鳥獣保護管理法はどんな法律?カラスやスズメは飼っていいの?

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

突然ですが質問です。道端で見かけたカラスやスズメを捕まえて飼ってもいいと思いますか?

今年の6~7月ごろ、カラスを連れ帰った人がその様子をTwitterに投稿して大炎上したことがありました。また、これよりも前に、芸能人のモト冬樹さんがスズメを飼っていて問題になりました。

こうした騒動の中でカギになってくるのが、鳥獣保護管理法です。

聞きなれない人もいるかもしれませんが、野生動物と人間の関係において重要な法律です。

一体どんな法律なのか、今回はなるべく分かりやすく紹介します!

 

目次:
【鳥獣保護管理法とは?】
【捕まえるのは実質禁止?】
【鳥獣保護管理法への批判】
【問題がないわけじゃない】

 

【鳥獣保護管理法とは?】
鳥獣保護管理法を詳細に説明していくと恐ろしいことになるので、今回はざっくりと、簡単にお話しします。

鳥獣保護管理法の正式名称は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」です。

非常に長いですが、鳥獣保護管理法と呼んでいいと思います。

注目すべきは正式名称に「狩猟の適正化に関する」と記載があることですね。つまり動物を捕まえることに関するルールが主になります。そして「鳥獣」とは鳥類・哺乳類のことです。

「保護」というのは、この場合、動物の生息数や生息地を維持・拡大させることを指します。管理はその逆で、増えすぎた動物を駆除したりすることを指します。

以上を踏まえて、できるだけ分かりやすく鳥獣保護管理法をまとめます。

例えば、獲物がいるという理由で散弾銃を街中でぶっ放したり、子供が遊ぶ場所に罠を仕掛ける人がいたら危ないですよね。

また、「誰でも好きに動物を獲っていいよ」という風にしてしまうと、儲かるからとか農業の邪魔だからという理由で、どんどん動物が捕まえられてしまい、その動物が絶滅してしまうかもしれません。後でも触れますが、これは生態系の保全において重大なことです。

では、とにかく狩猟を制限して守ればいいのでしょうか。それでは農作物が荒らされ放題になってしまいます。さらに、近年では増えすぎたシカが山の植生を大きく変えてしまったり、アライグマのような外来種が問題を起こしているので対処が必要です。加えて、人命を脅かしかねないクマが人里に下りてきて問題になっているので、そうした動物を駆除する必要も出てきます。

侵略的外来種として悪名高いアライグマ

要は、農林水産業を守って、国民や地域社会が自然の恩恵をうけながら、生物多様性も保全していく必要がある。

そのために、

誰がWho

・どの期間に(When)

・どこで(Where)

・どんな動物を(What)

・どんな目的で(Why)

・どんな方法で(How)

鳥獣を捕まえていいのか、捕獲についての5W1Hを厳しく定めているのが、この鳥獣保護管理法なんです。

 

 

【捕まえるのは実質禁止?】
鳥獣保護管理法は鳥獣を捕まえることに関するルールということを述べましたが、実質ほとんどすべてを禁止していて、いくつか例外があるという言い方の方が近いかもしれません。

大前提として、鳥獣(卵・幼獣含む)の捕獲・採取は禁止されています。つまり、街中で見つけたスズメを可愛いからといって捕まえたり、ハトが家の近くにたくさんいてウザイから駆除するということを、一般人が勝手にやることは許されません。

糞尿や巣作りなどで多少被害にあったとしても、これらの鳥獣を勝手に駆除することはできない。

鳥獣の捕獲が例外的に許されているのは、大きく分けると以下の三つのケースです。

・狩猟

・許可捕獲

・一部例外種

順番に解説していきます。

<狩猟>
狩猟というのは定められた期間に、定められた猟法で狩ることを指します。

狩猟するたびに許可がいるわけではないですが、狩猟免許の取得、毎年度猟期前の登録、さらに銃器を使う場合の申請など様々な手続きやコストが必要です。

そのうえで、どんな鳥獣でも捕まえていいわけではなく、マガモ、タヌキ、イノシシなど、狩猟してもいい鳥獣も限られています(これらを狩猟鳥獣と呼びます)。

さらに言えば、狩猟期間中でも保護区や休猟区に定められた場所、公道、都市公園、社寺境内、墓地などでは狩猟が禁止されています。

つまり、「道でカラスが弱っていたから持ち帰っちゃった」という人が、仮に狩猟免許を持っていて、その時期が猟期にあたる1月とかだったとしても、公道で拾っていたらアウトということです。


