悪魔のサメ!ミツクリザメは実は日本に馴染みのあるサメだった?

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

以前に大人気の深海ザメであるラブカを紹介しましたが、今回はラブカと並んで大人気のあの深海ザメ、ミツクリザメを解説します!

よく「悪魔のサメ」とか「深海のエイリアン」とかキャッチーなフレーズで紹介されることが多いですが、果たしてどんなサメなのか?

意外なミツクリザメの素顔を紹介していきますので、よろしくお願い致します!

目次:
【ミツクリザメはどんなサメ?】
【名前の由来は日本人?】
【突き出た吻と飛び出す顎】

 

【ミツクリザメはどんなサメ?】
紹介するまでもなくみたことある人が多いと思いますが、一応お見せするとこんな感じです。

長くて平たい吻が特徴的で、体がピンク色でアゴが飛び出していて、他のサメと見間違いのない見た目をしています。

ミツクリザメと言えば、いかにも「深海のモンスター」というこの姿が有名ですが、実はこれは死んでしまった後の姿です。

実際に生きているミツクリザメはこちらです。

吻が長いのは同じですが、体色はもう少しグレーっぽく、アゴもしっかり収まっています。

こうしてみると、不思議な見た目なのは変わらないですが、シュッとしていて、わりと可愛い顔をしていますね(写真の子は弱って変な体勢になっていますが)。

ミツクリザメについてもう一つ意外な点を紹介すると、結構でかいです。

日本で漁獲されてニュースになったり水族館で展示されるミツクリザメは、だいたい1〜2mくらいで、僕もそれくらいの個体しか見たことないんですが、実は成長すると3mを超え、5〜6mまで大きくなるという説もあります。

後でも話すようにミツクリザメは危険なサメではないんですし、深海200〜1300mくらいのかなり深い海に住んでいるので、海で対面する機会はまずないですが、6mでこの顔したサメが現れたらチビるかもしれないですね笑。

 

【名前の由来は日本人?】
普通の人から見たらミツクリザメは異界の怪物みたいに見えるかもしれないですが、実はミツクリザメは日本に馴染みのあるサメです。

ミツクリザメは19世紀にイギリス人のアラン・オーストンによって、日本で発見されました。

貿易商であったオーストンさんは、相模湾で見たことのないサメを偶然採集します。オーストンさんは生物研究に理解のある方だったので、東京大学三崎臨海実験所の所長だった箕作博士にそのサメを寄贈しました。

のちにその標本を調べたデイビッド・スター・ジョーダン博士がそのサメを新種記載したのですが、その学名を箕作博士とオーストンさんに因んで「Mitsukurina owstoni」と名付けました。

つまり、日本語だけでなく、世界共通の生物の呼び名である学名にも、日本人の名前が使われているんです。

ちなみに、ミツクリザメのことを英語ではゴブリンシャークと呼び、日本語に訳すと「悪魔のサメ」とか「小鬼ザメ」という風に訳されます。

メディアの報道を見ていると、深海に住んでいるすごい顔をしたサメだからこう呼ばれているという紹介がされますが、実はこのゴブリンシャークという名前も日本由来だとする説があります。

米国のとあるサメ研究者によれば、ゴブリンシャークという名前は日本での別名、テングザメを英語に訳したものだそうです。確かにミツクリザメの長い吻には天狗を思わせるものがあります。

今だと某鬼殺隊の元水柱の影響もあって天狗にポジティブなイメージを持つ人もいるかもしれないですが、もともとは妖怪とか山神の類です。英語圏にもちろん天狗はいませんから、それっぽい存在であるゴブリンの名前を当てたのかもしれません。こういうのを考えても、日本由来なところが多いサメに思えてきます。

