ロスト・バケーション (The Shallows)

近年稀に見るまともなサメ映画です。武器も助けもない孤独な状況でどう生き残るのか最後まで読めず、サメのクオリティもバッチリです。

題名:ロスト・バケーション
原題:The Shallows
公開年:2016年
監督:ジャウム・コレット・セラ
主演:ブレイク・ライヴリー

【かなりぼかしたあらすじ】
亡き母親にかつて教えてもらった秘密のビーチ。医学生だったナンシーは思い入れのあるこの場所を訪れ、一人サーフィンを楽しんでいた。しかし、突如ホホジロザメに襲われ、干潮の時だけ顔を出す岩場に追い込まれてしまう。浅瀬のためビーチは目の前だが、その距離はあまりにも遠く感じられる。なす術のないまま、徐々に満潮の時が迫る。果たしてナンシーは生き残ることができるのか・・・?

 

—————————————————————————————

【ネタバレを含むあらすじ】
朝日が昇る前のビーチ。少年が砂浜に落ちているカメラ付きヘルメットを拾います。カメラを再生すると、サーファーが巨大なサメに襲われる映像が。少年はびっくりしてカメラを持って走りだします。

 

その48時間くらい前から物語はスタート。主人公のナンシーはメキシコにあるとあるビーチを目指していました。今は亡き母親が彼女を身籠って間もないころに訪れた秘密のビーチ。親切な現地人のカルロスの車でビーチを訪れ、波を楽しむナンシー。現地人の男性サーファー二人と談笑して、妹やパパと電話。さらにサーフィンを楽しみます。

サーファー二人が帰る中ナンシーはもう少しだけ残ることにしました。イルカの群れを追って沖に出ると、そこにはザトウクジラの死体が浮かんでいます。血と油が流れ出すその光景を見てナンシーはビーチに戻ろうとしますが、波に乗るナンシーに迫る黒い影。衝撃を受けてナンシーは放り出されます。ボードをつかもうと泳ぐナンシーは、突然水に引きずり込まれ、あたりが血の海になります。まあ、小説っぽくぼかして書いてますが、要はサメに噛まれています。ただし、サメの姿は見えません。クジラだけ真面目に食べていればいいのに、脂肪分の少ない人間まで食おうとするとは、ずいぶん欲張りなサメですね。

足を噛まれたナンシーはなんとかクジラまで泳いでその亡骸によじ登ります。痛みに悶えながらもすぐに足を縛る行動はさすが医学生ですね。現地サーファー二人組がまだ浜辺にいたのでナンシーは大声で叫びますが、悲しきかなその声は届かず、二人は車で去っていきます。失望する暇もなく、サメが背ビレを出してクジラに迫ってきます。

浜辺までは遠すぎる。ブイがあるがそれも遠い。残されたのは干潮の時に顔を出す岩場だけ。ナンシーはサメがクジラに飛び掛かる寸前に海に飛び込み、岩場まで泳ぎ切ります。ここまでの展開について、ナンシーにぶつかるサメが波の中に黒い影として見えるシーン、クジラの死体にホホジロザメが噛みつくというリアルな設定、クジラに飛び掛かるまでサメの顔がほとんど見えない焦らしプレイ、ナンシーが岩につくまでサメが一回も映らないので「また噛まれるのかも」とハラハラさせる演出、全てパーフェクトです。

岩に着いたナンシーは辺りを見回します。浅瀬(Shaloow)なので岸はすぐそこですが、今はすごく遠く感じるでしょうね。おまけに噛まれた痛みと岩に上がる際にサンゴに切られた痛みに苦しみます。にもかかわらず、ナンシーは医学生としての経験を活かし、自らのピアスを使ってサメに噛まれた脚の傷を縫い始めます。当然麻酔無し。下手なグロい映画よりも痛々しいです。この後もナンシーは止血や防寒に使えるようにウェットジャケットを噛みちぎったり、足が壊死しないように止血のバンドを一時緩めたり、足の傷をつまもうとするカニを食おうとしたりと、サバイバル術を駆使して生き延びます。よく「無人島にもっていくなら何がいい?」っていう質問ありますが、僕はナンシーって答えることにしようかなって思いました。美人だしね(笑)。

しかし、サメさんはそんなナンシーをサバイバルゲームから逃がすつもりはないみたいで、「行けんじゃね?」的な判断で泳ぎだしたナンシーの前に背ビレを出して現れます。

朝日が昇りかけのビーチ。ナンシーが浜辺を見ると、酒瓶をもって死んだように寝るデブのおっさんが。おっさんはナンシーの大声に気付き、ナンシーのバッグを物色します。「Inside, the telefono!!」と叫ぶナンシー。英語とスペイン語だから日本人の僕にはそれっぽく聞こえていますが、よく考えると「中にはいっている、テレフォン!」みたいなことを言っているわけで、完全にルー大柴。はい、どうでもいいですね(笑)。

さて、このデブのおっさんですが、ナンシーの危機的状況をしり目にナンシーのバッグから電話と金を抜き取り歩き去ろうとします。しかし、海に浮かぶサーフボードに気付いて取りに向かいます。完全に死亡フラグですね。まして、デブがサーフボードに乗ってるのをサメが見たら完全にアザラシです。案の定おっさんはきれいに真っ二つにされます。おっさんが半分になる瞬間は映らず、ナンシーの「Oh my God」的な顔でそれを伝える演出がいいですね。

翌朝、岩場にとまる鳥の鳴き声で目を覚ましたナンシーが見たのは、昨日の若者二人がサーフボードでこっちに向かってくる姿でした。ビーチにはおっさんが真っ二つになった亡骸があるはずなのですが、まあ潮に流されたことにしておきましょう。

