何故ニホンカワウソは絶滅したのか?現在も生き残っているのか?

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

僕は「サメ」社会学者という怪しい肩書で活動をしていますが、実は僕のYouTubeチャンネルで一番再生回数が多いのは、カワウソペット問題の動画だったりします笑。

ペットにされて問題になっているコツメカワウソ

良くも悪くもそれだけカワウソへの関心が高いということだと思いますが、かつて日本にも野生のカワウソがいたことをご存知でしょうか。

今回は、もう見られなくなってしまったカワウソ、「ニホンカワウソ」について解説をします!

 

目次:
【カワウソとはどんな動物?】
【獺祭と河童】
【ニホンカワウソは固有種か?】
【ニホンカワウソ絶滅の経緯】
【カワウソ最後の地】
【現代も生きているのか?】

 

 

【カワウソとはどんな動物?】
「ニホンカワウソ」とは文字通り、日本に生息していたカワウソの仲間です。かつては日本各地に生息していましたが、2012年に環境省に絶滅を宣言されてしまいました。

絶滅の原因や経緯は後に紹介しますが、まずはカワウソとはどんな動物かをおさらいしましょう。

カワウソは食肉目イタチ科カワウソ亜科に分類される動物で、要はイタチの仲間ですが、水辺に棲む動物としていくつか際立った特徴があります。

<体のサイズが大きい>
カワウソの仲間は、イタチの中では体が大きいことが特徴です。

例えばペットして家畜化されたフェレットの体重は重くても1.5~2㎏ですが、ニホンカワウソは5~11㎏ほどです。

体が大きい方が体温を奪われにくいので、水中を泳ぐことの多いカワウソは、他のイタチよりも大きく進化したものと思われます。

<水かきをもつ>
カワウソの指の間には水かきがあります。カワウソは胴長短足なので、泳ぐときは手よりも体全体を振り動かす力の方が重要になりますが、水かきがあるのは水辺の動物らしい特徴と言えます。

カナダカワウソの水かき

 

<太くて長い尾>
カワウソの尾は他のイタチ科の動物よりも太くて長いのが特徴で、この尾は泳ぐときのかじ取りに役立っていると言われています。

 

<水生生活に適した頭部>
カワウソの頭は平たく、目・鼻・耳が顔の上部にほぼ一直線に並んでいます。これにより、水面から目や鼻を少しだすだけで周囲を警戒したり呼吸をすることができます。

これはカバ、カピバラ、ワニなど水中生活に適応して、かつ肺呼吸をする多くの動物に共通した特徴です。

水面から目や鼻、耳だけ出すユーラシアカワウソ

 

<保温性の高い毛皮>
カワウソの体毛は長くて荒い毛の内側に短くて細かい毛がびっしりつまっている二重構造をしています。この二重構造は皮膚が直接濡れることを防ぎ、さらに空気を毛の間に閉じ込めることで断熱効果を生み、水の中で体温が下がり過ぎないようにカワウソを守ってくれます。

 

こうした水生生活に特化した体つきをもつカワウソの仲間であるニホンカワウソが、かつて日本各地の河川や湖沼、そして水田、さらに海辺に暮らしていました。その存在は古くから知られ、日本文化の中にも登場しています。

 

 

【獺祭と河童】
カワウソは漢字では「獺」と書きます。お酒が好きな方ならすぐにピンとくると思いますが、獺祭という日本酒の名前に使われている文字です。

獺祭を作っている旭酒造さんの所在地が「獺越(おそごえ)」という場所なので、そこから一文字とって獺祭と名付けたそうです。

この獺祭という言葉は、カワウソが捕まえた魚を岩場に並べておく様子が祭り(もしくは儀式)をしているように見えたからできた言葉です。野生でどれくらい観察される事例なのか分かりませんが、海遊館でこの「獺祭」が実際に観察されています。

ちなみに、獺越の他にも青森県の獺野、福島県の獺渕、福井県の獺河内など、カワウソの文字が入った地名が各地にあります。

ニホンカワウソの当時の個体数については詳細なデータが残っているわけではないですが、こうした地名があることを考えても、日本各地で身近な生物だったと思われます。

さらに、誰もが知っている妖怪の河童のモデルは、実はカワウソではないかとされています。

河童と言えば緑の肌にクチバシ、亀の甲羅を背負っているイメージが有名なのでカワウソ感ゼロに思えますが、実はサルやカワウソをモデルにしたと思しき毛深い河童の絵が存在します。

カワウソは非常に泳ぎが得意であり、前足で何かをつかんだり二本足で立ちあがるなど人間臭い仕草をするので、確かに河童に通じるものがあります。さらに、先ほど言った通り水生生活に特化したカワウソの頭部は平たいので、皿を頭に乗せる河童のイメージに合っています。

立ち上がるカナダカワウソ

ニホンカワウソは1m以上に成長するため、水辺で立ち上がっている姿を遠目に見たら、人間の子供に化けようとしている妖怪に見えなくもないかもしれません。

 

 