そして、ミツクリザメは、日本での漁獲が多いサメでもあります。

ミツクリザメは世界中の海で確認されていますが、定期的にミツクリザメが漁獲される海域というのは非常に限られています。

例えばアメリカのCNNが2014年にメキシコ湾で混獲されたミツクリザメのニュースを報じたのですが、その海域での漁獲は14年ぶりと紹介されていました。

論文を徹底的に精査したわけではないのでどこまで正確かは微妙ですが、現地ではそれくらそれくらい珍しいことなんだと思います。

対して日本は相模湾、駿河湾、そして東京湾海底谷で、ミツクリザメが定期的に漁獲されています。もちろんアジやサバみたいにドカドカ網に入ることはないですが、世界的に見ればなかなか珍しいことです。

飼育の難しいサメなので生きている姿はなかなか見ることはできませんが、日本人にもっと愛されてもいいサメだなって個人的には思います。

 

【突き出た吻と飛び出す顎】
ミツクリザメと言えば、やはり突き出た吻と飛び出す顎が特徴的です。これについても解説していきましょう。

この吻と顎は、ミツクリザメが獲物を捕らえる上で非常に重要な役割があります。

まず吻について。ミツクリザメの吻は重要な感覚器官になっています。

ミツクリザメの吻は長く平たく突き出ているので、「武器みたいに使えるんじゃないか」と思う人がいるみたいですが、実はこの吻の中は柔らかくて細い骨が入っているだけで、あとはゼリー状の物質が詰まっています。触ってみるとプニプニしていて柔らかいです。

このゼリーはロレンチーニ瓶と呼ばれる、電気を感じるための感覚器官です。

サメの吻をよく見てみると、小さな穴がポツポツ開いているのが分かります。

この中にはゼリー状の物質が詰まっていて、生物が発する微弱な電気を感じ取ることができます。

ロレンチーニ瓶自体は他のサメでも確認されていますが、ミツクリザメは吻が長いので、より広い範囲の獲物の存在を感じ取れると推測できます。

次にミツクリザメの顎について。ミツクリザメと言えばアゴが飛び出すことで有名ですが、実は、ミツクリザメ以外のサメも顎を前に動かすことができます。

多くのサメの顎骨は、舌接型(ぜってつがた)と呼ばれ、上顎の骨と頭蓋骨が完全に一体化しておらず、別の骨でつながっている状態です。そのため、獲物を食べる瞬間に顎を前に飛び出させるコトができます。

顎を飛び出させた状態で乾燥させたカスザメの頭骨標本

 

顎を飛び出させた瞬間のシロワニ

しかし、ミツクリザメは、その飛び出す範囲も速さも他のサメとは一線を画しています。

ミツクリザメは他のサメよりも顎のリーチが長いです。他のサメの顎が全長の0.9〜4%ほど飛び出るのに対し、ミツクリザメは10%近くまで飛び出ます。さらに、他のミツクリザメが顎を動かす速度も、上顎が秒速1.6m、下顎が秒速3.14mとかなり素早く、口を開け始めてから閉じるまでの動作をたったの0.3秒ほどで完了させます。

ミツクリザメの捕食メカニズムの詳しい解説はコチラ↓

では、なぜこのように進化したのか?

ミツクリザメはホホジロザメなどと同じネズミザメ目のサメですが、流線型というより細長く水っぽい体をしていて、どこか頼りない印象を受けます。各ヒレも小さく、推進力の要である尾びれもペラッペラです。体つきからして、ホホジロザメみたいに速く泳ぐには明らかに向いていません。

ミツクリザメの生態については分かっていないことも多いですが、彼らの長い吻と飛び出す顎は、動きの遅い彼らが、餌の少ない深海で確実に獲物を捕らえるために進化したと思われます。

ちなみに、ミツクリザメの歯はサメの中でも特に細長く、明らかに小さな獲物を突き刺して捕まえるための歯であるため、ミツクリザメが食べようと思って人を襲うことはまずありません。

ミツクリザメの顎骨標本

この辺のことはラブカとかシロワニの紹介でも述べましたが、表面的な見た目が恐かったり異様だからといって「人食いザメ」とか騒ぎ立てるのはご遠慮いただくようお願いいたします。

【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

サメをはじめとする海洋生物の生態や環境問題などについて発信活動を展開。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇も行い、サメ解説のライターとしても活動。水族館ボランティアの経験あり。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

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