ネコザメやツノザメには毒があるのか?噂についてマジレスしてみた

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

突然ですが、あなたは、サメにがあると思いますか?

よくテレビで「海の危険生物特集」みたいな番組が放送されており、カツオノエボシやヒョウモンダコなどの毒生物が登場します。そうした番組でサメも紹介されますが、毒ではなくて「噛まれる」とか「食われる」という取り上げ方がほとんどです。

ですが、一部のWEBサイト、そして水族館の特別展示で「サメに毒がある」と紹介されることがあります。

果たしてサメに毒はあるのか?今回はこのテーマを解説していきますので、よろしくお願いいたします!

 

目次:
【そもそも毒とは何か】
【2種類の毒】
【Venomous shark】
【Poisonous shark】
【海洋汚染とサメの毒】

 

 

【そもそも毒とは何か】
サメの毒を語る前に、まず「毒とは何か」ということをおさらいしておきます。

サスペンスが好きな方なら青酸カリとかヒ素とか、いくつか毒の名前は知っていると思いますが、実は僕たちが日常的に飲んでいるものも毒になり得ます。

例えば、水のことを毒だと思って飲んでいる人はいないと思いますが、水も尋常ではない量を一気に飲むと死に至ります。実際に海外で、以下に大量の水を飲めるかを競うというイベントで6.5リットルもの水を飲んだ女性が死亡したという事故が起きています。

事故に関する記事はコチラ↓

また、皆さんが普段飲んでいる薬にも「1回1錠、1日3回だけ」とか飲む量が決まっていますよね。市販の睡眠薬も一気飲みしたら命にかかわるという話は聞いたことあると思います。

適量なら薬になるものも、量や使い方を誤ると毒になるわけです。

 

ここを踏まえたうえで「毒とは何か?」を考えると、毒とは「ほんのわずかな量、例えば数ミリグラムほどでも、その生物の体に苦痛や機能不全、あるいは死をもたらすもの」と定義することができます。

 

 

【2種類の毒】
生物がもっている毒というのは、使い方で2種類に分けることができます。

英語には毒を持つ生物に対する形容詞として「Venomous」と「Poisonous」があります。

「Venomous」というのは、噛む・刺すなどの方法で毒を相手に注入してくる生物を指します。イメージしやすいのはコブラなどですね。

一方で「Poisonous」というのは、体表面や体内に毒を持っているものです。要は、自分が食べられたりしたときに毒が効果を発揮するものですね。

なので、ほとんどの毒蛇というのは「Venomous snake」と呼ぶのが正しく、ヤドクガエルは「Poisonous frog」と呼びます。日本語だとどちらも「毒」ですが、このような区別があるわけですね。

 

では、Venomous sharkとPoisonous shark、それぞれについてみていきましょう。

 

【Venomous shark】
Venomous sharkというと、噛んだ歯から毒を注入する殺人ザメみたいのを想像するかもしれませんが、そんなサメは噂レベルでも聞いたことがないですし、たぶん実在もしないです。

では、サメのどこに毒があるかと言えば、背鰭の棘です。

全てのサメではないですが、ネコザメ目、そしてツノザメ目の一部のサメは、鱗が変形してできた棘を持っています。そして、一部の図鑑や水族館の解説によれば、この棘に毒があると言われています。

ネコザメの背鰭の棘

ただ、この毒について調べても、なかなかはっきりした情報が出てこないです。

「毒がある」と記載されているサイトや、毒があることを前提に話を進めている記事はあるのですが、どんな毒がどんな仕組みで注入されるのか、その辺の細かい情報が全然見つかりません。

例えばツノザメの仲間であるアブラツノザメに関しては僕が持っている図鑑二つで棘の毒について記載があるんですけど、どうも記載の仕方が曖昧です。

“….spine at the front of each dorsal fin can inflict painful wounds with a mild venom produced by a gland at the base of the spine- as testified by generations of commercial fishing workers and anglers.” (『The Encyclopedia of Sharks』p32より引用)

