赤い珊瑚礁 オープン・ウォーター(The Reef)

なんともB級っぽい邦題がつけられてしまいました。確かに超大作ではないですが「怖さ」という面では一級品です。何より怖いのが、これが実話に基づいているということです。一応断っておきますと『オープンウォーター』とは何の関係もない作品です。

題名:赤い珊瑚礁 オープン・ウォーター
原題:The Reef
公開年:2010年
監督:アンドリュー・トラウキ
主演:ゾー・ネイラー、ダミアン・ウォールシュ・ハウリング

【かなりぼかしたあらすじ】
船を運ぶ仕事をしているルークはバカンスで訪れた友人たちとともにクルーザーで海に出て、美しいサンゴ礁でシュノーケリングしたりと船旅を楽しんでいた。しかし、航行中のクルーザーが暗礁にぶつかり船はひっくり返ってしまう。救助を期待することはできず、彼らは泳いで島に向かうが、海で彼らを待っていたのは、血に飢えた人食いザメだった・・・。

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【ネタバレを含むあらすじ】
冒頭はルークがケイト、ケイトの兄のマット、マットの恋人スージーを空港で迎えるシーンからスタート。ルークはインドネシアに船を届ける仕事をしており、その船旅に友人たちを招いたのでした。

港でルークたちは船長のウォレンと落ち合って出港します。物語とは直接関係ないですが、ケイトがサメの顎の飾ってある部屋で話すシーンが印象的です。ホホジロザメのことを「white pointer」とも呼ぶのか、と薄っすら頭の片隅にあった知識が呼び起されました。

出港した彼らは旅の途中で無人島に立ち寄り、シュノーケリングをして楽しみます。美しい海に大喜びの四人。しかし、潮がかなり速く引いてしまい、急いでゴムボートで船まで戻ります。船が乗り上げる前に出発することができましたが、ゴムボートの底をこすってしまいました。きれいな伏線ですね。これで船が壊れたりしてもこのボートに乗ることはできなくなりました。

翌日、朝日をバックにいいムードになりキスをするルークとケイト。朝食を作ろうとルークが船室に戻ると、とてつもない衝撃が船を襲います。海水が流れ込んできて、一同大パニック。なんとか全員外に出ると、船はひっくり返っており、船底(今は上を向いている)には大きな傷があるのを見つけます。

船が動かず、このままでは流されるだけ。船もやがて沈み、救難信号を送る装置も旧式で飛行機が運良く真上を通らない限り受信されない。ルークは水面や太陽の位置を確認して冷静に考え、北に泳いで島まで行こうと提案しますが、ウォレンは頑なに水に入ることを拒みます。ルークもサメに出くわす可能性を知りつつ、このまま留まっても仕方がないと考え、ビート版やウェットスーツを船室から持ち出して準備を整えます(途中のマグロのドッキリは初めて観たときにマジでびっくりしました)。

ルークは付いてくるように強制はしませんでしたが、最終的に最後まで迷ったケイトを含め、ウォレン以外の全員が島まで泳ぐ決意をします。

ジョークで疲れをごまかしながら進む彼らでしたが、ときおり水が跳ねたり影が見えたりするたびに怯えます。水中メガネをかけているルークがことあるごとに水中を観察しますが、何も見えません。気が休まらない彼らの前に、首と手足がもぎ取られて腐って浮かんでいるウミガメの死体が現れます。

場面は変わってウォレンへ。天を向いた船底に座るウォレンは、水面で何かが音をたてるのを聞き、海に注意を向けます。そこで、ウォレンは黒い背ビレが水面を切るのを目撃します(ウォレンはこの後一切登場しませんが、のちにウォレンはおろか船そのものも行方不明になってしまった事実が明かされます)。

ルークたちは先を急ぎますが、スージーが「何かを見た」と突然怯えだします。ルークは何度も水中マスクを使って何か見えないか周囲を探します。そして、遠くに尾びれのような影を見ます。その時は何か分からず「ひとまず進もう」と言い、水中メガネで警戒しながらも泳ぎだします。しかし、ついにルークはその姿を見ます。とがった鼻、高い体高、黒く真ん丸な目、体の上下で黒と白に色が分かれた大きなその姿。まぎれもないホホジロザメです。

サメだと分かった途端にスージーだけでなくケイトとマットも怯えだし、サメを警戒してなのかバシャバシャ音を立てながら回りだします。素早く動けもしないのに海のど真ん中で暴れるなど「私を食べて」とアピールしているようなものですが、仕方ないのかもしれません。檻はおろかボートさえも周りにない状態で、ホホジロザメと対峙したら、僕だってどうなるか分かりません。ちなみに、メイキングを見ていないので確証はないですが、どう映像を見ても本物のホホジロザメと人間が何の仕切りもなしに一緒にいるようにしか見えません。どうやって撮影したんだろう・・・。合成だとしたら相当上手く作っています。

サメも恐らく相手の様子を窺っているのか、近づいたり離れたり、周りを泳いだりしています。離れたと思って泳ごうとすると再び現れ、四人の恐怖を掻き立てます。ついには四人の横スレスレに勢いよく飛び出し、ビート版を1枚さらっていきます。

恐怖に震える四人から少し離れたところにビート版が浮かんできます。実に分かりやすい死亡フラグです。あれを取りに行ったらジ・エンドって誰しも分かりますが、そこでマットが勇気を振り絞っちゃいます。ビート版までクロールで泳ぎ、つかんで四人のもとに戻ろうとした瞬間、後ろからサメが襲い掛かり、マットは水中に引きずり込まれます。

