なぜ魚にはイクメンが多いのか?オスとメスの壮絶な争い?

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

前回、魚の繁殖戦略を5パターンに分けて紹介しました。海に大量の卵をバラまくものから、孵化した稚魚を育てたり赤ちゃんを産んだり・・・。魚の繁殖戦略はじつに多種多様であることが分かっていただけたと思います。

前回の記事はコチラ↓

ただ、いくつかの事例を紹介した中で、思った方もいるかもしれません。

なぜ、魚にはオスが子育てするケースが多いのか?

僕が事例を挙げた魚たち、クマノミ、タツノオトシゴ、ネンブツダイ、ブラックバス、コペラ・アルノルディ・・・。どれもオスが卵や子供の世話をします。

つい先日も、富山県の魚津水族館でプテラポゴン・カウデルニィ(和名はアマノガワテンジクダイ)の赤ちゃんを展示したと報じるニュースでは『イクメン魚 口の中で子育て』と見出しがつきました。彼らは口の中で卵が孵化するまで守りますが、この役割はオスが果たします。

ニュース記事はコチラ↓

一部例外はありますが、上記の通り魚にはオスが子育てする種が多いです。

一方で、陸上動物は雌が子供の面倒を見るケースが圧倒的に多いです。ドキュメンタリー番組でよく紹介される子供を抱くチンパンジー、我が子のために獲物を追いかけるチーター、雛に口移しでエサを与える親鳥・・・。すべて母親が世話をしています。また。フェミニズムを軽視するわけではないですが、人間にもそういうところが現実問題としてあります。

陸上動物は親子で子育てする。

これだけ聞くと「魚にはイクメンがいて偉い」という安直な考えに至りそうですが、ここは人間基準を一回捨てて考えてみたいと思います。なぜ、魚にはオスの子育てが多いのでしょうか。

ここでカギになってくるのが、体外受精体内受精です。言葉通り、卵と精子が動物の体内でくっつくのか、それとも体の外でくっつくのかという違いです。

まず陸上動物について考えます。僕たち人間をはじめ、陸上動物は基本的に体内受精をします。なぜなら、卵や卵や精子は空気中ではあっという間に乾いてしまうので、体内to体内で受け渡す必要があるからです。ちなみに、受精卵になっても乾燥には弱いので、両生類は水中に卵を産み、爬虫類や鳥類は乾燥に強い卵を産みます。

体内受精をする時、精子の方が小さくて運動能力があるので、オスがメスに精子を送り込みます。すると、メスの体内に受精卵が残されます。この時点で、オスは自分の子孫を残せたことになるので、メスに受精卵の世話を押し付けて逃げることができます。一方のメスは、自分の体内に受精卵があるので、育てるにしろ産み付けるにしろ、自分でやらなければいけません。

もちろんオスがメスの手伝いをする動物はいますが、そうした動物でも、複数のメスと生殖する、人間で言えば浮気みたいなことをしていたりします。こうした事情から、陸上動物にはメスが世話をする生物がほとんどです。

 

では、魚はどうでしょうか。前回の記事で紹介した通り一部例外はありますが、魚の多くは体外受精を行います。つまり、メスが体外に産み落とした卵に、オスが精子をかけて受精させます。

体の外で卵と精子をくっつけるので、メスが受精卵をもって取り残される心配はありません。そして、先に配偶子を出した方は、後から配偶子をだして受精卵を作った方に卵を押し付けることができます。メスが先に卵を産めば、オスが精子をかけている間に逃げることで、オスに受精卵をおしつけることができるわけです

ネンブツダイ。オスが受精卵を口の中に入れて世話をする。

 

この場合、オスも同じことができそうですが、水中という環境と配偶子の大きさを考えると、メスの方が雄よりも有利です。

なぜなら、精子よりも卵子の方が大きくて重いので、卵は産んだ後もしばらく水中でとどまってくれますが、精子は小さくて軽いので簡単に散らばってしまうからです。

オスが先に精子を出すとしても、メスがその気になって卵を出す前に、精子はどっかにいってしまって、自分の精子で受精させることができなくなってしまいます。しかし、メスの卵はある程度そこにとどまるので、先に卵を放出して、オスに子供を押し付けることが可能なのです。

 

 

「子供を押し付ける」という言い方は人間感覚で言えばひどいものに聞こえますが、生物にとって根本的な問題は、円満な夫婦関係でも温かい家庭でもありません。いかに自己複製するか、つまり自分の遺伝子を残すかです。これは、「生きる目的が子孫を残すこと」というよりも、生物自体がそういう存在だということでうす。

オスとメスが子供を作るときに、お互いの遺伝子は何をどうしようとも50%ずつです。この点においてオスとメスは平等です。

しかし、子育てにかかる手間や時間は必ずしもそうではありません。ここで相手の性別にそのコストを押し付けることができれば、自分は子孫を一回残したうえで、浮いたエネルギーで別の異性と生殖してさらに自分の遺伝子を残すことができます。

生物は自分の種の繁栄のために子孫を残していると勘違いしている人がたまにいますが、それは誤りです。そもそも種というのは変わりゆく生命を整理するために人間が作った区切りみたいなものですし、本当に種の繁栄が目的なら、共食いや子殺しのような習性は進化しなかったでしょう。生物は種ではなく自分の遺伝子を残そうとするのであり、その過程でオスとメスも争っているのです。

動物の行動に対して、人間基準で「えらい」とか「ひどい」とすぐに判断してしまうのではなく、何故そうなるのかを突き詰めて考えてみてください。そうすると、オスとメスの争のような根本的な現象など、それまで見えてこなかった生物としての面白さを味わうことができます。

皆さんの身近な生物も、よく調べてみると違った世界がみえてくるかもしれません。

 

 

【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

サメをはじめとする海洋生物の生態や環境問題などについて発信活動を展開。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇も行い、サメ解説のライターとしても活動。水族館ボランティアの経験あり。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

 

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