ジョーズ (JAWS)

「全てはここから始まった」と言っても過言ではないでしょう。サメ映画を超えて、モンスターパニック映画の金字塔。映画全体の中でも一級品と呼ぶに相応しいクオリティの映画ではないでしょうか。

題名:ジョーズ
原題:JAWS
公開年:1975年
監督:スティーブン・スピルバーグ
主演:ロイ・シャイダー、ロバート・ショー、リチャード・ドレイファス

【かなりぼかしたあらすじ】
普段は静かだが夏は海水浴客で賑わうアミティ島の海岸に、何者かに引き裂かれた女性の腕が打ち上げられた。警察署長のマーティン・ブロディはサメの仕業ではないかと疑い、海水浴場の閉鎖を求めた。しかし、一番の稼ぎ時である独立記念日を間近に事を荒立てたくない市長は、サメの目撃自体がないことをいいことに耳を貸さず、海開きを行う。しかし、第二の犠牲者がでて、ついにサメが姿を現し、第三の犠牲者までもが出てしまう。島の平和を取り戻すため、マーティンは海洋研究所からやってきたサメの専門家マット・フーパ―と、サメ漁のプロであるやり手の漁師クイントと共に、人食いザメとの死闘を繰り広げるのだった・・・。

—————————————————————————————————–

【ネタバレを含むあらすじ】
冒頭は若者たちが夜に海岸で酒を飲むシーンから始まります。クリシィという女性と青年が暗い海岸への道を服を脱ぎながら走ります(夜なので裸はほとんど見えません、残念。てか、めっちゃ通り道に服ばらまいてるけど、帰るときどうするつもりだったんだろう。これもフラグだとしたらスピルバーグ神すぎ)。

青年は完全に酔っぱらってズボンも脱げないまま海岸で寝てしまいますが、クリシィはもう少しで夜が明けようという海を泳ぎ、ブイが浮いている近くでプカプカ。しかし、海の底から浮上してきた何かが彼女を捕らえ、絶叫を残し彼女を海に引きずり込みます。

翌朝、彼女がおぼれてしまったと勘違いして青年が警察に通報。ここで主人公のマーティン・ブロディが登場。食いちぎられた彼女の腕を発見します。カニがつまみ食いしている描写が生々しいですが、かといってハエはおらず、不快にさせないのはさすがです(人間の腕自体でみんな不快に思うのかな。もう僕はその辺の感覚若干麻痺ってるかも笑)。

平和な島のため警察署は一つで警官は署長と助手だけ。検死の結果で「サメの襲撃(shark attack)」と報告を受けたマーティンは、助手のヘンドリクスをパシって「遊泳禁止」のサインを作り海岸を閉鎖しようとしますが、市長とその他町のお偉いさん集団に止められます。検死を行ったじいちゃんまで「勘違いだった」とか言い出す始末。恐らく圧力をかけられたのでしょうが、本当の勘違いだったらただの無能です。

そんなこんなでビーチは結局解放。ブロディは署長として放っておけず、なにより何も知らずに海で遊ぶ息子のマイク(弟のショーンはまだ小さいので海岸で砂遊び)が心配で海岸を緊張した表情で監視していました。しかし、恐怖の影は芸術的な音楽と共に忍び寄り、ティペットという黒いワンちゃんとアレックス・キントナー少年を文字通り血の海に沈めてしまいます。

アレックスの母親はサメの仕業と断定し息子を殺したサメに$3,000の懸賞金をかけました。これがもとで島は大騒ぎになるのですが、この一件について話し合う市民会議でも市長は「海岸閉鎖は24時間だけ」としてしまう。「24時間も3週間も変わんねーよ」とかざわつくなかで、黒板をひっかく不快な音。一同だまり振り返ると、下手くそな人食いザメの絵を横に座る男、クイント船長。「俺ならその化け物の頭から尾っぽまでもってきてやれるが、$10,000が条件だ」みたいなことを言い残し、助手みたいな男と去っていきます。

余談ですが、この助手みたいな男性はブロディたちがクイントの船でサメ退治に出かけるときに同行しないのですが、DVD収録の未公開シーンの中で「サメ退治なんて嫌だ」的なことを言ってクイントにクビにされています。

サメに懸賞金がかけられたことでアミティ島には素人サメハンターが続々と押し寄せます。「このバーはナンパできますよ」とネットで書かれてから途端に集まってきた初心者ナンパ師よろしくに、大したスキルもないのに集まってきて大騒ぎ。爆薬投げたり血をまき散らしたり・・・。てか、何でボートにワンちゃん乗せているんだろう・・・。僕なら絶対できません。

時を同じくして、海洋研究所のマット・フーパ―が登場。クリシィの腕を検死し、間違いなくサメの仕業だと断定。

フーパ―の検死の間に漁師の一グループが巨大なイタチザメを捕獲し、港でつるし上げて歓声をあげています。マーティンも市長も大喜びですが、フーパーは顎の直径を図って冷静に分析し、クリシィを襲ったサメとは別のサメと判断。マーティンとともにサメの胃を開いて調べることに。

