おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!
冬になって寒くなってきましたが、今回はそんな寒さを忘れるくらい燃え上がる炎上必須のテーマを取り上げます。
それが、みんな大好きネコちゃんです。
ネコが好きなこと自体は全く問題ですし、何なら僕もネコは好きです。
そんな大人気のネコが、ブラックバスやカミツキガメと同じように侵略的外来種であることはご存知でしょうか?
多くの人の感覚では、屋外でくつろいでいるネコというのは日常風景の一つでしかないかもしれませんが、実はネコは絶対に外に放ってはいけない存在なんです。
今回は侵略的外来種ネコについて解説をしていきます。
目次:
1ページ
【ネコは外来種?】
【侵略的外来種ネコ】
【ネコが起こす被害】
【被害を加速させる繁殖力】
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2ページ
【ネコの最大の問題点】
【野放しネコ擁護論を論破してみた】
【TNRは何も解決しない】
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3ページ
【ネコ問題について何ができるか】
【屋外にいるネコの排除】
【完全室内飼育を実践する】
【環境や生き物に関する発信の強化を!】
【ネコは外来種?】
ネコが起こす被害についてこれから解説していきますが、ここで問題にしているのは、飼い主がいない、または飼い主が野外での自由行動を許しているネコたちです。こうしたネコを僕は「野放しネコ」と呼びます。
そして、僕の主張は「野放しネコを完全にゼロにすべき」です。
屋外の飼い主のいないネコは全て捕獲し、飼い主のいるネコは例外なく完全室内飼育をするべきだと僕は考えています。過激に聞こえるかもしれませんが、僕の記事を全て読んでいただければ納得してもらえると思います。
では、まずネコが外来種であるという議論の前提から説明します。ネコが外来種と言われると意外に思う人が多く、これだけで何故か怒りだす人までいるのですが、「外来種」という言葉の定義を理解すれば、猫が外来種であることは明らかです。
僕は別の記事でも外来種について触れていますが、外来種の定義を確認すると、移入時期に関係なく、人間の手によって、本来の生息地とは別の場所に移動された生物を指します。
前回の外来種を解説した記事はコチラ↓
「猫は昔から日本にいた」という理由でネコが外来種であることを否定する人がいますが、外来種であるかどうかは移入時期に関係ないです。古代エジプトだろうが弥生時代だろうが、人間が持ち込んだのであれば外来種です。
そもそも僕たちが普段「ネコ」と呼んでいるのは厳密にはイエネコという動物ですが、彼らは本来の野生動物ではありません。「イエネコ」はリビアヤマネコという野生種を品種改良して作った動物なので、ホルスタインやチワワ同様に家畜です。
元々は人間の穀物を狙うネズミなどの小動物を狩る目的で重宝されて、その後世界中に広まったとされ、やがてペット化したとされています。
イエネコは標準和名のイエネコ、ペットにされている飼い猫、山や森の中で野生化したノネコ、都市部でエサをもらったりしながら生きている野良猫など、複数の呼び方を持ちますが、生物学的には全て同一種です。Felis catusという学名を与えられた家畜なのです。
人間が作り出した家畜は「本来の生息地」というのを持ちませんから、一般にペットとして販売されているネコや街中などにいる野良猫は、全て外来種ということになります。
ちなみに、絶滅危惧種であるツシマヤマネコやイリオモテヤマネコ、そして最近人気が高まっているスナネコなどは、生物学的にイエネコと別種にされています。人間が本来の生息地から勝手に別の場所に移さない限り、外来種にはなりません。

【侵略的外来種ネコ】
ネコが外来種であることは分かったと思いますが、外来種である=問題というわけではありません。例えば僕たちが普段食べている鶏肉や野菜も外来種です。
しかし、中には生態系や人間社会に重大な影響を及ぼす外来種も存在しており、こうした外来種は侵略的外来種と呼ばれます。
侵略的外来種が起こす問題は様々ですが、僕なりに大きくまとめるとこのようになります。
<生態系への影響>
捕食・・・外来種が在来種を食べてしまう
競合・・・外来種が獲物や生息場所などを在来種と奪い合ってしまう、あるいは感染症などの間接的な要因で在来種を駆逐してしまう
遺伝子攪乱・・・外来種が在来種と交雑してしまう
<人間社会への影響>
人的被害・・・人間がその動物に襲われてケガをしたり病気をうつされたりする
産業被害・・・畑や養殖場を荒らされたり家屋などを壊される
以前に載せた図も載せておきます。
では、イエネコが起こす問題はこれらのうちどれかと言えば、
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、全てです。
僕たちがネコちゃんと呼んで親しんでいるイエネコたちは、在来種を捕食し、競合して、交雑までしてしまい、さらに人間にも被害をもたらすマジでヤバい外来種なんです。
【ネコが起こす被害】
では、ネコが起こす被害をもう少し具体的に見ていきましょう。
<捕食>
ネコは捕食者として優れた能力をもったハンターであり、数多くの小型哺乳類や鳥類、爬虫類、昆虫など幅広い生物を襲います。
さらに、いわゆる捕食とは別にいわゆる「遊び」でハンティングを行うこともあり、家や道端で餌付けをされていたとしても、数多くの動物を殺してしまうことがあります。
