ワシントン条約(CITES)を解説!

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

先日レッドリストというものについて解説をしましたが、それと同時に絶滅危惧種について話すうえでよく聞く言葉として「ワシントン条約」というものがあります。

生き物好き、特に絶滅危惧種に関心のある方なら知っておくべき言葉だと思うので、今回はワシントン条約について簡単に解説していきます。

 

目次:
【ワシントン条約とは?】
【附属書って何?】
【よくある3つの誤解】

 

【ワシントン条約とは?】
ワシントン条約の正式名称は「Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora」と言います。長いですね笑。

「日本語で言えば「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」です。長いですね(2回目)。

基本的には採択された場所にちなんでワシントン条約と呼ばれるか、正式名称の頭文字をとってCITES(サイテスまたはサイティーズ)と呼ばれます。

人によってワシントン条約と言ったりCITESと言ったりして、僕も紹介する際に混じってしまうことがありますが、同じ条約の話をしているので混乱しないようにお願いします。

条約の目的としては先ほどの名前の通り、国際取引を通して過度に利用されて生物が絶滅してしまうのを防ぐための条約です。

言うまでもなく僕たちは国と国との間でいろんな商品をやり取りしています。その中には動植物や彼らを使った加工品が含まれます。例えばエキゾチックペットや食料品、皮製品、漢方薬などです。

また、今は減ったと思いますが、かつては欧米の人たちが狩猟した動物の頭や皮をトロフィーとして持ち帰る習慣がありました。

そうした取引やトロフィーをだれでも自由にできるままだと、儲かるから・欲しいからという理由で際限なく希少な生物が乱獲されてやがて絶滅してしまうこともあります。

そうしたことが起きないように制限をかけるのがワシントン条約です。

 

ワシントン条約の締結国は183の国と地域(2019年11月現在)におよび1975年に採択されました。日本は1980年に締結を承認しています。

締結国である国々は3年に1回くらいの頻度で締結国会議と呼ばれる会議を開いていて、これから説明する附属書という規制対象種のリストに新たに種を加えるのか、記載を変えるのかどうかという話し合いを行います。

 

 

【附属書って何?】
ワシントン条約には附属書というものがあります。この附属書はⅠ・Ⅱ・Ⅲに分かれているリストで、規制対象となる生物種が掲載されています。

どの附属書に掲載されるかで規制の内容が変わってきます。以前カワウソペット問題の解説でも少し紹介しましたが、もう少し細かく見ていきましょう。

附属書Ⅰに掲載されると一番厳しく規制され、商業取引は禁止になります。学術目的の取引は認められていますが、それについても輸出国・輸入国双方の許可証が必要になります。ここにはオラウータン、ゴリラ、ジャイアントパンダなど個体数や生息域が限られていて絶滅が特に心配される生物たちが入り、最近だとコツメカワウソもここに入りました。

 

附属書Ⅱに掲載された場合は商業取引が認められていますが、こちらも輸出国からの許可証が必要になります。附属書Ⅰに入るほどではないけどこのまま放置すると深刻な状況になりそうな生物たちがここに入ります。有名なものだとライオンやホッキョクグマなどが入ります。サメでいえばホホジロザメ、ジンベエザメ、シュモクザメの仲間など有名なサメたちもこの附属書Ⅱに入っています。

 

附属書Ⅲは締結国がその種を守るために国際的な協力が必要だと考えた場合に種を掲載します。こちらも輸出国政府の発行する輸出許可書または原産地証明書等の書類が必要になります。セイウチやワニガメがこのリストに入っています。

 

この附属書に載っている生物は死体や加工品でも対象になります。

例えば別の締結国でホホジロザメの歯を手に入れて許可証を得ずに国外に持ち出したりするのはご法度です(ホホジロザメは附属書Ⅱに掲載種)。こうした理由からフカヒレの国際取引も制限されています。

