【乱獲】【密漁】【闇流通】闇が深すぎる絶滅危惧種、ウナギ問題を徹底解説!

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

今回は日本人なら知っておくべき絶滅危惧種についてお話しします。

その生物というのがウナギです。

今もファーストフード店でうな丼が気軽に買えるのでウナギが絶滅危惧種という認識が薄い人も多いと思いますが、ウナギ問題は以前に紹介したカワウソペット問題以上に深刻な闇を抱えています。

今回はそんな絶滅危惧種ウナギについて解説していきますのでよろしくお願いいたします!

 

目次:
【絶滅危惧種ウナギ】
【他国のウナギは使えないのか】
【ウナギの放流は逆効果?】
【養殖ウナギは解決策ではない】
【ウナギビジネスは闇だらけ】
【あとがきにかえて注意喚起】

 

【絶滅危惧種ウナギ】
ウナギと呼ばれる魚は世界に複数種いますが、今回メインでご紹介するのはニホンウナギ(Anguilla japonicaです。

ウナギ問題を解説する前に、前提知識としてニホンウナギという魚の生態をざっくりと解説します。

ウナギと言えば川の魚のイメージがあるかもしれませんが、実は川と海を行き来する回遊魚です。

ニホンウナギは川で成長し、成熟したメスは銀ウナギと呼ばれます。この銀ウナギが海に下ってはるか遠くのマリアナ諸島で卵を産みます。産卵された卵が孵化するとレプトセファルス(レプトケファルスとも言う)という葉っぱのような形状に成長します。そのまま海流に流されて東アジアに到着すると、シラスウナギという透明で細いウナギっぽい形状になり、河川にのぼります。そこで黄ウナギと呼ばれる成魚の状態にまで成長し、先ほどのサイクルを繰り返します。

ニホンウナギの回遊イメージ

このニホンウナギはご存知のように蒲焼などの料理で日本人に親しまれていますが、今深刻な危機にあります。

以前に別の記事で解説しましたが、ある動物がどれくらい絶滅の危機にあるかの指標として、専門家の評価がまとまったIUCNレッドリストというものがあります。

レッドリストの簡単解説はこちら↓

このレッドリストにおいてニホンウナギはEN、つまり絶滅の危険にあるという評価を受けています。評価だけで言えばジャイアントパンダよりも危機にあり、ラッコやレッサーパンダと同じくらい心配されている動物ということです。

ウナギは成長段階によって回遊するし生態もいまだ謎が多い魚なので、正確な資源量の把握は現在難しいです。しかし、ここ最近の漁獲量が著しく減っており、資源状態が深刻である可能性が高いです。

こちらは水産庁がウナギに関する資料で出しているデータを基に作成したグラフです。シラスウナギ、つまり養殖に使う(後述)稚魚の漁獲量を表しています。

昭和32年、つまり1957年に200トン以上採れていたものが急激な右肩下がりで数が減っていっているのが分かります。平成9年(1997年)では12トンほどにまで減少してしまっています。

もちろん採れた量=生息数ではないですが、この減り方には危機感を覚えざるを得ません。

より最近の情報ですと、2018年に岡山県で行われた調査があります。漁師さん一人当たりのウナギの漁獲量を沿岸域で調べてみると、最近の14年間で80%も減少していることが明らかになりました。

全体の漁獲量であれば「漁師さんが減った」などの理由でも減る可能性がありますが、漁業者一人当たりの漁獲量は漁業者の数に影響されません。岡山県だけのデータなので確証はないですが、ウナギは親と同じ川に戻るわけではなく分散して東アジアに戻るため、岡山県での減少が他でも起きている可能性は十分に考えられます。

ちなみにIUCNとは別に日本の環境省も独自のレッドリストを持っていますが、環境省も2013年にニホンウナギを絶滅危惧種として選定しました。漁獲量から推定される3世代の減少率が7~9割であり、その減少している個体群が産卵に寄与するものと判明したためです。

たまにニュースで「今年のウナギは豊漁」などと報道されることがありますが、短いスパンで見た際のわずかな上昇を指して言っているにすぎません。印象操作なのか本当に無知なのか、いずれにしても納得できない取り上げ方だと感じます。

ウナギ「豊漁」ニュースのイメージ図。短期間での比較であれば豊漁かもしれないが、長い目で見てもそう言えるでしょうか。

 

