絶滅危惧種が密猟&密輸?カワウソペット問題の闇を解説!

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

 

突然ですが皆さんに質問です。

「カワウソ」は好きですか?

多分だいたいの人が好きだと思います。めっちゃ可愛いですよね。

水族館でも超人気でゆるキャラとかスタンプとかなんか色々流行ってます。カワウソカフェに行ったことある人もいると思います。あるいはカワウソをペットにしたいなんて言う声もよく聞きます。

ただ今回お伝えしたいのは「カワウソを飼ってはならない」ということです。何故ならカワウソは絶滅危惧種であり、ペットに向かない動物であり、現在取引が禁止されているからです。

 

今回は「カワウソペット問題」とでも言うべき事象を解説していきます。この問題はコツメカワウソなどのカワウソたちがワシントン条約のCITES附属書Ⅰに記載されて終息するのかもしれませんが、カワウソに限らない日本の問題も見えてくると思います。

 

目次:
【絶滅危惧種カワウソ】
【カワウソペット問題とは】
【メディアの問題】
【そもそもペットに向かない】
【カワウソ規制の現在】

 

 

 

【絶滅危惧種カワウソ】
そもそもカワウソは絶滅が心配される動物なのでペットとして気軽に飼っていい動物ではないです。

ある生物がどれくらい絶滅の危機にいるかを示す指標としてIUCNレッドリストがあります。

このレッドリストの中で、カワウソの仲間はその多くが絶滅危惧種またはそこまでいかずともこのままでは絶滅危惧種になってしまう恐れがある状態という評価を受けています。代表的な種を挙げると以下の通りです。

生息環境である河川や海辺の開発や汚染、害獣駆除や毛皮売買のための乱獲などの理由で、カワウソたちは東南アジアなど各生息地で数を減らしてしまっています。

日本で最も人気でペットとして売り出されていたのはコツメカワウソだと思いますが、このコツメカワウソも数の減少が心配されていて、過去30年で野生の個体数が30%も減少したと推定されています。

希少な動物が過度に利用されて絶滅しないように守るためにワシントン条約というものがありますが、このワシントン条約でもすべてのカワウソ類が附属書に記載されて取引が制限されています。

 

 

【カワウソペット問題とは】
では何故そんな動物が日本でペットとして流行して、そして多くの人の手に渡ったのでしょうか。

カワウソの国際取引を規制するワシントン条約は附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲに分かれています。コツメカワウソなどのペットとして人気のカワウソたちは当時附属書Ⅱというリストに記載されていました。

附属書Ⅰに記載された動物の商業取引は禁止され、許可された学術目的の輸出入だけが認められます。対して、附属書Ⅱはお金がかかったり許可証は必要ですが、商業取引は認められています。

ざっくりまとめるとこのような感じです。

そもそもワシントン条約は過度な利用を防ぐための条約で、取引を全部禁止にしようというものではありません。

 

ここまで聞くと「だったらカワウソをペットにしてもいいじゃん」と思うかもしれませんが、ここに動物取引の闇があります。

基本的には許可された取引で東南アジアなどの国から日本国内の動物販売業者に輸入され、そこから動物園や水族館、カワウソカフェなどに流れるというルートです。

ところが、日本でペット需要があると悪人たちがそれに応えて儲けようとします。

商業取引ができるといっても申請には手間もお金もかかるし、ワシントン条約とは別に各国の規制があったりします。そこで、密猟したカワウソを密輸したり、野生で捕まえたカワウソを施設内で繁殖したものと偽って申請して輸出する事態が起きます。

現地では数千円ほどのカワウソの幼獣が日本で販売すれば100万円とかで取引されるので、かなりのお金がうごきます。

実際2015~2017年に東南アジアからの密輸で摘発・押収されたカワウソの約半数が日本いきでした。ペットブームで儲けようと犯罪に手を染めた連中がいたわけですね。

ここでさらに問題なのが、日本国内ではカワウソ取引が極めて不透明であり、いわゆるトレーサビリティが確立していないんですね。そのため、密輸だろうと虚偽申請だろうと、一度国内に入ってしまえばすべて合法的に取引し放題になってしまうのです。

