野放しネコ擁護論を完全論破してみた【外来種ネコ問題②】

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【ネコの最大の問題点】
ネコが非常に厄介な侵略的外来種であることはもう分かっていただけたと思いますが、ネコが起こす被害以上に深刻で面倒くさい問題があります。

ネコの最大の問題点は、あまりにも可愛くて、多くの人に受け入れられていることです。

言うまでもないことですが、ネコは非常に可愛く、ペットして人気があります。しかも、かなり昔からいる馴染みのある存在なので、ネコの問題を取り上げても重大さが認知されにくいという難しさがあります。

可愛すぎるネコちゃん

先述の通りイエネコは人間が作った家畜なので、数十億年という壮大な生物の歴史の中では新参者でしかないのですが、人類の歴史というごく限られた期間で言えばだいぶ昔からいる存在です(それでもホモ・サピエンス誕生からしたらだいぶ最近ですが)。

対して、生物多様性の保全や環境保護、外来種問題などの概念は、僕たちの社会の基盤を支える重大なものですが、その重要性が認知されたのはここ数十年のことです。

そうした事情もあるためか、問題の深刻さに比べて、ネコという外来種はあまりにも放置・容認されています。逆に、生態系保全のための対策の方がマニアックで口うるさい取組みかのように扱われかねないという、嘆かわしい現状があります。

現に、ここまで影響が深刻な外来種であるにもかかわらず、今も多くの家庭で平然と放し飼いにされていて、道端でエサをやっている人も多くいます。

上二つの写真は、どちらも生態系保全の観点から見たらはっきり言って地獄絵図ですが、ほのぼのした光景に思う人の方が多いはずです。

 

まして、ネコを駆除しようなんて言い出したら大変です。

僕の主張は最初にも言った通り「野放しネコをゼロにすべき」です。これを達成するには、飼い主が完全室内飼育を実施するだけでなく、現在野外に生息しているノネコ、野良猫をすべて捕獲し、必要に応じて殺処分をする必要も出てきます。

しかし、ネコを駆除や殺処分を肯定しようものなら、それだけで感情的な批判や誹謗中傷、デマや陰謀論まで総動員して袋叩きをする危ない人たちが現れます。

実際に、生態系を守るために奄美大島で行われているノネコ管理計画に関して頓珍漢な記事や根拠のない陰謀を主張する記事やブログが湧き出していて、Twitterではよく論争になっています(実際に『奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画』を読めばほとんどの批判は木端微塵になるはずですが、何故か読まない方が多いようです。読む能力がないのかもしれません)。

また、アメリカの研究者スタンリー・テンプル氏は、野放しにされたネコによる捕食について研究発表しただけで嫌がらせや脅迫を受けるなんてこともあったそうです。

“単に事実を明らかにすることが、ネコ愛護活動家たちの痛いところを突くことになるとは、想像すらしていませんでした”

“嫌がらせの電話や不快なヘイトメールに対応するのはたいへんでした”

(どちらも『ネコ・かわいい殺し屋 生態系への影響を科学する』のp47より引用)

僕自身も、前に「絶対に野に放ってはいけない厄介な外来種」というテーマの動画でネコを紹介した際に、「ネコ狂信者」とでも呼ぶのがお似合いの人々から非難のコメントを数多くうけました。

こうしたことを考えると、ネコを擁護したいあまりに頭の中身がオッパラパーになっている人が大勢いるようです。

 

【野放しネコ擁護論を論破してみた】
「ネコは侵略的外来種であり屋外から排除すべき」という主張をする際は、あらゆる反論を想定しなければなりません。

そういう事情もあり、今までに実際にあった反論をまとめて、僕なりに処理してきました。ネコ問題に対してTwitterで騒いでいる人は、もうこれでおさめてください。

 

反論1「猫は昔からいるから外来種ではない」

→外来種であるかどうかは移入時期に関係ないので、仮に卑弥呼の時代から日本にいたとしても外来種は外来種です。

 

