「サメは頭いいの?」という質問にサメ好きがマジで回答してみた!

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

皆さんも何か自分の専門分野について質問されるとき、マニアックなものより子供とかから飛んでくる素朴な疑問の方が答えづらいなんてことがあると思います。

サメ好きの僕もいろんな質問を頂くのですが、「サメは頭がいいの?」という質問はわりと答えづらかったりします・・・。

今回はそんな素朴かつ厄介な「サメは頭がいいの?」という疑問を解説していきます!

目次:
【サメの頭はいいの?】
【サメの知能実験】
【動物の知能という問題】
【あとがきにかえて】

 

【サメの頭はいいの?】
「動物の知能とは?」という非常にややこしい問題はいったん脇に置いておいて、サメの感覚や俗にいう「頭の良さ」についてまずは掘り下げていきます。

「サメは頭がいいのか?」と問われたときの回答としては「はっきりとは分かっていないけど、世間で思われているよりは頭がいい気がします」が一番無難だと思います。

一般的にサメは血の臭いを嗅いだら暴れだす殺人マシーンのような結構ひどい印象があると思いますが、実際にはそんな単純な生き物ではないです。

では、まずサメの脳を見ていきましょう。

こちらが頭骨から取り出されたシュモクザメの脳みそです。水族館でもあまり見られない写真だと思ったのでアップしてみましたが、細部が分かりにくいと思うので大雑把に図解しました。

サメの脳というのはこんな形をしています。詳細な部位の解説は今回省きますが、この脳は聴覚、側線、嗅覚、視覚、ロレンチーニ器官など様々な感覚器官の中枢になっています。

ではそんなサメたちの脳は一体どれくらいの大きさがあるでしょうか。

脳が大きいというだけだと体が大きい生物が有利になってしまうので、体重に対する脳の比率でみていきます。そうすると、サメは鳥類や一部の哺乳類と同じくらい大きな脳を持っていることが分かります。

『サメ・ウォッチング』に掲載されたグラフをもとに作成。

脳が大きければ頭がいいというわけではないですが、こういう事実を知ると、そこまで単純な生き物ではないという感じがしてきます。

ちなみに一応言っておきますが、サメにより脳の大きさも違いますし、感覚器の敏感さなど能力も異なると思います。

以前、東海大学の博物館で3mほどのヨシキリザメの脳みそが液浸標本になって展示されていたのですが、別の場所にあったメガマウスの脳みそより大きかったんですね。メガマウスの方が体自体は大きいのに、脳みそは小さかったわけです笑。

ヨシキリザメの脳みそ。見た目が完全に『エイリアン』のフェイスハガー笑。
メガマウスの脳みそ。小っちゃい・・・。

これだけでメガマウスがアホだとかそういう話ではないんですが、例えば鯨類だとプランクトンを豪快に食べるヒゲクジラより魚などの獲物を追いかけて食べるハクジラの仲間の方が脳重量比が高いらしいです。

もしかしたらサメたちの中でも、プランクトン食の大きなサメたちより外洋やサンゴ礁で魚を追いかけているサメたちの方が複雑な行動ができるのかもしれません。

 

【サメの知能実験】
動物の知能を測る方法としてよく用いられるのがテストや芸です。水族館で人の指示通りにジャンプしたり物をとってくるイルカを観て「イルカは頭がいい」ってイメージを持っている人は多いと思います。

ボールをキャッチするイルカ。数多くの芸を学び、指示がない場面でも遊びのような動作をするときがある。

ではサメはどうでしょうか。

そもそもテストが行われたこと自体が少ないと思いますが、一応過去にサメの学習能力に関する実験は行われています。

例えば、ニシレモンザメに、このスイッチを押すとベルが鳴って、別の場所でエサがもらえるということを繰り返させた結果、ベルを鳴らせば餌がもらえるということを学習しました。これは「条件付け」と言われるもので、コモリザメでも似たような実験が行われて学習に成功しています。

さらに興味深いのがニシレモンザメに対して行われた社会学習の実験です。実験の内容をざっくり紹介すると以下の通りです。

・「特定のターゲットに触ると餌がもらえる」というテストを用意します。

・訓練してこのテスト内容を教え込んだニシレモンザメたちのグループAと、特に訓練しなかったグループBをつくります。

・グループAとグループBに別々でテストを受けさせますが、この時にテストに参加しない観察者のサメたちをそれぞれの水槽に追加します。Aと一緒になった観察者のサメたちをグループC、Bと一緒になった子たちをグループDとします。

文字だけだと分かりにくい方のためにざっくりとしたイメージ図も用意しました笑。

 

 

AとBではもちろんグループAの方が成功率は高かったですが、この後にグループCだけ、Dだけという状態でそれぞれ同じテストを受けさせます。

すると、訓練されたAのサメたちと一緒になっただけのグループCの方が、グループDに比べて圧倒的に高い成功率で、しかも速いペースで餌を獲得しました。

このことから、少なくともニシレモンザメは他のサメから何らかの方法で新しいことを学ぶことができるというのが示唆されました。

より詳細な実験の内容は以下の論文をご確認ください(アブストラクトは無料で読めます)↓

 

