美しき猛毒生物!カツオノエボシを解説!

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

 

今月、神奈川県の砂浜にある猛毒生物が現れたことがニュースになりました。その生物の名前をカツオノエボシ(Physalia physalis)と言います。

全く知らない人からすればこんな生物が思い浮かぶかもしれません(さすがにないか笑)。

実際はこんな見た目をしています。

猛毒を持つ生物なのでもちろん気をつけねばいけませんが、実は非常に興味深い生態を持つ、とても綺麗な生物でもあります。

 

今回は美しき危険生物、カツオノエボシを紹介します!

 

目次:
【カツオノエボシはクラゲ?】
【合体ロボット?】
【青く美しい姿】
【猛毒をもつ危険生物】

 

【カツオノエボシはクラゲ?】
カツオノエボシという名前は水面に浮いている袋の部分が烏帽子に見えることから名付けられました。古風な感じでお洒落ですが、今の人が名付けるなら絶対「海餃子」とかになると思います笑。上のしわしわの部分が完全に餃子の皮です。

ちなみに英語名は「Portuguese Man O’ War」、日本語訳すればポルトガルの軍艦という意味です。これは烏帽子の部分が帆を張ったポルトガルの船に見えることから名が付いたそうですが、なんかパイレーツ・オブ・カリビアンの船みたいでカッコいいですよね。「ブラックパール」や「フライング・ダッチマン」と並べても違和感ないと思います。

こんなお洒落な名前のカツオノエボシはちょっと変わった形のクラゲといった見た目ですが、カツオノエボシは刺胞動物門の中のヒドラ虫綱というグループに属しています(門とか綱というのは分類学における階級です。住所における都や区だと思ってください)。

サメについてですが、分類学についてはコチラ↓

水族館でよく見るミズクラゲや沖縄の危険生物として有名なハブクラゲ、そしてこのカツオノエボシ、どれも「クラゲ」という言葉でひとまとめにされていますが、実はそれぞれ鉢虫綱箱虫綱ヒドロ虫綱という別々のグループにいます。

綱レベルの違いなので、これらを一緒にするなら、ヒトとマグロとスズメ全部いっしょくたにしてる感じです(全て脊椎動物門ですが、哺乳綱、条鰭綱、鳥綱に分かれます)。事実、これらの生物たちは生殖などで大きく異なる点があります。

僕たちは普段海に浮かぶ透明な生物をまとめて「クラゲの仲間」とみなしますが、実は「クラゲ」という言葉はだいぶ広い範囲を含む場合があります。カブトムシ、カタツムリ、ハブ、スズメ、ヒトを「陸上動物」でひとまとめにするくらい大きくなくくりなんです。

この辺は深く掘るとややこしいですが、「クラゲ」と言ってもいろんな生物がいるんだよってことは覚えてください。

 

 

【合体ロボット?】
カツオノエボシは一つの動物ではなく、複数のヒドロ虫という生物が集まった群体とされています。

群体と言えば、生物を習った方なら「ボルボックス」とか聞いたことあると思います。あれとは少し違うのですが、カツオノエボシは大きく分けると4種類の個虫と呼ばれるものがつながってできた存在です。

イメージしやすいように言えば、合体ロボットみたいな感じです。「俺が腕やる、じゃあ私は足、僕は胴体、俺は頭」みたいにそれぞれが違う役割を果たすパーツがつながって、一つの生命体のように動きます。

こんな感じの合体ロボットってよくいますよね(多分)。

カツオノエボシを構成するパーツを図解すると以下のようになります。

・気泡体
・栄養個虫
・生殖個虫
・触手

烏帽子または餃子に見える部分が気泡体です。ここに気体が入っていて、これで浮力を調整します。

先に黄色い丸がついているのが栄養個虫です。ここから消化液を出して溶かしながら獲物を吸収します。

青白くもしゃもしゃした部分は生殖個虫で、文字通り子孫を残すために使われる場所です。ここを詳しく見れば雄と雌が分かるみたいです。

そして最後は触手の部分です。ここには刺胞という毒液と針の入った小さな細胞カプセルがたくさん並んでいます。小魚などの獲物に触れると、圧力で閉じ込められていた毒針が飛び出し、毒を注入するんです。この部分は感触体とも呼ばれますが、諸説あるらしいので深くは突っ込みません笑。

