シャーク・ナイト (Shark Night 3D)

サメ映画、というより『13日の金曜日』や『蝋人形の館』にサメ要素を突っ込んだ映画です。登場する種類数はサメ映画の中では多い方ですね。

題名:シャーク・ナイト
原題:Shark Night 3D
公開年:2011年
監督:デヴィッド・エリス
主演:サラ・パクストン

【かなりぼかしたあらすじ】
大学生のサラは週末に友人たちと湖に来ていた。人気のない静かな別荘でバカンスを楽しんでいた彼らだったが、水上スキーを楽しんでいた仲間の一人がサメに腕を食いちぎられてしまう。助けを呼ぼうとするも、さらにサメの襲撃を受け、ボートが破壊されてしまう。困り果てる彼らの前に、地元に住むダイバーのデニスが協力を買って出るが、それはさらなる地獄の始まりだった・・・。

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【ネタバレを含むあらすじ】
冒頭のクレジットタイトルから早速多くのサメの映像を出してくれます。赤い効果で多少ごまかしていますが、ほとんどがネットにも上がっているドキュメンタリーの映像で、なんと『ディープ・ブルー』のワンシーンも登場します。そして、物語の本筋とほぼ関係ないブロンド美女が食われてひとまず本編スタート。

舞台は大学キャンパス。主人公のサラ、いかにも誠実そうなイケメンのニック、そんなニックのムキムキ友達マリク、ヲタクな友達ゴードン、マリクの恋人マヤ、ビッチっぽいタトゥーを入れたベス、チャラそうなイケメンのブレイクの7人、それにサラの愛犬シャーマンは、サラの家族が所有している湖畔の別荘にバカンスに行くことに。誰とヤルるのかが会話のメインで、出発前に酒を買う感じ、まさに大学生ですね。

道中で歯並びが悪い失礼なオヤジのレッドと、そのレッドと行動を共にする明らかにサラと前に色々あったっぽい男デニス、サラの知人である保安官と会いますが、何はともあれボートで一同別荘に到着。プールでゆっくりしたりワンちゃんと戯れたりとそれぞれ楽しみだし、ニック、ブレイク、マヤはボートに乗り、マリクはボートに引っ張ってもらい水上スキーを楽しみます。

しかし、後ろから猛スピードで迫る大きな背ビレ。マリクはサメに攻撃されてバランスを崩して水に落ちます。なかなかあがってこないマリクを心配する一同の前に、右腕を食いちぎられたマリクが自力で浜辺まであがってきます。

通じない携帯を試したり止血をしたりと大騒ぎ。取り乱しながらも、医療大学を目指しているニックが指示を出して応急処置を行います。止血を命じた彼は、湖の中に飛び込んでマリクの腕を探します。

水中で腕を見つけ桟橋まで泳ぐニック。背ビレを出してサメが迫りますが、間一髪でニックは水を出ます。腕が丸々水中にあるということは、サメは噛みちぎってから何も食べずに去ったことになりますが、サメは何がしたかったんでしょうか。まあ置いておきましょう。

「なんで湖なのにサメなんだよ」
「塩水湖だからあり得ないわけじゃない」
という会話から、とりあえずサメが湖にいるという設定の謎をクリア。サラの運転で、ニック、マヤは冷凍保存した腕とともにマリクを病院までボートで運ぶことに。

しかし、マリクの傷口から垂れてくる血を嗅ぎつけたサメが迫りボートに体当たり。マヤが水に落ちてしまいます。人ひとり食うのはちょっと小さい感じのメジロザメが迫り、浮き輪を投げて救い出そうとするニックの努力も虚しく、マヤは水中に引き込まれてしまいます。サメが食らいつく際の「グオ!」とかいう鳴き声が気に入りませんね・・・。

マヤを助けようとボートを方向転換した際、サメはさらにボートを攻撃してボートの舵を壊してしまいます。操縦不能になったボートはサラ、ニック、マリクが飛び降りた直後に別荘の桟橋にぶつかり、爆発してバラバラになってしまいます。

別荘から出る手段もなくなり、マヤが死んでパニくる一同。何もできないまま夜を迎えます。

別荘の外で突如銃声が響きます。ニックが慌てて外に出ると、ブレイクが銃で合図を出し通りかかったボートに助けを求めていました(普通逃げそうだけどね笑)。

近付いてきたボートを運転していたのはデニスとレッドでした。これ以上マリクの体に負担をかけられないというニックの判断に基づき、デニスの提案で、通話可能圏内までボートで向かい、そこから救急ヘリを呼ぶことに。一刻も早くこの場から去りたいベスと、ベスを心配するゴードンがデニス達の船に乗ります。