すかさずナンシーは叫びます。サメ映画あるあるの「Get out of the water!」です。今度はナンシーの声は届き、一人が助けを呼びに引き返しに向かいますが、海中からサメが勢いよくジャンプ!白人の方に噛り付きます。黒人の方がナンシーの待つ岩に頑張って逃げますが、結局彼も食われてしまいます。食われるときに彼は頭にカメラ付きヘルメットをしており、これがやっと冒頭のシーンの映像だと分かって話がつながります。

刻一刻と潮が満ちていく中、ナンシーはやることもなく、岩場にいる鳥が翼を脱臼(?)しているのに気づいて直してあげます。そして、ふと例の黒人君のカメラに気付きます。

ナンシーは時計で時間を測り、クジラから岩場までサメが来るのに32秒かかる。それまでならいける、とカメラを回収しようとします。ちなみに、当然普通のサメの泳ぐスピードと獲物に向かうサメの本気のスピードは桁が違うので、この計算で動くのはかなり危険です。良い子は絶対に真似をしないでください。

案の定、まだ10秒余裕があったはずなのに、カメラをつかんだナンシーの後ろから大口開けたサメが迫ります。ここはマジで迫力ありますね。サメはサンゴを嫌がって逃げてしまい、ナンシーは辛うじて元の岩場に戻ります。

どうでもいいですが、ナンシーのこの災難な状況で唯一羨ましいと思えたのが、黒人君のヘルメットに刺さっていたホホジロザメの歯をゲットしたことですね。映画見ながら「欲しいな~」って思ってしまいました。

ナンシーは助けを求めるメッセージと、「念のために」パパと妹へのメッセージを録画し、カメラを海に流し、ブイまで泳ぐ決意を固めます。

岩がいよいよ沈もうというとき、岩とブイの間に無数のクラゲが・・。希望を失ったかに見えたナンシーでしたが、サメがサンゴに刺されていたのを思い出し、むしろサメがクラゲを嫌がるからいける、と思いクラゲの群れの中に飛び込みます。ぶっちゃけクラゲも呼吸困難にしてくるやつとかいるからマジで怖いんですけどね。

ナンシーはクラゲに刺されてミミズ腫れを負いながらもブイまで泳ぎ着き、サメに食われるところを間一髪でよじ登ります。

ブイでほっとしていると、遠くにタンカーみたいなでかい船が。ナンシーはブイについていたボックスを先ほど僕が羨ましがっていたサメの歯でこじ開け、照明弾を取り出して発砲します。一発目不発。危険を冒して海に落とした弾を回収して再度撃ちますがこれも大して飛ばず、ナンシーはついに座り込みます。

疲れと絶望からか色々思い出しながら意識が朦朧とするナンシーですが、サメがブイにぶつかった衝撃で目を覚まし、一気に戦闘態勢に。サメに向かって照明弾をぶっ放し、ブイに登って「Fuck you」と、もう一発サメに向かって発砲。突如海が燃え始め、火傷を負ったサメは海に潜ります。最初、「なんでいきなり燃えるんじゃ」と思ったのですが、よく見るとクジラの油が流れ出て海の色が変わっているので、「ああそれのせいか」と納得できました。いや、現実にそんなことが起きるのかは知りませんが・・・。

さて、サメは美味しくもないブイに噛みついて大暴れ。海底の土台につながる鎖の留め具が一個だけになったブイはバランスが悪くなり、横倒しになってしまいます。ナンシーはブイの中に入ってなんとかサメをやり過ごし、サメが口についているフックが引っかかって動けずにいる隙に、ブイの留め具につながった鎖と自分をつなぎます。留め具が衝撃で外れた瞬間ナンシーは鎖の重みで沈んでいき、サメがそれを追いかけます。ナンシーは鎖とつながった海底の鉄筋むき出しの土台に向かっていき、ぶつかる直前で鎖から離れ脱出。サメはそのまま土台にぶつかり、身体中に鉄筋が突き刺さって息絶えます。

 

海岸では少年と、実は少年の父親だったカルロスが白人サーファー君の腐乱死体と、ボロボロのナンシーを発見します。ナンシーは意識が朦朧とする中母親の顔を思い出します・・・。

 

 

1年後、ナンシーは足に一生消えないであろう傷を残しながらも元気になっており、父親に見守られながら、妹と共にサーフィンに向かっていきます。めでたしめでたし。

—————————————————————————————

 

【サメの生態に関する評価】
本作『ロスト・バケーション』において注目すべきは、やはりサメのクオリティでしょう。細部まで極めて精巧に描かれたホホジロザメは、まるでスターウォーズのようにCGでありながら迫力満点で、僕としてはやっと『ディープ・ブルー』を超えるサメのCGが出てきて感動ものですね。

本作のサメは動きもかなりリアルに描かれており、食欲が旺盛すぎる、というか殺人が好きすぎることを除けば、今までのサメ映画で最もリアルなサメ(むろん本物の映像を使った『赤い珊瑚礁 オープン・ウォーター』などは除きます)が描かれていると言えるでしょう。

気になった点と言えば、サメがサンゴやクラゲに刺されて嫌がるのかどうかという点くらいですかね。サメの肌は皮歯と呼ばれる歯と同じ成分でできたザラザラした肌で守られているので、刺胞がそれを貫くことができるのか、僕は疑問に思っています・・・。これに関しては調べてまた更新します。

 

【映画としての評価その他コメント】
展開のテンポが速く無駄なシーンンがほとんどない、最後までハラハラドキドキのいい映画だと思います。最初にサメがナンシーを襲うシーンの演出や、おっさんが半分にされるシーンの間接法も僕好みです。これ系の映画は物語の舞台が同じ場所なので閉鎖的に感じるかもしれませんが、一応クジラ周辺→岩場→ブイと場所の展開もあり、テンポの良さを感じます。