オオテンジクザメ (Nebrius ferrugineus)

和名:オオテンジクザメ
学名:Nebrius ferrugineus
英名:Taiwany nurse shark
分類:テンジクザメ目コモリザメ科オオテンジクザメ属
CITES:記載なし
生殖方法:母体依存型胎生・食卵タイプ
飼育難易度:★★★☆☆☆(水族館などで飼育可)
見れる場所(野生):西部太平洋、インド洋の熱帯・亜熱帯海域、日本だと南西諸島
見れる場所(飼育):鴨川シーワールド、大阪海遊館、沖縄美ら海水族館など

【特徴】
小さな目と顔の前の方にある口、テンジクザメ目特有のちょぼんとした顔が可愛いオオテンジクザメは、ジンベエザメほどではないですがテンジクザメ目の中では大型種です。大きいものは全長3mほどになります。本種に似たサメとしてはコモリザメ(Ginglymostoma cirratum)があげられ、第一背鰭が第二背鰭よりやや大きい、第一背鰭が腹鰭根本のほぼ真上にあるこ、鼻孔から口のあたりまで伸びる長い肉ヒゲがあることなど共通点が多いです。ですが、オオテンジクザメはそれぞれ鰭の先がとがっている、胸鰭が鎌状になっているなどの特徴で見分けることができます。

また、オオテンジクザメは一部の個体の背鰭が一基欠けているという珍しい特徴があります。背鰭が一基しかないサメはラブカやエドアブラザメなどカグラザメ目しか知られておらず、それ以外のサメはテンジクザメ目も含め、敵に食いちぎられたりしない限りは背鰭は二基あります。ですが、オオテンジクザメは何故か背鰭が一基しかいない個体がたまに発見されます。実際に美ら海水族館では2019年9月現在、背鰭が一基しかないオオテンジクザメを、他のオオテンジクザメと一緒に飼育しています。

この背鰭が欠けてしまう原因はまだ解明されていないようですが、美ら海水族館の個体を見る限り、特に生命に重大な危険がある異常というわけではないみたいです。

 

【生態・行動など】
オオテンジクザメは水深5m~30m、深みでも70mという比較的浅い水深の岩場やサンゴ礁などに生息しています。底の方で大人しくしていることが多く、水族館でもあまり泳ぎ回ることが少ないように思えます。夜になると活発になり、岩場の間などに潜む魚や甲殻類、タコなどを見つけ、吸い込んで食べてしまいます。その吸引力は強力で、沖縄の方言では彼らを「タコクワヤー」(タコ喰い屋)と呼ぶそうです。

生殖方法はテンジクザメ目では珍しく胎生で、テンジクザメ目内唯一の食卵型です。卵生のサメのように割としっかりした卵殻に包まれた胎仔がある程度成長すると、やがて母胎内で無精卵を食べ始め成長します。

食卵で胃がパンパンに膨れたオオテンジクザメの赤ちゃん

このオオテンジクザメでは非常に興味深い現象が確認されました。美ら海水族館で妊娠個体のエコー診断を行った結果、オオテンジクザメの子供達は子宮内を自由に泳ぎ回っていることが判明しました。また、オオテンジクザメは一つの子宮内を泳ぐだけでなく、なんともう片方の子宮に移動することもできるのです。サメは子宮(輸卵管の発達部分)が二つあるのですが、この子宮間移動とも言うべき行動が確認されたのは現在オオテンジクザメだけです。

さらに、出産間近と思しきオオテンジクザメの赤ちゃんが総排出孔(交尾・排泄・出産を行うための孔)から顔をチラッとのぞかせる映像も記録されています。美ら海水族館館内で映像を流していることがありますが、めちゃくちゃ可愛いです!ただ、ずっとそうしているとママが便秘にならないのか少し心配になります笑。

食卵で胎仔が成長するサメはネズミザメ目で多く知られていますが、シロワニ以外は長期飼育が難しく、そのシロワニも飼育下での繁殖は困難なためまだまだ謎が多いです。オオテンジクザメに関する今回の事例は、神秘に包まれたサメの生殖を研究するうえで重要な発見だと言えます。


【人間との関り】

オオテンジクザメは八重山諸島など一部の場所で漁獲されることもあるみたいですが、積極的に利用されているわけではないようです。大型のサメではありますが、底の方でじっとしていることが多いので、水族館で飼育しやすい種と言えるでしょう。

【チャームポイント】
なんといっても可愛いおちょぼ口と小さな目という可愛い顔つきです。ヒゲが生えている顔も可愛いらしいです。あとかなり個人的な話ですが、鎌のように尖った胸鰭にカッコよさを感じることもあります。

【参考文献】
一般社団法人沖縄美ら島財団 4)大型板鰓類の生理・生態・繁殖に関する調査研究 2019年10月8日アクセス
田中彰 『美しき捕食者 サメ図鑑』2016年 p119
仲谷一宏 『サメ ー海の王者たちー 改訂版』2016年 p33