【ニホンカワウソは固有種か?】
日本にカワウソがいたことは事実ですが、「ニホンカワウソ」という動物の分類はちょっとややこしいことになっています。

近年になり人気が高まっているカワウソですが、実は10種以上の仲間が分類されています。カワウソと同じように水族館で人気のラッコも、実はカワウソ亜科に分類されるので、一応カワウソの仲間です。

ラッコも広い意味ではカワウソの仲間。

この数多くいるカワウソの中で、日本に住むカワウソは、ユーラシアカワウソという欧州やアジアにも生息するカワウソの亜種だとされてきました。亜種というのは「別種に分けるほど違ってはいないけど、同じにするには差があるよね」という仲間を指します。

一つの種には学名という世界共通かつ唯一無二の名前が与えられ、ユーラシアカワウソはLutra lutraと言います。

ニホンカワウソは頭の骨の形が微妙に違いますが、ユーラシアカワウソと同じLutra lutra種だとされてきました。しかし、日本の博物館の標本や遺跡で発掘された骨を調べた研究者が、1989年に「ニホンカワウソはユーラシアカワウソとは別種であり、Lutra nipponとすべし」という内容の論文を発表しました。

さらに、1996年にニホンカワウソの遺伝子を調べた高知大学の研究者は、「ニホンカワウソとユーラシアカワウソの塩基配列の違いには亜種以上の開きがある」と結論付けています。

これ以外にもニホンカワウソを独立した種であるとする研究はありますが、専門家の間では意見が割れていて、絶滅の危機を評価しているIUCNレッドリストには、Lutra nippon、つまりニホンカワウソは記載されていません。

IUCNレッドリストにおけるユーラシアカワウソ↓

ちなみに、日本の環境省が出しているレッドリストでは、ニホンカワウソはユーラシアカワウソの亜種であり、さらに北海道のものはLutra lutra whiteley、本州以南のものはLutra lutra nipponとして二つに分けています。

そもそも「種」というもの自体が人間が勝手に作った区切りですし、肝心のニホンカワウソが絶滅してしまったので、この話にいつ決着がつくのか分かりません。

とりあえず「ニホンカワウソは日本の固有種かもしれないけど、専門家の間でも意見が割れている」という感じで覚えてもらえればとりあえずいいかなと思います笑。

 

【ニホンカワウソ絶滅の経緯】
先ほど紹介した文化的側面を見ても分かるように、ニホンカワウソは日本各地に古くから生息する身近な存在でしたが、現在では彼らの姿を見ることができません。

ニホンカワウソの剥製。徳島県立博物館所蔵品。

では、なぜ絶滅してしまったのか?一番の大きな理由は、各地で行われた乱獲だと思われます。

現在の日本は生態系を守りつつ人間社会も自然の恩恵を受けられるように鳥獣保護管理法のような規則がありますが、昔の日本ではそうした規制が整っておらず、そもそも生態系や生物多様性やその保全なんて概念も、少なくとも今あるようなものはありませんでした。

鳥獣保護管理法については以前に紹介しています↓

 

もちろん江戸時代や明治初期でも狩猟の制限はあったんですけど、それは治安維持や社会秩序を保つためであり、生物を保護するためではありませんでした。

そして、明治初期のあたりから、狩猟する時期も数もほとんど制限ない中で数多くの大型動物が数を減らしていきました。トキやコウノトリなどが数を減らしていったのもこの時期だと言われています。

カワウソの場合も例外ではなく、毛皮や肝を狙った乱獲が各地で起こりました。

先ほども触れましたが、水生生活をするカワウソの毛皮は、他のタヌキやキツネなどの獣より優れた保温性を持っています。このために、カワウソの毛皮は重宝されたらしく、過去には同じイタチ科の仲間であるテンの毛皮の2倍~8倍の価値で取引されたという記録もあります。また、工業化する前の日本にとっては良い輸出品となったようで、アメリカやイギリスに高級素材としてカワウソの毛皮を輸出していました。

さらに、当時カワウソの肝は結核などの病気に効くという噂が流れ、カワウソの肝やそれを使った漢方薬が高値で取引されていました。今でいえばニセ科学の範疇ですが、現在もカワウソの陰茎がまじないや漢方薬などの材料として用いられることがあります。

こうした乱獲の中でニホンカワウソの数はどんどんと減っていきました。

当時は生物の個体数調査なんて行われていないので正確な減少ペースや状況は分かりませんが、1900年を過ぎたあたりから捕獲記録が急激に下がり、第二次大戦後は信頼できるか微妙な報告がポツポツとあったのち、北海道と本州から姿を消しました。

正確な時期は不明ですが、長く見積もったとしても高度経済成長が始まる前に、北海道や本州のカワウソは絶滅していたと思われます。

 

 

【カワウソ最後の地】
ニホンカワウソが最後まで生息していたとされるのが四国地方です。この時点で、カワウソが激減していることは認知されており、狩猟鳥獣ではなくなっていたので保護活動が行われていました。

