ニモは性転換する?ドリーとは混泳できる?クマノミについて解説!

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

今回は水族館の人気者であり、ダイバーにも子供たちにも愛されているあの魚、クマノミを紹介します!

クマノミと言えば「ニモ」の二文字が真っ先に浮かぶかもしれませんが、果たして実際にはどんな魚なのか。なるべく分かりやすく解説していきますのでよろしくお願いいたします。

目次:
【クマノミの仲間たち】
【イソギンチャクに刺されない】
【イソギンチャクとの共生関係】
【性転換する魚】
【カクレクマノミはニモじゃない?】
【ドリーとは一緒に飼える?】

 

 

【クマノミの仲間たち】
クマノミはスズキ目スズメダイ科クマノミ亜科というグループに分類される魚たちを指し、有名なカクレクマノミも含め、実は30種近くの仲間が知られています。

なお、日本には以下の6種が生息しています。

・クマノミ
・カクレクマノミ
・ハナビラクマノミ
・セジロクマノミ
・トウアカクマノミ
・ハマクマノミ

ハナビラクマノミ沢山いるクマノミの仲間ですが、どの仲間もサンゴ礁やその周辺の浅い海に暮らしていること、イソギンチャクを生活場所にしていることは共通しています。

 

【イソギンチャクに刺されない】
クマノミを語るうえで外せないのがイソギンチャクです。クマノミの仲間を英語でanemonefishと呼ぶことがありますが、このanemone(アネモネ)はイソギンチャクを意味しています。

イソギンチャクは刺胞動物です。つまりクラゲの仲間と同じように毒針のカプセルを触手にたくさん持っています。本来、魚などがこの触手に触れると刺胞から毒針が発射されて、その魚は食べられてしまいます。

ところが、クマノミの仲間たちは、このイソギンチャクの触手の中に飛び込んでも刺されることなく快適に過ごしています。一体なぜそんなことができるのでしょうか。

クマノミはイソギンチャクに刺されない。

そもそもイソギンチャクの刺胞は闇雲に発射されるわけではなく、魚などの生き物の存在を感知してから発射されます。例えば流れてきた砂粒やガラス棒が当たっただけでは発射されません。

イソギンチャクの刺胞は、接した動物の体液のマグネシウム濃度が海水に比べて低いと発射される仕組みになっています。そのため、クマノミの仲間は海水よりも高いマグネシウム濃度を持つ粘液で体を覆うことによって、刺胞を発射させないようにしているのです。そのため、人間がふき取るなどして粘液を失った場合、クマノミの仲間も刺されてしまいます。

ちなみに、この粘液による防御の仕組みは愛媛県立長浜高校の女子高生が自分たちで研究して解明し、内閣総理大臣賞を受賞しました。全国の魚好きの高校生の方にもこういうチャンスがあると思うので、素朴な疑問に対する研究をしてみてはいかがでしょうか。

愛媛県立長浜高校の紹介はコチラ↓

 

【イソギンチャクとの共生関係】
クマノミとイソギンチャクの間には共生関係があるとされています。より正確に言えば、相利共生です。つまり、お互いが利益を得ている共生関係です。

共生にはお互いが利益を得る相利共生以外にも、片方だけ利益を得る片利共生、片方が得をして片方が害を被る寄生の3種類があります。クマノミとイソギンチャクの関係はこの中で相利共生に当てはまります。

では、お互いにどういったメリットがあるでしょうか。

まず、クマノミの場合、毒針を持つ生物の中に隠れられるので、他の大きな魚に食べられないように身を守ることができます。

一方のイソギンチャクも、クマノミがゴミを掃除してくれたり、クマノミのエサの一部をイソギンチャクが食べることができます。さらに、チョウチョウウオの仲間など、一部の魚はイソギンチャクを食べようとしますが、クマノミがいればそういう魚を追い払ってくれます。

クマノミとイソギンチャクはお互いに利益を得ている。

クマノミとイソギンチャクが意思疎通しているわけではないと思いますが、彼らはこのようにお互いに利益のある共同生活を送っているようです。

 

【性転換する魚】
クマノミと言えば「ニモ」というイメージが多くの方にあるみたいで、水族館の水槽前だと「ニモ、ニモ」って連呼する声がよく聞こえます。あの映画は、父親のクマノミが人間にさらわれてしまった一人息子を探しに行くという設定でした。

