映画『ジョーズ』は実はリアルだった?サメ映画の原点にして頂点を徹底解説!

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

僕は普段から「サメは世間で言われているような人食いモンスターではない」という解説をよくしていますが、そもそもその「人食いザメ」のイメージはどこから来ているのでしょうか。

恐らく真っ先に皆さんの頭に浮かんだのが『ジョーズ』だと思います。

サメ好きでなくてもこの映画の存在はみんな知っていますし、ジョーズという言葉自体がサメを表す代名詞として使われることもしばしばです。

ただ、この『ジョーズ』が割と古い映画というのと、近年のネタ系サメ映画の影響もあって、そもそも『ジョーズ』を観ずに、この作品やサメのイメージについて色々語っている人が多いのではないかと感じています。

 

なので今回は、原点にして頂点であるサメ映画『ジョーズ』について、幼稚園の頃からジョーズをリアルに100回以上観てきた現役サメ大好き人間の僕が、そのあらすじから実際のサメとの比較まで解説します。

ちなみに今回ラストのネタバレは極力避けますが、ストーリーの大まかな流れなどは触れていくので、その点あらかじめご了承下さい。

目次:
【ジョーズのあらすじ】
【ジョーズの何がすごいのか?】
【ジョーズには原作がある?】
【ジョーズは諸悪の根源なのか?】
【実際のサメとの比較】

【ジョーズの物語とその魅力】
まずジョーズとはどんな物語で、何が魅力なのかを紹介します。

ジョーズは1975年に、まだ27歳だったスティーブン・スピルバーグが監督を務めました。

一言で言うなら、平和なビーチに突如現れた巨大ホホジロザメの恐怖、そして男たちの死闘を描いた作品です。

アメリカ東海岸のアミティという島が舞台で、物語はそのビーチに食いちぎられた女性の腕が打ち上がるところから始まります。

警察署長のブロディは市民の安全のためにビーチの閉鎖や遊泳禁止を訴えますが、夏は島にとっての稼ぎ時。市長を含む町のみんなに反対されてしまいます。

しかし、再びサメが現れて第二・第三の犠牲者が出てしまい、ブロディは海洋生物学者のフーパーと、荒くれ者の海の漁師クイントと共に、巨大なホホジロザメに戦いを挑む・・・。

以上が、ざっくりとしたあらすじです。

なお、本HPのサメ映画を解説しているページではネタバレを含む詳しい解説をしています。

ストーリー自体はよくパニックものでありそうだなって思う人もいるかもしれないですが、そもそも数多くのモンスター映画がこのジョーズの流れを参考にしているはずです。

誰かが襲われる→主人公が危機感を抱くが誰も信じない、またはお金を優先してイベントを決行する→もっと犠牲者が出る→主人公が戦いを挑む

この流れは、のちに作られるサメ映画、その他ワニやトラ、その他謎の怪物など、色々なモンスター映画のテンプレになっています。日本で出版された数少ないサメ小説である『ブルシャーク』のストーリー展開も、間違いなくジョーズを意識していると思われます。

 

 

【ジョーズの何がすごいのか?】
サメが出てくる映画と聞いてマニア向けなイメージを持つ人がいるかもしれませんが、『ジョーズ』は普通の人が観ても十分に面白いです。

とにかく演出というか、世界観の出し方が見事です。

「ジョーズと言えばサメ!」というイメージが僕らの中には強いですが、実は映画内でサメが映るシーンというのは少ないです。もちろんサメの存在自体はいる設定なのですが、サメ視点の映像なのでサメ自身が映っていなかったり、サメに引っ張られる樽だけが写っていたりと、サメの顔が歯をむき出しにして迫ってくる場面は限られています。映画が始まって半分くらいまで進まないとサメの顔すら見えません。

しかし、だからこそ襲われるシーンで想像力がかき立てられ、より恐怖が引き立ちますし、サメ退治に向かった船の前にサメが現れた時にインパクトが出ています。ついに怪物が姿を現した!って感じですね。

該当シーンはコチラ↓

日本の作品で近いものを感じるのがホラー映画の代表作『リング』です。

『リング』と言えば貞子がテレビから出てくるシーンがあまりにも有名ですが、あのシーン自体は映画のかなりラストの方です。しかも、それまで貞子のあのおどろおどろしい姿は出てきません。しかし、ちゃんとホラー映画として全体が仕上がっているし、あの登場シーンがめちゃくちゃ印象的になっています。

ジョーズもこれに近い意味で、世界観の作りや演出が優れた映画だなと思います。

 

あとは音楽も素晴らしいです。

『ジョーズ』の音楽といえばデーデン♪デーデン♪というあの曲が有名ですが、あれ以外にも、暗い海を泳ぐシーンは静かで不穏な音楽になったり、船でサメを追いかけるシーンでは冒険感あふれるアドベンチャー映画みたいな音楽になったり、その場面ごとの雰囲気にあった最高の音楽が流れるのもジョーズの魅力です。