 

 

<許可捕獲>
許可捕獲というのは狩猟とは別で、学術研究のため、あるいは増えすぎた動物の個体数調整など、特定の目的で動物を捕獲することです。

これらも都道府県などの許可が必要であり、なんでも許されるわけではないです。さらに言えば、どのみち許可を得るには狩猟免許が必要だったりするようです。

 

 

 

<一部例外>
最後に一部例外について説明します。

鳥獣の中でもごく一部は鳥獣保護管理法の規制対象外になっています。例えば、ドブネズミ、クマネズミ及びハツカネズミという家に侵入するネズミたちは規制対象外なので、衛生管理のために一般人が捕殺しても問題はありません。

またその他のネズミあるいはモグラの仲間も、農業又は林業に係る被害を防止する目的に限り、随時捕獲することができます。

さらに、アシカやジュゴンなどの海棲哺乳類は、別の法律で規制されています。これらも勝手に獲っていいわけでは決してないですが、鳥獣保護管理法の規制対象ではないという意味では例外と言えます。

鳥獣保護管理法のすべてを把握するのは非常に困難です。ただ、一般人が勝手に鳥獣を捕まえることは許されていないというのが大前提です。違反した場合は懲役刑または罰金刑が処されますので、扱いには十分注意しましょう。

 

 

【鳥獣保護管理法への批判】
この鳥獣保護管理法については実はいろんな批判の声があがっています。先述のカラスの一件やモト冬樹さんのニュースも、違反者側を擁護する声がかなりありました。

鳥獣保護管理法への批判は色々なものがありますが、2種類の正反対の立場どちらからも批判を受けているという点が特徴だと思います。

一つは動物に対するポジティブな気持ちからくる批判です。

「昔は野鳥を飼って良かったのに何でダメなんだ!」

「弱っているなら保護してもいいじゃないか!」

「雛が道端にいても見殺しにするのか!」

などが代表的なものです。

もう一つは、法律が動物を過剰に保護しているという、動物に対してネガティブな立場からの批判です。

「人間に危害を加えたり邪魔になっている動物も駆除できないのはおかしい!」

「生類憐みの令だ!」

など、こちらもなかなか激しい批判が湧いてきます。

 

それぞれの批判は様々な事情があって発せられるものだと思いますが、ニュース記事やブログなどの批判の声をを読んでいて感じるのが、どちらの主張も「生態系」というものを、あまりにも蔑ろにしているということです。

 

言うまでもないことですが、僕たちの生活は水や空気、そしてエネルギーのもとになる多くの生物たちによって成り立っています。例え畜産や養殖に頼ったとしても、彼らを育てるためのエサや彼らが呼吸に使う空気は自然環境に依存しています。

畜産や養殖も、太陽や自然の生物の恩恵無しでは成り立たない。

生態系は、家で言えば基礎とか地盤だと僕は思っています。それだけでは快適に過ごせないですが、無しでは生きていけません。

確かに一緒に住む人が増えたり、もっと快適に生活したいという思いから家を改築する必要があるかもしれないですが、基礎とか地盤を無視して素人がいじくりまわして無茶をすれば、全体が崩壊してしまうリスクがあります。

生態系もこれと同じで、「クマは怖い」や「カラスは嫌い」などの短期的な利益や知識のない人間の思い付きで生態系を壊せば、結果的に僕たちの社会は深刻なダメージを受けることになります。

そして、理由がポジティブかネガティブかにかかわらず、一般人が好き勝手制限なしに動物を捕まえられるようにすると生態系がめちゃくちゃになります。

分かりやすいように非常に単純な例を出します。穀物を食べるからという理由でスズメを絶滅させるとします。スズメは穀物だけでなく昆虫も食べていますから、もし彼らがいなくなれば、スズメの代わりにバッタなどの植物を食べる昆虫類が激増します。そうなれば、スズメよりも甚大な損害をもたらすはずです。

では、逆に保護すればいいのかと言えば、僕はむやみに干渉するべきではないと思います。

「弱った動物を見捨てるのは非情だ!」とか言う人もいますが、そもそも弱った動物は無駄になるわけではなく、他の鳥獣や昆虫などの食料になります。こうした営みも生態系の重要な要素です。そこで保護しないのが可哀想なら、獲物や産卵場所を奪い取るのも同等に可哀想です。