どうでもいいですが、思いっきりイタチザメなのに、漁師が「アオザメか?」「何ザメだろう?」とか言っちゃっている。漁師のくせに知識レベル低すぎでしょ(笑)。そして、そんな彼らをサメの顎が飾ってある自慢の船からほくそ笑むクイントが印象的です。「You got a wrong fish」とか心の中で思っているのかな、と感じさせる場面ですね。

さて、胃を調べた結果魚とか缶とかナンバープレート以外には何もないことが分かり、ブロディとフーパーは夜の海に調査に出て、ぶっ壊された漁船およびそこに突き刺さる巨大な三角形の歯と漁師の死体を発見。歯の形からホホジロザメが一連の事件の犯人だと断定して早速市長に報告するも、フーパーが歯を見つけた際に死体に驚いて水中で落としたことをいいことに「歯持ってないんでしょ」とか言って、独立記念日に海を開くことを強行。仕方なくブロディとフーパーは電話をかけまくってサメ監視員をかき集めビーチを見張りますが、段ボールでサメのヒレを作った子供のドッキリ騒ぎに乗じて(?)、巨大なサメが入り江に侵入。ボートに乗っていた青年を派手に食いちぎります。この時点でようやくサメの顔が見えます。ここまでヒレの一部しか出さずにサメ映画として展開を運ぶ才能はやはりスピルバーグといったところでしょうか。

ちなみに、市長はこんな大失態をしておきながら次作『ジョーズ2』でも市長やってます。どうやって当選したんだろう・・・。

島に平和を取り戻すにはサメを殺すしかない。サメ退治を決意したマーティンは、横暴な態度に我慢してクイントと手を組むことに。専門家としてフーパーも同行します。どうでもいい感想ですが、大量のサメの顎が飾ってあって海辺にあるクイントの家は最高ですね。いつか僕も海辺にサメハウスを作って生活したいです。

オルカ号と名付けられた船(オルカ(=シャチ)がホホジロザメを襲うことがあるという事実からつけられたかどうかは不明)で撒き餌をしていると、船と同じくらいの大きさがありそうなバカでかいホホジロザメ登場。メイキングを見るとこの模型がポンコツで撮影がとんでもなく大変だったことが語られていますが、まだソ連という国が存在していた時代のものとしてはかなり精巧です(少なくともそう見えます)。

クイントのサメ漁はサメにタルをつけて潜れなくなったところで一気に叩くことみたいですが、残念ながらこのサメはタルごときお構いなく潜っていき、夜中に酒盛りをしている船にぶつかって喧嘩を売るなど余裕を見せます。クイントが最初のタルを打ち込んでから、「タルが浮いている」=「サメがいる」になり、サメの姿が見えずともサメの戦いとして物語が盛り上がっていきます。

余談ばっかりですが、マット・フーパ―を演じるリチャード・ドレイファスは頭が禿げ上がった白鬚おじいちゃんになっても俳優を続けていたのですが、『ピラニア3D』というC級映画に登場した際、夜の酒盛りで三人が歌っていた「Show me the way to go home~♪」という歌を口ずさんでいて、僕は感動してしまいました。「あなたのような偉大な俳優がこんなウ〇コ映画に出たのは、この歌を再び歌うためだったのですね!」と勝手に納得しましたね。はい、どうでもいいですね(笑)。

さて、サメが大暴れしたうえにクイントがヤケになって無茶な操縦をするもんだから船には海水が入ってエンジン壊れ、3人は絶対絶命。酒盛りで話したインディアナポリス号の話(ちなみにこの船の事故自体は実話)から救命胴衣を着たくないクイントは、二人に救命胴衣を投げて黙り込みます。フーパーは最後の手段として、檻に入ってサメの口に毒薬を出す槍を放り込んで殺すと言い出し、サメ除けのケージに入って海の中へ。檻の周りをサメが泳ぐシーンの一部は模型ではなく本物のホホジロザメで撮影しており、あの有名すぎる音楽と相まって緊張感が出ますね(サメが大きく見えるよう、フーパー役は体が子供並みに小さいスタントマンを採用)。

後ろに回り込まれて体当たりされ槍を落としたフーパーは檻のなかで食われそうになったところ、ナイフでサメの頭を必死にぶっ刺すという抵抗を見せ、命からがら岩場に隠れます。檻とロープに絡まってサメが暴れ、オルカ号はさらに悲惨な状況に。引き上げた檻がボロボロなのを見て絶望する暇もなく、沈みかけなのをいいことにホホジロザメが大口開けて船の上にジャンプ!滑り落ちたクリントに豪快にかぶりつき、海に引きずり込みます。

船は沈むし、泳げないし、完全に終わったかに見えたマーティンでしたが、襲い来るサメの口にダイビング用のタンクを投げ込んで抵抗し、クイントの銃と銛をもってマストにのぼります。タンクを投げ込まれるサメの口にクイントの肉片と思しきものがついているのは、また芸が細かいですね。

