウスの姿が確認されました。

発見から相次いだメガマウスの捕獲または目撃事例

さらに1994年11月、福岡県の砂浜に座礁しているメガマウスが発見されます。これが世界で初めて確認された雌のメガマウスで、現在もマリンワールド海の中道に液浸標本が展示されています。

そのあともメガマウスの発見は続いていますが、依然として珍しくて良く分かっていないサメであることは間違いなく、未だに「幻の深海ザメ」的な扱いで人気が高い生物です。

メガマウスの生態は本当に謎だらけですが、発見が続くにつれて分かってきたこともあるので、この後はメガマウスの生態を解説します。

 

 

【何を食べているの?】
メガマウスはジンベエザメのようにフィルターフィーダー、つまり小さな生物を濾しとって食べる濾過食を行うサメです。メガマウスの胃の中からはこれまで小さなエビなどのプランクトンが見つかっています。

濾過食のサメは鰓にある鰓耙という突起物で獲物を濾しとって食べていますが、メガマウスの鰓にも鰓耙があります。

ジンベエザメやウバザメと比べると鰓耙の一本一本が大きくてなんかバスマットみたいですね笑。

メガマウスの食事で興味深いのは、彼らの上顎の骨や顎を前に押し出す筋肉が非常に発達していることです。そして喉の皮膚にはしわがあり、引っ張るとゴムのように伸び縮みします。

メガマウスの筋肉組織

これまでメガマウスの詳細な食事シーンが記録されたことはないですが、恐らく彼らはプランクトンの群れに口を開けて近づき、水圧で大きく広がった口に海水ごとプランクトンをおさめて、鰓で濾しとって食べるというような食事をしていると思われます。

メガマウスの捕食イメージ。

 

【ホットスポットはアジア?】
メガマウスは最初の発見以降、世界の熱帯、温帯地域で次々に確認されています。

特に捕獲数が多いのが日本、台湾、フィリピンなどです。

2004年末までのメガマウス捕獲報告。赤丸につき1件。これ以降も現在数々と報告されている。

これは必ずしもこの近くにメガマウスが沢山いるというわけではなく、メガマウスを混獲するような場所に定置網をしかける漁業がある地域なのでたまたま報告が多いだけかもしれません。いずれにしても日本にいればメガマウスに会えるチャンスは比較的高いと思います。

 

【深海ザメじゃない?】
メガマウスはテレビやネットなどで「深海ザメ」として取り上げられることが多いですが、果たして本当にそうでしょうか。

そもそも深海ザメという言葉の定義があいまいで生物学的にはっきりした概念ではないですが、仮に「一般的に深海と呼ばれる深さである水深200mより深みに主に生息しているサメ」とします。

メガマウスをトラッキング調査した結果、昼と夜で違う深さにいることが分かりました。メガマウスは夜は水深12~27mほどの表層にいて、昼になると水深120~160mに潜っているようです。

データ数が少ないのは否めませんが、少なくとも今わかるデータの限りでは「深海ザメ」って呼ぶには結構浅い場所を泳いでいるみたいです。

また、福岡で発見された雌のメガマウスの肝臓を調べたところ、メガマウスの肝油成分は表層性のサメと似ていることが明らかになりました。なお、うきぶくろのないサメにとって肝臓は浮力を調整するために大事な役割を果たします。

これだけでは結論を急げませんが、メガマウスを深海ザメとして紹介するのは、ちょっと考えものかもしれません。

 

 

【生殖について】
メガマウスの成熟サイズはこれまでの記録から恐らく4.5~5m程度だと思われます。

メガマウスは冒頭で話した通りネズミザメ目の仲間で、生殖器官の特徴もウバザメなどに似ていることから母胎依存型の卵食タイプ、つまりお腹の中で他の卵や兄弟を食べることで成長するサメだと思われます。

ただ、これまで2m以下の小さい個体が見つかったり、鴨川シーワールドで解剖された個体から卵殻が発見されたりはしていますが、妊娠したメガマウスが研究されたことはなく、はっきりしたことは分かっていません。

 

【地震を予知する?】
メガマウスやリュウグウノツカイなどの魚がよく表層に現れるのは地震の前触れだという都市伝説が人気で、オカルト好きがたまに話題にしたりしています。

これに関して勝手に盛り上がるのは自由ですが、偶然の一致の域を出ないというのが僕の考えです。

僕もメガマウスの出現と地震の関連性を強く主張する人のブログを読んだりしましたが、お粗末なこじつけと言わざるを得ません。

メガマウスの出現と地震の発生事例をひたすら並べて関連がありそうに見せかけていますが、よくよく見れば震度1や2の地震まで含めていたり、千葉県でのメガマウス出現と1か月後の大分県の地震を並べたりとイマイチ説得力に欠けます。日本はただでさえ地震が多い国で他国と比べたらメガマウスもよく獲れる場所なので、これくらいの偶然は起こり得ます。