なお、カツオノエボシは群体ですが、受精卵から同じ遺伝子をもった個虫が群体を作ります。なので、餃子の部分と触手の部分がバラバラに漂っていてそれがくっついて一つのカツオノエボシになるわけではないので、勘違いのないようお願いします。

 

 

【青く美しい姿】
カツオノエボシはプランクトン、つまり自分で遊泳する力はほとんどない生物なので、ぷかぷか浮いて波に漂いながら触手を使って、他の小さなプランクトンや小魚を捕まえて食べています。

こう聞くと「浮いているだけで全然動かない生物なのかな?」と思うかもしれませんが、実は結構動くし、その様子が美しいんです。

こちらは生きているカツオノエボシです。青い粒々のような部分が触手の刺胞で、黄色い点々が栄養個虫の口にあたる部分です。この青と黄色、思っていた以上に綺麗ではないでしょうか!近くで観察しないと気づけない美しさです!

色合いがはっきりしていてちょっと毒々しいですが、美を感じますよね。

カツオノエボシは海沿いの水族館などでたまに展示されることがありますが、長期飼育は難しく、一時的な展示になってしまうことが多いです。生きているカツオノエボシは貴重な展示ですが、一度でいいのでこの美しさを直に見て欲しいと思います。

 

 

【猛毒をもつ危険生物】
刺胞動物は全て刺胞を持っていますが、そのほとんどは人間にとって猛毒ではありません。サンゴも刺胞動物ですが、彼らに刺されてひどい目にあったというのはそんな聞きません。

しかし、カツオノエボシの毒はかなり強力です。刺されると電流をくらったような激痛に襲われるため、電気クラゲと呼ばれることがあるくらいです。

カツオノエボシの毒針に刺されると激痛を味わうだけでなく、じんましん、くしゃみ、咳、呼吸困難、嘔吐、脱力感などの症状に苦しみます。さらに、アナフィラキシーショックを起こすことでショック死してしまうケースがあり、たとえそうでなくても突然の痛みと体調不良のせいで溺れてしまう危険もあります。

カツオノエボシの怖いところはその毒の強さだけではありません。カツオノエボシの色は海の中に溶け込んでしまう上に触手がかなり長いので、こちらが全く気付かないうちに刺されてしまうことがあるんです。

さらに、遊泳力がないカツオノエボシは砂浜に打ち上げられることも多く、ビーチで遊んでいる子供やビーチコーミングをしている方がゴミと間違って触ってしまう危険性があります。実際に打ち上った写真とかを見るとビニール袋に似ていたり、海藻とか他のゴミに紛れていて非常に分かりにくい場合もあるようです。

カツオノエボシの刺胞は死んだように見える状態でも発射されることがあるので、打ち上げられたものも絶対に触ってはいけません。

刺された場合の対処法はネットにも色々書いてありますが、絶対に触手に触らないように気を付けながら触手を取り外し、速やかに医療機関で処置してもらうのが一番だと思います。

先ほども言った通りカツオノエボシの刺胞は弱った状態でも刺激を受ければ発射されるので、引っかいたりすると症状が悪化します。海水で洗い流すのは問題ないようですが、もし真水をかけてしまうと浸透圧の違いが刺激になって発射されることがあります。また、クラゲの毒には酢が効くという話もありますが、あれは種によって異なり、カツオノエボシの場合は逆効果だとされています。

以上の対処法は行政関係や水族館が出している情報をまとめましたが、ネットだと「酢が効果的」と書いてしまったり情報が錯綜しています。

命にかかわる問題なので、もし刺されてしまったら

・とにかく素手で触るな

・真水とか酢とか余計なものをかけるな

・さっさと病院いけ

迷ったらこの3つだけ覚えておくといいのかなと思います。

 

 

今回は以上となります。カツオノエボシのように危険な生物というのは世間でも注目されがちですが、サメと同じく「危ない」とか「恐い」というだけがどんどん広まってしまっている気がします。

確かにカツオノエボシは猛毒を持っていますが、こうした生物の生態に注目してみると、彼らが魅力的に見えてくると思います。

今後もこのように生き物や環境問題の解説を行っていきますので、よろしくお願いいたします!

 

【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

サメをはじめとする海洋生物の生態や環境問題などについて発信活動を展開。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇も行い、サメ解説のライターとしても活動。水族館ボランティアの経験あり。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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