(以降、場面が細かく移動してそれに合わせて書くのが面倒なので、場面をそれぞれ分けてまとめます)

<別荘>
船を待つ間、ブレイクはマリクにマヤの死を告げ、サラはデニスと2年間付き合った後、分かれる前最後のダイビングでデニスの顔をスクリューで傷つけてしまった過去をニックに語ります。

結婚しようと思っていた相手を殺された怒りから、マリクは片腕のない状態で「サメを殺す」とか言い出して、ニックの制止も聞かず槍を持って水の中に入っていきます。しばらく待っていると、シュモクザメが勢いよく現れ、マリクに迫ります。どう見てもマリクを噛むのではなくハンマーヘッドを押し付けて暴れているだけなのですが、そんなことは関係なくマリクは格闘し、シュモクザメに槍をぶっ刺して仕留めます。

勝ち誇った感じのまま容体が悪化していくマリク。ニックがシュモクザメの死体を調べると、胸鰭の近くにカメラが。ニックはそれを見てサメを湖に放したのは人間だと気づきます。そうこうしているうちに、マリクの状態はどんどん悪くなっていき、これ以上待っていられないとしびれを切らしたブレイクは、水上バイクでマリクを病院に連れていくと言い出します。もしデニス達が普通のいい人たちであれば、ブレイクはマリクを死なせたただの馬鹿になってしまったかもしれません。まあ、ホラー映画で若者が愚行に走るのはいつものことなので気にしません。

<ボート>
デニスは突然ボートを止め、ゴードンに対し銃を突き付けて「水に入れ」と命令します。デニスとレッドは自分たちが湖にサメを話した張本人だと明かし、ゴードンを銃で撃ってボートから落としてしまいます。早速迫ってくるサメからゴードンは逃げてマングローブ的な木に登ろうとしますが、ジャンプしてきたサメに襲われて食われてしまいます。ちなみに、レッドの説明および英語版ウェキペディアでは、このサメをオオメジロザメだとしていますが、オオメジロザメにしてはやせていて体高も低い気がします・・・。まあ細かいことは置いておきましょう。

一人残されたベスは、服を脱がされたうえでサメの種類数に関する間違った講義をデニスから受け、ダルマザメが泳ぐ生け簀に突き落とされます。マグロやイルカはもちろんのこと、原子力潜水艦までえぐるという歯でダルマザメがベスを少しずつ食いちぎる様子を、デニスとレッドが水中に入れたカメラでニヤニヤしながら撮影します。それはいいんですが(良くないか笑)、こいつら潜ってダルマザメを捕まえたとか言っていますけど、どんだけ広い海のどこまで深く潜ったんだろう。魚人かよ。

<水上スキー>
ブレイクの後ろで後方を見るように座らされたマリクですが、自分たちがサメに追われていることに気づいたマリクは、ブレイクを助けるためなのかただ単に自暴自棄になったのか、自ら飛び込んで犠牲になります。ブレイクが助けようとするも手遅れで、マリクはサメの餌食に。同じサメか別のサメか、追いかけられてブレイクは水上スキーで逃げますが、正面から飛び込んできたホホジロザメを避けられず、口の中にホールインワン。『ディープ・ライジング・コンクエスト』(原題:Shark Attack 3 Megalodon)の間抜けな社長を思い出すワンシーンです。

 

 

残されたサラとニックのもとに、保安官が現れます。一安心する二人でしたが、食事を食べたニックがいきなり眠ってしまいます。保安官が持っていたボトルの中身をつまみ食いしたシャーマンも眠ったことから不審に思ったサラは、保安官の無線に入ったレッドからの連絡で、レッドたちがベスを殺し、保安官とグルになってサラも殺そうとしていることを知ります。保安官に対し包丁を手に取るサラでしたが、デニスに邪魔されて捕らえられてしまいます。

ニックは椅子に後ろ手を縛られ、イタチザメ(と保安官が呼ぶシロワニ)が真下に泳ぐボート小屋で目覚めます。さっさと殺せばいいものを、保安官はニックの足を切って水に漬けてまた出したりしていて遊んで、自分たちが『Shark Week』(ディスカバリーチャンネルで放送されている実在のサメ番組)に影響され、サメに人が食われる映像を撮影して、やがてそれを売り出していくのだと頭の悪い自慢をし始めます。映画の後半に殺す予定の相手を前にして偉そうに自分の悪行を語るのは死亡フラグの一つですが、案の定ニックはライターを隠し持っており(何でだろう)、手枷を焼き切ったのち、足を切られた際に倒したタンクにライターを投げて引火させます。燃え上がった炎は保安官に燃え移り、よせばいいのに暴れて水に落ちてしまい、イタチザメ(何度も言いますが明らかにサンドタイガーシャーク、つまりシロワニ)に食われます。外を見ると夜明け直前。ニックはサラを助けるために、デニスの船に泳いで向かいます。