ちなみに、この附属書のリストですが、1種が複数のリストにまたがっていることもあります。例えばアフリカゾウは基本附属書Ⅰですが、一部地域の個体群は附属書Ⅱに入っています。この辺はややこしいので経済産業省がHPで出している附属書を直に確認することをお勧めします。

ワシントン条約について(条約全文、付属書、締約国など)↓

 

 

【よくある3つの誤解】
ワシントン条約について何となくわかったと思いますが、ここでメディアやネット議論でたまに見受けられるワシントン条約に関する誤解を解いていきたいと思います。

<誤解①:取引を禁止する条約>
これは間違いです。ワシントン条約は過度な利用から生物を守るための条約であり、何でもかんでも禁止しようというものではありません。

確かに附属書Ⅰに記載されればほとんどの取引は禁止されますし、場合によりそうした方がいいこともあります。ですが、取引をある程度許すことで現地の人が経済的利益を得て、それが保全活動の動機づけになるようなケースもあります。

ワシントン条約に記載されているから取引してはいけないとか、なんでもかんでも附属書Ⅰに記載すればいいとかそういう話ではありません。

 

<誤解②:絶滅危惧種が載っているリストである>
これも厳密には違います。たしかにワシントン条約は絶滅から生物を守るためのものなので附属書にはたくさんの絶滅危惧種が載っていますが、あくまで国際取引によって過度に利用されることを防ぐための条約です。

そのため、絶滅危惧種でも商業的な価値がなくて国際取引されないような生物は附属書に記載されていません。

また逆に、絶滅危惧種ではないにもかからず掲載されることもあります。附属書に掲載されている種と見た目が似ていて、税関で取り締まる際に区別が難しい生物が記載されるケースがこれに当てはまります。条約を効果的に運用するためですね。「実は別種だから」とか誤魔化して密輸するのもアウトというわけです。

強いて絶滅危惧種のリストに近いもの挙げるとするならレッドリストです(前回のブログで紹介した通り厳密には違います)。

ただ、絶滅危惧種かどうかの評価をしているIUCNレッドリストで絶滅の危険があると判断された種がワシントン条約にも掲載されて規制されるというケースはあると思います。

アオザメ(Isurus oxyrinchus)。IUCNレッドリストでENに評価されたのちにワシントン条約附属書Ⅱに掲載されました。

 

<誤解③:ワシントン条約に掲載されているものを無許可に扱うのは犯罪>
ケースバイケースですがこれも必ずしもイエスではありません。あくまで国際取引の規制なので、国内で扱うことに関しては規制されていません。

例えばホホジロザメはCITES附属書Ⅱに記載されていますが、茨城県とか三重県沖とかで漁獲されたホホジロザメを国内で僕が買い取る分には特にCITESは絡んできません(輸送費とかの問題で買いませんが笑)。

ワシントン条約で規制されている絶滅危惧種が国内で普通に取引されていることがあるのはこれが理由です。

 

ただし、日本には「種の保存法」と呼ばれる法律があり、CITES附属書Ⅰに掲載された生物は規制対象になります。恐らく締結国それぞれにこのような対応する法律があると思うので、取り扱いについては事前によく確認しておいた方が良いと思います。

 

以上がワシントン条約の解説でした。かなり簡単に紹介しただけですが、絶滅危惧種に関するニュースの理解度が高まってくれると嬉しいです。

 

このブログでは生き物好きなら関心がある、というか関心を持つべきテーマを幅広く扱う予定ですので、引き続きよろしくお願いいたします!

 

※今回の記事はこちらの動画でお話しした内容をもとに加筆修正を加えたものです。YouTubeでの情報発信も行っておりますのでよろしくお願いいたします。

 

【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

社会人として働きながら、サメの生態や環境問題などについて情報発信。主な発信分野はサメの生態、水産業、動物倫理、進化など。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、Youtube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇、水族館ボランティアなどで活動。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です