さらに言えば、どれこれも相関関係を示そうと躍起ですが、因果関係を示せていません。「プレート移動で電気が発生し深海生物がそれを感じ取っている」という、さもそれっぽい説明が書かれていることもありますが、それによってメガマウスが浮上した(他の原因ではなく地震とする)根拠は何か、論理を展開できている人を見たことがありません。

電気、電磁場、などの言葉で単なるオカルトを装飾し立派に見せかけるのはニセ科学の常套手段です。因果関係がちゃんと説明されなければメガマウス地震予知は晴れ女とか血液型占いとかと同程度のニセ科学でしかありません。

 

 

【なぜ急に現れた?】
メガマウスは分からないことが多いサメですが、一番の謎は「何故急に発見されたか」かもしれません。

先述の通り、ここまで大きい動物が今まで全く発見されなかったというのは非常に不思議です。例えばホホジロザメとかジンベエザメなどは生態について分かっていないことは多くても存在自体は昔から知られていました。

大きい動物でも、系統学的に良く調べた結果「このグループとこのグループは別種でした!」という風に新種記載されることはあると思います。ただ、メガマウスのように今まで誰も見たことがない完全に新しい巨大生物が発見されるというのは相当珍しいケースです。

そしてさらに不思議なのは、一度漁獲されてから一斉に目撃され始めたことです。数が少なすぎて見つからなかったとしたら、何故どんどん見つかるのか。そしてなぜ今なのか。

 

これに関しては色々な説があります。

例えば、昔の人はメガマウスを知っていたけれど利用価値がないので捨てていたから記録されなかったというものです。メガマウスを食べたことがある人によれば、てんぷらや唐揚げ、ムニエルにしたメガマウスは全部水っぽくて不味かったらしいです。たしかに商用的な利用価値は低いと思います。

ここら辺の体験談などは下記の本を読むと参考になります(このブログのタネ本の一冊です)↓

 

あとは、カメラを持つ人が増えてテレビやネットが発達したので、それでメガマウスの報告事例が増えたのではないかという意見もあります。メガマウスが増えたのではなくて、メガマウスを記録して見つける人が増えたという説です。

ただ、個人的にこれらは微妙だと思います。

小さい魚ならともかく、メガマウスみたいに巨大な生物がこれまでに捕まっていれば、学術的にサメとして新種記載されるかはともかく、珍しいクジラか化け物の類としてなにかしらの記録に残っているのではないでしょうか。

この謎の真相は分かりませんが、長年サメの研究に携わってきた田中彰先生が興味深い仮説を紹介しています。

メガマウスが目撃されるようになったのは、これまでなんらかの形でメガマウスをおさえていた動物が減ったことが原因かもしれない、というものです。

メガマウスは巨大なサメなので天敵はそう多くないと思いますが、あまり素早いようにも思えないので、ホホジロザメやハクジラなどの動物が襲うこともあると思います。

また、メガマウスはプランクトンをたくさん食べるサメなので、同じくプランクトンを食べる巨大ザメのウバザメとは獲物を競い合う関係にあります。

ウバザメの標本。ジンベエザメに次ぐ2番目に大きな巨大ザメ。

 

ですが、ウバザメは乱獲されて各地で数を減らしてしまい、大型のサメやクジラも数の減少が心配されています。

これこそまだ証明されていないのであくまで推測ですが、クジラや大型のサメが人間によってどんどん数を減らしてしまい、結果的にメガマウスの個体数や行動パターンが変わって人間に目撃されるようになったのかもしれません。

この辺の話は下記の本で深堀されているので是非ご確認ください↓

 

メガマウスという魅力的なサメを知れたことは喜ばしいですが、彼らの出現が何を意味しているのか、僕たちの海は大丈夫なのか、そんなことを考えるうえでも、今後の研究や発見には注目していきたいです。

 

 

【まとめ】
メガマウスがまだまだ分からないことが多いサメですが、日本に住んでいれば触れ合うチャンスもあるかもしれません。

今回は深海ザメや地震予知など一般に出回っている内容を否定する記事になってしまいましたが、深海に住んでいなくて地震が予知できなくてもメガマウスが神秘に満ちたサメであることは変わらないので、これまで通り(あるいはこれまで以上に)メガマウスを愛してあげてください。

今後もサメの生態や環境イシューを紹介していきますのでよろしくお願いいたします!

 

 

【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

社会人として働きながら、サメの生態や環境問題などについて情報発信。主な発信分野はサメの生態、水産業、動物倫理、進化生物学など。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、Youtube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇、水族館ボランティアなどで活動。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

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