しかも、僕の偏見かもしれませんが、すぐに「可哀想」とか言い出す人は、たいてい動物のこと何も分かっていないことが多いです・・・。

例えば道端に雛が落ちているのは、必ずしも弱っているのではなく、巣立ちの途中だったりします(大きさや羽の状態に寄ります)。近くで親鳥が見ているかもしれないのに、人間が近くにいたら近寄れません。そこでもし雛を連れ去ってしまったら、その雛は自立することができなくなってしまいます。

厳しいことを言いますが、こんなことも知らない人が連れ去ったところで、まともに飼育できるとは思えません。

 

こういう反論をすると「絶滅危惧種とならまだしも、カラスとかスズメならいいだろ」と言われることがあります。

生態系とか法律の話に対して「生態系オタク」とか「法律マン」とか言ってバカにしてくる知性が足りない人たちもいて、もう憤りを通り越して可哀想です。

こういう哀れ人たちは真剣に語りかけても理解してくれないことが多いですが、あえて説得を試みるなら、リョコウバトの話をしてあげるのがいいと思います。

リョコウバトは北米にヨーロッパの人々が定住した頃には数十億という単位で生息していたとされていますが、生息地の破壊と乱獲によって姿を消しました。

人間にとって数が多いと思われる種も、何も規制がなければ取り返しのつかないことになるかもしれません。

 

これは本屋さんの万引きなどと同じです。確かに一人がやっても数百円の損害ですが、「レジの金を奪うわけじゃないからいいだろ」といってそれを許してしまえば、みんなが際限なく本を盗んで店が潰れますよね。

基本的にルールってそういうものじゃないでしょうか。一人がやっても実質の影響は小さいけど、「一人だけがやる」では絶対に済まずにヤバいことになるから全員を縛るんです。

 

【問題がないわけじゃない】
ここまで鳥獣保護管理法を擁護してきましたが、僕も鳥獣保護管理法が完璧だとは思っていません。鳥獣の捕獲については課題が多いのが現状です。

まず、鳥獣保護管理の事業計画は都道府県が立てますが、野生動物は行政区分に合わせて動いてはくれません。

例えばシカの被害が深刻なA県で駆除を積極的に行いたくても、A県で被害を出しているシカはB県やC県をまたいで移動します。A県だけが駆除を頑張っても解決できないかもしれません。

こうした問題は、行政区分ではなく動物を基準にして対応する必要があります。

シカは山の植生を変えてしまうほど数が増えすぎて深刻な問題になっている。

 

また、鳥獣保護管理法はアライグマ、ヌートリア、ネコなどの侵略的外来種も規制の対象にしてしまいます。確かにアライグマやネコを駆除するために市街地で発砲したり私有地に許可なく入ってくる人がいたりすれば問題なので、狩猟規則はもちろん必要です。ですが、彼らが生態系に与える影響を考えると、ブラックバスやブルーギルに比べればだいぶ過保護な扱いだと思います。

野良猫、地域猫などと呼ばれ親しまれているが、侵略的外来種である。

さらに、いくら絶滅させてはまずいと言っても、イノシシやクマなど人命にかかわる危険な動物が都市部に現れていることも事実です。そして、これらの動物に対処する狩猟者の人数が年々減って高齢化が進んでいるという現状もあります。

これらは鳥獣保護管理法だけの問題ではないですし、僕に具体案があるわけでもないので、「今すぐにこうしましょう!」という提言はしません。しかし、以上述べたような現状に合わせて、狩猟に関する規制を調整する必要があるかもしれない、ということは述べておきます。

 

 

以上が鳥獣保護管理法についての紹介でした!

細かい詳細は紹介できていないので、もっと気になるという方は各都道府県や省庁のHPをご確認ください。

いくつか参考になるものを以下に貼っておきます。

鳥獣保護管理法の内容はコチラ↓

神奈川県の鳥獣捕獲に関する説明(本ブログでもだいぶ参考にしました)↓

「ヒナを拾わないで」という岐阜県からのお願い↓

今後も生き物の生態や環境問題、そして今回のような生物に関する法律などを解説していきますので、引き続きよろしくお願いいたします!

 

【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

サメをはじめとする海洋生物の生態や環境問題などについて発信活動を展開。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇も行い、サメ解説のライターとしても活動。水族館ボランティアの経験あり。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

 

 

 

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