サメ製品 ~素材・材料としてのサメ~

サメ製品とはマニアックに聞こえるかもしれないですが、実はサメは捨てるところがないとまで言われ、様々なものに利用されています。食材や道具の材料としてのサメをここでは見ていきましょう。

 

【鰭(ヒレ)】
サメの鰭は言わずと知れたフカヒレの材料です。フカは漢字で「鱶」と書き、この字もサメを表します。魚編に養うと書くこの漢字は、サメの一部が胎生でお腹の中で赤ちゃんを育てる生態をよく表していると思います(実際、標準和名に~ブカとつくサメは胎生です)。

フカヒレは中華料理の材料であり高級食材として有名です。フカヒレ自体には味はなく、調理によって味付けしてその触感を楽しむ料理になります。用いられるサメの種類も加工の仕方も様々ですが、繊維の太さ、均一性、大きさ、色、弾力などで評価されます。

フカヒレスープ

フカヒレと言ってもそのまま鰭にかじりつくわけではなく、鰭全体に広がって表皮の部分を支えている輻射軟骨を取り出し、加工して作ります。これは一応すべての鰭から作ることができますが、一番価値が高いのは尾鰭です。

サメの種によっても価値は異なり、一般的によく用いられるのは漁獲量が多いヨシキリザメで、ネズミザメ、アオザメなどだともう少しランクが上がります。現在日本ではほとんど見ることができなくなってしまったウバザメの鰭は最高級クラスです。

高級食材として人気なフカヒレですが、近年ではフカヒレのためだけにサメの鰭だけを切って残りのサメを生きたまま捨てる「フィニング」という行為が問題視されています。フィニングは残酷で非人道的であるとしてフカヒレバッシングを行うセレブも話題になりました。しかし、流通するすべてのフカヒレがフィニングによって得られたものではありません。日本でもかつてマグロ漁で混獲されたサメの鰭だけを捨てる行為が横行していましたが、近年では獲れたサメをそのまま持ち帰り鰭以外も活用しようという機運が高まっています。

 

【歯・顎】
サメの歯はアクセサリーに利用されます。水族館やダイビングリゾートのお土産屋などでサメの歯を使ったネックレスがよく販売されていて、僕も複数持っています。よく使われる歯はクロトガリザメやヨシキリザメ、アオザメ、イタチザメなどのものです。歯の大きさやサメの種、それにネックレスの装飾などで値段が変わり、2,000~4,000円くらいのものから12,000円以上のものあります。

サメの歯を使ったネックレス。一番奥の茶色いものは化石を使用している。

また、サメの歯は何度でも生え変わり、抜けるペースも2日~数週間ほどなので、水族館のガチャポンで販売されていることがあります。特にシロワニの歯は抜けるペースが速く歯も尖っていてカッコいいのでよく使われます。

京急油壺マリンパークにあるサメの歯ガチャ

サメの顎は歯ほどメジャーではないですが、お土産として水族館や一部のネットショップで販売されていることが多いです。ただし、その顎がどのサメの種か、正しく同定できていない場合も多いです。特にメジロザメ類は間違いが多く、レアもののサメの顎が間違った同定のせいで安く売られていることもあります(逆もまたしかりです)。

アオザメの顎骨標本。

 

なお、サメの顎標本は特殊な薬品を使わずともカッターやスプーンなどの簡単な道具でも制作可能なので、サメさえ手に入れば自分で作ることもできます。その方が自分でサメの種を確かめたうえで作れるし思い出にもなるので、興味のある方はトライしてみるのもありかもしれません。

作成風景をYouTubeにアップしています↓

 

 

【皮】
サメの皮は乾燥させたりなめすことで様々な商品に使うことができます。

サメの肌は楯鱗(じゅんりん)という細かいウロコに覆われています。このウロコが「サメ肌=ザラザラ」の正体です。このザラザラを利用したのがサメ皮のワサビおろしです。ただし、どんなサメの皮でも使えるわけではなく、コロザメ、アイザメ、ヨロイザメなどが好まれます。サメの種類により楯鱗の形も大きさも異なり、ワサビを最適な粒にすりおろせる形状というのは限られているようです。

また、サメ皮は加工して財布や定期入れ、ハンドバッグなど様々な皮製品に活用できます。僕自身もヨシキリザメの皮を使った財布を長年愛用しています。使っていくうちに違う表情を見せてくれる味のある財布です。

僕が実際に使っているサメ皮財布。

その他にも濡れても問題なく手が滑りにくいことから刀の柄の部分にサメやエイの皮が用いられ、剣道の胴にサメ皮が使われることもあります。変わったものだと、カスザメの皮を貼りつけにして、浮世絵を描く際に刷毛を調整する道具として活用するなんてこともあるそうです。

