サメの生殖Ⅰ 雌雄の特徴

生まれ変わっても魚にはなりたくない。そう思うあなたの理由が「セックスしたいから」であれば、ご安心を。サメはセックスする魚です(どうでもいいですが、僕は生まれ変わり思想にかなり否定的です)。サメの生殖については生物学的に実に面白く同時に複雑なので、二つに分けて紹介します。まずは雄雌の違いについてです。

 

【サメの雌雄の見分け方】
サメは他の魚と比べて雌雄が素人でも見分けやすい魚です。多くの魚が体外受精、つまり雌が体外に産んだ卵に雄が精子をぶっかけて受精させますが、サメは雌の体内に雄が交尾器(平たく言えばおちんちん)をぶちこんで精子を送り込み受精させます。つまり、サメは数少ないセックスをする魚と言えます。もう少し固い言い方をすれば体内受精をするということです。

僕も調べるまであまり意識してこなかったのですが、魚の雌雄を見分けることは多くの場合容易ではありません。例えば、マンボウ。マンボウに魅せられた研究者でウシマンボウ発見(分類)にも携わった澤井悦郎氏によれば、現在マンボウの雌雄をはっきりと外見から見分ける方法は存在しないそうです。一方で、サメの雄には外に常時でていおちんちんが見えるので、体の下側を観察できれば、雌雄は簡単に見分けられます。

雄ザメのおちんちんはクラスパーと言われます。これは、かの有名なアリストテレスさんが「雌を包み込むように使う」と勘違いしたことからついた名前だそうです。クラスパーは、2対ある臀鰭それぞれについています。そう、サメにはおちんちんが二本あるのです。生まれて間もない頃はほとんどクラスパーが確認できない場合もありますが、ある程度成長するとどんどん大きく、硬くなっていき、簡単に見分けられるようになります。

ツマグロ(雄)の幼魚です。まだクラスパーが小さいです。
成長したツマグロの雄です。幼魚よりも大きいクラスパーが見えます。
美ら海水族館に展示されているウバザメのクラスパーです。1m以上ある立派なイチモツです。

 

【サメの体位】
人間には四十八手くらい体位があるみたいですが、サメの交尾方法は大きく分けて三種類です。雄が雌の体に身体を巻き付けて挿入する、雌の体に雄が寄り添って泳ぎながら横から挿入する、雌の胸鰭に雄が噛みついて腹と腹を合わせるようにして挿入する、というものが知られています。噛みつくというとかなり野蛮に聞こえますが、雌の皮膚は雄の三倍以上に厚いと言われていて、致命傷になることはないようです。

 

【雄ザメの生殖器官】

雄には先述の通りクラスパーと呼ばれるおちんちんが二本、腹鰭の一部としてついています。このクラスパーには骨、棘、大きな鱗があるなど、独特な構造をしています。

雄の精子は精巣内でつくられ、副精巣からニョロニョロした輸精管を通り、クラスパー付け根付近にある貯精嚢に貯めておかれます。

白っぽいニョロニョロして見えるのが輸精管です。

雄はクラスパーを雌の総排出孔(排泄、交尾、出産、全てを行う孔)に挿入し、精子を送り込みます。精液を送る際、袋状のサイフォンサックという場所に溜まった海水を一緒に吹き出し、より多くの精子が子宮から卵殻腺に届くようにします。輸卵管を通った精子は卵殻腺に貯蔵され、ここで受精が行われます。

 

【雌ザメの生殖器官】

雌のサメの卵巣から子宮は対になって発達している場合が多いです。中には、右側だけが発達するメガマウスのようなサメもいます。

卵は卵巣内で成熟したのち排卵され、ラッパ状の受卵孔を通して輸卵管に入っていきます。輸卵管を通じて卵は卵殻腺に入っていき、貯蔵されていた精子により受精します。卵生の場合、受精卵はこの卵殻腺で固い卵殻に包まれた後海中に生み出され、胎生の場合は受精卵が子宮に送られ胎児の発生が始まります。

エドアブラザメの卵殻腺。若い個体でしたが、卵のもと(?)のような白い塊が見えます。

 

 

【エピゴナル器官について】
生殖器官ではないですが、サメの生殖器官について調べるとたまに出てくる言葉なので一応紹介します。生殖腺に付随するエピゴナル器官は、食道付近のライディヒ器官と合わせて造血を行っています。

 

 

【参考文献】
澤井悦郎 『マンボウのひみつ』2017年 p35,36
仲谷一宏 『サメ ー海の王者たちー 改訂版』2016年 p122
矢野和成 『サメ 軟骨魚類の不思議な生態』1998年 p84, 85
森友忠明 『魚類造血機構の解明』2014年 p1