棘の根本に毒腺があると記載しつつも、「たくさんの漁師や釣り人から証言されるように」と、根拠が体験談ベースなんですよね。

“The dorsal fin spines are said to have venom glands associated with them, but there are few reports on the effects of the poison.”(『Sharks of North America』p56より引用)

毒腺があると言われているが、その毒の効果についての報告はほとんどない、ということですね。

なんだかなって感じしません?信憑性が微妙ですよね。

 

ちなみに、ネコザメについても論文とかを結構探したんですが、こちらも信用できる情報ソースが見つからなかったです。なお、先ほど触れた『The Encyclopedia of Sharks』に、ポートジャクソンネコザメというオーストラリア近海に生息するネコザメに毒があるという記載はありましたが、こちらも詳しいことは分かりませんでした。

ネコザメの毒については、どうも某水族館の毒生物展示で「毒針をもつ」という風にネコザメが紹介されてしまっていて、それをもとに一部のブロガーやYouTuberが「ネコザメに毒がある」と断言しているみたいです。

科学において存在否定は難しいですし、一部あるという専門家もいるみたいなのでちょっと言いづらいですが、僕はツノザメやネコザメの棘には、いわゆるミノカサゴやオニダルマオコゼが持つような毒はないと思います。

その理由ですが、例えばアブラツノザメは世界中で漁獲されていて、日本でも青森とか新潟で沢山消費されているし、まとまって漁獲されるから水産系の解剖実習でめちゃくちゃ使われるサメです。ネコザメも日本近海に沢山生息していて、全国の水族館に展示されていて、子供が触れるタッチプールにも泳いでいます。

しかも、この二種を解剖する際に、年齢を調べるために棘も調べられます。そのため、毒を注入するための毒腺や溝があればすでに見つかっていそうですが、ごく一部「この本に書いてあった」的な情報しか出てこない。これは、ないと思っていいのではないでしょうか。

 

ここからは僕の想像なんで話半分で聞いて欲しいですが、

ツノザメやネコザメの仲間にトゲに刺された漁師か釣り人の傷口に雑菌とかが入って化膿してしまった。

それを「毒がある!」と騒いだ話に尾ヒレがついて一部に広まった。

いつの間にかはっきりした根拠のある話みたいになって一部の本に記載された。

水族館で「毒毒生物展」みたいのを開く時に、「ネコザメの背鰭には毒針があるって噂があるから、ネコザメも毒生物として展示しようぜ」みたいな、よく調べもせずにテキトーなことを言う人がいて、ネコザメに毒がある設定が一般に広まってしまった。

これが真相なのかなって個人的には思います。

ただ、これは現時点で僕が調べたうえでの考えなので、もしツノザメやネコザメの棘に毒があるという証拠や、その仕組みなどを詳しく説明した論文を持っている方がいれば、ぜひ僕に連絡を頂きたいです。「ツノザメやネコザメには毒がある」というテーマの解説動画で謝罪に代えさせていただこうと思っています。

 

 

【Poisonous shark】
Poisonousなサメについて、「毒を持つサメ」と言ってしまっていいのか微妙ですが、サメを食べることで食中毒になった事例はあります。

熱帯や亜熱帯に生息している大型の魚を食べると、シガテラ毒という食中毒に当たることがあります。これは、その魚が体内で水から作っている毒というわけではなく、生物濃縮によって蓄積されていきます。

生物濃縮を簡単に言えば、食物連鎖を通して、化学物質が体内に蓄積していく現象です。

毒を持っている藻の仲間を小さな魚が沢山食べることで体内に毒が溜まっていき、その小さな魚をさらに大きな魚が食べることで、大きな魚の脂肪などに毒が溜まっていきます。

毒を持つ魚として有名なものにフグが挙げられますが、実はフグのもつテトロドトキシンも、この生物濃縮によって獲得されます。

シガテラ毒を持つとして有名なのはハタやウツボ、カマスの仲間などですが、温かい海のサンゴ礁などに生息するネムリブカというサメでもシガテラ毒の報告があるようです。これをもってネムリブカを「毒ザメ」とするのは微妙ですが、積極的に食べない方がいいかもしれないですね。