ニホンウナギの減少には乱獲だけではなく海洋環境の変化や生息地である河川の開発も影響していると思われますが、いずれにしても数が減っている可能性が高いのであれば然るべき規制を行うべきです。海洋環境はまだしも、生息地開発がウナギたちに影響しているならば、漁獲圧を過剰にかけることはさらに彼らを追い込むことになります。

ですが、科学的な知見に基づいたシラスウナギの漁獲の上限は設定されていないのが現状です。

 

ニホンウナギは日本だけでなく中国・台湾・韓国にも生息しているので、4か国が話し合って養殖池にどれくらいシラスウナギを利用していいか取り決めが行われています。

ここで決まった上限というのが各国合計78.8トンなのですが、各年の実績は40トンほどで半分くらいしか採られていません。

そもそもこの上限自体が科学的なデータに基づいたものではなく、採り切れないような数値が設定されています。つまり、上限とは名ばかりで実質採り放題になってしまっているんです。

日本では各都府県知事が特別に許可した場合にのみシラスウナギの採捕が許可されていますが、全国レベルでの規制は行われていません。また、あとで述べる通り密漁が横行していて、まともな資源管理ができているとは言えない状態です。

ここまで状況が深刻なウナギ問題に対し、規制以外にもいくつかの解決策が提示されています。

・他国のウナギで需要を満たす

・ウナギを放流して増やす

・養殖で消費を補う

しかし、これらの策はどれも大きな問題があります。順番に見ていきましょう。

 

 

【他国のウナギは使えないのか】
まず他国のウナギ、俗に異種ウナギと呼ばれるもので代用しようという案ですが、これには賛成できません。何故なら、すでに日本は他国のウナギを大量消費して絶滅の危機に追いやっているからです。

そもそもなぜ絶滅危惧種で元々高級魚だったウナギがファーストフード店で食べられるくらい安く大量に出回ったのでしょうか。

実は1980年代ごろにヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla)という別種のウナギが中国で養殖され、それが安価に大量に日本に輸出されました。これがきっかけでウナギの値段が下がり、それまで「ハレの日に食べる高級食材」だったはずのウナギが一気に大衆化したんです。

では、そのヨーロッパウナギがどうなったかと言えば、現在IUCNでCR、つまりニホンウナギよりも深刻な絶滅の一歩手前という評価を受けてしまい、ワシントン条約附属書Ⅱに記載されています。附属書Ⅱへの記載なので国際取引はまだできるのですが、EUは2010年にワシントン条約とは関係なく取引禁止措置を実施しています。持続可能な利用はもはや不可能と判断されているのです。

ここまで追い込んだのが日本人だけのせいだとは思いませんが、日本の需要が影響したことは間違いありません。

ヨーロッパウナギがダメになりニホンウナギも絶滅危惧種なので、ウナギを販売する側はビカーラ種と呼ばれる別のウナギに手を出し始めています。ですが、ビカーラ種はニホンウナギ以上に複数の国に生息域がまたがっており、適切な資源管理の仕組みができていません。

資源管理の体制が確立できていない魚で日本の需要を満たそうとすれば、こちらも食いつくしてしまうのは目に見えています。

「ウナギは日本の食文化」という話はよく聞きますが、自国の資源管理もろくにできず他国の魚まで食い漁るのを「食文化」で正当化できるでしょうか。そもそもウナギに対する需要が正しいものなのか、僕たちはきちんと考え直すときが来ていると思います。

 

 

【ウナギの放流は逆効果?】
企業努力や地域の取り組みとしてウナギの放流が取り上げられることがありますが、これも懐疑的に見るべきです。

放流によってウナギの個体数が増加するという科学的な根拠がなく、多くの場合効果が一般に想像されるほど期待できません。

また、放流がむしろ事態が悪化させるかもしれません。放流されるウナギを通して自然環境に病原体が広がり、もともといるウナギたちに深刻な悪影響を与える危険性があります。

さらに、先ほど取り上げた異種ウナギの一部は外見がニホンウナギと非常に似ているため、誤って異種ウナギを日本の河川に放流して外来種問題を引き起こすことがあります。

現に新潟県の河川や東シナ海で、本来いるはずのないヨーロッパウナギが確認されています。すでに異種ウナギや放流の悪影響は出てしまっているんです。

このように問題のある放流行為を効果のある良いこととして過剰に称賛することは「放流しているんだから食いまくってもいいよね」というような風潮を生みだしかねません。子供に環境教育の一環として行っているところもあるようですが、それはもはやニセ科学であり、EM菌に並ぶ害悪でしかありません。

