ダークタイド (Dark Tide)

これまでの「人食いザメvs人間」のサメ映画から一線を画す新しいタイプのサメ映画です。ネットでの評価は総じて低いですが、僕は嫌いじゃないですよ。

題名:ダーク・タイド
原題:Dark Tide
公開年:2012年
監督:ジョン・ストックウェル
主演:ハル・ベリー

【かなりぼかしたあらすじ】
舞台は南アフリカのケープタウン。ホホジロザメとフリーダイブをする技を持つケイトは、ダイブ中の事故で仲間を失ってからサメに関わらないボートツアーで生計を立てていた。生活が苦しくなった頃、疎遠になっていた夫でありダイブ仲間でもあるジェフの申し出で、富豪のブラディという男と息子をシャークダイブツアーに連れていくことに。ブラディは「ケージの外でサメと泳がせてくれ」と依頼するが・・・。

【ネタバレを含むあらすじ】
のっけからモノホンの美しいホホジロザメが水中を泳ぐ姿が映し出され本編スタート。フリーダイバーのケイト、夫でカメラマンのジェフ(フランス訛りきっつい)、ケイトのサポートをするタバは、ケージ無しで海に潜り、ケイトが華麗にサメと泳ぐ姿を撮影しようと試みます。

ケイトが人魚のごとくサメ(CGではなく本物!)とフリーダイブで戯れている様をジェフがカメラに収めますが、急に一匹のサメがタバに向かって接近。あしらおうとするタバでしたが、次の瞬間一気に攻め込まれガブリ。助けようとするケイトとジェフでしたが、二度目の攻撃でタバの体を丸ごとさらわれてしまいます。

 

1年後。ケイトはサメに関わるのを止めてボートの上でクジラやアシカの案内をするツアーガイドをしていましたが、生活は火の車。船を銀行に差し押さえられようとしていました。そんな時、タバの事故をきっかけに疎遠になっていたジェフから仕事のオファーが。乗り気ではないケイトでしたが、タバの妻ズッキーとボート操縦士のトミーの説得もあり、話だけでも聞くことに。

どうでもいいですが、この「かつて凄腕だった人に仕事のオファーが来て、乗り気じゃないけど経済的事情で結局その気になる」っていう流れは、『レッド・ウォーター サメ地獄』と同じですね。

いかにも金持ちな感じの実業家が気弱そうな息子と登場。ウィリアム・ブラディと息子のルークは、ホホジロザメとケージを出て泳がせることを条件に高額の報酬を提示します。「繁殖シーズンだからお勧めしない」と渋るケイトに対し「交尾したいんじゃなくて泳ぎたいんだ」と返すウィリアム。この返答からすでに彼がバカであることが窺えますが、とにかく交渉は成立。

さて、その日の夜。物語の本筋と全く関係ない密漁者が登場し、海底の貝を捕まえていたところ、ホホジロザメ(もちろんそうだと思うけどはっきりとした描写無し)に襲われ全員海に消えていきます。この「物語のと関係ない泥棒野郎がサメに襲われて、その後何事もなかったかのように本筋再開」という流れは、『ジョーズ3』ですね。

ちなみに、密漁者の乗っていた車の後ろに不自然なくらいデカい文字で「TOYOTA」って書いてあるんですが、何か意味があるのか。日本人と密漁者のマイナスイメージを結び付けて日本の乱獲やアジアのフィニングをディスりたかったのかな・・・。深読みすぎですかね。

さて、本筋再開。船出と共にいきなり禁煙に反発し始めるウィリアムがウザい以外のトラブルはなく、イルカの群れを観て楽しみながらサメの「餌場」に到着。撒き餌をして金属音をたててしばらくするとサメがやってきました。

細かい点ですが、ここでケイトがクラスパーの位置を「anal fin (臀鰭)」と言っていますが、正確には「pelvic fin(腹鰭)」です。良い子は間違えないように。

早速ケイトとジェフは海に入り、ウィリアム達もケージの中にひとまず入りますが、サメが行ってしまい一発目のダイブは不発。偽アシカを船で引きながらサメを探します。「いつになったらサメが観れるんだ」とイラつくウィリアム。自然相手でガタガタ言わないで欲しいのですが、すぐにエア・ジョーズ(サメの大ジャンプ)が登場。準備に取り掛かります。

「水が濁っているし、Playerじゃない(=泳ぐ相手として不安だ)」とジェフは心配し、ルークが突然潜りたくないと言い出してウィリアムと喧嘩しだすなど不穏な空気が流れますが、結局ケイト、ジェフ、ウィリアムが水の中へ。

優雅に泳ぎサメの鰭に捕まったりするケイトとそれを撮影するジェフ。背鰭に捕まってゆったり泳ぐ姿は実に美しいです。それを見ていたウィリアムが、何を血迷ったのか突然ケージから出てサメに向かって泳いでいきます。振り返って向かってくるサメでしたが、間一髪のところでケイトがサメを上手くそらし、事なきを得ました。

