おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!
今回はサメではないサメというテーマでお話ししていきます。
実は世界にはサメと名がつくけれども厳密にはサメではない生物というのがいます。
以前にもチョウザメやギンザメという魚の紹介をしました。詳しくは前の記事かYouTube動画を見ていただきたいですが、この子たちはサメではありません。
そして今回紹介するのはサメと勘違いされるランキングでチョウザメと肩を並べるこの子、コバンザメです。コバンザメもサメではありません。
ではコバンザメとは何者なのか?
解説していきますのでよろしくお願いいたします。
目次:
【コバンザメはサメじゃない】
【小判の秘密】
【実は迷惑な存在?】
【コバンザメはサメじゃない】
コバンザメはサメではありません。
「ならば何者なのか?」となりますが、まずはコチラをご覧ください。

こちらチョウザメの解説でも出した絵ですが、非魚好きの方の頭の中をイメージしています。サメもマグロもチョウザメもシーラカンスも全部「魚」で一緒くたにされることが多いです。
ですが、実際はこれくらい細かくなっています。
僕たち陸上の脊椎動物につながっていった肉鰭類や、サメの仲間の軟骨魚類など「魚」でまとめられがちな動物たちには色々なグループがあります。
そしてサメたちは軟骨魚類という普通の魚とは全く異なるグループに属しています。骨格のほとんどが糖たんぱく質が主成分の軟骨で出来ています。
今回の主役であるコバンザメはどこにいるかというと真骨類、つまり、普段多くの人が「普通の魚」と呼んでいるタイとかマグロなどと同じ硬骨魚類のグループにいる、サメとはかけ離れた魚なんです。
より細かく言えばスズキ目コバンザメ科というグループにいて、一番有名なコバンザメ以外にもシロコバンやクロコバンなど複数の仲間がいます(コバンザメ科の中でコバンザメ属、ナガコバン属などに分かれます)。
サメと名がついた理由は諸説ありますが、サメなどの大きさな魚にくっついて泳いでいることから「サメ」という名前がついてしまったと思われます。
【小判の秘密】
コバンザメは漢字で書くと「小判鮫」になります。この小判というのが頭についている吸盤の部分です。確かに小判に見えますね。
この小判はもともと背鰭だったものが変形してできたもので、これでサメやクジラ、カメなどの大型動物にくっついて生活します。
小判の内側のひだみたいな部分がくっつく時に立ち上がって、陰圧を生みます。その圧力でピタッとくっつくわけです。
ちなみにこの小判がある側がアゴだと勘違いしている人がたまにいますが、こちらは頭側です。それを認識したうえで見直すと、かなりしゃくれた顔であることが分かると思います笑。

この小判の吸着力がかなり強力で、特に前からの圧力や後ろに引っ張る力に強いです。
大きな動物は基本的に早く泳ぐのですごい水圧が前からかかります。そんな状態でも剥がれないようにうまくできているんですね。

そんなコバンザメなのでこんなこともできます。
こちらは扉にコバンザメの仲間を貼りつけてみたときの写真です。結構な時間くっついたままで落下しなかったです。死んだ後も吸着力は残っているようです。
ちなみに人に貼り付けることもできますが旨く剥がさないと痛いらしいので良い子はマネしないでください笑。
【実は迷惑な存在?】
コバンザメは単独で泳ぐこともありますが、この小判で自分より大きな動物に貼りついて過ごすことがあります。
張り付いて過ごすとコバンザメにとっては様々なメリットがあります。
・泳ぐエネルギーを節約できる
・敵から身を守れる
・食べ残しや糞を食べられる
こんな風にコバンザメは貼りつき生活でメリットを得ているのですが、張り付かれる方はどうかというとむしろデメリットが大きいようです。
コバンザメが皮膚や鰓についている寄生虫を食べてくれるという説もありますが、一般には邪魔ものとされています。理由としては
・泳ぐ際に抵抗が増すから貼りつかれると邪魔
・コバンザメを振り落とそうと水面からジャンプするサメやクジラが確認されている
・コバンザメがとれたあと皮膚が剥がれて炎症を起こす魚がいたらしい
などなどですね。
このようにどちらか一方が得をしているような生物同士の関係を片利共生と呼びます。寄生と呼ぶほどの被害をもたらしてはいないと思いますが、支え合っているというよりコバンザメだけが美味しいポジションにいる感じです。
今回は以上になります。今後も海洋生物の面白い生態や環境問題などを解説していきますので、引き続きよろしくお願いいたします!
※今回の記事はYouTubeに投稿した動画内容を加筆編集したものです。
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【Writer Profile】
サメ社会学者Ricky
1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。
社会人として働きながら、サメの生態や環境問題などについて情報発信。主な発信分野はサメの生態、水産業、動物倫理、進化など。
本HP『World of Sharks』での運営のほか、Youtube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇、水族館ボランティアなどで活動。
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