ジョーズ ―恐怖の12日間― (12 Days of Terror)

名作『ジョーズ』誕生のきっかけになった事件をより事実に沿って映像化したテレビ映画です。迫力もクオリティも『ジョーズ』には及びませんが、そこまでひどい映画ではないかな・・・。多分・・・。

題名:ジョーズ ―恐怖の12日間―
原題:12 Days of Terror
公開年:2004年
監督:ジャック・ショルダー
主演:コリン・エッグレスフィールド

【かなりぼかしたあらすじ】
1916年夏のニュージャージー。海水浴を楽しむ人々だったが、ビーチで男性が何者かに襲われ、瀕死の状態で搬送されるも死亡。ビーチの監視員であるアレックスはサメの襲撃を疑いビーチの閉鎖を求めるが、市長たちは首を縦に振らない。しかし、再びそれはビーチに現れ、第二の犠牲者が出てしまう。サメの襲撃に恐怖する人々だったが、それはほんの序章に過ぎなかった・・・。

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【ネタバレを含むあらすじ】
物語はちょっとした歴史のおさらいからスタート。時はまだ第一次世界大戦中ですが、自国が戦場になったわけではないアメリカでは、記録的な猛暑も手伝って海水浴が大ブームでした。

1916年7月1日。ビーチは平和そのもの。監視員のアレックスは元々いい感じだったルイーズと、そのルイーズの現在の婚約者であり親友(恋敵?)のスタンリーとお喋りしながら子供たちが遠くに行かないように注意するくらいしかすることがありませんでした。

海水浴客の一人チャールズが少し沖まで泳ぎ、母親に手を振ったり、愛犬を呼びます。しかし、愛犬は警戒したように吠え始め水に入りません。次の瞬間にはチャールズは水中で何者かに襲われ、血を流しながら助けを求めます。アレックス達監視員がすぐさま助けに向かい、足の肉を大きくえぐられた状態のチャールズをビーチを所有するホテルまで運びます。

諸々一段落した後アレックスは真っ先に助けに向かった監視員として水産委員のミーハン氏に呼ばれ、ホテルの支配人エングル立ち合いのもと話すことに。どうやらチャールズは助からなかったようです。「サメの襲撃」とアレックスが検視官に報告した件を追求し、サメの襲撃という証拠はないし、沿岸に人食いザメは来ないし(真っ赤な嘘)、ホテルのビーチが一つだけだからといろんな理由を並べ、ビーチの閉鎖を拒否します。まあ、サメ映画お決まりのパターンですね。にしても、「魚雷かもしれない」というミーハン氏の発言は噴飯物ですね(笑)。控えめに言っても、言い訳が下手なのか本気なのか知りませんが、頭がネジが215本ほど抜けているのでしょう。

アレックスは帰り道で知り合いの漁師に会いに行きます(終始Captainと呼ばれていて本名不明。とりあえず『ロード・オブ・ザ・リング』のギムリです)。漁師は「暖流がサメを運んできた」とか「一度人間の味を覚えたやつは戻ってくる」とか自説を並べながら、とにかくアレックスの見方を支持します。ところが、次にスタンリーが働くスーツ屋で会った市長は「専門家に任せる」と耳を貸しません。どうでもいいですが、スタンリーが「ウィルソン大統領が来る」と話しているのが、歴史を感じさせますね。

不安を抱えたままのアレックスに対し、ホテル支配人は「専門家の意見としてもサメの襲撃はもうないだろう。科学が保証している」とかなんとか言い安心させます。しかし、そんな戯言を粉微塵にしてくれるのがモンパニ映画です。

チャールズの死から6日目。ビーチは再び観光客で賑わい、アレックスも安心していました。遠くまで行き過ぎた男性二人組にアレックスの後輩ダニーが注意に向かい、泳いで戻ることに。しかし、戻る途中でダニーは何かに襲われます。足の着く場所まで逃げたダニーでしたが、再び襲撃を受けます。急いで向かうアレックスの目にははっきりと巨大な三角形の背ビレと灰色の姿が映ります。アレックス達は小型ボートを出して救出に向かいますが、引き上げられたダニーは両足を食いちぎられており、すでに手遅れでした。

