おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!
そもそも魚はどのように子供を産むのか、考えたことあるでしょうか。
小さい子に「赤ちゃんってどうやって産まれるの」って聞かれると返答に困るという人は多いと思いますが、魚について聞かれると、違う意味で困ります。何故なら、魚の繁殖は非常に多種多様で、とても一言では説明できないからです。
そこで今回は、魚の様々な繁殖の戦略を紹介をしていきます!
目次:
【魚の生殖5パターン】
・海にばらまく
・どこかに産み付ける
・孵化するまで世話する
・子育てをする
・赤ちゃんを産む
【魚の生殖5パターン】
魚の繁殖と一口に言っても、ほんとうに多種多様な方法があり、全てを紹介しきるのは難しいです。ここでは、子供を産む数や子育ての手間などを軸に、魚の繁殖戦略を5パターンに分けたいと思います。
<パターン1:海にばらまく>
第一の戦略は海に卵をばらまくことです。メスが卵を産んだところにオスが精子をかけて、受精した卵はそのままプランクトンとして海を漂います。
この戦略は魚の中でもっとも多く採用されている産み方で、マイワシ、マダイ、マグロの仲間など、僕たちがよく知る魚の多くが、「産みっぱなし」の産卵を行います。
小さい卵を産みっぱなしにするので、当然その多くが食べられてしまいます。また、海流に流されるうちに、寒すぎる、または暑すぎる海域に運ばれて死んでしまう卵も沢山います。
そのため、このバラマキ作戦を行う魚は、千や万といった単位で大量の卵を産むのが特徴です。数多くが死んでしまうことは前提で、それでもどれかが生き残れるように数多く産卵するんです。
こちらはマグロの卵です。この写真内の小さな一粒一粒がマグロになることができる卵です。これだけの数を産んでいるにも関わらず、海はマグロまみれになってしないし、それどころか一部は絶滅危惧種に指定されています。それだけ多くの卵や稚魚が食べられているということですね。
ちなみに、沢山の卵を産む魚としてよくマンボウが取り上げられます。3億個の卵を産むなんてよく言われていますが、あれは卵巣内に3億個の卵があったという、少し信頼性に欠けるデータがあるだけで、必ずしも3億個産んでいるかははっきりしていません。
この辺の話は以前のブログでも取り上げているのでぜひ↓
<パターン2:どこかに産みつける>
海にばらまくよりも生き残り率を高める方法としては、どこか特定の場所に産み付けるという方法があります。
代表的な魚としてはニシンやハタハタが挙げられます。こちらもメスが産んだ卵にオスが精子をかけるという点は変わりませんが、メスは岩場や海藻などに卵を産み付けるので、流されて死んでしまうということはありません。
ちなみに、数の子でお馴染みのニシンは、メスが海藻に産み付けた大量の卵に、オスが一斉に精子をかけるので、ニシンの精子で海が白く濁ることがあります。これは群来と呼ばれる現象で、北海道でも見ることができます。
群来を伝えるニュースの実際の映像はコチラ↓
<パターン3:孵化するまで世話する>
さらに稚魚の生存率を高める方法としては、孵化するまで親が卵の世話をするという方法です。このパターンので最も有名なのはクマノミでしょう。
以前詳しく紹介しましたが、クマノミはイソギンチャクの近くにメスが産卵し、オスが孵化するまで世話をします。
孵化した後の赤ちゃんはすぐに海面近くに上昇して旅立ってしまいますが、卵でいる期間は親が守ってくれるので、産みっぱなしよりは生存率は高いはずです。

他にも、ネンブツダイやジョーフィッシュの仲間が子育てする魚として知られています。これらの魚のオスは、卵をを口の中で守ります。受精卵の塊を口に入れている間、オスは基本的に食事をすることはありません。さらに、時々口から出して新鮮な海水にあてたりしながら卵を世話します。
このような子育てはマウスブリーディングと呼ばれ、オスは「イクメン」などと水族館で紹介されることがあります。しかし、ネンブツダイの仲間では、オスが受精卵の一部を食べていることが研究で示されています。
感情論で言えば「イクメン失格」とかなりそうですが、もしかしたら、卵を少し食べてでも長生きするオスの子供の方が結果的に生き残って子孫を残す、というような自然淘汰の結果からこのような習性になったのかもしれません。もしそうであれば、この卵のつまみ食いも大事な生存戦略と言えます。

