サメは狂暴、イルカは温厚って本当なの?【書籍紹介】【動物のイメージ】

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

今回は生き物系の本でお勧めしたい書籍があったので取り上げます。

それがコチラ!

松原始さんの『カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは狂暴、イルカは温厚って本当か?』というちょっと長めなタイトルの本です。

著者の松原さんは動物行動学の専門家で、カラスの生態について大変分かりやすく解説した『カラスの教科書』という本の著者でもいらっしゃいます。サメ好きの方であれば、我らがシャークジャーナリスト沼口麻子さんと対談された方として知っている人もいるかもしれません。

対談内容はコチラ↓

そんな松原先生が長いが興味をそそるタイトルの本を出版され、しかもサメについても触れるということで、これは即買い確定でした。

今回はこの本の内容に沿いながら動物のイメージというものについて考えていきたいと思います。

 

目次:
【本書の内容ざっくり】
【サメは狂暴なの?】
【イルカは温厚なの?】
【あとがきにかえて】

 

【本書の内容ざっくり】
本書は「狂暴」や「可愛い」、「賢い」、さらに「亭主関白」など動物に向けられる一般的なイメージの実態を、動物行動学の視点から解説していくという内容です。

松原先生の本なのでカラスの事例が多めですが、タイトルの通りハト、サメ、イルカをはじめ、ハゲタカ、カッコウ、ナマケモノなど様々な動物の実例が紹介されています。

これらの動物は一般的に一面的というか、偏った見方で語られることが多いです。サメが獰猛で恐ろしいと言われるのは僕も日ごろから痛いほどわかりますし、カラスは賢いの他に「恐い」というイメージも語られます。カラスを本気で怖がっていた僕の知人曰く「目をつつかれたらどうしよう・・・」という心配があるそうです。

よく見るとモフっとしててかわいいところもありますが、なかなか愛されないカラス・・・。

 

こうした見方について、動物に関して個人的な好き嫌いがあるのはしょうがないと思います。僕は動物全般に対して世間一般よりも好意的なつもりですが、脊椎がある動物に興味が偏りがちです。サメの内臓には素手で手突っ込むくせに、ゴキブリを素手で触るのには心理的抵抗があります(せめて衛生的に調理されたものを食べるならいいんですが)。

しかし、多くの人はたいして知りもしないで動物に間違ったレッテルを貼っているように感じます。これはちょっと考えものです。

松原先生は言います。

“単に「間違っている」ということではない。言ってみれば動物に対する敬意の問題だ。知った上で「こいつはひどいやつだな」と思うならまだいい。だが、知らずに決めつけてしまうほど失礼なことはない。(p4)”

温和と言われる動物にも暴力的で恐ろしい一面があり、卑怯と言われる寄生や托卵(自分の卵の世話を他の個体にたくす習性)といった生き方にも大きなリスクが存在し、「キモイ」とか「醜い」と称される生物の姿は自然淘汰によって洗練された進化の結果だったりします。

そうした実態を知った上で無理に好きになれとは言いませんが、彼らなりの生き方をリスペクトしたり、過剰に美化された一般論を冷静に見つめなおすことは重要ではないでしょうか。

 

【サメは狂暴なの?】
実はこの『カラスはずる賢い~(以下略)』でサメは少ししか触れられていませんが、僕はサメの人なのでサメについて掘っていきます笑。

サメは世間一般では未だに「恐い」とか「狂暴」のイメージが強いと思いますが、ほとんどのサメは人間ほど大きな動物を襲いません。本書でも“サメは思われているほど、大きな獲物を襲うのが上手ではない(p35)”とありますが、まさにその通りです。

ダイビングでよく出会うサメとしてお馴染みのドチザメ、ネムリブカなどは1.5~2m近くになりますが、主食は甲殻類や小魚であり、人間のような一口で食べられない大きな獲物を積極的に襲う動物ではありません。何故か「人食いザメ」のカテゴリーに入れられがちなシュモクザメの仲間も、口が小さいため、本気で食べようと人を噛むことはほとんどないと思います。