アレックスはホテル支配人に抗議に向かい、「科学的意見とやらをダニーの家族に説明しろ」ともっともなこと言い放って部屋を出ていきます。

仕事を辞めてアレックスはふらふらしていました。ホテルにまた雇ってもらうように頼もうというスタンリーを「人の命を犠牲にして金儲けするやつのもとで働けるか」とブチ切れて追い出すアレックスですが、船長(例のギムリです)からの依頼で、サメ除けフェンスを設置する仕事の手伝いをすることに。この仕事では結局サメは登場せず、フェンスの設置は成功します。

このあとニューヨークからサメにかけられた懸賞金目当ての剥製コレクターマイケルが現れたり、アレックスがスタンリーと和解したり、アレックスと魚類学者のニコルズ博士が話をしたり、いくつか場面があるのですが、面倒なんでかっ飛ばします(笑)。

 

 

7月12日。船長は朝から酒をチビチビしながら釣りに向かいます。真夏の平和な日に思えましたが、釣りを終えた船長が見たのは、川を登っていく巨大なサメの影でした・・・。

警察署長が信じてくれないので、船長はボートを出して川に入ろうとする人々に自ら警告に向かいます。しかし、船長と入れ違いで、子供たちは川に泳ぎに行ってしまいます。川で遊ぶ子供たちの前にサメが現れ、逃げ遅れたレスター君が犠牲になってしまいました。騒ぎを聞きつけ、スタンリーが何人か引き連れて川に向かいます。一方で、船長と出くわしたアレックスもボートに乗り込みます。

レスター君のものと思われる血だまりを見つけたスタンリーたちは危険も顧みず川に飛び込みます。何も見つけられずにいると、飛び込んだうちの一人が突然何かにぶつかり、切られたような傷を負います。怖くなって水からあがる二人に対し、スタンリーはそのまま潜って少年を探します。そしてついに、水中に沈むレスター少年を発見しますが、直後にサメがスタンリーの足に噛みつきます。たまたまボートで現れたアレックスがオールでサメを攻撃してスタンリーを救い出しますが、ひどい重傷です。アレックスはスタンリーを病院まで運び、船長は川を下るサメをボートで追います。

同じころ、下流では船長たちの目を盗んだ別の子供たちが泳いでいました。そこにお風呂のおもちゃのように不自然にま~すぐ泳ぐサメが現れ、ジョセフ少年に噛り付きます。少年は足にひどい傷を負いますが、船長がボートでサメに体当たりしてなんとか少年を救い出します。スタンリーを襲っているシーンは結構迫力があったのに、この場面ではおもちゃ感があってパッとしません。尾びれを動かす模型が用意できないなら、無理せず背ビレだけ出してそれっぽくしてほしかったです。

一方、アレックスの頑張りも虚しく、スタンリーは病院に向かう列車の中で息絶えてしまいます。

 

12日間で4人の犠牲者と1人の重傷者。恐怖と怒りにかられた人々は川に銃をぶっぱなし、ダイナマイトを投げるなど無駄な努力を続け、ついにはニセの「人食いザメ」を見世物にして関心を集める輩が街にはびこります。

事態をどうにかしなければと考えたアレックスは、サメを殺す決意を固め、ニコルズ博士に相談に向かいます。博士は今回の一連の事件の犯人がホホジロザメかオオメジロザメであろうこと、獲物を定期的に得られると考えてまだ湾にいるだろうことを伝えますが、『ジョーズ』のマット・フーパ―みたいに乗り気になることなく、サメ退治への同行は辞退します。

アレックスはマイケルとたまたまあって少し話をしたあと、船長のもとを訪れます。ニセのサメで儲けていた船長でしたが、根はいい人なのでアレックスに説得され、サメ退治に向かいます。