デニスとレッドは細工した対サメ用ケージにサラを閉じ込め、サラの愛犬シャーマンを湖に投げ込んでしまいます。サラはデニスに例の事故のことを謝ったりして時間を稼ぎ、隙を見て銃を奪おうとするも失敗。ブチ切れたデニスは、カールとかいうもう一人の共犯者(冒頭でサラたちが寄った店の薄汚い店主)に無線で命じて、ホホジロザメ(だと思う)を檻から解放します。

デニスは檻を湖に降ろし、サラに血をぶっかけます。絶対絶命のサラでしたが、ニックがレッドの首に麻酔銃を突きつけてサラを解放するように脅します。デニスはサラを解放するフリをしてナイフを手に取り、非情にもレッドに投げて殺害、そのままニックにつかみかかります。ニックは麻酔銃を打ち込んでデニスを船から落としますが、デニスはサラを閉じ込めた檻によじ登り、ロープのつなぎを外して檻を水中に落としてしまいます。完全に檻が沈み呼吸のできないサラを先端が爆発する銛(レッドたちが船にもっていたもの。別シーンで登場済)をもってニックが助けようとしますが、デニスが後ろからニックの首を絞めます。そんなドタバタの中で後ろからホホジロザメが接近。サラはデニスの髪の毛をつかんで頭を檻にぶつけ、ひるんだすきにデニスのズボンの布かなにかを檻に結び付けました。デニスは逃げることができず、そのままホホジロザメに八つ裂きにされます。サメはさらに檻を壊してサラを食おうと迫ります。

ニックはいったん息を吸いに水面へ。無事に生きていたシャーマンはニックが先ほど放してしまった銛をくわえて現れます。ニックはすぐさま潜って檻に向かい、間一髪のところでサメに銛を打ち込んで仕留めます。

意識を失ったサラをニックは船へと担ぎ上げ、懸命な人工呼吸の結果サラは息を吹き返します。サラは単なる感謝なのかニックに惚れたのかよく分かんない表情でキスをし、遠くで3D効果をまとったホホジロザメが意味もなく飛び上がり、この惨劇は終幕を迎えます。

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【サメの生態に関する評価】
サメには色々な種類がいることを示したという点では評価できますが、やはりと言うか、色々おかしい部分が多いです。大型とはいえ、ヤジブカみたいなメジロザメがマリクやマヤを襲ったり、そのサメがレッドの説明ではオオメジロザメとなっていたり(顔つきや体高から違うことは分かります)、その謎のメジロザメがゴードンを襲う時に水面から勢いよくジャンプしたり(全部のサメが水面からジャンプするわけではありません)、冷静に見るとトンデモ映画なのが分かります。

また、殺人鬼たちの説明も無茶苦茶です。サメは350種類と断言していますが、この映画が製作されていたころならもっと発見されていたはずです。さらに、ダルマザメを「朝見つけてきた」とかほざいちゃっていますが、ダルマザメは外洋性で表層に来ることもあるとはいえ、水深3,000m以上の深海を生息域としていてそうそう簡単に捕まらないサメです。気軽にまっくろくろすけつかまえたみたいにはしゃがないで欲しいです。

なお、ダルマザメに接触行動については概ね間違っていなかったように思えます。というより、このサメの摂餌行動は歯の形と獲物の傷跡から推測されたものしか分かっておらず、正しい知識というのがこの映画の製作された当初はおろか2017年5月現在も完全には分かっていないので、ここは良しとします。むしろ、ダルマザメという一般にはあまり知られていないサメにスポットライトを当てたことに関しては評価したいです。

保安官がニックの前で自信満々に語った話も色々と問題あります。まず、【ネタバレを含むあらすじ】でも突っ込みましたが、イタチザメ(Tiger shark)と紹介されたサメが、どう見てもシロワニ(Sand tiger shark)です。一番最初にこの映画を観たときは日本語字幕なしの英語音声だったので、僕のリスニング力不足で「sand」の音が聞き取れなかったのかと思い不安になりましたが、日本語字幕付きで見直して、間違っていたには映画の方とはっきりしました。さらに、冒頭で食われた白ビキニの美女は保安官曰くマオナガの仕業らしいですが、とんだお笑い種です。マオナガ(学名:Alopias vulpinus。尾びれが異様に長いオナガザメと呼ばれるサメの仲間)は尾びれを振り上げて魚を叩き、弱らせて(もしくは絶命させて)食べるサメで、人を襲うようなサメではありません。万が一人を襲ったとしても、マオナガの口は小さいので食い殺すなんて無理です。小食の女の子に次郎ラーメンの全増しを食わせるようなもんです(ちょっと違うかな笑)。