しかし、クマノミの生殖を考えると、そもそもあの映画の初期設定は成り立ちません。主人公マーリンとニモが親子であること自体があり得ないんです。

クマノミの仲間はイソギンチャクを生活場所にしますが、この中に複数のクマノミが暮らしていることがよくあります。「ニモ」の影響が強いと、これらは親子に見えてしまいますが、実は全員赤の他人です。

このように複数のクマノミがイソギンチャクにいたとしても、野生下であれば血縁関係はない。

クマノミはイソギンチャクで育ちますが、同じイソギンチャクに複数のクマノミがいるとき、体の一番大きな個体がメスになります。そう、メスに「なる」んです。幼魚の段階では、クマノミはオスともメスとも言えないどっちつかずの状態です。そして、二匹以上いるとき、一番体が大きいのがメスになり、二番目に体が大きいのがオスになります。これ以上のクマノミがいたとしても、その子たちは生殖には参加できません。

イソギンチャクに3匹クマノミがいたとして、一番大きい個体がメス、二番目に大きいのがオス、それ以外は生殖に参加しない。

もしここで、一番上のメスが死んだりしていなくなれば、それまでオスだった個体がメスに性転換し、それまで三番目に大きかった個体、つまり二番目に大きい存在になった個体は成熟したオスになることができます。

そして、メスはイソギンチャクの近くに卵を産みます(卵や稚魚には先ほど紹介したマグネシウムの粘液がないため、イソギンチャクの中には産めません)。そして、オスが1週間から10日ほど、イソギンチャクの触手や他の魚から卵を守ります。

孵化した赤ちゃん達は、映画みたいにそのイソギンチャクにはとどまりません。孵化した稚魚たちはすぐに海面近くに上昇し、プランクトンとして生活しながらあちこちに散らばります。やがて2週間ほどたって生き残れた子供立ちは、流れ着いた先のイソギンチャクに定着して、先ほどの生殖スタイルを繰り返します。

これを映画に当てはめてみましょう。

冒頭でバラクーダに襲われて一つだけになってしまったマーリンと妻コーラルの卵は、孵化したらすぐにどっかにいくはずです。そのため、息子として描かれていたニモは実の息子ではなく、別のイソギンチャクから流れ着いた全くの他人です。

そして、あのイソギンチャクではマーリンが一番大きな個体なので、彼はメスに性転換し、二番目に大きな個体であるニモと生殖する。これが本来のあるべきストーリーです。これはこれで面白い映画になりそうだと思いますが、いかがでしょうか。

 

【カクレクマノミはニモじゃない?】
もうすでにディ〇ニー信者を怒らせていると思いますが、僕はディ〇ニー行くくらいならその近くの葛西臨海水族園に行く人間なので、このままどんどん話を進めます笑。

映画のニモはオレンジ色の体に白い模様が入っています。このオレンジに白シマという模様は、日本にも生息しているカクレクマノミと同じ模様なので、ニモのモデルは一般にカクレクマノミとされることが多いですが、実はニモのモデルはカクレクマノミではありません。

そもそも映画『ファインディング・ニモ』はオーストラリアのグレートバリアリーフが舞台ですが、あの近海にはカクレクマノミは生息していません。グレートバリアリーフにいるのはクラウン・アネモネフィッシュ、俗にぺルクラと呼ばれるカクレクマノミに非常に似ているクマノミで、これが本当のニモのモデルです。

ディズニーの日本語版サイトだと、ニモのモデルはカクレクマノミと明記されていますが、その下に英名で「Clown anemonefish」と書いてあります。

実際のディズニー公式サイト↓

「カクレクマノミのことをWestern clown anemonefishと呼ぶことがあるから」と言ってカクレクマノミ=ニモ説を無理に擁護する人もいますが、Clown anemonefishという名称は一般にはぺルクラ種を指すことが多いし、どっちにしても生息域が合致していないので、ニモのモデルはカクレクマノミではないことが分かります。なお、カクレクマノミのことをFalse clown anemonefish(間違いのクラウンアネモネフィッシュ)と呼ぶこともあります。

では、それぞれをどのように見分けるのか。ここがちょっと難しいです。

カクレクマノミは白いバンドについている黒い縁がほとんど見えないか、あっても細いです。一方で、クラウンアネモネフィッシュはこの黒い縁が太く、さらに広がって大きな模様を形成することがあります。