船長の自説をもとにポイントを定めて餌を垂らす彼らの前に、小さいボートの上でのんびりするマイケルが。すると突然、、小ぶりなホホジロザメが勢いよく飛び出します。その迫力にビビるアレックスと船長でしたが、マイケルは余裕綽々。ヘボいボートでプカプカ浮かび、サメが網にかかったらそのまま船を曳かせて、力尽きるのを待つという寝ぼけた計画を自信満々に語りだします。

しかし、そこはやはり映画。サメが網にかかって本当にボートを引っ張り出します。マイケルは調子づきますが、サメはひとしきり引っ張ったのち、今度はボートに食らいつきてバラバラにしてしまいます。ここは結構リアルな描写で迫力がありますね。マイケルはなんとか逃れて船長の船に引き上げられます。網を引いたまま逃げようとするサメ。船長がフックを投げますが、下手過ぎて届きもしません。「このまま逃してなるものか」と執念を燃やすアレックスはフックをもって海に飛び込み、網が邪魔で噛みつけないのをいいことにサメに飛び掛かってフックをひっかけます。すぐさま一同はフックにつながったロープを船の舳先に取り付け、サメに船を曳かせます。

「さあここからどう死闘を繰り広げるのか・・・!」と期待が高まりますが、残念!テレビ映画なので時間切れです(笑)。サメに網をかけ船につないだことでサメを捕まえたことになり、次の場面は吊るされたサメを自慢する船長とマイケルたちになってしまいます。アレックスはその様子を微笑みながら眺め、ニコルズ博士に魚の研究に興味がある旨を伝え、ルイーズといい感じになって物語は幕を閉じます。

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【サメの生態に関する評価】
この映画で触れなければならない最大の点は、「サメが川に何故現れたのか」でしょう。今回の映画のもとになったのはニュージャージーで実際に起きた出来事です。そして、実際に川で人が襲われたと伝えられています。

本作では川に現れたサメと海でチャールズとダニーを殺したサメおよび最後にアレックス達が捕獲したサメは同一のホホジロザメであるという風にされていますが、実際に川で人を襲ったのは別のサメ、オオメジロザメとみて間違いないでしょう。サメ好きなら基礎知識になりますが、オオメジロザメ(学名:Carcharhinus leucas)はホホジロザメ、イタチザメと並ぶ人間にとって危険なサメであると同時に、淡水域で生活できる数少ないサメの一種です。アマゾン川やミシシッピ川の上流で記録が残っており、僕自身沖縄の川で幼魚を見たことがあります。物語中ではニコルズ博士もその件に触れていますが、恐らく物語を単純化させるため、本作では犯人のサメは一匹されています。

サメの出来具合に関しては、一部残念なところもありますが、テレビ映画にしては頑張った方だと思います。全体が映る泳ぐワンシーンはCG、横顔がはっきり映るワンシーンはドキュメンタリーの本物映像、網にかかったサメの顔はドキュメンタリー映像に合成で網を被せたもの、他は全て模型だと思われます。B級映画でありがちな出来の悪いCGに頼りすぎるということもなく、スタンリーが襲われるシーンや最後の網にかかったサメと戦う場面は、僕の中では割と高評価です。

【映画としての評価その他コメント】
物語の最初の展開が『ジョーズ』的な「モンパニあるある」ですが、発想のもとになった事件が同じなのだから仕方がないでしょう。爆発も銃撃も血しぶきもない終わり方でラストがかなり尻すぼみに思え全体評価はイマイチですが、何故か不思議と悪い作品とは思えません。下手なCGよりも模型で頑張るところや、最初にチャールズが襲われるシーンでは水中に何がいるか見えないけど、次の犠牲者ダニーの時ははっきりと背ビレが見えるというサメの登場のさせ方が「うまいな」と感じさせるなど、ところどころいい場面があるからだと思います。過度な期待をしなければそれなりに楽しめるサメ映画です。