2013年に米国の研究者が国内のネコによる動物の死亡数を詳細に推定したところ、以下のような結果が得られました。
・鳥類:年間約1.3億~40億羽
・哺乳類:年間約6,3億~223億頭
・両生類:年間約9500~3億匹
・爬虫類:年間約2.6~8.2億匹
※『ネコ・かわいい殺し屋 生態系への影響を科学する』p105より引用
あくまで米国の記録ですが、飼い主のいる・いないに関わらず、野放しネコがこれだけの数の動物を毎年殺しているんです。
ネコの被害が特に重大になるのは、ネコが来るまでは捕食性の哺乳類のいなかった島などの環境です。日本で言えば、小笠原諸島でカツオドリやオナガミズナギドリなどが捕食されていることが確認され、奄美大島ではアマミノクロウサギをはじめとする希少種がネコの被害を受けています。海外でもネコが持ち込まれたことによってその島固有の鳥類や海鳥が激減、あるいは絶滅してしまった事例があります。
<競合>
猫が食べてしまう小動物は他の在来種の獲物でもあるわけですから、増えすぎたネコが在来の捕食者と限られた資源を奪い合うことになります。これが競合の問題です。
さらに、イエネコを経由してネコ免疫不全症候群ウイルス(FIV)やネコ白血病ウイルス(FLeV)が在来種のネコに感染してしまう危険性があり、実際にこうした病気が、絶滅危惧種であり日本の固有種であるツシマヤマネコに感染してしまった事例が確認されています。
<遺伝子攪乱>
イエネコはリビアヤマネコを品種改良して作った雑種であるため、近縁種であるヨーロッパヤマネコの仲間と交雑することが可能です。そのため、その地域固有のネコたちの遺伝子が家畜のネコの遺伝子と混じってしまい、野生種が遺伝子的に絶滅することになります。
つい最近のニュースですが、スイスに住んでいるヤマネコとイエネコの交雑が進んでしまいる事態に警鐘を鳴らす記事が話題になりました。
どうやらヤマネコの方がイエネコよりも性的魅力があり、野放しにされたイエネコがヤマネコと好んで繁殖してしまうようです。このままいくと野生のヤマネコ種は実質絶滅してしまいます。
<人的被害・産業被害>
野放しにされたネコは、他人の敷地に入って糞尿をしたり、植木や車などを傷つけるなどの被害を起こします。また、ネコの鳴き声がうるさくて困っているという人も多いはずです。
個人的にこれらの被害は生態系にもたらす影響に比べれば小さいことにも感じますが、そもそもネコは野生動物ではありませんから許容する理由はありませんし、もしその野放しネコが飼いネコであれば、他人に迷惑をかけている飼い主は管理者として責任を追及されるべきです。
また、ネコは人間にも感染する病気、いわゆる人獣共通感染症を媒介します。
ネコはトキソプラズマ症という病気を引き起こす寄生虫を腸内にもっていることがあり、この寄生虫がネコの糞を通じて広まります。このトキソプラズマに人が感染すると、免疫機能の低下、胎児の流産や形態異常、統合失調症などの症状を引き起こす危険性があります。
さらに恐ろしいのが狂犬病です。
狂「犬」病と日本語で呼ぶのでイヌだけの病気のように思われがちですが、狂犬病は人を含む全ての哺乳類が感染します。実際に、海外ではネコに噛まれたことで狂犬病に感染して死亡するという事故が報告されています。
幸い日本は狂犬病清浄国ですが、現在狂犬病の予防接種が義務付けられているのはイヌだけです。しかも、反ワクチンとかいう頭の悪い思想にとりつかれたカルト集団が、義務付けられた予防接種にすら反対しているという懸念もあります。
万が一日本に狂犬病が持ち込まれてしまった時、予防接種がされておらず、しかも人々が全く警戒していない野放しネコは、きわめて厄介な狂犬病の媒介者になり得ます。
【被害を加速させる繁殖力】
これらの被害にくわえて重大なのが、ネコの驚異的な繁殖力です。
ネコは交尾が刺激となって排卵する交尾排卵を行うため、オスとメスが交尾すればかなりの確立で妊娠します。妊娠期間たったの2カ月で平均5匹の子供を産み、その子供も4~6カ月たてば繁殖可能になります。さらに、少数のネコしかいなかったとしても、近親交配をすることで短期間で増殖します。
たとえわずかな数だとしても、島などの閉鎖的な環境にネコが持ち込まれれば、その生態系の保全は絶望的です。
以上ご紹介したように、生態系への影響が甚大であるイエネコは、日本および世界の侵略的外来種ワースト100にも載っています。
外来種と聞くとアリゲーターガーやカミツキガメなどいかにも外国から来たような大きくて危険な生物の印象が強いかもしれませんが、ネコはそうした動物たちに並ぶ、あるいはそれ以上の侵略的外来種です。
何度でも言いますが、絶対に野放しにしてはいけません。
次ページ:野放しネコ擁護論を完全論破してみた【外来種ネコ問題②】
【Writer Profile】
サメ社会学者Ricky
1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。
サメをはじめとする海洋生物の生態や環境問題などについて発信活動を展開。
本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇も行い、サメ解説のライターとしても活動。水族館ボランティアの経験あり。
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shark.sociology.ricky@gmail.com
「ネコは侵略的外来種?そのヤバい実態を解説!【外来種ネコ問題①】」への1件のフィードバック