あと、終始登場するサメが「グオォ!」とか「フゴォ!」とか「カァ!」とか吠えるのがやっぱり気に入らないですね。サメの怖さを音で引き立てたいなら音楽を使いなさない、音楽を!これについては本当に勘弁していただきたいですね・・・。

最後のシーンで登場するホホジロザメについて、変な檻のようなものから放たれて登場しますが、ホホジロザメは常に泳いでいないと死んでしまう種類なので、あんな変な囲いに閉じ込められるはずはないので、せめてもっと広い生け簀にして欲しかったですね。個人的に気になったことなのですが、あのホホジロザメは体つきが細く、吻がシャープなので実はアオザメなのかなと思っているのですが、いかがでしょうか。ウィキペディアに「Great white shark」と書いてありますが、作中では「Big girl」とだけ呼ばれており、真相は不明です。歯がもっとはっきり映っていれば分かるのですが(分かったところでCGのサメなのでどうでもいいことなのですが・・・)。

ちなみに、日本の宣伝文句には「46種類」と記載がありますが、デニスとレッドの会話の中でそう言っているだけで、実際はもっと少ないです。数えてみると、

・メジロザメ(一応オオメジロザメの設定)
・シュモクザメ(正確な種類不明)
・ダルマザメ
・シロワニ(作中では“イタチザメ”)
・ホホジロザメ

なんと5種類。色んなサメが人を襲うシーンを想像したサメファンの方はがっかりしたことでしょう。

ちなみに、「サメが湖に住めるの?」という問題についてですが、今回の舞台となる湖は塩水湖という設定なので、水温や塩分濃度などの条件が合っていれば、サメが生息することもできるかもしれません。

かなり脇道に逸れた話をすると、デニス達がサメ版スナッフフィルムを撮影するためにサメにつけていたカメラは、バイオロギングという動物研究の手法として実在するものです。興味のある方は『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』という渡辺佑基氏の著書を読んでみてください。この本はバイオロギングについて分かりやすく書いているだけでなく、サメの泳ぐ速さについて興味深い研究を紹介しており、サメ好きなら必読の一冊です。

 

【映画についての評価その他コメント】
レビューの最初にも書いた通り、田舎の殺人鬼と狙われた学生という超古典的なホラーストリーにサメ要素を突っ込んで新鮮な感じにした作品です。セックスと酒しか頭にない大学生が人里離れた場所に遊びに来る。現地に殺人鬼がいる。マイノリティ(黒人・アジア系など)、ビッチ、ヒーロー気取りなどが殺され、最後に処女(もしくは処女に近いピュア系女子)とその恋人が生き残る。ホラー映画に守破離があるなら「守」に当たる流れに結構忠実な作品です(興味のある方は『キャビン』(原題:The Cabin in the Woods)をご覧ください)。なので、映画慣れしていると誰が生き残るのかある程度の段階で分かってきます。

この映画に対する評価はホラー好きからもサメ好きからも良くないような印象ですが、僕としては可もなく不可もない、強いて言うならサメ要素だけ斬新な普通のホラー映画だと思っています。もちろん、突っ込みたいことはいっぱいありますよ。ダイビング教室の先生と下品なオヤジ二人と田舎の保安官というメンツで、どうやって塩水湖にホホジロザメやマオナガという扱いにくい貴重な種をカメラ付きで放すことができたのかとか、なんで煙草を吸っていない真面目な学生のニックがライターを隠し持っていたのかとか、色々言いたいことはあるのですが、ホラー映画ではよくあることだし、そういうの突っ込んだらキリがないのでやめます(笑)。

ホラー映画と考えてふと思ったのが、展開を早めるためかエッチシーンがないですね。ホラー映画の醍醐味(?)がないと嘆く方もいるかもしれませんが、僕としては早めにサメが出てきてくれてありがたいです。そのサメ要素の知識面でぼろがいっぱいあるのでフォローしきれませんが、退屈しのぎくらいにはなるのかなと思います。個人的にはワンちゃんが死ななくて本当に良かった。