おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!
先日、しながわ水族館の生き物たちをブログで紹介しましたが、他にもこんな魚がいました。
この子の名前はダイビングや水族館に行くのが好きな人なら分かると思います。世界最大のベラの仲間として有名なナポレオンフィッシュです!
ナポレオンフィッシュは目に通っている線模様がメガネをかけているように見えるので、標準和名はメガネモチノウオと言います。
確かにこの子にはナポレオンフィッシュ特有のメガネ模様がありますが、よく水族館やネットで見るナポレオンフィッシュと少し見た目や柄が違うように見えます。

ナポレオンフィッシュよりも体の高さが低いし、頭もへこんで見えるし、体にダイヤ型っぽい模様がありますね。
実はこのナポレオンフィッシュ、成魚になりきっていない幼魚なんです。
ナポレオンフィッシュは幼魚と成魚で模様がだいぶ異なります。小さい頃は完全に別の魚のように見えますが、成長するにつれてよく知られたあの見た目になっていきます。
僕が今回しながわ水族館で出会った子はだいぶ成魚に近づいている気がしますが、まだ幼魚の特徴が残っている状態ですね。
こんな風に、幼魚と成魚で別の魚のように色や模様が異なる魚の仲間は数多くいます。
いくつか例をご紹介します。
こちらはチョウチョウコショウダイという魚の幼魚です。淡い茶色に白い丸模様が可愛い魚です。
このミニーマウスみたいな模様の可愛らしい魚が成長するとどんな姿になるのか、見てみましょう。
こんな感じです!全然違う模様ですね!
確かに腹鰭、臀鰭、尾鰭が大きい等の特徴は同じですが、模様だけ見せられると全く違う別の魚だと勘違いしそうですね。
チョウチョウコショウダイの幼魚は、ヒラムシの仲間に擬態しているといわれています。ヒラムシは扁形動物門というグループの生物で、魔法の絨毯みたいな泳ぎ方をする薄っぺらい生物です。
このヒラムシの仲間は体に毒を持っていて、チョウチョウコショウダイの幼魚はそのヒラムシに姿だけでなく泳ぎ方を似せることで捕食者から身を守ります。ヒラムシにこんなミニーマウスみたいな模様の仲間がいるのか分かりませんが、確かにチョウチョウコショウダイの幼魚はひらひらと独特の泳ぎ方をしていました。
お次はナンヨウツバメウオの幼魚です。縦に長い非常に独特の姿をしています。
ナンヨウツバメの幼魚はこの見た目で海を漂う枯れ葉に擬態します。写真は水族館で撮影したものなので分かりやすいですが、ゴミなどの漂流物が沢山ある中に紛れてしまうと見つけるのは至難の業です。
そんなナンヨウツバメウオは成長するとこんな姿になります。
デカい!丸い!模様以前の問題ですね。全長は最大で50cm近くになります。
大きくなったから枯れ葉に擬態する必要がない(というよりこんなデカい枯れ葉はない)のでしょうが、それにしても見た目が変わりすぎですね。
ここまで2種見てきましたが、この幼魚から成魚への変化がどんな風に起こるのか、気になる方もいると思います。
タテジマキンチャクダイという魚の幼魚がどのように模様を変えていくのかを見ていきましょう。
タテジマキンチャクダイの幼魚。「タテジマ」には絶対に見えない渦巻きみたいな模様をしています。ちなみに、この時点で少し成魚の模様に変化し始めています。
徐々に渦巻き模様が縞模様になっていきました。なお、魚の場合は顔を天に向けた場合の方向でタテジマかヨコジマかが決まるので、これはヨコジマではなくタテジマです。
最終的にこんな姿になります。まさに別種のごとき変貌です。
なお、タテジマキンチャクダイの場合、成魚同士の争いに幼魚が巻き込まれないためだといわれています。タテジマキンチャクダイは縄張り意識が強いので他の個体と争うのですが、幼魚が同じ模様だと幼魚も攻撃してしまいます。
確かに生物の一部はライオンの子殺しのように同種の子供を攻撃する場合がありますが、タテジマキンチャクダイの場合は幼魚をむやみに攻撃しないという方向に進化していったのでしょう。
今回は以上になります。水族館の年パスを持って通ったりすると、幼魚がだんだん成魚になっていく様子を観察できたりするので、よく行く水族館があれば、幼魚たちを経過観察してみてください!
引き続きよろしくお願いいたします!
【Writer Profile】
サメ社会学者Ricky
1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。
サメをはじめとする海洋生物の生態や環境問題などについて発信活動を展開。
本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇も行い、サメ解説のライターとしても活動。水族館ボランティアの経験あり。
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