1953年、愛媛ではカワウソの生息地発見を促すように新聞で呼び掛けが行われ、1961年にニホンカワウソは愛媛県の天然記念物、1964年には国の天然記念物、翌年には特別天然記念物に指定されました。

さらに、高知県でもカワウソの個体数調査が始まり、メディアでもカワウソについて取り上げられることが増えてきました。

しかし、こうして保護活動が行われ、人々の関心が集まっていったにもかかわらず、四国でもニホンカワウソ数は減っていきました。

四国のカワウソが減ってしまった原因には複合的な理由がありますが、道路工事や護岸工事、磯の埋め立てなどによってカワウソの餌場や泊まり場だった場所が壊されてしまったことは大きいと思います。

また、カワウソがいる場所は良い漁場でもあるため、漁業に使う網やワナに捕まって溺死してしまう個体も多くいました。

さらに、地元動物園が飼育下で保護するためにカワウソの捕獲を呼び掛けたのですが、捕獲や移送の時点で衰弱していたり、飼育個体が死んでしまったりしたため、結果的にカワウソの個体数を減らす結果になった可能性があります。

こうして数を減らしていったニホンカワウソは、1990年代にはその姿はおろか痕跡すら見つからず、その後信頼できる確認報告がなく、2012年に絶滅が宣言されました。

 

 

【現代も生きているのか?】
メガロドンのような古代生物もそうですけど、絶滅した動物には「実はどこかで生きているんじゃないか説」がつきものです。

ニホンカワウソも例外ではなく、信憑性はともかくとして目撃事例がちょくちょくあがっています。その多くは他のイタチの仲間や、ヌートリア、ハクビシンを誤認したものですが、2017年、そして今年2020年にニホンカワウソではないか?とされる映像が公開されて話題になりました。

2017年の映像は対馬で撮影されたもので、後に糞に含まれる遺伝子を調べた結果、対馬のカワウソはニホンカワウソではなく、韓国に生息するユーラシアカワウソと近縁の可能性が高いとされています。

環境省の調査結果はコチラ↓

カワウソが泳ぐ距離は長くても3~5kmとされていますが、韓国から対馬に流れる海流に乗るか、人為的に運ばれることで、海を渡ってくる可能性は十分にあります。

 

そして今年2020年9月、ニホンカワウソ最後の生息地である高知県で撮影された、ニホンカワウソと思しき動物の動画が公開されました。

不鮮明なこともあり、本当にニホンカワウソなのか分かりませんが、もしニホンカワウソなら世紀の大発見です。

しかし、仮にニホンカワウソが生き残っていたとしても、手放しで喜べるかと言われれば僕は微妙です。というのも、仮にニホンカワウソが生きていたとしても、彼らと僕たちが共存していくための環境が整っていないように思うからです。

・川辺や海岸はカワウソが住みやすい場所になっているのか

・漁業者や養殖業者などカワウソの被害にあいそうな人たちは対策できるのか

・ロードキルからカワウソをどうやって守るのか

カワウソを保全するのであれば、こうした問題に取り組まなくてはいけません。

特に、ニホンカワウソは行動範囲が広い動物であるため、一部分を保護区にするような対策ではなく、人間の生活や経済活動が及ぶ範囲もカワウソに配慮して保全策を設計する必要があります。

 

さらに、ペット需要についても個人的に心配です。

ご存知のように、日本では自国のカワウソを絶滅させたくせに、絶滅危惧種である他国のカワウソを輸入してペットするという異常なブームが起きています。

カワウソペット問題についてはコチラ↓

このカワウソペット需要の高さや、カワウソペット問題を取り上げた僕の動画にクソコメがたくさんついたことを考えると、「カワウソは可愛くて好きだけど生態系保全なんてどうでもいい」というアンポンタンが日本にはそれなりの数がいるはずです。

そうなると、ニホンカワウソが生存していても、ペットにして飼おう、あるいは販売しようと連れ去ってしまう輩や、リスクを考えずに安易に餌付けなどをしてしまう連中が出てきて、保全の取り組みがぶち壊されるかもしれません。

 

ちなみに、こうした課題はニホンカワウソの生存だけでなく、再導入でも重要です。

先ほども説明した通り、ニホンカワウソと他国のユーラシアカワウソは別種と言ってもいいくらいの差があるので、そもそも再導入することに僕は否定的ですが、仮に再導入をするとしても、先ほどあげた生息域や人間との関係における問題点に対処しないとうまくいきません。

近年ではオオカミの再導入が検討されたり、絶滅した生物を遺伝子工学で蘇らせる「de-extinction」脱絶滅と呼ばれる技術も注目を集めていますが、そうした取り組みにおいても「今の生態系に導入して問題ないのか、現在の人間社会と上手くやっていけるのか」ということをきちんと考えなければならないと僕は思います。

 

 

【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

サメをはじめとする海洋生物の生態や環境問題などについて発信活動を展開。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇も行い、サメ解説のライターとしても活動。水族館ボランティアの経験あり。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です