チョウザメはサメじゃない? キャビアを産む古代魚を解説!

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

サメ好きの方なら似たような経験があると思いますが、サメ好きだと周りの人に言うと、なぜかキャビアの話をされることが多々あります。

世界三大珍味キャビア

皆さん最近話題の「あつ森」でチョウザメを釣るついでに是非知っていただきたいのですが、チョウザメはサメではないです!

ただそれだけ言うのは少し雑な気もしますし「じゃあチョウザメって何?」と聞かれたときに応えられた方が良いと思うので、 今回はチョウザメとはどんな魚なのか、サメと何が違うのかなどを解説していきます。

 

目次:
【チョウザメはどんな魚?】
【サメと何が違う?】
【分類学上の違い】
【実は肉も美味しい】
【絶滅危惧種チョウザメ】

 

 

 

 

【チョウザメはどんな魚?】
チョウザメは見た目がこんな感じの魚です。

確かにシルエットがサメに見えなくもないです。具体的に言うと胸鰭を広げて泳ぐ、尾鰭の上下が違う長さ、吻先がやや尖っている、三角形かそれに近い背鰭があるなどの特徴がサメに似ています。

チョウザメとサメの共通点イメージ。

こうしてサメに見た目が似ていることと、体に一列に並ぶ鱗の形が蝶のように見えることから「チョウザメ」と名付けられました。

ただ、後に説明するように体の構造や分類学上全く違う動物です。あえて例えるならユニバとディズニーくらい違います。

チョウザメはチョウザメ目というグループの中でチョウザメ科とヘラチョウザメ科に分かれます。チョウザメ科というのは皆さんがイメージするこんな姿のチョウザメでシベリアチョウザメとかシロチョウザメなどが入ります。

ヘラチョウザメというのはこんな姿です。

須磨海浜水族園で撮影したヘラチョウザメ。

無理やりサメに例えるならノコギリザメとウバザメを合体させたような面白い見た目をしています。

もちろん種によって前後しますが、チョウザメの仲間はどれも成長すると2~3mかそれ以上の大きさになる大型魚で、寿命は数十年、あるいは百年以上生きるほど長生きです。

海に住むものと川に住むものがいますが、共通して河川で卵を産みます。そしてこの卵と言うのが世界三大珍味で皆さん大好きなキャビアです。

 

 

【サメと何が違う?】
先ほどチョウザメはサメに姿は似ているといいましたが、一体何が違うでしょう。ここでは分かりやすいポイントを3つ紹介します。それが鰓、歯、卵です。

まず鰓の形が違います。サメは体の側面に鰓孔がありますが、5~7本切れ込みを入れたような見た目をしています。もしあなたが何かの無茶ぶりで「サメの絵を書いて」と言われたら、どんなに絵が下手でもとりあえず横に5本線を書いておけばサメっぽくなります。

ツマグロというサメ。側面を見ると5つの切れ込みのような鰓孔が見える。

一方チョウザメの鰓はこんな風に鰓蓋に覆われています。

チョウザメの側面。鰓蓋に覆われている。

チョウザメ以外にもサメっぽいと思う魚がいたらこれを確認すればだいたいすぐに見分けがつきます。

 

次に歯があるかどうかという違いがあります。サメは食べるものに合わせて何かしらの歯を持っています。食事の際に歯を使わないジンベエザメにも歯があります。

 

ところがチョウザメの仲間は歯が一切ありません。だから噛まれても痛くないらしく、標津サーモン科学館という施設ではチョウザメに噛まれる体験を売りにしていたりします。

標津サーモン科学館の紹介はHP↓

チョウザメは多くが水底に潜むエビ・カニの仲間や貝類、淡水なら水棲昆虫を食べています(種によって異なります)。獲物を見つけたチョウザメは、口を飛び出させて掃除機みたいに吸い込んで食べます。

カニとか貝みたいな硬いものを噛まずに食べて大丈夫なのか不安になりますが、チョウザメは胃の末端に砂肝みたいな筋肉を持っていて、これで潰して吸収しやすくしているようです。

 

最後に紹介するのは卵の違いです。チョウザメの卵と言えばキャビアですね。黒い小さな粒で、スプーンに何個も乗るような大きさです。見た目がイクラみたいで「魚の卵」と言われても違和感ないですよね。

 

ではサメの方はどうかと言うと、サメ好きの方ならもうご存知だと思いますが、サメの卵は全く異なる形状をしています。

ナヌカザメの卵殻

種類によって様々ですが、基本的に手のひらに1個~数個乗るくらいのかなり大きなサイズをしています。形状もネジネジしていたりもじゃもじゃしていたり色々あります。また、主成分は僕たちの爪と同じケラチンなので割と硬いです。