 

まとめると、

1.元々個体数が減少していて安易にペットにするべきではないカワウソたちが日本国内に入ってペットやふれあい動物として人気になる。

2.カワウソ飼育者のSNSやマスメディアがカワウソの可愛い側面ばかり取り上げてブームを過熱させる。

3.それに応えようと密猟や違法取引がさらにはびこり野生のカワウソたちをさらに危機に追いやる。

この地獄絵図が「カワウソペット問題」です。

 

 

【メディアの問題】
こうしたカワウソペット問題の発端は複数あるかと思いますが、マスメディアが大きな役割を果たしたのは間違いないと思います。

ここでこちらのグラフをご覧ください。

横軸が2000~2017年までの年、縦軸がカワウソの頭数を表します。青い棒線がコツメカワウソの”一応正規に”輸入された個体数です(商業用・個人利用のみ)。そして紫の棒線は種類は混ぜていますが、密輸途中で押収されたコツメカワウソを含むカワウソの個体数です。

2009年あたりからコツメカワウソの商業取引数が一気に増加しています。密輸も2007年の2頭から始まり、そこから数が増えていっています。もちろんこれは摘発した事例なので、これ以上の数が密輸されている可能性もあります。

ではこの2009年あたりに何があったのでしょうか。

実は皆さんご存知のあの『天才!志村どうぶつ園』でカワウソが愛らしいペットのように取り上げられはじめたのがちょうど2007年ごろなんです。

この番組といえば幼いチンパンジーをあのように扱うのはどうなんだという議論や「動物と話せる女」などという明確なインチキをさも本物であるかのように見せるオカルト演出など色々と倫理的問題をはらむものでしたが、このカワウソペット問題でも需要を後押ししてしまったのは間違いないと思います。

もちろんこの番組だけが悪いわけではありません。カワウソ飼育者のSNSや他のテレビ番組も絶滅危惧種や密輸の問題に触れることがなく、「可愛い」「可愛い」ばかりが押し出されて「カワウソを飼ってもいい」という風潮が広まりました。

 

【そもそもペットに向かない】
カワウソは絶滅危惧種なのでペット扱いするのはいかがなものかという問題以前に、そもそもペットには向かない動物です。日本メディアで人気のコツメカワウソも飼育には相当苦労させられます。

どれくらい飼育が難しいのか端的に紹介します。

・鳴き声がかん高くてデカい。

・運動量がものすごくて遊ばせるのも大変

・毎日水浴びが必要で尋常じゃない水道代がかかる。しかも飼い主を含めいろんなもので体を拭きまくるから家はびちゃびちゃ。

・ウンチが水っぽくてめっちゃ臭い。

・噛む力が大型犬並みで歯が鋭い。丈夫なイヌ用の玩具も1日で破壊し、なついた後も大けがにつながるような噛み方をするときがある。

・手先が器用で運動能力も高いので脱走も得意。

・病気やけがの際にカワウソを扱える獣医が限られる。

いかがでしょうか。

これくらい飼育が大変な動物で、しかも10年以上生きる場合があります。実際に新江ノ島水族館の飼育員さんも飼育が大変だと強調するブログを書くくらいです。こちらもあわせて読んでみてください。

 

当たり前ですが、イヌやネコのように家畜化されていない時点でそもそも飼育に向いた動物ではありません。こういう動物の「可愛い」という側面だけを押し出すのはテレビにしろSNSにしろあまりにも無責任だと僕は考えます。

 

 

【カワウソ規制の現在】
このカワウソペット問題は2019年に大きく進展しました。

ワシントン条約の締結国会議にて、附属書Ⅱに記載されていたコツメカワウソとビロードカワウソを附属書Ⅰに掲載する案が8月に採択され、11月に発効しました。これによって国際的な商業取引は用途に関わらず禁止されます。