温かい海のダイビングでお馴染みネムリブカ。こちらから刺激しない限り襲ってくることはない。

そもそもサメは恐ろしい捕食者のイメージが無駄に強いですが、だいたいのサメは獲物を歯で突き刺したり抑え込んだ後、ほとんどそのまま丸飲みにします。見た目だけで言えばネコ科の動物の方がよほど恐ろしい食べ方をしています。いや、ケンタッキーフライドチキンの肉を噛みちぎる人間の方がサメより獰猛に見えるかもしれません。

確かにホホジロザメのように大きな歯をむき出しにして獲物に噛みつき、頭を左右に振って肉を切り裂くサメはいます。こうしたサメは暴力的に見えてしまっても無理がない気がします。

獲物に噛みつく瞬間のホホジロザメ。

しかし、彼らは一口で食べられないような油たっぷりの大きな獲物を食べる必要があるし、そうした獲物を食べるための歯と食べ方を獲得してきたのです。

“彼らは無駄に暴力的なわけではない。獲物が大きいので、ああやって食べないと食べにくい、あるいは自分が反撃されて危険なだけである。(p34)”

人間が「なんでお前ら二本足で歩いているの?変なの」とか言われても困るように、ホホジロザメはホホジロザメなりに理にかなった食べ方をしているんです。

 

【イルカは温厚なの?】
ちなみに、サメと違って「平和的」とか「優しい」、「可愛い」などのイメージが強いイルカですが、彼らはサメも真っ青になるかもしれない一面を持っています。

水族館のショーでお馴染みのハンドウイルカは、食べるわけでもないのに別種のイルカや同種の子供を殺すことがあります。しかも、体当たりや空中への打ち上げなどで内臓や骨を痛めつけ、さらに水中で抑え込んで息ができないようにするという、「惨殺」と称されてもおかしくない殺し方です。

ついでに言えば、イルカは他のイルカをつつき殺すときも、魚を食い殺すときも、彼らは人間が「笑顔」と称する、あの吻骨と頭蓋骨の形状からたまたま作られただけの固定された表情をしているはずです。クアッカワラビーの「笑顔」と同じで、別にあれは友好の印になっているわけではありません。

ドルフィンスマイルなどと称されるが、ただ固定された表情である。

 

上記の内容は『カラスはずる賢い~(以下略)』に記載されたものではないですが、松原先生もイルカの激しすぎる交尾について触れたうえでこのように述べています。

“イルカは必ずしも、人間が勝手に思い描くような「心優しい動物」なんかではない。というか、人間基準の「優しい」「優しくない」を動物に適応するのが間違いだ(p38)。”

こうした事実を知った上で「でもやっぱりサメよりイルカの方が好き」という人がいてもいいと思います。ちなみに僕はサメもイルカも好きです。しかし、一部メディアのいい加減な発信やフィクション作品のイメージだけを鵜呑みにし、よく調べもせず「サメは凶暴だけどイルカは優しい」とレッテルを貼るのはやめていただけると幸いです。

 

【あとがきにかえて】
今回はここまでとさせていただきますが、今回紹介した『カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは狂暴、イルカは温厚って本当か?』にはサメやイルカ以外にもさまざまな動物の生態が載っています。

書かれている内容そのものは動物に対する一般イメージを崩すものが多いですが、素人にも分かりやすい簡単な言葉で書かれていて非常に読みやすいです。また、ところどころに松原先生の動物に対する個人的な愛情が見え隠れするのも見どころです。

松原先生にお会いしたことはないですが、『カラスの教科書』と本書を読んだ身としては「ああ、テレビはこういう内容こそ放送してほしいものだ」と強く感じた次第です。

本ブログを読んで少しでも興味を持ってくださった方は、ぜひ『カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは狂暴、イルカは温厚って本当か?』を読んでみてください。アフィリエイトではないので僕には一銭も入りませんが、あなたが学びを得られることは保証します。

 

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【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

社会人として働きながら、サメの生態や環境問題などについて情報発信。主な発信分野はサメの生態、水産業、動物倫理、進化など。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇、水族館ボランティアなどで活動。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

 

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