サメの体の構造 ~外側編~

【基本的な体の構造】
ここでは基本的なサメの体の構造を見ていきます。まずは外見から見ていきましょう。

須磨水族館のメジロザメ.©もぶら

ツノザメ目やカグラザメ目などのサメでは尻鰭(しりビレ)や第二背鰭がなかったりするのですが、基本構造は上記の通りです。

【サメの体型】
一般的なイメージと合致するメジロザメやネズミザメの仲間たちの体は水の中で素早く泳ぐことに特化した体系をしています。

水の中を泳ぐ時、僕たちは陸上でするように早くは動けません。空気よりも水の方が動く物体に対する抵抗が強いためです。水の中を泳ぐ際、摩擦抵抗と圧力抵抗の二つの力が働きます(仲谷, 2016, p98)。

摩擦抵抗とは、物体が進むことによってその物体の近くの水が動き、周りの水とその動く水が擦れるようにして流れが生まれることを言います。圧力抵抗は、水中を進む際にかかる前面からかかる圧力です。

この水の抵抗について厄介なのが、摩擦抵抗を減らすには球体が一番なのですが、球体には同時に圧力抵抗がもっともかかるということです (詳しいメカニズムはもう少し物理学を勉強したら更新して載せます笑)。

そこで、どちらの抵抗も最小限に抑える形が、「涙滴型」と呼ばれる形で、潜水艦などにも応用されています。泳ぎ回るタイプのサメ、特に外洋を速く泳ぐサメの体型は、ほぼ例外なく、この涙滴型をしています。

ちなみに、カスザメのような底生性のサメたちは、どちらかと言えばエイに近い体型ですが、これは、砂の中に潜ったり岩場にカモフラージュしたりして敵から身を隠したり獲物を待ち構えるという彼らのライフスタイルに合った形をしています。また、深海にすむツノザメ目のサメたちはサメらしい形をしていますが、外洋を素早く泳ぐネズミザメやメジロザメほど流線形の体格をしておらず、泳ぎがそこまで得意ではありません。

さらに余談ですが、サメとエイの見分け方は「鰓孔(えらあな)が体の側面にあるか下にあるか」です。体の形で見分けるもう一つのポイントは、サメはエイっぽい形でもヒレと胴体が分かれていますが、エイは一枚のプレートみたいに全部つながっています。

シノノメサカタザメの写真。サメに似ているが体が1枚パーツで、腹部に鰓があるエイの仲間。

 


【サメ肌は「すばやさ」と「ぼうぎょ」アップの装備】

サメの皮膚がザラザラしていることは割と有名だと思いますが、この肌にもサメの秘密があります。

マルヒゲオオセ(学名:Orectolobus wardi)@大洗水族館。よく見ると鱗で覆われているのが分かる。

サメの体は循鱗(じゅんりん)と呼ばれる小さい歯のような鱗で覆われています(そのため「皮歯」とも呼ばれます)。実は、サメの歯は皮膚が変形してできたともいわれています。

この歯のような鱗が後ろに向かって生えています。そのためサメの体を前から撫でても滑らかですが、後ろから撫でるとザラザラして、種類によっては鱗が鋭いためそれだけで出血させられます。この循鱗も摩擦抵抗を少なくする役割を果たしています。

循鱗の1枚1枚を顕微鏡などで拡大すると、水平の筋が見えます。この筋にはサメが泳ぐ際、水流を一方向へと流して、周囲に生まれる渦を減少させ、スピードアップさせる効果があるのです(田中, 2016, p136) 。

また、循鱗は歯と同じく外側からエナメル質、象牙質と髄の3層でできているので、かなり頑丈です(仲谷, 2016, p13)。僕自身、骨格標本を製作するためにサメの頭を解体した経験がありますが、皮膚の部分が固くて作業が大変でした。

サメキャンプにて解体したサメの頭。もちろんこのために獲ったのではなく、使われない頭だけ頂きました。

ポケモンのサメハダーの能力で「さめはだ」というものがあり、打撃攻撃を加えた相手にダメージを与える効果がありましたが、本来のサメ肌はそれだけでなく、「ぼうぎょ」と「すばやさ」をあげる役目ももっているのです。