反論2「ネコは野生動物なので屋外にいて当然」

→何度でも言いますが、人間が作り出した家畜なので、本来いるべき野生動物ではありません。チワワやブルドッグが放置されているのと同じくらい異常事態です。

 

反論3「うちのネコちゃんは動物を襲ったりしない」

→襲います。複数の研究や映像記録、目撃情報によって、野放しにされた飼い猫も動物を襲うことが証明されています。室内で飼ってください。

そもそも在来種を捕食する以前に、大切なペットを一時的にでも放り出すのは、飼い主失格だと僕は思います。

 

反論3「人間の方が環境を壊している」

→僕は今ネコの話をしています。話を逸らさないでください。そして、「外来種を移入してしまう」も人間が起こした環境破壊であるため、ネコ問題も人間が責任をもって対処すべきです。

 

反論4「ネコよりも〇〇の方が生態系に影響を及ぼしている」

→例えば人間の死亡原因には交通事故、生活習慣病、ウイルス、戦争などがありますが、あなたは死亡原因ワースト1位が解決するまで他の問題には一切取り組まないのでしょうか。

生態系や希少動物を守るために、ロードキルや密猟などの問題に対処するのと同時並行でネコ問題解決に取り組むのは何も不自然ではありません。

 

反論5「稲だって外来種だ!お前は外来種だってだけで悪者にするのか!」

→外来種と侵略的外来種を分けて考えましょう。何度でも言いますが、外来種=悪ではないので、外来種だから問題視しているのではありません。生態系や人間社会に重大な影響をもたらす侵略的外来種だから対処が必要なんです。

 

反論6「外来種に罪はないから駆除するのはおかしい」

→罪はないけど害はあります。プラスチックや放射性物質と同じです。それ自体は悪いことをしようという意思のないものですが、害があるから処理しなければいけません。

そもそも「罪」というもの自体が人間社会でしか通用しない概念なので、人間以外の動物に対して「罪を犯したからバツを与える」とか「罪がないから命を奪うな」と論じるのは、マジで意味がないと思っています。

 

反論7「そもそもなんで希少動物を守らないといけないのか」

→ちょっとこれは濃いめに説明します。

僕たちの生活は水、空気、食料、その他あらゆる恩恵をもたらす生態系サービス無くして成り立たないので、希少種を含む生物多様性を守ることは社会基盤を支えることになります。

分かりやすいように例え話をします。人間社会を家だとしたとき、生態系は家の地盤や基礎に相当し、希少種はその柱の留め具です。

たしかに基礎だけでは家として成立しないので人間に都合がいいように色々付け足していった方が住みやすいです。そして、留め具が少しとれてしまっても、家は簡単には崩壊しないかもしれません。「希少種がいなくなっても誰も困らない」とか言っちゃう人は、恐らくこれを根拠にしていると思われます。

しかし、家の仕組みがよく分かっていないのに留め具とか部品を次々取り外していったら、家は老朽化や地震に対してもろくなります。最悪の場合、大事な柱を支える部品を引っこ抜いた瞬間に家全体が崩壊、なんてこともあり得ます。

生態系を守ることは、社会という家が崩壊して結果的に僕たちが困らないようにする取り組みなんです。

以上が超簡単な理由の説明です。ただ、このテーマ自体は一冊の本が書けてしまうくらい奥深いテーマなので、とりあえず疑問に思った方は以下のような書籍を読むことをお勧めしておきます。

 

ただ、逆に僕は聞きたいんですが、何故あなた方の個人的な「ネコちゃん絶対信仰」のために希少種を絶滅させていいと思いあがっているのでしょうか。

「なんで希少種を絶滅させちゃいけないんですか?」とか自信満々に聞いてくる前に、まずそこの論理を固めてから出直してきなさい。

 