ボートにあがるとブチ切れるケイトをよそにウィリアムは「大丈夫だったじゃないか」とにこやかにはしゃぎます。真正のオタンコナスです。さらにウィリアムが、「ケージから出れる」と勝手にジェフが保証したメッセージをケイトに見せて今後は夫婦喧嘩。もう無茶苦茶です。ケイトは「帰る!」と叫んだ後泣き出し、最終的には「この馬鹿にでかいサメを見せに行くよ」とヤケになり、ウィリアムも乗り気に。

悪天候で荒れた海域をボートがやや不調の状態で進み、ポイント到着。複数のホホジロザメがいる海の中にケイト、ジェフ、ケージの中にウィリアムが潜ります。出ろと合図するケイトに対しビビりだすウィリアム。そんな中、アンカーを調整しようとした際に波にあおられて船が転覆。ケージは海底に落ちていき、トミーは海に放り出され、ルークは船内に閉じ込められます。

ウィリアムはジェフに救出され、ケイトが流れていった救命ボートを発見し回収に向かいます。弱った状態のルークも見つかり、勇敢にもウィリアムが助けに向かいます。その間、意識を失いかけていたトミーがサメに下半身を食いちぎられてしまいます。トミーはケイトたちの無茶に従順に付き合っていた感じだったので、ちょっと可哀想ですね・・・。

さて、ルークを助けてジェフに任せたウィリアムですが、ボートから離れて浮いていたところをサメに大ジャンプを決められガブリ。そのまま水中に引きずり込まれます。こちらは完璧に予想通りですね。ルークが映画中ウィリアムに向かってずっと「Don’t be a dick」と言っていましたが、「dick(=チ〇コ、転じてバカとかクソの意味)」になって自然を舐め腐っていると痛い目に合うのはいい教訓です。

さて、救命ボートの回収に向かったケイトは、ホホジロザメに見つかり目を付けられます。品定めをするように周りをまわりだすサメでしたが、ケイトはうまく方向転換させ難を逃れます。

救命ボートを無事開くことができたケイトはジェフ、ルークと共に夜を乗り越え、翌日救助ヘリに助けられます。物語の終わりはケイトの独白で終わり、ジェフとサメを追いかける仕事をしていることを匂わせながらエンドクレジットです。

 

【サメの生態に関する評価】
本作『ダーク・タイド』に出てくるサメの出来そのものは完璧ですね。泳ぐシーンは人間が一緒にいる時も含めほぼ本物のホホジロザメで、人を襲うシーンはCGでした。そのCGも結構いい出来で満足です。ケイトがクラスパーの位置を間違えて解説すると言う凡ミスがあったのは残念ですが、まあ許容範囲としましょう・・・。

 

【映画についての評価その他コメント】
映画そのものは否定的な評価がネットでは多く、確かに突っ込みたくなる部分はあります。まとめると下記のとおりです。

①全体的にパンチ(グロ?)不足
②全然関係ない密漁者
③突然切れだす人々

①について
サメの襲撃シーンはありますが、どちかというと優雅に泳ぐホホジロザメの方がメインで、獰猛なサメが襲ってきて食われるかもしれないというドキドキは確かにあまりないです。もっとも、ホホジロザメと華麗にフリーダイブをするケイトが常にハラハラものなのですが、『ジョーズ』や『ディープ・ブルー』みたいな怖さではないので、パニック物として見ると味気ないかもしれません。

②について
途中で出てくる密漁者たちが何の意味があるのかよく分かりません。一応全員食われたっぽいので「これはサメが人を食う映画だからモンパニ好きの人も退屈しないでね~」とリマインドしてくれているのかもしれません。

③について
ウィリアムは元々バカで食われるフラグ立てなきゃいけないから変な態度でいいんですけど、息子のルークが突然切れだして水に入るのを嫌がったり、ブチ切れたケイトに対してジェフも怒鳴って、最終的にケイトが荒れた海の中で無茶したり、後半は無理矢理持って行った感があります。ルークの件はウィリアムがケージから勝手に出るためのフラグでしょう。ジェフとケイトについては「乱れた気持ちで自然に向かっていったから天候も悪くなっていったし結果痛い目に合う。自然って怖いよ」みたいな流れにしたかったのかもしれませんが、映画だとそこの心情描写は想像するしかないので、ちょっと強引さがあるかもしれません。

それでも、僕の中でこの映画の評価は低くありません。「とりあえずサメの口に人投げ込んでおけばいいでしょ」という中身もへったくれもないモンパニ映画と比べると、サメが悪者でないところでまず高評価。加えて、殺人マシーンではなく慎重に向き合わなければいけない自然の驚異として描かれている点も素晴らしい。映っているのも本物のホホジロザメで、初めて観た時に妙に新鮮さを覚えた記憶があります。どちらかというとモンパニ好きではなくサメ好き向きの映画と言えるでしょう。

 

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