サメが沈みゆく船に迫ってくるところ、マーティンは「Show me the tank」と祈るようにつぶやきながらサメの口を狙い銃を撃ちます。サメが水面から顔を出し「いよいよ襲うか!」という瞬間、「Smile you, son of a bitch!」(笑え、クソ野郎!)と決め台詞とともに弾を放ってタンクに命中。タンクが爆発してサメは頭が吹き飛び、海の中に沈んでいきました。マーティンは海から上がってきたフーパーと合流し、タルにつかまって島まで泳いでいきました、とさ。

——————————————————————————————–

【サメの生態に関する評価】
サメ映画の中でもっとも有名で影響力があることもあり、「サメ=殺人マシーン」というイメージを広めた犯人として、サメ好きの方の中ではこの映画に対する評価が極めて低い方も多いです。確かに悪名高いホホジロザメと言っても、そんなにしょっちゅう人を襲いませんし、撒き餌をしていない船を必要以上に攻撃するのかは疑問です。

しかし、それでも他のサメ映画よりはサメの生態についても評価できると思います。まず、当時にしてはサメの模型がリアルです。水の中で動かなくなったりという機能的なへぼさはあったようですが、見た目はなかなかのものです。サメの形状、歯の形や並び方も割と本物に近いです。イタチザメに関してはちょっとしか登場しないのに特徴的な歯の形やクラスパー(おちんちん)も正確です。ていうか、イタチザメに関しては本物の死体かもしれません。そんくらいリアルです。

スピルバーグがどこまで意識したのかは知りませんが、獲物の獲り方も一部それっぽいです。最初の犠牲者のクリシィおよびアレックスは海の下から攻撃されています、これは、実際にホホジロザメが海の底から勢いよく襲う習性の表れだと言えなくはありません。またアレックスは空気で浮かぶボートのようなものに乗って他の子と少し離れて浮かんでいたので、サメからは恐らく襲いやすいアザラシに見えるでしょう。

また、イタチザメの中から魚以外の色々な人工物が出てくる点も、「海のゴミ箱」などと言われるイタチザメの生態に合った小ネタです。

さらに、クイントが無線を叩き壊したことでマーティンがブチ切れている時に現れたサメが頭の先と目を水中から出して泳いでいるのですが、これはスパイホップと呼ばれるホホジロザメ独特のしぐさです。クライマックスでオルカに飛び乗るサメも、ホホジロザメのジャンプ力なら十分現実的です。

以上のことを踏まえると、映画のクオリティだけでなく、サメの生態に関しても、そこまで悪くない映画と言えなくもないのかもしれません。

 

 

【映画についての評価その他コメント】
この映画の影響力は凄まじく、ビーチはおろか風呂に入るのを怖がる人が出るほどだったと言われています。そして、これに影響されたのかどうかは知りませんが、『ジョーズ』以降、パクったようなB級、C級映画が数多く誕生しました。

ちなみに「犠牲者1⇒主人公登場⇒閉鎖や警戒を求める⇒拒否られる⇒犠牲者2⇒ヤバいと大騒ぎ⇒荒くれ者の船長登場」みたいな流れは、『ジョーズ』以降のあらゆるモンスターパニックでパクられています。特に『ビーチ・シャーク』(原題: Sand Shark)は主人公が警官な点、サメ博士が登場する、会議で船長登場して最後に三人で戦うけど船長死ぬ、という展開まで一緒です。読書もそうですが、古典に触れておくと抽象度の高い視点から物事が見れますね。

音楽についてもこの映画は素晴らしいです。『ジョーズ』と言えば「ダーダン、ダーダン♪」というあの曲がやはり有名ですが、この映画の音楽担当のジョン・ウィリアムズは、スター・ウォーズ、インディー・ジョーンズ、ハリー・ポッターなど誰もが知る曲を作ってきた映画音楽の神様であり、『ジョーズ』でもあの有名な曲以外にもいい曲は沢山あります。タルのついたサメをオルカ号が追いかけるシーンの音楽も僕は大好きです。

【ネタバレを含むあらすじ】の中でサメが見えていないけどサメがいるように見える手法について紹介しましたが、実はこの手法、本作『ジョーズ』全体で見受けられます。サメを写さずにカメラアングルが海の底から徐々に犠牲者に迫るシーンもそうですが、僕のお気に入りは桟橋のシーンです。桟橋に肉をつないで男二人がサメをおびき出そうとしますが、肉を咥えたサメの勢いが強くて桟橋が崩壊。そのまま引きずられて海に放り出された男に、ゆっくりと桟橋が迫ります。もちろんサメが桟橋とつながった肉を咥えたまま迫ってきているのですが、我々には桟橋しか見えず、想像力を掻き立て逆に恐怖を演出します。まあ、この手法の真相は、模型がへぼすぎてサメをあんまりだせなかったことらしいですが(笑)。