一応このような実験で、サメにもある程度学習能力があるであろうことは示されています。

また、科学的な実験ではないですが、

・飼育しているサメが餌の時間の前にソワソワするような動きを見せる

・一般家庭で飼育されているサメが飼い主になつくように手のひらに頭を載せる

・ダイビングスポットにいる特定のサメが、インストラクターになつくように体を寄り添わせたり口に刺さった釣り針を抜かせてもらうまで気を許す

などの行動は見聞きします。「サメに聞かないと分からない」と言ってしまえばそれまでですが、世間一般で思われているよりはサメも色々考えているのかもしれません。

 

 

【動物の知能という問題】
ここまで「サメは頭がいいのか?」という素朴な疑問にできるだけやさしく答えてきました。ここからはさっきこの辺に置いておいたややこしい問題を戻してきて、皆さんの脳を溶かす時間です笑。

「サメの頭はいい」とか「カラスとイルカどっちが賢いか」などの話で僕たちは知能という言葉を気軽に使っていますが、そもそも知能とはなんでしょうか?

試しに、人間以外の「知能が高い動物」のイメージを思い浮かべてみてください。

・自分以外の相手の顔を識別できる

・記憶力が高い

・遊びを行う

・音を使ったコミュニケーションができる

・道具を使う

・社会性がある

など色々な特性が挙げられると思います。

イルカと並び頭がいい動物の例としてよくあげられるカラス。

 

ただ、これ並べてみると分かりますが、ほとんど人間が当てはまる項目なんですよね。

一方で、

・臭いで個体識別できる

・光でコミュニケーションする

・自分が出した音の反響から障害物の位置や距離を把握する

これらの特性も自己認知、意思疎通、空間把握など、僕らが知能テストなどを受けるときに関係してきそうな領域のはずですが、知能ではなくて「特殊能力」として紹介されることが多いはずです。

つまり、知能とは、ある生物の行動が人間の大人(それも恐らくですが、先進国の健常者)の行動にどのくらい似ているかというのを表す尺度でしかないんです。

これは『「イルカは特別な動物」はどこまで本当か』という本で示された定義をもとにしていますが、言われてみれば納得できると思います。

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僕たちは「動物の知能」というのを話すときにイルカは芸ができるから頭がいいとか、クモが巣を作るのは知能とは違うなどあれこれ話して、動物に優劣をつけようとします。まるで人間が動物の頂点で、それに近い生物の方が優れていると言わんばかりです。

しかし、これは非常に勝手な見方です。人間に例えるなら、スティーブ・ジョブズのプレゼン力とマイケル・ジャクソンのダンススキル、ベーブ・ルースのバッティング、どれが一番すごいか議論しているようなものです。意味ないですよね。

それぞれの偉人がそれぞれの分野で必要な能力を発揮してきたのと同じように、各生物は進化の過程で生き残りと自己複製に最適な特性を獲得していきました。

道具の使用や社会性が見られない動物は沢山いますが、それは彼らが劣っていることを意味しません。彼らが生きる環境で不必要だったから・別の方法で生き残れたから進化しなかっただけです。

ナマコやヒトデなどの棘皮動物なんて知能はおろか脳みそ自体がありません。

ナマコ、ヒトデ、ウニなどの棘皮動物は脳も心臓も持たない。

しかし、彼らは僕たちとは全く異なる体の構造で過酷な環境を生き抜いています。今日まで子孫を伝えて生き残っている時点で、彼らも最適解の一つなんです。

僕たちは無意識にあの動物は頭がいいとか悪いと議論し、挙句に「知能が高い動物を閉じ込めたり殺すのは野蛮だ」なんていう人たちもいますが、知能というのはそこまで意味のある基準でしょうか。

今話したようなことを学んでおくと、動物の「知能」について、もう少し冷静に議論できるのかなと思います。

 

【あとがきにかえて】
以上が「サメは頭がいいの?」という疑問に対する回答でした。

多分読んだ方の半分くらいは「Yes / Noで分かりやすく頼む」と思ったかもしれないですが、そういうのはテレビ番組とか「頭がいい動物ランキング」みたいなものが沢山あると思うので、今回はもう少し踏み込んでみました。

今後もサメや他の生き物の紹介、環境問題の解説を行っていきますので、引き続きよろしくお願いいたします!

 

※今回の記事はこちらの動画でお話しした内容をもとに加筆修正を加えたものです。YouTubeでの情報発信も行っておりますのでよろしくお願いいたします。


【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

社会人として働きながら、サメの生態や環境問題などについて情報発信。主な発信分野はサメの生態、水産業、動物倫理、進化など。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇、水族館ボランティアなどで活動。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

 

 

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