もし養鰻業者や小売業者が企業努力としてウナギ放流を広報していた場合、それは科学的な知見に基づいたものなのか、よく確認した方が良いと思います。

 

 

 

【養殖ウナギは解決策ではない】
現在日本に出回っているウナギのほとんどが養殖されたものです。「え、なら食べて大丈夫じゃん」と思うかもしれませんが、これは完全養殖ではないんです。

現在ニホンウナギは卵の段階から成魚まで育てるのが非常に困難であり、売り物として出回っている「養殖ウナギ」は全て野生のシラスウナギを捕まえて育てたものなんです。つまり野生個体に依存した養殖なので、当然過剰に消費すれば野生個体が減少してしまいます。

もちろんウナギは需要がある魚なので完全養殖の研究が長年行われてきました。確かに完全養殖は可能なのですが、商業的なニーズを満たすには程遠いのが現状です。

どれくらい完全養殖が大変なのかざっくりと述べます。

・飼育下でなかなか産卵しない

・どうにか産ませてもオスばっかり生まれてきて性転換もしない

・産んだ卵も半分以上は孵化しない

・やっと育ったレプトセファルスは相当な偏食家でサメの卵を使った特殊な飼料など限られた餌しか食べない

・水質変化に弱いため餌やりごとに水を替えるなど手間がかかる

 

現在研究が進みサメ卵を使わない飼料の開発が行われるなど進展はあるようですが、年間5トン近くある日本国内の需要を満たすには資金・人手・施設のキャパシティーどれをとっても不十分です。

現段階で完全養殖したものを販売しようとしても市場に出回っているものよりもかなり高額になってしまい、完全養殖でウナギ問題を解決するというのは当面現実的ではありません。

 

 

【ウナギビジネスは闇だらけ】
ウナギ問題における最大の闇が密漁や密輸など反社会勢力の暗躍です。

ここで僕が言う反社会勢力というのは暴力団だけではなく、犯罪に積極的に手を染める一部の漁業者や密漁者など全員を指します。生態系という社会基盤に身勝手な理由で害をなしている時点で「反社会」というカテゴリーがお似合いです。

とにかく、絶滅危惧種でありながらウナギに対する需要が絶えない日本では、シラスウナギの単価がキロ何百万円という単位にまで跳ね上がっており、儲けを狙った違法行為が横行しています。しかもウナギ業界もその恩恵にあずかるという異常事態が平気でまかり通っているんです。

例えば2015年に採取業者から報告されたシラスウナギの量は5.7トンでしたが、養殖に利用された量から算出された採捕量(養殖池に入った量-輸入量)は15.3トンでした。つまり、出所の分からない怪しいシラスウナギが9.6トンもあるということです。

約6割が密漁や無報告の漁獲という悪行によるものであるはずなのに、多くの養殖業者は平然とそのウナギを合法的なウナギと一緒に育て流通に乗せているんです。

さらに、海外から輸入されてくるシラスウナギのほとんどが香港からですが、香港にはシラスウナギが遡上するような大きな川はありません。実は香港から輸出されるシラスウナギは禁輸をしている台湾から密輸されたものと言われています。これはいわゆる業界の「公然の秘密」であり、輸入する日本の業者も知ったうえで取り扱っています。

こうした事情を考慮してみてみると、市場に出回っている約半分以上が密漁や密輸などの犯罪を経由していることになります。値段の高い安いに関係なく、反社会的な連中が扱ったウナギが普通に売られているんです。

 

ここまで真っ黒なので当然ウナギ研究者や水産庁はこうした反社会勢力の関与を認めていますが、まともな対策がとられていません。

極めつけは2017年に「みなと新聞」に掲載された記事です。

該当の記事はコチラ↓

ここで注目すべきは、シラスウナギの闇流通について取材に応じた水産庁担当者のコメントです。

「非正規流通のシラスも、最終的には必ず養殖池に入る。今ある池入れ量規制で、シラスの採捕量も制御できる」

お笑い種とはまさにこれのことを指します。養殖池におりているシラスウナギの6割以上もの出所も管理できていないのに「採取量を制御できる」はアンポンタンの極みです。これが水産庁全体の意向だと信じたくはないですが、もう少しマシな対策を考えていただきたいと強くここで申し上げておきます。