さらに日本では種の保存法に基づき、附属書Ⅰに記載された生物は国内取引も規制対象になるので、ようやくカワウソ取引が厳しく管理されることになりました。

僕としてはこれは歓迎すべき事態だと思いますが、これで全部解決したわけではありません。まだ懸念が残っています。3つにまとめると、価格高騰外来種他のペットの問題です。

 

<価格高騰>
今後新しく国内に入ってくることはなくても、すでに国内にいるカワウソや国内で繁殖した個体は申請をすれば取引が制度上可能です。

その際に、附属書Ⅰに記載されることで希少価値が必然的に上がっているので価格も高くなるはずです。これをこれを機に儲けようと密輸した個体を国内繁殖個体と偽って申請するような奴があらわれる恐れがあります。

現に2019年9月、つまり附属書Ⅰへの記載が決まってはいるがまだ効力がない時期にコツメカワウソの赤ちゃんを密輸しようした日本人が逮捕されています。

該当記事はコチラ↓

こういう連中を厳しく取り締まらなければなりません。

 

<外来種>
先ほど言ったようにカワウソは飼育が非常に大変なので「可愛い」というだけで安易に飼い始めた飼育者がコツメカワウソなどを捨てて外来種問題を起こす危険があります。

もともと日本はニホンカワウソを環境改変などで絶滅に追いやっているので恐らく住みにくいはずですし、コツメカワウソでは日本の冬を越せない可能性が高いです。

しかし、もし住み着いてしまえば在来の淡水魚を捕食したり伝染病を媒介するなどの危険があります。しかもカワウソはめちゃくちゃ可愛いので「カワウソを駆除するなんてかわいそう!」とか「元々カワウソがいたんだから外来種でもいいじゃないか」などの頓珍漢な擁護論が騒がれるのが目に見えています。そうなるとネコ問題並みに面倒くさいです。

 

<他のペット>
カワウソペット問題が終息しても、日本人のマインドやメディアの姿勢が変わらないと別の動物で似た問題が起きると思います。

「可愛い」とか「カッコいい」などのウケが良い側面だけがメディアやSNSで拡散され、絶滅危惧種や扱いにくい生物に対する需要が高まり、乱獲されたり捨てられたりなどの問題が起きるという構図です。

ここで問題なのが、カワウソを追い詰めている犯罪者やそれに加担する人たちはカワウソが特別好きだったり必要だから扱っているわけではないということです。

もしカワウソが好きとかカワウソが必要とかなら利用することはあっても絶滅させるようなことはしません。しかし、彼らはカワウソが絶滅すれば他で稼げばいいわけです。彼らにとって大事なのはお金であり、種の保存や生物多様性なんてどうでもいいと考えているはずです。非常に迷惑で腹立たしい話ですが、貧困問題などが絡んでいることもあり簡単に解決できないのが現状です。

 

以上のような三つの心配があるので、附属書Ⅰで国際商業取引がカワウソの禁止された後も油断できない状態だと僕は考えます。

カワウソペット問題は密猟や密輸をする人が悪いのはもちろんですが、安易な理由で需要を高めた日本にも責任があります。今回の例に限らず、生態系や現地の事情を考えずにエキゾチックペットを求めて絶滅の危険性を高めるようなことは絶対に避けなければなりません。

 

まして、日本は自国のカワウソを自らの手で絶滅させてしまっています。他国のカワウソの絶滅に手を貸すようなことがあれば人類として恥ずべき行為です。

 

あなたの「可愛い」がカワウソを滅ぼさないように、この問題に向き合って欲しいと思います。

 

※今回の記事はこちらの動画でお話しした内容をもとに加筆修正を加えたものです。YouTubeでの情報発信も行っておりますのでよろしくお願いいたします。

 

【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

社会人として働きながら、サメの生態や環境問題などについて情報発信。主な発信分野はサメの生態、水産業、動物倫理、進化生物学など。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、Youtube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇、水族館ボランティアなどで活動。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

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