ちなみにジョーズの音楽を手掛けたジョン・ウィリアムズという方はスター・ウォーズやハリー・ポッターの曲など、聞いただけでその映画の世界観が頭に思い浮かぶような映画音楽を作っています。

こうした魅力をたっぷりと含んだ映画『ジョーズ』は名作として知られる『ゴッド・ファーザー』や『風と共に去りぬ』と超える興行収入をたたき出しました。

今でこそ「サメ映画」と言えばネタ感というか地雷臭が凄いですが、「ジョーズ」に関して言えば、他のアクション・スリラー映画に引けを取らない傑作です。

 

 

【ジョーズには原作がある?】
「ジョーズ」と言えば映画のイメージがありますが、実は原作小説があるのはご存知でしょうか。

もともと『ジョーズ』はピーター・ベンチュリーという方が書いた小説であり、映画はその小説をもとに制作されました。

ベンチュリーさんはとあるサメ捕獲のニュースをきっかけにサメの物語を書くことにしたそうで、小説のタイトルとして「Silence in the deep」、「Leviathan rises」、「Jaws of the Death」など100を超える候補をあげましたが、最終的にシンプルなアゴを意味する単語一つ「JAWS」に決まったそうです。

小説のストーリーも基本は映画と同じで、女性がサメに喰われたのを皮切りに次々に人が襲われ、ブロディ署長たちが戦いを挑むというものですが、原作のジョーズはブロディの夫婦関係のいざこざや、市長のビジネスに関する黒い噂など、サメの恐怖と同じくらい、サメ襲撃によって起こる人間模様が色濃く描かれています。

そうしたヒューマンドラマ的なものをカットして、一気にアドベンチャー映画に方向転換して、映画『ジョーズ』は誕生しました。

小説は小説で味がありますし、映画で生き残る人が食べられていたりと展開も違っているので、映画見た人も新鮮な気持ちで読めると思います。ただ、単純にサメVS人間の死闘を楽しみたいという方は映画の方がおすすめです。

ちなみに、この小説自体も、アメリカで実際にあったサメ襲撃事件をもとにしているとされています。

実は、この「ニュージャージー州サメ襲撃事件」を映画化した『ジョーズ 恐怖の12日間』という映画もあるので、こちらもぜひ見てみてください。

 

 

【ジョーズは諸悪の根源なのか?】
『ジョーズ』は間違いなくサメ映画の原点にして頂点ですが、サメ好きの中には「サメを悪者にした諸悪の根源」としてジョーズを好まない人がいます。

一口に「サメ」と言っても世界には500種類以上の仲間が知られていて、そのうちのほとんどは食べようと思って人を襲うことのない子たちばかりです。映画のモデルになったホホジオロザメは確かに危険なサメですが、それでも積極的に人ばかり食べるモンスターではありません。

ホホジロザメは確かに危険なサメではあるが常に人を食べるモンスターではない。

しかし、この映画自体が大ヒットしたこともあり、サメ=人食いマシーンというイメージが、それまで以上に多くの人に根付いてしまいました。

実際に当時の映画館では悲鳴が響き渡り、海水浴客の数が減って、風呂に入るのすら怖いという人がいたという逸話が残っています。製作陣としては大成功なわけですが、スポーツフィッシングでサメが集中的に狙われたり、ヒーロー気取りで人を襲わないサメまで殺す人が現れるなど、現実世界のサメたちにも影響が出てしまったと言われています。

こうした背景もあるので、サメ図鑑やドキュメンタリー作品では必ずと言っていいほど『ジョーズ』に触れており、

「人食いザメというのは偏見である」

「実際にはプランクトンを食べるサメなど多種多様な仲間がいる」

「サメが人を殺す何倍も多く、人間がサメを殺している」

というように、『ジョーズ』のイメージを払拭するような解説がされています。

原作者のピーター・ベンチュリー自身ものちに「Knowing what I know now, I could never write that book today(今知っていることを知っていたなら、あの本を書くことはできなかっただろう)」と述べています。

これについて『ジョーズ』を少し弁護すると、『ジョーズ』が作られる遥か昔から、サメを凶暴な怪物として忌み嫌う習慣や、サメが人を食べるという内容の神話や物語は日本を含め世界にたくさんあったので、サメへの偏見が『ジョーズ』から始まったわけではないと思います。

また、『ジョーズ』に限った話ではないですが、よく調べもしないでフィクションのイメージと実際の動物の生態をごっちゃにする人が悪いという見方もできます。18禁のビデオを教科書にしてリアルな女の子に接しちゃう童貞男子みたいで、影響受けすぎというか、ちょっとイタいです。

