メガマウス (Megachasma pelagios)


和名:メガマウス
学名:Megachasma pelagios
英名:Megamouth shark
分類:ネズミザメ目メガマウス科メガマウス属
CITES:記載なし
生殖方法:母体依存型胎生・食卵タイプ?
飼育難易度:★★★★★★(長期飼育実績なし)
見れる場所(野生):太平洋、大西洋、インド洋の熱帯・温帯海域
見れる場所(飼育):なし。マリンワールド海の中道、京急油壺マリンパーク、沖縄美ら海水族館、鴨川シーワールドなどに標本が展示されている

【特徴】
多くのサメの生態が謎に包まれていますが、メガマウスはその中でも際立っています。全長6mほどにもなる巨大なサメですが、1970年代までその存在すら認知されていませんでした。丸っこくて大きな頭と黒っぽい体色はどこかオタマジャクシを思わせます。とてもホホジロザメやアオザメと同じネズミザメ目のサメには見えないですが、DNAを調べた系統学的研究の結果、ネズミザメ目の仲間だということが判明しています。名前の通りメガサイズの大きな口をしていて、どことなくニーっと笑った感じに見える口には内側を向くように小さい歯が並んでいます。

【生態・行動など】
メガマウスは「深海ザメ」と呼ばれることがありますが、実際には水深200m(一般的な深海と言われる深さ)よりも浅い場所で生息しています。昼間は水深120~170mで暮らし、夜間になると10~25mに浮上します。これは、餌であるプランクトンの動きに合わせて移動をしているものと思われます。ただし、記録された個体数が少ないため、今後違った行動パターンが性別や成熟度によって確認される可能性はもちろんあります。

メガマウスはジンベエザメやウバザメと同じ濾過食を行うサメで、鰓に鰓耙という海水ごと吸い込んだ獲物を濾しとるための櫛のような部分があります。ただし、ジンベエザメやウバザメと比べるとこの部分が荒く、毛足の長いバスマットみたいな印象を受けます。

メガマウスの鰓耙です。

メガマウスの摂餌行動は2019年7月まできちんと確認されてはいませんが、日本のサメ研究の権威である仲谷先生がその体の仕組みから考えられる方法を推測していらっしゃいます。以下にざっくりまとめてみました。

1.  獲物であるプランクトンの群れを見つけて口を開く

2. 口を開くと自然と水が流れ込んでくるのでそのまま突進

3.  舌を後ろに引くことで口の中に水を引き入れる

4. 水圧で喉のゴム状の皮膚が伸び始め、さらに両顎を押し出すことにより多くの水を口の中に入れる

5.  口を閉じて水とプランクトンを口内に閉じ込める

6. 口を閉じたまま両顎を引き戻し、鰓孔が開かれる

7.  舌を前に押し出し、口の周りに筋肉を引き締め、鰓穴から水を押し出す

8.  鰓耙に引っかかったプランクトンを飲み込む

2019年9月現在、メガマウスの捕食行動は誰も見たことがありません。ですが、顎周りの独特の筋肉構造や、ゴム状に伸び縮みする喉の皮膚、ジンベエザメやウバザメと比較すると小さな鰓孔などの特徴から、このような食情報をしているのではないかと推測されるそうです。

メガマウスは時々ストランディング(座礁)したり定置網にかかったりするため解剖や記録計を取り付けた放流などで調査が行われてきましたが、それでも目撃件数は少なく、謎に包まれたサメです。妊娠個体が調べられたことがなく生殖方法も分からないことだらけですが、ネズミザメ目であることからホホジロザメやシロワニなどと同じように卵食タイプの胎生だろうと思われます。また、2018年に鴨川シーワールドで行われた公開解剖で卵殻と思しきものが発見されました。


【人間との関り】

メガマウスはその存在自体が謎の満ちているサメです。その巨体と奇妙な見た目にも関わらず、1970年代までその存在すら知られていませんでした。現在でも多くの新種が発見されていますが、ここまで大きな生物が新しく見つかるというのはそうそうありません。

東海大で長年サメの研究に携わってきた田中彰先生は、メガマウスが出現したのは同じプランクトンフィーダーであるウバザメやメガマウスの捕食者となり得るホホジロザメや大型鯨類の数が減少したことによるものではないか、という仮説を著書の中で紹介しています。まだはっきりしたことは分かっていません。

また、メガマウスと地震の関連を執拗に主張したがる人々がいますが、2019年9月現在科学的に証明されてはいません。僕自身もメガマウス地震予知説を推したがる超常現象研究家を名乗る人のブログなどで根拠を調べましたが、因果関係は証明できておらず、また関連があるとする地震の中には頻繁に発生している震度1や2のものも含まれていて、主張が認められるほどの代物ではありませんでした。

【チャームポイント】
大きな口どと小さい目をした顔がどこか間が抜けたような感じで可愛いですね。また、他の大型のサメと比べれば結構ゆっくり泳ぐようで、頭でっかちなうえ浮力を保つために大事な臓器である肝臓が他のサメに比べて小さく、「おいおい、大丈夫か」となんだか心配になるような生態もある種の魅力かもしれません。

また、一度メガマウスが割と元気な状態で泳ぐ姿を映像で見たことがあるのですが、尾鰭だけでなく体の後ろ側全体を振るような感じで泳いでいる姿が個人的にとても優雅に見えました。いつかメガマウスとも泳いでみたいですね。

【サイト内関連記事】
幻の深海ザメ「メガマウス」とはどんなサメなのか?

【参考文献】
田中彰 『美しき捕食者 サメ図鑑』2016年 p85~90
仲谷一宏 『サメ ー海の王者たちー 改訂版』2016年 p87~94
沼口麻子 『ほぼ命がけサメ図鑑』2018年 p172~184

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