シーラカンスの何がそんなにすごいのか?生きた化石の驚異と謎を解説

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

今回は、メンダコやダイオウグソクムシ、ラブカなどに並ぶ人気の深海生物、シーラカンスを紹介します!

「シーラカンス」という名前自体は聞いたことあると思います。

では、シーラカンスはどんな生物なのか?一体何がそんなにすごいのか?

あまり分からないという方もいると思うので、その辺もなるべく分かりやすく解説します!

 

目次:
【シーラカンス発見】
【生きた化石シーラカンス】
【実は2種いるシーラカンス】
【シーラカンスの生態】
【シーラカンスは人間に近い?】

 

 

【シーラカンス発見】
シーラカンスの何がそんなに珍しいのでしょうか。

実は、シーラカンスの仲間は全て絶滅したと思われていたのに、20世紀になって突如生きている姿が発見されたんです。

最初にシーラカンスが発見されたのは1938年、南アフリカでした。発見したのはマージョリー・コートニー=ラティマーさんという博物館のスタッフで、彼女はそれ以前から、漁港に足を運んで珍しい魚が獲れていないか、標本にすべき魚はいないかを確認していたそうです。

そして1938年の12月22日、ある漁船の船長が捕獲した大きな魚が彼女の目に留まりました。その魚の大きさは約1.5m、鮮やかな青色をした大きな鱗に覆われた魚で、他の魚とは明らかに違う特徴がありました。

ラティマーさんはこの魚を詳しく調べるべく、なんとタクシーに乗せて博物館まで持ち帰りました。

この発見の重大さを考えればなんてことはないですが、全長1.5mの生臭い訳わかんない魚を乗せて欲しいと言われたタクシー運転手に少し同情します笑。

当時の博物館には保存用の薬品や冷凍庫などの設備が整っていなかったらしく、ラティマーさんは内臓などを取り除いてその魚を標本にし、魚類の生態や分類に詳しいJ. L. B. Smith教授にスケッチを送りました。


スケッチを受け取ったスミス教授は後に実物の標本を確認し、この魚がシーラカンスの仲間であると確信します。

それから14年たった1952年、最初の発見場所から北に3000キロ離れたコモロ諸島で、ラティマーさんが発見したのとそっくりな魚が再び発見されます。この魚が詳細に調べられた結果、間違いなく、シーラカンスの仲間だと確認されました。

このシーラカンスは新種として記載され、Latimeria chalumnaeという学名がつけられました。属名のLatimaeriaは発見者のラティマーさん、種小名のchalumnae(カルムナエ)は発見された場所からきています。

これは歴史的なニュースとなって世界に報じられ、シーラカンスは「生きた化石」として有名になりました。

 

 

【生きた化石シーラカンス】
「生きた化石」という言葉は、大昔の祖先と外見があまり変わらないような生物を指して使われます。化石で見つかる生物と同じような見た目だから「生きた化石」というわけです。

ただ、ゴキブリ、トンボ、カブトガニなど、少なくとも表面的な見た目が祖先からそこまで変化していないと思える動物はたくさんいます。そのため、生きた化石だから珍しい、というわけではないです。

しかし、シーラカンスは、Latimeria chalumnaeが発見される前、その仲間がすべて白亜紀末に恐竜などと共に絶滅したと考えられていた、という点で、非常に驚くべき存在です。

「シーラカンス」というのは、1種類の魚を指す言葉ではありません。化石でしか見ることができないものも含めれば100種類近くが知られています。約4億年前に現れたとされるシーラカンスは、大きさや形も様々な種類が確認されていて、その多くが浅い海や淡水に住んでいました。

シーラカンス類の化石

ちなみに、現生のシーラカンスの祖先はジュラ紀後期に出現したといわれています。

しかし、そんなシーラカンスの化石は白亜紀末のK-T大絶滅、つまり恐竜を滅ぼしたとされるあの大量絶滅の後の地層から全く発見されませんでした。そのため、シーラカンスは恐竜などと一緒に絶滅したと考えられていたんです。

そんな魚が20世紀になって突然発見されたというのは、もうどえらいことです。今でこそ僕らはシーラカンスが生きているのを当たり前に感じていますが、今日アマゾンの奥地でヴェロキラプトルの生き残りが見るかるくらいの大発見なんです。

 

【実は2種いるシーラカンス】
先ほどシーラカンスは沢山の仲間がいたといいましたが、実は現生のシーラカンスも2種いることが分かっています。

1997年、シーラカンスが最初に発見されたアフリカから遠く離れたインドネシア。新婚旅行を楽しんでいた生物学者のエルドマン博士が、魚市場で売っている魚の中にシーラカンスを見つけます。

冷静に考えると焼き鳥屋に行ったらティラノサウルスの頭が平然と置いてあるレベルの出来事ですが、この魚はその後売られてしまって詳細に調べることはできなかったそうです。

しかし、翌年の1998年、さらにもう一匹のシーラカンスがインドネシア近海で発見され、DNAなどが詳細に調べられました。その結果、ラティマーさんが発見したものとは別種のシーラカンスであることが確認され、Latimeria menadoensisという学名が与えられました。

インドネシア・シーラカンスの標本

どちらのシーラカンスも、化石で見つかる多くの仲間とは異なり、深い海に生息しています。

シーラカンスについては分かっていないことが多いですが、彼らが今の時代まで生き残ってきたのも、彼らの化石が見つからなかったのも、深海に進出したことと関係しているかもしれません。

 

 