実際に、ラスカルの影響でアライグマのペットブームが起きた挙句に今侵略的外来種になってしまったということもあるので、メディアから発信される動物のイメージを鵜呑みにせずに吟味する姿勢は必要だと思います。

そういうことを考えると、『ジョーズ』ばかりを責めるのは違う気もしますが、大きなサメが泳ぐ水槽前で『ジョーズ』という言葉を聞くことは日常茶飯事ですし、もともとは単なる顎という意味の『ジョーズ』という単語がサメの代名詞として使われている現状を見ると、やはり影響は大きかったのかなと思います。

 

 

【実際のサメとの比較】
では、『ジョーズ』のサメは嘘だらけなのでしょうか。この点については、相当な誇張が入っているが、他のサメ映画と比べれば全然リアリティがあるというのが正直な感想です。

確かに『ジョーズ』のようにサメが人ばかりを積極的に襲ったり、執拗に一つのボートに攻撃を加えるというのは非常に稀だと思います。仮に人を襲ってしまうとしても、人間側から餌などで刺激を与えたケースや、本来の獲物と間違えたと思われる場合が多く、サメが人間ばかりを追い回すように狙うことは考えにくいです。

また、映画の中でサメの大きさを「25フィート、重さは3トン」とクイントが表現しています。25フィートはメートル換算だと約7.6mです。このサメとはじめて対面したブロディが「You`re gonna need a bigger boat」というセリフを呟くのは有名な場面ですが、信頼できるホホジロザメの最大全長は6.4mほど。絶対いないとは言い切れませんが、7.6mははっきり言ってデカすぎます。

こういう風に現実との乖離はあるのですが、シリアスなものからアホなものまでサメ映画を観てきた身としては、ジョーズのサメはまだリアリティがあるなと思います。

それを特に感じるのが、作中における犠牲者の数と、サメ襲撃の頻度です。

『ジョーズ』のサメはとにかく人を食べまくっているイメージがありますが、よくよく確認すると、実はサメ1日に1人しか人を食べておらず、しかも全て数日から1週間くらいは期間が空いています。

一方それ以外のサメ映画、例えば『ジョーズ2』だと1日に3人も食べていたり、『ロストバケーション』でも夜にデブのおっさんを食べた翌朝にまた二人食べて挙句さらに主人公に襲いかかります。『レッド・ウォーター』に至ってはジョーズのサメよりも小さいオオメジロザメが1日に4人も食べています。これは明らかに食い過ぎです。

サメと言えばドカドカ色んなものを食べまくると思われがちですが、変温動物であるため、僕たちよりも体重当たりの食事量は少ないです。

水族館でサメに餌をあげる際も、2m以上の大きなサメなのに一口サイズのアジやサバをあげていて、そんなに沢山は食べていないです。むしろ恒温動物であるイルカの方が食べる量が半端ないです。

ジョーズも含めほとんどのサメ映画に登場するホホジロザメは体温を高く維持することができ、その分エネルギーが必要なので他のサメよりも食べる量は多いと思いますが、それでも1日に何人も食べるほどでないと思います。

また、ジョーズに出てくるサメも当時としてはかなりリアルです。

映画で使う動物ロボットのことをアニマトロニクスと呼びますが、実際に『ジョーズ』のアニマトロニクスを作った方は水族館でホホジロザメの顎を借りてきて、プロポーションなどもできるだけ忠実に作っていました。

CGで何でも作れる今見ればチャチいかもしれないですが、それでも歯の形はちゃんと大きな三角形だし、尾鰭もホホジロ特有の三日月形だし、クオリティは高いと思います。

そして、『ジョーズ』には本物のホホジロザメが映るシーンがありますが、これらは実際に野生のホホジロザメを撮影して制作されたものです。

サメ映画で実際のサメ映像を使う際は、ドキュメンタリー映画で使われているサメ映像を切り抜いて持ってくることがよくあって、ひどい時はホホジロザメの設定なのに別のサメが写ったりするのですが、『ジョーズ』は、派手にオリを壊すシーンの一部で本物のホホジロザメを使っています。

映画のクオリティに加えて、こういうリアリティの要素を考えても、『ジョーズ』はもっと評価されてもいいなと僕は思います。

 

 

【Writer Profile】

サメ社会学者Ricky

1992年東京都葛飾区生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国ポートランド州立大学へ留学。

サメをはじめとする海洋生物の生態や環境問題などについて発信活動を展開。

本HP『World of Sharks』での運営のほか、YouTube動画配信、トーク・プレゼンイベント登壇も行い、サメ解説のライターとしても活動。水族館ボランティアの経験あり。

メールでのお問い合わせ、質問などはコチラ!
shark.sociology.ricky@gmail.com

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