【新発見】新しいサメの卵生と透明な卵殻について解説!

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

今回はサメの生殖に関する新発見について解説をします!

サメの生殖には大きく卵生と胎生の2タイプがありますが、先日、サメの卵生について興味深い内容の論文が発表されました。

どのサメ図鑑にもまだ載っていない内容ですが、先取りで紹介しちゃいますので、よろしくお願いいたします!

 

目次:
【サメの生殖おさらい】
【単卵生型と複卵生型】
【Sustained single oviparity】
【透明な卵殻】
【生き残り戦略】

 

 

【サメの生殖おさらい】
今回発表された論文のタイトルは『Discovery of a new mode of oviparous reproduction in sharks and its evolutionary implications』です。簡単に日本語訳するなら、「サメの生殖における新しい卵生型の発見および進化における意味」とかになると思います。

具体的な新発見の内容に入る前に、サメの生殖についておさらいしておきます。

大前提として、サメやエイなどの軟骨魚類は、鳥類や哺乳類と比べると、かなりバリエーションに富んだ生殖方法を持ちます。

大きく分けると、サメの生殖には母親が直接赤ちゃんを産む胎生と赤ちゃんの胚が入った卵殻を産み落とす卵生の2タイプがあります。母親からにしても卵からにしても、以下の点が共通しています。

・体内受精であること

・サメの卵巣や輸卵管などの生殖器官が対になっていること

・赤ちゃんがちゃんとサメの形に成長してからでてくるということ

今回の肝は卵生です。卵生のサメは文字通り卵に入った状態の子供を産み落とします。有名な例がトラザメやネコザメです。水族館で彼らの卵殻を見たことがあるという人も多いはずです。

こちらは僕の自宅にあるサメの卵の殻です。左側がイヌザメで、右側がネコザメのものです。サメの種によって形状や大きさは異なりますが、このような卵殻に入った状態で、赤ちゃんが大人のミニチュア版になるまで成長してから孵化します。

ここまでがサメの生殖の基本ですが、今回の論文に関わる点を、さらにもう少し掘っていきます。

 

 

【単卵生型と複卵生型】
卵生のサメは複数のタイプに分かれます。一般にただ単に「卵生」と紹介されるトラザメ、ネコザメ、イヌザメなどは単卵生型です。

単卵生型では、胚が入った卵殻を各輸卵管に1個ずつ、短期間だけ持っていて、卵殻が形成されたらすぐに産み落とします。サメの生殖器官は対になっているので、二本の輸卵管につき1個、つまり一度の産卵で2個産み、これを産卵期に何度か繰り返します。

 

もう一つのタイプが「複卵生型」と呼ばれるものです。複卵生型の場合は輸卵管それぞれに複数個の卵を一列に並べたような状態でもっています。しかも、単卵生型のようにすぐは産卵せずに、数カ月胎内に保持して、ある程度中の胚が成長してから産み落とします。

この複卵型の例としてはナガサキトラザメなどが知られています。

 

今回の論文のタイトルにあった「new mode of oviparous reproduction」というのは、この単卵生型と複卵生型に加えてさらにもう一つ、新しく卵生のタイプが見つかったということです。

 

【Sustained single oviparity】
今回その新しい卵生タイプが見つかったのが、Sarawak pygmy swellsharkというサメです。Sarawakというのはマレーシアの地名で、pygmyは小人、swellsharkはナヌカザメを指します。

Sarawak pygmy swellsharkの簡易イラストです。

以前僕の自宅に届いたナヌカザメとその卵殻を紹介しました。これに近い仲間ですが、Sarawakの方は最大が50cmにもならないというかなり小型なサメです。

以前家に届いたナヌカザメ。

このSarawak pygmy swellsharkの卵生は論文内ではSustained single oviparityと呼ばれていました。

英語のままでは覚えにくいかもしれませんが、ここで僕が変に日本語名をつけてしまうと後から混乱が起きる可能性があります。そのためここでは仮称とかもつけずにSustained single oviparityと呼びます。皆さんもSNSや記事のコメント欄で議論する際は英語のまま記載をお願いします。

英単語の説明だけさせてもらいますが、sustainは保つ、維持するなどを意味する動詞で、singleはそのまま単一の、oviparityは卵生という意味です。

そして今回調べられたSarawak pygmy swellsharkですが、複数の標本を確認したところ、単卵生型のように各輸卵管の中に卵殻を一つずつ持っていました。ここで単卵生型であれば胚発生は始まったばかりのはずですが、Sarawak pygmy swellsharkは胚がある程度成長するまで母胎内に卵殻を保持していました。

単卵生型のように輸卵管には1個ずつの卵殻しかありませんが、複卵生型のように長期間保持しているので、Sustained single oviparityというわけですね。