カクレクマノミ。白いバンドについている黒い線がほぼ見えないくらい細い。

 

クラウン・アネモネフィッシュ。黒い縁が広がって模様を形成している。

ただ、この模様自体は個体差が激しいこともあり、これだけで見分けるのは危険です。

より正確には、鰭条という背鰭の骨組みみたいな棘の数を数える必要があります。カクレクマノミは10~11本、クラウンアネモネフィッシュであれば9~10本です。

非常に微妙な違いですが、それぞれ異なる学名を与えられた、生物学的な別種です。

今回はあまりにも有名なのでこの二種を取り上げましたが、実はクマノミの仲間には、模様が非常によく似ているものが多く、水中にいるのを見てパッと種を見分けるのが困難な場合があります。模様が似ていても別の海域に住んでいたりするので野生であれば問題ないのですが、熱帯魚ショップや水族館の水槽でごっちゃにされてしまうと、正確な同定は難しいと思います。

ちなみに、カクレクマノミとクラウンアネモネフィッシュについて言えば、分布はこのようになっています。沖縄やフィリピンなどであればカクレクマノミ、グレートバリアリーフやパプアニューギニアなどであればクラウンアネモネフィッシュです。

 

【ドリーとは一緒に飼える?】
ニモとセットで有名な魚がドリーです。恐らく「ドリードリー」と呼んでいて正しい標準和名を知らない人も多い気がしますが、ナンヨウハギと言います。

ナンヨウハギ

映画の影響もあって、カクレクマノミとナンヨウハギを一緒に飼いたいという人が多いみたいです。そもそもカクレクマノミなニモではないという話は置いておいても、この二種を一緒に飼うことはできるのでしょうか。

結論から言うと、飼えなくはないですが、熱帯魚飼育になれていない、映画に憧れただけの初心者が気軽に挑戦するべきではないです。

カクレクマノミ自体の飼育はそこまで難しくはないです。成長しても大きさが6~11cm程度で、45cm水槽で飼育できます。温かい海域に住む魚なので季節によってはヒーターで水温管理が必要ですが、市販のエサを食べてくれるし、初心者でも飼育することはできます。

強いて言うのであれば、イソギンチャクの方が飼育が難しいそうです。飼育下ならカクレクマノミだけでも問題はないので、慣れるまではイソギンチャクなしで良いと思います。景観的な好みでイソギンチャクが欲しいというのであれば、人工イソギンチャクという飾りが売っているので、それで我慢しましょう。

人工イソギンチャクの例↓

一方で、ドリーと呼ばれるナンヨウハギの飼育難易度は高めです。

カクレクマノミが10cm程度であるのに対し、ナンヨウハギは30cm近くにまで成長します。先ほどカクレクマノミは45cm水槽でも飼えるといいましたが、ナンヨウハギを飼うなら60cm以上の水槽は必須で、適正に飼うなら90cm水槽が妥当だと思います。

また、ナンヨウハギはカクレクマノミなどと比べると白点病という病気にかなりかかりやすいので、きちんとしたケアが求められます。こうした事情を考えると、ナンヨウハギは素人が簡単に手を出していい魚ではないです。

適正水温はカクレクマノミとそこまで変わらないので混泳自体はできると思いますが、あえてやる必要もないと思います。

当たり前の話ですが、生き物の飼育というのは生き物の事情に合わせる必要があります。適切な飼育環境を確保できない・自信がないのであれば、映画のイメージを現実の魚に押し付けないようにしましょう。

 

以上が、クマノミの紹介でした!

最後に一応付け加えると、こういう一般に人気の高い生物の生態や問題を解説すると「夢を壊すな」という謎の批判が飛んでくることがありますが、これは見当違いです。

クマノミの生殖や分類は生物学的な事実に基づくものですし、ナンヨウハギの飼育が難しいことを受け入れるのは、飼育者や魚にとって重要なことです。フィクションを楽しむのは自由ですが、事実は受け入れるようにしましょう。

引き続き夢とかイメージに反することも含めて、生き物の生態や環境問題の発信を行っていきますので宜しくお願い致します笑!

 

 

【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

サメをはじめとする海洋生物の生態や環境問題などについて発信活動を展開。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇も行い、サメ解説のライターとしても活動。水族館ボランティアの経験あり。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

 

 

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