絶叫にも近い声でルークたちがマットを呼ぶと、マットは血塗れになって浮かんできます。すぐさま泳ぎ寄る彼らでしたが、マットは自分を棄てていくように言います。描写はありませんが「My fucking legs’ gone」と言っているので、両足とも食いちぎられたのでしょう。やがてマットは意識を失い動かなくなります。泣きわめいてマットの側を離れないケイトにルークが必死で呼びかけ、三人はマットを置いて泳ぎだします。ルークが振り返ると、戻ってきたサメがマットに食らいついて海に沈めていきました。

泳ぎだしたはいいものの島には到着できず、そのまま夜を迎えます。スージーは恐怖から取り乱し、皆を連れ出したルークを責め立てます。そんなとき、周りからまたも水音が聞こえ、三人を恐怖に陥れます。

翌朝、ビート版につかまったまま寝てしまっていた三人でしたが、ケイトが前方に小さな島を発見します。昨日の恐怖も忘れて喜び泳ぎだす三人。島の手前にある小さな岩に登って一休みし、島を目指します。

背ビレを見て怯える三人でしたが、イルカだと分かり安心してまた泳ぎだします。しかし、スージーがまたも背ビレを発見。ルークが水中メガネで確かめようと水中を覗くと、突然目の前に巨大なサメの口が迫り、一瞬のうちに過ぎ去っていきます。スージーがもっていかれたと気づいた時にはすでに、彼女の体は遠くに浮かんでいました。ルークはスージーのもとに泳ぎだしますが、絶望しているのか放心状態なのか分からない表情のスージーは、そのまま戻ってきたサメに食われてしまいます。ルークが水中を観察した際にスージーと思しきものに小魚が群がっているのはなんとも生々しいですね。

岩場に腰をつき島を眺めるルークとケイト。心身ともに疲れてしまっている二人ですが、力を振り絞り島へと泳ぎだします。途中の岩で休憩する際に、出血していたケイトの足の裏を布で縛るルーク。極限状態の中でお互いの気持ちを確かめ合った二人は、再度泳ぎだします。

しかし、そんな二人の後ろから迫る黒い影。またもホホジロザメが現れ、二人のすぐ近くまで寄ってきます。サメが離れた一瞬、ルークとケイトは全力で島まで泳ぎだします。島まで登れないケイトをルークが押し上げ、ケイトはルークを引っ張り上げようと奮闘しますが、スピードを上げたサメが迫り、ケイトの目の前でルークをさらっていきます。

島に上がることができたケイトでしたが、ルークが死んでしまったショックで泣き崩れます。

後日談として、ケイトは翌日釣り船に救助されたこと、ウォレンと船が懸命な創作にも関わらず行方不明になってしまったことが字幕として現れ、物語は幕を閉じます。

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【サメの生態に関する評価】
今回のサメは混じりっ気なし、100%天然素材の本物のみを映像で使用しているため、サメに見た目に関しては文句なしに100点です。また、実話というだけあって、餌の獲り方も事実と合致しています。

ホホジロザメは大きな獲物を捕らえる際、一度攻撃した後に放置して弱らせてから食すことで知られています。マットとスージーが襲われるシーンはこの行動と合致しています。オットセイなどの獲物からの反撃にあわないようにするためとも言われており、近くにボートなどあれば一度サメが離した隙に救助できたのかもしれませんが残念ながら海を漂う彼らになす術はありませんでした。

サメがいきなり獲物に噛みつかず、様子を窺うシーンも、僕としては印象的です。ドキュメンタリー映像を見る限り、ホホジロザメがいきなり獲物に噛みつかず、周りを注意深く泳ぎ回ることは確かにあるようです。人間からしたらサメは大きくて怖い生き物ですが、サメからしても、普段見かけない全長2m近い変な動きをする生き物って、確かに警戒したくなるかもしれません。

また、いつもサメ映画で僕が突っ込む「サメが人を食いすぎ」という点に関して、恐らくこの作品では複数のサメが代わる代わるやってきてマット、スージー、ルークを捕食したと僕は考えています。作品中でケイトが「同じサメなのよね?」とルークに聞くシーンがありますが、別にサメを見分けていたわけではないようですし、実話であることを考えると、複数のサメが攻撃したと考えていいと思います。余談ですが、ホホジロザメは体の傷と顔周りの模様を見分けることで個体識別が可能です。襲われている時にそんなことする余裕はもちろんないでしょうが・・・。

 

 

【映画としての評価その他コメント】
サメが登場するシーンはほぼ全て周りに何もない海上なので場面の変化はないのですが、十分すぎるくらい恐怖を掻き立ててくれる演出があるし、映画自体も短いので、飽きずに楽しめると思います。邦題のせいで『オープン・ウォーター』に悪乗りしたB級映画だと思われそうですが、僕の個人的な感想としては、『オープン・ウォーター』より全然好きですね。どうでもいいですが、僕がこの映画を初めて観たのはアメリカにいる時だったので、こんなダサい邦題がつけられていることを全く知りませんでした。

まず、海上を泳ぐシーンですが、サメが登場するしないに関わらず泳ぐ彼らの視点と同じ高さで水面が映し出されるので、本当に海の上を泳いでいるような感覚になります。さらに、水中メガネでルークが海の中を見る際にも、ルークの視点で海が映り、かなりリアリティがあります。

また、実際に本物のサメと人間が水中にいるような描写や、水中を覗いた瞬間にサメが迫ってくるようなシーンは、かなり怖いものがあります。マットが襲われるシーンなんて、本当に人ひとり食わせたのかと思うくらい臨場感があり、とてもいい仕上がりになっています。とてつもなくダイナミックな物語ではないので単調に感じる方もいると思いますが、サメに襲われる恐怖を描いた作品としては『ジョーズ』に並ぶ傑作だと思います。