さらに面白いのがコペラ・アルノルディという魚です。この魚は、なんと水の外に産卵して、その水が乾かないようにオスが世話をします。
南米のアマゾン川などに生息しているコペラ・アルノルディは、産卵の時期になると、オスとメスはペアになって水面から飛び上がります。水の外にある植物の葉に貼りつくと、メスが卵を産み付け、オスがそこに精子をかけます。さらに、魚の卵は空気中だとすぐに乾いてしまうため、オスは孵化するまでの2~3日の間、ひたすらヒレを使って水をかけることで、卵を乾燥から守ります。
実際のコペラ・アルノルディの産卵シーン↓
これは水中にいる捕食者から卵を守るための産卵方法だと言われていますが、本当にそれだけになるのかと疑いたくなるほど大変に思えます。実際この魚以外で空中に飛び上がって水の外に産卵する魚は知られていないので、なぜ彼らがこんな繁殖スタイルにいきついたのか、非常に気になります・・・。
<パターン4:子育てをする>
先ほどの魚たちは孵化するまで卵を守る魚たちでしたが、孵化した後の稚魚を育てる魚たちもいます。海水魚で言えば、タツノオトシゴの仲間が有名です。彼らはよく「オスが出産する魚」と紹介されます。
タツノオトシゴのオスのお腹には育児嚢と呼ばれる袋があります。メスは卵をこの育児嚢に産み付けます(あくまで卵を産むのはメスの役目です)。
オスはその卵を受精させて、2~3週間ほど卵を保護します。その後に、育児嚢から稚魚を押し出して送り出します。この様子がオスが出産しているように見えるわけですね。
また、日本の北の方に生息しているトゲウオの仲間や、侵略的外来種として悪名高いブラックバスなどは、オスが作った巣にメスが産卵し、子供がある程度成長するまでオスが保護します。

ちょっと魚らしくないと思えてしまう子育てをするのがディスカスの仲間です。観賞魚としても人気なこの魚は、水草や木に産卵した卵を孵化するまで世話するだけでなく、産まれてきた子供たちに自分たちの粘液を食べさせて育てます。
この粘液の成分は哺乳類のものとは異なりますが、その様子がお乳を与えているように見えるため、この粘液はディスカスミルクと呼ばれます。
<パターン5:赤ちゃんを産む>
最後に紹介する繁殖戦略が赤ちゃんを直接産むというものです。
これまで紹介した魚は産みっぱなしにしろ育てるにしろ、卵の状態で体の外に子供を送り出していました。しかし、ごく一部の魚は、母胎内で卵を孵化させ、親のミニチュア版まで成長させてから産み落とします。
この直接産み落とすタイプの魚としては、メバルの仲間やウミタナゴ、サメ仲間の多くはこのやり方で子供を産みます。また、生きた化石として有名なシーラカンスも、母胎内からミニチュアのシーラカンスが複数見つかったことから、赤ちゃんを産む魚だされています。

なお、魚の多くは体の外で卵と精子をくっつける体外受精ですが、赤ちゃんを産む魚たちは母親の体内で受精卵を育てる必要があるので、体内受精が必要です。つまり、僕たちと同じようにオスとメスで交尾します。
そのため、こうした魚たちは何かしら交尾器をもっています。サメでいえば、クラスパーと呼ばれる二本の交尾器が腹鰭についています。

ただし、シーラカンスについては交尾器はが確認されていないらしいので、彼らがどうやって性を営んでいるかは謎です。
今回はここまでとなりますが、ここまで紹介したのは氷山の一角です。魚の生殖は本当に多様なパターンがあります。性転換、托卵、オスとメスの一体化・・・。人間からは想像もつかない方法が目白押しです。
今回は具体例を紹介しましたが、次回は魚の繁殖から見えてくる生物の面白い側面を紹介しようと思います。
【Writer Profile】
サメ社会学者Ricky
1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。
サメをはじめとする海洋生物の生態や環境問題などについて発信活動を展開。
本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇も行い、サメ解説のライターとしても活動。水族館ボランティアの経験あり。
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shark.sociology.ricky@gmail.com
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