反論8「ネコを駆除したり閉じこめたりするのは可哀想」

→いきなりそれまでいなかった捕食者をまき散らされた在来種たちもめちゃくちゃ可哀想です。

加えて言えば、いつ車にひかれたり捕食者に襲われたり病気になるかも分からない野生環境にネコを放り出すことは「可哀想」ではないのでしょうか。ネコが好きだというならこの辺も考えて欲しいです。

 

反論9「ネコが鳥とかを襲うのは弱肉強食という自然の摂理だから仕方ない」

→狩る側が強い、狩られる側が弱いという弱肉強食の理屈自体が、生物同士の関りのほんの一部しかとらえていないものであり、自然の摂理でもなんでもないです。というか、その理屈なら僕はネコより強いのでネコを狩っても問題ないですね?

 

反論10「ネコに餌をあげれば動物を殺さないから餌付けすればいい」

→ネコは食べるため以外の目的で動物を殺すことがあり、人間から餌をもらっている野良猫や飼い猫個体でも屋外で動物を仕留めていることが複数の研究で確認されています。

このついでに野放しネコへの餌付けについて考えたいと思います。

野放しネコにエサをやると

・栄養状態が良くなってネコが増えやすくなります。

・ネコが増えると、生態系への被害や人的被害が悪化します。

・増えたネコがさらに子供をたくさん産むのでさらにネコが増殖します。

・そのネコがさらに被害を起こし、そしてネコたちも交通事故などによって数多く死んでいきます。

エサやりしている人にやめるように言っても「そんな決まりはない」とか「ネコちゃんが可哀想だ」と反論してきますが、彼らはネコによって起こる問題への責任をとらないし、ネコを交通事故などから守ることもありません。なぜなら、彼らは飼い主ではないからです。

このように冷静に考えてみると、野放しネコへの餌付けというのは完全に終わっています。

他人に迷惑かけ、生態系を破壊し、事故などで死ぬネコの数を増やし、でも自分は一切責任をとらず「ネコちゃん可哀想」だけを叫ぶ。マスター・オブ・自己中の称号を与えた方がいいですね。

 

 

反論11「ネコを室内飼育できない人はどうすればいいんだ」

→そもそも完全室内飼育が実施できないペットを飼おうとするのが間違いです。

僕がワニを飼育するとして「うちって狭いし、プールもないから、僕がいないときは放し飼いにしてもいいよね」って言いだしたら全力で止めますよね。同じです。

サメを飼うなら大きな水槽が必要なのと同じように、ネコを飼うなら十分に運動ができて脱走ができない屋内環境が必要なんです。

 

反論12「ネコを怪物みたいに言うな」

→人気映画『ジュラシックワールド』に登場するヘンリー・ウー博士のセリフを思い出します。

“Monster is a relative term. To a canary, a cat is a monster.”

ざっくり意訳するなら「怪物とは相対的な言葉だ。カナリアにとってネコは怪物である」という意味です。僕たちは体が大きい霊長目の動物であり、しかもネコは自分たちで作りだした家畜なので可愛がることができるだけです。

ほとんどの鳥類、小型哺乳類、その他多くの動物にとって、ネコは捕食能力が高いうえに短期間で増殖する化け物です。

 

反論13「お前がネコ嫌いなだけだろ」

→ネコは好きですよ。子供の頃イリオモテヤマネコのこと「イリオモテニャーニャー」って呼んでいたくらいネコちゃん大好きです。ネコと仲良くなりたくて鳴き声真似していました。

ネコが好きだからこそ、飼育者の方々にはネコを危険から守り、生態系への影響もなく他人に迷惑をかけない完全室内飼育をして欲しいのです。

 

反論14「ネコがだいぶ前からいるのに固有種が絶滅していない島もあるぞ」

→固有種が絶滅してからでは手遅れなのに、絶滅していないから問題を放置していいという論理の組み立て方はアンポンタンです。手遅れになる前にネコを排除するべきです。

 