なお、サメ皮を英語にするとそのままshark skinになりますが、カーテンやテーブルクロスなどに用いられる布生地で「シャークスキン」という名称のものがあります。こちらはサメが原材料ではないのでお間違いないようお気を付けください・・・。

 

【肉】
サメを食すとなるとフカヒレばかり人気ですが、サメ肉は蒲鉾の材料としてよく使われていました。今ではスケトウダラなど別の魚に代わられてしまっていますが、サメ肉を使ったほうがふんわりとした触感を出せるということでサメ肉を用いる老舗業者さんもあるとか。

サメ肉料理は青森県では伝統的な食文化であり、アブラツノザメなどが流通しています。首なしで皮をむかれた姿で出荷されることから市場では「ムキザメ」とか「棒ザメ」と呼ばれます。他にも栃木県や福島県では「さがんぼ」という名前で流通したりします。僕は3年ほど栃木県に住んでいて、アブラツノザメはあまり見かけませんでしたが、ネズミザメの肉が「モウカザメ」や「もうか」という名前でスーパーでよく販売されていました。「ネズミ」という名前が食品として嫌煙されることから別の名前が付いたと言われています。

海無し県の栃木県でサメ肉とは意外に思うかもしれませんが、サメ肉はかつて山間部で消費されることが多い食品でした。サメは血と肉に浸透圧調節のために尿素とトリメチルアミンオキサイドを含んでいます。これが原因で鮮度が悪くなったサメ肉は尿素が分解されてアンモニア臭くなりますが、このアンモニアにより腐敗が進みにくく、冷凍技術が発達する前は腐りにくい肉として重宝されたようです。

さらに、新潟県の上越市では年末にサメ肉を食べる習慣があります。年末のスーパーにはネズミザメやアブラツノザメなどに肉が鮮魚コーナーに並び、ネズミザメの頭を使った煮こごりを作るそうです。

こうした伝統文化を知る人は少ないかもしれませんが、サメ肉を使った料理のレシピはクックパッドなどにも掲載されていて、色々な料理を楽しむことができます。煮つけ、ムニエル、ステーキ、カルパッチョ、カツ、カレーなどなどバリエーション豊かなサメ料理を作ることが可能です。サメ肉はだいたいが淡泊な味なので、下味をつけたり味が濃い料理と組み合わせるが個人的なお勧めです。

ネズミザメ肉のムニエル

 

サメ肉を使ったスリランカカレー。

 

【心臓】
モウカザメことネズミザメの肉が食用に使われていることは紹介しましたが、ネズミザメの心臓は「もうかの星」という名前で出回ることがあります。気仙沼のお店やごく一部の鮮魚居酒屋やなどでしか味わえない珍味です。血抜きのために切り開いたのちに海水で何度も洗った心臓を、刺身などにしてごま油や塩をつけていただきます。クセのないレバ刺しのような味は一度食べたら忘れられません。

もうかの星

 

【肝臓】
鰾(うきぶくろ)のないサメは大きな肝臓をもつことで浮力を保っています。この肝臓にはスクアレンという油が多く含まれていて、その肝油は化粧品や健康食品など様々な用途で使われてきました。現在はスクアレンも合成可能で安価にビタミン剤を作ることができるので昔ほど重宝されてはいないと思いますが、今でも「深海ザメのスクアレンを配合!」などと謳ったサプリメントなどが販売されています。

また、スクアレンの凝固点は-75度であるため、氷点下でも凍らない油として重宝されてきました。第二次世界大戦中、寒い地域を走る戦車や成層圏を飛ぶ戦闘機の潤滑油が凍らないように、軍から直々にサメの漁獲が命じられたこともありました。

切り開かれたアブラツノザメ。内臓全体を隠すほどに大きく長い肝臓が目立つ。

 

 

【軟骨】
サメは歯以外の骨格のほとんどが軟骨でできています。この軟骨はコンドロイチンを多く含むので健康食品として販売されていることがあり、「すり減った軟骨を回復させ関節痛を和らげる」などと宣伝されることもあります。しかし、コンドロイチンを経口摂取したところで軟骨は回復しないという意見もあり、懐疑的に見るべき商品だと僕は考えています。

また、サメ軟骨には癌を治療する効果があると注目されたこともありましたが、これも二重盲検法を用いた後の検証で効果が認められず、現在はその効果は否定されています。

 

【卵】
メスのサメを切り開くと卵巣に直径5cmほどの卵をたくさん持っていることがあります。この卵はニワトリの卵と異なり全て黄身で油に富んでいます。食べ過ぎるとその油が原因で下痢か、あるいはそれ以上に恐ろしい油の垂れ流しが起きる危険がありますが、味は美味しいらしいです。

 

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