 

【鰭(ヒレ)の役割】
高級食材フカヒレとして有名なサメの鰭ですが、もちろん人間が食べるために生えているわけではありません。そこにも彼らの泳ぎをサポートする秘密があります。

サメの鰭は多くの場合8枚の鰭がついています(先述した通り、カスザメ目、ノコギリザメ目、キクザメ目、ツノザメ目では臀鰭がなく、カグラザメ目では第二背鰭がありません)。それぞれの鰭には下記のような役割があります。

オオメジロザメの写真。©もぶら

細かい話をしてしまうと、「尾鰭が推進力を生み出す」というのはよく知られていますが、実はどんな風に力が働いているのか、学者の中でも意見が分かれています。サメの尾鰭の上の部分は上葉、下の部分を下葉と呼ばれています。一般的には上葉の方が長く、恐らく上葉を左右に振り、短いが柔らかい下葉で微調整を行っていると思われますが、推測の域をでません(はっきりしたら更新しますね)。

胸鰭は飛行機で言う主翼の役割を果たし、体の上下の動きを水中で安定させることにより、サメは一定の深さを楽に保ったまま泳ぎ続けることができます。ただし、ツノザメ目など高速で泳ぐことがほとんどないサメや底生性のサメたちは、当然異なる形をしています。例えば、モンツキテンジクザメ(英語ではエポレットシャークと呼ばれることが多いサメ)というテンジクザメ科の可愛いサメたちは、海底を這うように動くのに特化した形の胸鰭をしています。

大洗水族館のハルマヘラエパウレットシャーク(学名:Hemiscyllium halmahera)。胸鰭が特徴的な形をしている。

また、詳しくはサメの生殖に関するページで述べますが、サメのオスは腹鰭の部分に交尾器(クラスパー、平たくと言うとおちんちんです)がついています。

 

 

【サメの口】
サメ≒ジョーズという認識の方もいるかもしれませんが、実はジョーズ(jaws)とは顎のことです(正確には jaw が「顎」で jaws は「両顎」の意)。サメの口には、ハンターとして進化してきたサメの神秘があります。

サメの顎はよくよく考えると捕食者として不思議な構造をしています。サメの顎は僕たち類人猿のものと異なり、上顎が頭蓋骨と分かれています。そして、他の魚が口が前についているのと比較すると、多くのサメの口は下についています。

頭蓋骨と離れてしまっていて、嚙む力を発揮できるのか?口が前に出ていた方が獲物を捕まえやすいのではないか?そんな疑問も湧いてきます。

サメの顎は確かに頭蓋骨と離れてしまうことで、顎と頭蓋骨がくっついているワニと比較した場合、ワニの方が噛む力が強いとされています。学術論に僕個人がアクセスできていないのでソースが弱いですが、2012年に公開されたNational Geographicのニュースによれば、イリエワニの噛む力は1平方センチ当たり540㎏であり、コンピュータで計算されたホホジロザメの噛む力280㎏と比べはるかに強力です(Handwerk)。

しかし、顎が頭蓋骨と離れていることで、得している部分もあるようです。こちらも専門家がソースではないですが、英国のドキュメンタリーショー『Inside Nature’s Giant』の説明によれば、上顎が頭蓋骨と独立しているために顎の周りの筋肉が発達し、顎を飛び出させる能力を獲得し、獲物を捕まえやすくなったというのです。確かに、深海ザメのミツクリザメは、その能力を極限まで行使しているとも言えます。

ミツクリザメの標本。プニプニした膜のような部分が広がり、顎が飛び出す仕組みなっています。

仮にこれによって噛む力が弱まっているとしても、それを口が下にある構造が補っています。口が前に出ている構造だと、確かに獲物を捕まえやすくはなりますが、顎の関節から口先が離れているので、獲物を咥えて歯を食い込ませるための力がかかりにくいのです。ところが、現在のサメの多くが噛む場所が顎関節、つまり根元に近いため、それだけ噛む力が加えることができます(仲谷, 2016, p70)。