【シーラカンスの生態】
こうして現在まで2種確認されているシーラカンスですが、一体どのような魚なのか。謎の多い魚ですが、現在まで分かっていることを簡単に紹介します。

シーラカンスは大きいものだと体調2m、体重90kgにも達する大型の魚です。皆さんのイメージの通り水深数百メートルという深海で暮らしていますが、胃の中から浅い海に住む魚や頭足類の仲間が見つかっているので、水深50m程度の浅い海にあがってくることもあるようです。

そのエサの食べ方ですが、シーラカンスは頭を下に向け、逆さになった姿勢で獲物を探します。シーラカンスは口を開くと、上顎に折りたたまれていた膜が広がって筒状になり、この筒状の口で海水ごと獲物を吸い込んでいると思われます。

実際、シーラカンスの胃からは30~40cmくらいのキンメダイや小型のサメの仲間が丸々見つかっています。

口を大きく開けた状態で冷凍されているシーラカンス標本。

また、多くの魚は浮力調整のために鰾を持っていますが、シーラカンスは鰾の代わりに脂肪の入った袋で浮力調整します。空気の入った鰾では水圧の変化に影響されやすいので、脂肪で浮力調整する方が過ごしやすいのだと思われます。

さらに、シーラカンスは直接赤ちゃんを産む魚としても知られています。

モザンビーク海峡で捕獲された雌のシーラカンスの胎内に30~40cmほどの赤ちゃんが26尾入っていました。

これにより、シーラカンスは胎生または卵胎生の魚だとされていますが、そうなると疑問が残ります。

シーラカンスはどうやって交尾をしているのか?

以前に別の記事で魚の生殖について解説しましたが、胎内で赤ちゃんを育てるのであれば、メスの胎内にある卵に精子を直接送り込む体内受精をするはずです。現に、サメの仲間はクラスパーと呼ばれる交尾器をメスに挿入して交尾します。

魚の生殖の解説記事はこちら↓

ですが、シーラカンスの体には交尾器らしきものがまだ確認されていないようです。そうなると、一体どのように交尾しているのか。それとも全く予想もつかない方法で体内受精をしているのか。

シーラカンスの生殖というのは、彼らが何故絶滅を免れたのかという壮大なテーマにつながるものですから、この謎が明らかにされるのが楽しみです。

 

 

【シーラカンスは人間に近い?】
深海魚であるシーラカンスは、生命の神秘ではあっても僕たち人間からは縁遠い存在に感じるかもしれません。しかし、実際にはそんなことないんです。

それを理解していただくために、シーラカンスのヒレを観察してみましょう。硬骨魚類やサメの胸鰭は羽やウチワのように見えますが、シーラカンスのヒレは、途中まで腕が伸びて、その途中からヒレに変形しているような見た目をしています。

シーラカンスの鰭

このように肉付きのいいヒレを持っているため、シーラカンスは肉鰭類というグループに分類されます。

肉鰭類の仲間はほとんどが大昔に絶滅してしまっていて、現在も生きているのはシーラカンスと肺魚と呼ばれる魚たちだけです。肺魚も他の魚たちとは異なる鰭を持っており、名前の通り肺を持っています。そして、化石で見つかるシーラカンスの仲間には、薄い骨の板で覆われた肺が確認されています。

 

腕のような鰭と肺を持つ魚と聞けばピンとくるかもしれませんが、シーラカンスは水中に住む魚から、僕たちのような陸上に住む脊椎動物への架け橋になった生物の仲間なんです。

魚がなぜ陸に上がったのか。その理由については諸説ありますが、僕たちを含む陸上の脊椎動物が魚から進化したことは間違いないです。

進化の歴史は下等な生物から高等な生物への階段を上るようなものだと勘違いしている人が多いですが、実際には枝分かれのプロセスです。

魚と僕たち四肢動物の進化の枝分かれを大雑把に図解するとこのようになります。

真骨類と呼ばれるのが、僕たちが「普通の魚」と呼ぶタイやマグロなどの仲間です。肉鰭類の仲間は、そうした魚たちとは異なる進化を辿り、そのうちの一部はシーラカンスに、一部は肺魚に、そして一部は最初に陸に上がった脊椎動物になったのです。

実際に、魚と陸上動物の中間の身体構造をもつ生物の化石が発見されています。

例えば、ユーステノプテロンという3億8500万年前の肉鰭類は、姿こそ魚ですが、胸鰭の骨が僕たちの腕に近い構造をしています。

更に有名で決定的なのがティクターリクという生物です。ティクターリクはヒレを持っていますが、ワニのように頭が平たく、目が頭の上にあること、頭と肩の骨が離れて、いわゆる「首」をもっていること、何より胸鰭に肘や手首を持ち、腕立て伏せのような動きができることなど、魚らしからぬ特徴を持っています。

現生のシーラカンスも先ほど話したように、肉質のヒレなどの特徴がこうした肉鰭類と共通しています。深海に住む過程で肺は退化したようですが、その名残を残し、化石で見つかっている仲間たちとほとんどん変わらない姿で生き残ってきました。

つまり、シーラカンスは僕たちの祖先というわけではないですが、タイやマグロなどの魚よりも僕たちに近い仲間ということになります。そう考えると、未知の深海魚であるシーラカンスが、少し身近な存在に感じられますね。

 

 

【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

サメをはじめとする海洋生物の生態や環境問題などについて発信活動を展開。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇も行い、サメ解説のライターとしても活動。水族館ボランティアの経験あり。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

 

 

 

 

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