他にも、グリーンランド近海などの冷たい海にニシオンデンザメという400歳以上生きる目から寄生虫をぶら下げたすごいインパクトのあるサメがいて、このニシオンデンザメの肉を食べて中毒症状を起こした事例は報告されています。

以前にニシオンデンザメを解説した記事はコチラ↓

 

それが理由で「ニシオンデンザメには毒がある」と紹介されることがありますが、本当に毒があるのか、あるとしたどんな毒か、はっきりとは解明されていません。ちなみに、現地では発酵させたニシオンデンザメの肉が売っているそうです。

また、サメやマグロ、ブリなど大型魚の肝臓を食べるとビタミンAの過剰摂取で中毒になる危険があると、厚生労働省より注意喚起がされています。

サメの肝油は栄養があるということで一部の人が好んで飲んでいたりしますが、飲み過ぎには注意した方がよさそうですね。

 

 

【海洋汚染とサメの毒】
生物濃縮に触れたついでにどうしても最後に話しておきたいのが、海洋汚染の問題です。

生物濃縮によって蓄積されるのはシガトキシンやテトロドトキシンのような自然にある毒だけではありません。同じプロセスによって、人間が垂れ流した汚染物質をサメや他の動物たちがため込んでしまうことがあります。

日本の四大公害の一つである水俣病は、工業排水に含まれるメチル水銀が生物濃縮によって魚介類に蓄積したことが原因でした。汚染されていると知らずに食べた人々が、重度の水銀中毒を起こしたのです。

水俣病のイメージ図

ちなみに、メチル水銀は自然でも発生するため、マグロ、サメ、イルカなどの高次捕食者の肉はどのみち食べ過ぎないようにと注意喚起されています。食べても大丈夫ですが、一般人なら週何回程度、妊婦さんならさらに少ない頻度で、という注意事項が厚生労働省から発表されています。

厚生労働省:魚介類に含まれる水銀について↓

水銀の他にも、現在は国際的に使用禁止されている殺虫剤のDDTや、カネミ油症事件で話題になったPCBも、生物濃縮を起こします。

どちらも今はその危険性が認識されている物質ですが、自然環境ではなかなか分解されないために、一度漏れ出してしまうと長期間にわたって悪影響をおよぼします。

こうした汚染物質が体に溜まっていくと、その生物の健康や生殖能力に影響が出る危険性があります。公害事件と同じように、すぐに分かりやすい影響が出なくても、気づいたら重度の中毒になって手遅れということがあり得るんです。

 

さらに懸念されるのが、海洋プラスチック問題です。

海を漂うマイクロプラスチックは、生物濃縮を起こす汚染物質を吸着することが確認されており、海流に乗って汚染物質を広げてしまいます。

さらに、プラスチック自体に使われている添加剤も有害な物質を含んでいることがあり、マイクロプラスチックを誤飲するプランクトンや小魚を通して、その有害物質が生物濃縮を起こします。

海洋プラスチック問題についてはこちらも参照↓

これらの物質が海洋生物にどんな影響をもたらすのか?

それを食べた人間に一体何が起こるのか?

はっきりしたことは分かっていませんが、分かった頃には汚染まみれで時すでに遅しとなっているかもしれません。

先ほど話したように「毒を持つサメ」という話は疑わしいところもありますが、僕たちが毒にまみれたサメを作ってしまう、なんてことがないようにしていきたいですね。

 

 

【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

サメをはじめとする海洋生物の生態や環境問題などについて発信活動を展開。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇も行い、サメ解説のライターとしても活動。水族館ボランティアの経験あり。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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