現在得られた情報をもとにした僕の推測に過ぎませんが、サメは口を下に置くことで噛む力を強化し、その上で口の可動域を広げるために顎を独立させていったのではないか。あるいは、口の可動域を広げるために顎を独立させていったが、噛む力を保つために口を下に置いていったのか。そんな風に思えてきます。もっとも、ダーウィン風に言えば、たまたま顎の可動域が広く口が下の方にあって噛む力も強かったものが生き残って現在のサメになっていった、ということになるのでしょうが・・・。

もちろん、食べるものによってサメの口の形は様々です。僕個人としてはウバザメがプランクトンを食べる際に役立つ口の働きなどを取り上げていきたいのですが、ウバザメは個別にページを設けるので、その際に触れます。

 

【サメの歯】
サメと言ったら忘れてはいけないのがその歯です。ここまで記事を読んでくださった方はもうお分かりかもしれませんが、サメの歯は全てが鋭いわけではなく、食べる餌によって様々な形をしています。

ネコザメの顎の標本です。サザエやウニをバリバリ砕いて食べるという食性から、それに合ったかなり特殊な歯をもっています。

例えばホホジロザメの上顎歯は鋸歯と呼ばれるギザギザしたとがった歯をしており、海生哺乳類や大型の魚を切り裂くのに適した歯をしています。一方アオザメは同じネズミザメ目で姿もホホジロザメと似ている仲間ですが、魚やイカを食べやすいように刺す歯を両方の顎に持っています。なお、ジンベイザメのようなプランクトンを食べるサメは、辛うじているくらいの小さな歯しか生えていません。プランクトンを水ごと口で吸いこみ、鰓耙という鰓にある歯のような部分でこしとって食べます。

ちなみにさらっと流しましたが、サメの中には上顎と下顎で歯の形が異なる種類がいます。歯を見るだけでサメの種類を当てる利きザメ(?)ができる方とお会いしたことがありますが、サメの歯を見せただけで種類だけでなくどちらの顎の歯かも正確に言い当てるのには驚きです、僕は数種類の歯が見分けられる程度なので・・・。

さらに言えば、幼少の頃と成長した時で異なる歯を持つ場合もあります。例えば、ホホジロザメは小さいときは魚を主食にするため細長い歯をもっていますが、大人になるにつれて幅の広い三角形の歯をもつようになります(仲谷, 2016, p73)。食性に合わせて最適な歯を手に入れてきたのです。

左からホホジロザメ、アオザメ、シロワニ、ヨゴレ、イタチザメ、オオメジロザメの歯。大型のサメの歯ばっか(笑)
メジロザメの一種の顎。後ろから見ると、ずらりと後ろに控えている歯がはっきり見て取れる。

また、サメの歯は何度でも生え変わるという羨ましい能力を備えています。サメの歯は後ろに沢山の控えがあり、抜ける度に新しい歯が生えてきます。種類によってや行きた年数によって当然前後はありますが、一生のうちに3万〜6万本生え変わると言われています。

これらのサメの歯は、サメの進化について知るうえで重要な存在です。サメの体は骨格のほぼすべてが軟骨で構成されているのですが、軟骨は化石になりにくいのです。そのため、古代のサメがどんな姿をしていたのか、どんな生活をしていたのか、ほとんどが歯をもとに推測されたものです。一番有名な古代のサメは恐らくメガロドンだと思いますが、学名 Carcharodon megalodonと一般には言われ「ムカシオオホホジロザメ」と時々イコールにされるこのサメも、実際にはどんな姿をしていたのか分かっていません。そもそも「メガロドン」が「でっかい歯」という意味です。もしかしたら、超頭でっかちの不格好なサメだったかもしれません(笑)。

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Handwerk, B. (2012, March 15). ワニの噛む力は地球で最強、実測で証明. Retrieved April 3, 2017, from http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/5789/?ST=m_new

田中, 彰. (2016). 美しき捕食者 サメ図鑑 (Vol. 1). 中央区, 東京都: 実業之日本社.

仲谷, .一宏 (2016). サメ -海の王者たちー 改訂版 (Vol. 1). 千代田区, 東京都: ブックマン社.