反論15「ネコが屋外からいなくなったらネズミが増えて問題になるぞ」

→仮にその可能性があったとしても、ネコが他の在来種を捕食する事態を野放しにしていい理由にはなりません。どうしても公衆衛生などの公的な目的のためにネコを屋外に放つなら、徹底管理すべきです。

避妊手術・予防接種を受けさせたネコを決められた頭数だけ放ち、バイオロギングなどで行動範囲や捕食行動などをモニタリングして、どの程度ネズミ駆除に効果があったのかも検証しなければなりません。

どこで何を食って、何匹子供産んで、どんな病気を媒介しているか分からないネコが、何匹かは分からないけど大量にうろうろしていて、ネズミ駆除にどれだけ効果があるかも分かっていない。そんな現状を「ネズミ対策」だけで正当化するのは馬鹿げています。

 

反論16「希少種がいる島とかならしょうがないけど、そうじゃない場所ならネコが屋外にいてもいいだろ」

→お忘れかもしれませんが、日本の国土そのものが固有の生物が沢山生息する巨大な島です。さらに、リョコウバトをはじめ、当初捕りつくせないくらい沢山いたはずの動物が、人間の影響で絶滅した事例もあります。

何十年か後に、ハシブトガラスやスズメなどの種が同じ道を辿らないという保証はどこにもありません。

 

 

反論17「野良猫を見て癒されている人が沢山いるんだぞ」

→バス釣り業界とかもそうですが、侵略的外来種を放置しなきゃ成立しない趣味や産業などぶっ潰れてしかるべきです。

加えて言わせてもらうなら、可愛い野放しネコのインスタ映え写真の裏には、ロードキル、感染症、餓死、他の捕食動物、動物虐待者などによって死んでいった無数のネコたちがいます。ネコのことも考えたうえで、彼らに屋外にいて欲しいと思いますか。

 

反論18「ネコは神聖な動物である。ネコには人権がある」

→帰れ。

 

【TNRは何も解決しない】
ここまで駆け足で色んな反論を処理してきましたが、ちょっと丁寧に答えたい反論があるのでご紹介します。それが「TNRされたネコなら屋外にいてもいいじゃないか」というものです。

 

TNRという言葉が初耳の方のために説明すると、Trap / Neuter / Returnの頭文字をとった言葉です。つまり、罠でネコを捕まえ、去勢手術を行い、元居た場所に戻すという取組を指します。目印として耳にカットが入り桜の花びらみたいなので「さくらねこ」なんて言われたりします。

耳にカットが入ったネコ

去勢してネコを元の場所に戻すので、そのネコは子供を増やせません。つまり、殺処分をすることなく、屋外で辛い生活をする野放しネコの数を減らすことができる、人道的な対処法として注目を集めています。

しかし、TNRは生態系保全と公衆衛生の問題に対して何の解決にもなりません。

去勢をしたところでネコの狩猟本能は削がれませんから、生きている間は在来種を狩り続けます(去勢したり餌をもらい続ければ動物を殺さないと主張する人もいますが、完全なデマです)。

また、去勢手術のついでに予防接種を受けたとしても、ほとんどがその一回で終わってしまい、継続的な接種を受けることはないです。結果的にトキソプラズマや狂犬病のリスクがあるネコがウロウロすることになります。

僕が今まで調べた限りでの感想ですが、ネコのTNRというのは「ネコが起こす問題が話題になっているけど殺処分はしたくない。だから去勢して野に放って勝手に死んでいってもらおう」という、責任逃れのように思えます。

TNRがやっているのは在来種を救うことでも、ネコを救うことでもありません。殺処分という直接的な方法を採用しないことで人間が気持ちよくすることです。こんなことではネコ問題の根本的な解決にはなりません。

次ページ:深刻なネコ問題に対して僕たちに何ができるのか【外来種ネコ問題③】

 

【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

サメをはじめとする海洋生物の生態や環境問題などについて発信活動を展開。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇も行い、サメ解説のライターとしても活動。水族館ボランティアの経験あり。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

 

 

 

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