つまり、これまで2タイプしかないとされてきたサメの卵生が、

・単卵生型

・複卵生型

・Sustained single oviparity

の3タイプに分けることができると論文は示唆しているんです。

 

ちなみに僕が今使っている「単卵生型」と「複卵生型」という言葉は仲谷先生が出版された図鑑に合わせて使っていますが、今回の論文では卵生を

・Short single oviparity

・Sustained single oviparity

・Multiple oviparity

という3つの言葉で分けています。これもさっき話したの同じ事情で僕が勝手に日本語訳することはしませんが、もしかしたら今後、図鑑などで使われる日本語の用語も変わるかもしれません。

サメの生殖に関して馴染みない人からすればピンと来ないかもしれないですけど、今までサメ図鑑に載っていなかった新しい生殖方法が見つかって考えるとなかなかに熱いですよね。

 

 

【透明な卵殻】
このSarawak pygmy swellsharkの生殖はこれまでにない産み方という以外にも面白い特徴がありました。それが、この卵殻が完全に透明だったということです。

先ほどのイヌザメとネコザメの卵殻を見ればわかるように、サメの卵殻は中の赤ちゃんが見えないようにほとんど不透明で、だいたいがこげ茶色か黄色っぽい色をしています。

水族館でサメの卵殻が展示されて中の赤ちゃんや卵黄が見えることがありますが、あれは後ろからライトを当てたり、表面を少し削って観察しやすいようにしています。本来はあんな風に見えません。

しかし、Sarawak pygmy swellsharkの卵殻はガラスの入れ物みたいに透明で、中の赤ちゃんがはっきり見える状態でした。

透明な卵殻のイメージ図。下手な絵でごめんなさい笑。

産卵前と後でサメの卵殻の色が変わることもありますが、Sarawak pygmy swellsharkの卵殻は産卵された後も透明だったそうです。こんな卵殻は今まで見たことがありません。

透明な卵殻だと中に赤ちゃんがいることが外からわかってしまい危険な気がしますが、論文ではその点にも触れられています。

確かに卵殻は透明ですが、Sarawak pygmy swellsharkは中の胚がある程度成長してから卵を産み落とします。成長した赤ちゃんは薄茶色で独特の斑点模様がついています。

論文は透明な卵殻でこの模様をあえて外に見せることで、「模様が海底にカモフラージュするのに役立つのではないか?」と指摘しています。

このカモフラージュについては論文内の「could suggest」という英語表現からも読み取れるように、まだはっきりとしたことは分かっていません。しかし、もしかしたら今後の研究で、これまで知られていなかったカモフラージュ戦略について明らかになるかもしれません。

 

 

【生き残り戦略】
卵殻を母胎内で一定の期間保持していることは、動けない卵の状態でいる時間が短いので赤ちゃんの生存率を高めることになります。

しかし、Sustained single oviparityは単卵生型のようにポンポン産むことができないし、複卵生型のように複数個を維持するわけでもないので、産む子供の数が少なくなってしまいます。これはこれで問題です。

ここでカギになってくるのが、Sarawak pygmy swellsharkとその赤ちゃんの大きさです。

先ほども触れたように、Sarawak pygmy swellsharkは他のナヌカザメに比べて小さく、成長しても40~50cm程度にしかならない小型のサメです。そして、その小さな体に対して、卵殻および赤ちゃんはかなり大きいサイズです。

論文によれば、単卵生型の卵殻の大きさは、種によって様々ですがだいたい全長の8~11%程度のサイズです。しかし、Sarawak pygmy swellsharkの卵殻は7.5~8.5cm、全長の約16~20%近くにまで及んでいました。

実際に論文内の写真で確認してみると、卵殻が一個しかないのに輸卵管のスペースを全部占有するような状態でした。そして、赤ちゃんが孵化する時のサイズは12cmほど、成熟は35cmほどだと推定されてます。

12cmで生まれて35cmで成熟だとすれば、他のサメに比べるとかなり小さい成長幅で、短期間に成熟できることになります。赤ちゃんの生き残り率が高くて短期間で成熟できるなら、一回に産む卵の数が少なくても繁殖力が低すぎるということはないはずです。ここからはまだ研究がさらに必要だと思いますが、今後どう解明されていくいのか要注目です。

 

以上が、サメの卵生についての新発見の解説でした。論文のタイトルにもあった「進化における意味」というのは今回解説していません(前提知識も含めて解説すると恐ろしい長さになりそうなので、今回はやめておきます笑)。

気になる方は概要欄にリンク貼っておくで、是非ご自身で論文を読んでみてください。

 

今後もサメの生態や生き物について分かりやすく解説していきますので、引き続きよろしくお願いいたします!

 

 

【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

サメをはじめとする海洋生物の生態や環境問題などについて発信活動を展開。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇も行い、サメ解説のライターとしても活動。水族館ボランティアの経験あり。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

 

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