卵の数もチョウザメとサメでは大きく異なります。チョウザメは一度に噴き出すような勢いですごい数の卵を産みますが、卵生のサメが産み落とす卵の数は一度に2個ほどです。

 

 

【分類学上の違い】
チョウザメがどういう風にサメと違うのか分かりやすいポイントを3つ紹介しましたが、もう少し踏み込んで根本的な話をします。

チョウザメは恐竜よりも前にこの地球上に現れた古代魚ですが、サメと大きく異なる進化の道筋をたどっています。

魚にあまり詳しくない人の認識だと、サメもチョウザメもマグロもシーラカンスも、全部「魚」という一括りのグループにまとめられがちです。

非魚好きの脳内イメージ

ですが、実際にはこのようになっています。

この図を一から説明すると長くなってしまうのでここでは端的に伝えます。

サメたちは骨格のほとんどが軟骨でできている軟骨魚類というグループですが、チョウザメはそれとは異なる硬骨魚類の仲間です。

ただし、マグロやタイなど、いわゆる「普通の魚」がいる真骨類ではなく、軟質魚類というグループにいます。硬骨魚類ではあるんですが、脊柱が軟骨でできているなど少し変わった特徴を持っているわけですね。

これを分かりやすく言うとユニバとディズニーくらい違うということになります。デカいテーマパークで大人気と言うのは同じですが、中身も起源も全く異なるわけですね。

 

 

【実は肉も美味しい】
チョウザメは先ほども触れた通り高級食材キャビアを産むので、多くの人が養殖に取り組んでいます。日本でも愛知、広島、長野、香川、茨城などなど、各地に養殖場があります。

チョウザメは成長するのに時間がかかりますが、15cm程度の大きさになれば安定して育つので、キャビアだけでなく魚肉も有効活用すべく育てられています。

ざっと調べてみましたが、刺身、かつ丼、しゃぶしゃぶ、パンケーキ、マリネなど本当に色んなチョウザメ料理がありました。

養殖用の交配も盛んで、例えば大きく育つオオチョウザメと肉が美味しいコチョウザメを掛け合わせたベステルが有名です。他にも企業ごとに交配種を育てたり製法にこだわったりしてブランド化を確立している業者も多いようです。

ベステルの幼魚

こうした産業的な需要があるので研究も盛んです。2019年に近畿大学が産まれてくるシベリアチョウザメをすべて雌化することに成功しました。

ニュース記事はこちら↓

これはキャビア生産において重要な意味を持ちます。

サメであればクラスパーという交尾器の有無ですぐにオスかメスか分かりますが、チョウザメはそうはいきません。

実際に腹を開いてから縫合したり超音波器で調べたり、雄雌を調べるのに結構手間がかかるんですね。

もし全部雌ならキャビアを沢山つくれますし、最初から雌だと分かっていれば確認のコストを省けるので、これが上手く実用化できれば安くキャビアが食べられるかもしれません。

 

【絶滅危惧種チョウザメ】
チョウザメは「古代魚」とか「高級食材」として紹介されることが多いので珍しい魚だと思いがちですが、実はかつては世界中に分布していて、日本でも北海道などに沢山いたことがあります。

しかし、残念ながらチョウザメの多くがキャビアや魚肉を目的にした乱獲やダム開発などによって各地で数を減らしてしまいました。今ではヨーロッパやアメリカなどのごく一部の生息域を除き、野生でほとんど見ることができません。

ついこの前の2019年12月に、中国の長江に生息する固有種のハシナガチョウザメが絶滅したと結論付ける論文が掲載されました。

ハシナガチョウザメに関するナショナルジオグラフィックの記事はこちら↓

約30種ほどのチョウザメの仲間は全てワシントン条約に記載されて取引が制限されています。先ほど紹介したように養殖の取り組みも盛んなので野生のチョウザメを捕まえなくてもキャビアを味わうことはできますが、キャビア目的の密漁が絶えないのもまた事実です。

ニホンウナギなどほかの生物にも言えますが、チョウザメは高級食材である前に野生動物です。この地球から神秘的な古代魚がこれ以上消えないように、チョウザメたちを守る必要があると思います。

 

 

今回の紹介はここまでになります。僕がサメ好きなのもあって今回はサメとの違いに重きを置いた紹介になりましたが、調べてみるとチョウザメも結構奥深くて面白いので、サメ好きの方もそうでない方もぜひチョウザメに注目してもらえればうれしいです。

今回の記事はYouTubeチャンネルで紹介した内容を加筆修正したものです。

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【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

社会人として働きながら、サメの生態や環境問題などについて情報発信。主な発信分野はサメの生態、水産業、動物倫理、進化生物学など。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、Youtube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇、水族館ボランティアなどで活動。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

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