 

ちょっと話が大きくなってきたので僕なりにウナギの闇をまとめます。

・シラスウナギで儲けようとする暴力団や強欲な漁業者などの反社会勢力が密漁や密輸をはたらいています

・行政は過剰な漁獲や犯罪行為へのろくな規制ができていません

・これにより真面目な漁業者さんがウナギの資源量を心配しても「俺が我慢しても他が採る」という風になり自主規制ははたらきません

・違法なウナギが混じっていると知りながら養殖業者は一緒くたに育ててしまいます

・食品・小売業界もそうした違法ウナギを平気で売りさばきます

・メディアはウナギの「豊漁(笑)」を称賛したり異種ウナギを救世主として紹介します

・ウナギの問題を取り上げても「絶滅危惧種とか関係ない」・「規制される前に食う」という品性と知性に欠いた消費者が食い漁ります

これが地獄絵図でないならなんでしょうか。もちろん問題を認識している人は研究者、水産庁、漁師、一般消費者、あらゆる分野にいるのでひとまとめに批判したくはないですが、はっきり言ってウナギ界隈は絶望的な状況に見えます。

 

ちなみに今取り上げたような人たちの一部はウナギの規制について「データ不足なのに絶滅危惧種だと大袈裟に取り上げるな」などと反論することがあります。言いたいことは分かりますが、そもそも密漁や闇取引が多すぎるせいで正確な漁獲量や漁獲努力量などのデータが把握できないという事情もあります。そして限られたデータや関係者の知見は激減を示しています。ここまで乱獲と違法行為がまかり通った業界という時点ですでに大袈裟どころの騒ぎではなく終わっています。

あと「食文化を守るのも大事だからウナギ業界を批判するな」とテンプレの批判をときどき頂きますが、肝心のウナギが絶滅してしまっては食文化を守れません。さらに言えばウナギは食材の前に河川や海の生態系を支える野生動物であるため、例え業界や食文化が滅びても彼らを守る必要があります。

そもそも非合法なものが半分以上も紛れ込んでいる商品を扱っておいて「食文化を守ろう」と胸を張って言えるものでしょうか。

 

ここまで読んでくださったあなたに改めて聞きます。

「あなたはウナギを食べようと思いますか?」

 

 

【あとがきにかえて注意喚起】
以上がウナギ問題の解説でした。

最後に注意喚起すると、今回の話はデータ不足であることを理由にちゃんとした関係者の方ほど大きな声を上げられないという風潮がある気がしたので、少し強めに出ています。

ウナギ問題は非常に深刻なので正当な批判の声はあげるべきですが、ウナギを消費する人や販売業者を見境なく誹謗中傷するのは控えた方が良いと思います(例の水産庁のコメントがアンポンタンなのと絶滅危惧種を食べまくる消費者に品性と知性がないことは当然の判断という認識です)。

ウナギの大量消費は「食文化」で正当化できる域を超えていると思いますが、同時に食文化として愛されているからこそ保護しよう、研究しようという機運が生まれるという側面もあります。

そうした事情もあるのでこの記事を読んだうえでのアクションは強制しません。

資源が回復するまで一切食べないのか?

合法的なウナギを扱う業者を探してそこのウナギだけを食べるのか?

研究者の啓発を拡散するのか?

取り組み方は任せますが、この記事を読んで何かしら行動を変えていただければ幸いです。

よりウナギ問題について関心のある方は以下の書籍・HPがおススメです。今回お話しした内容に出てくる調査内容、数値、業界人の話などは主に以下をもとにしておりますので、裏をとりたいという方も下記をご参照ください。

『うな丼の未来 ウナギの持続的利用は可能か』

『結局,ウナギは食べていいのか問題』

『サカナとヤクザ ~暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う~』

Kaifu Lab 中央大学法学部/ウナギ保全研究ユニット(HP)

 

※今回の記事はこちらの動画でお話しした内容をもとに加筆修正を加えたものです。YouTubeでの情報発信も行っておりますのでよろしくお願いいたします。

 

 

【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

社会人として働きながら、サメの生態や環境問題などについて情報発信。主な発信分野はサメの生態、水産業、動物倫理、進化など。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇、水族館ボランティアなどで活動。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です