ヒラシュモクザメ (Sphyrna mokarran)

和名:ヒラシュモクザメ
学名:Sphyrna mokarran
英名:Great hammerhead shark
分類:メジロザメ目シュモクザメ科シュモクザメ属
CITES:附属書Ⅱ
生殖方法:母体依存型胎生・胎盤タイプ
飼育難易度:★★★★★☆(一部水族館で飼育中)
見れる場所(野生):太平洋、大西洋、インド洋の熱帯・温帯海域沿岸
見れる場所(飼育):なし(米国ジョージア水族館であれば観られる)

【特徴】
シュモクザメの仲間で最大種、英名の「Great」が相応しいカッコいいサメです。大きさは最大6mとされていますが、5m以上の個体が見つかるのは稀です。頭の形はアカシュモクザメに似ていて真ん中に凹みがありますが、弧を描くような形状ではなく頭の形が長方形に近いです。そして、第一背鰭が長く特殊なサーベルのような鎌状になっているのも特徴です。実はこの背鰭が後述する彼らの不思議な生態につながっています。

頭部の厳つさと背鰭の形で割と見分けやすい気もしますが、幼い個体だと頭の形が丸みを帯びていることもあり他のシュモクザメと混同する可能性があります。間違いない特徴としては、腹鰭長く後ろ側がえぐれたようにカーブがかっていることです。

 

【生態・行動など】
ヒラシュモクザメは世界の熱帯や温帯海域の外洋や時に浅い海に現れるサメです。季節に合わせて回遊することも知られています。アカシュモクザメやシロシュモクザメと比べればだいぶマイナーですが日本でも確認されています。

ヒラシュモクザメの食事メニューは硬骨魚、甲殻類、他のサメやエイなど多岐にわたりますが、主に水底で暮らしている生物を食べているようです。なかでもアカエイの仲間はお気に入りらしく、尾についた毒針が口の中に刺さっても平気で泳いでいます。実際にヒラシュモクザメの口の中から毒針が見つかることも多いようです。

ヒラシュモクザメの顎骨標本。よく見ると裏側に折れたアカエイ科の毒針が刺さったままになっています。

ヒラシュモクザメは2016年に興味深い生態が明らかになりました。バイオロギング研究で活躍されている国立極地研究所の渡辺佑基氏を中心とした研究グループにより、ヒラシュモクザメが左右どちらかに体を傾けて泳いでいることが明らかになりました。

ヒラシュモクザメに行動記録計とビデオカメラを取り付けて記録したところ、5~10分ほどで左右を入れ替えつつ60度ほど体を傾けたまま泳ぎ続けている様子が確認できました。

この行動の意味としては揚力をより多く確保して遊泳に使うエネルギーを節約しているものと思われます。ヒラシュモクザメの背鰭は鎌状で非常に長く、ちょうど胸鰭のような形をしています。なので体を傾けると背鰭が「第三の胸鰭」のように機能して、普通に泳ぐよりも揚力を得ることができます。カッコよくて目立つ背鰭にそのような秘密があったと考えると非常に興味深いですね。

生殖方法は胎盤を形成する胎生で、64~70cmほどの赤ちゃんを13~56尾育てます。成熟サイズは雄雌で異なりますがだいたい300cm前後です。

【人間との関り】
ヒラシュモクザメは非常に見た目がカッコいいサメですが、水族館での飼育は難しいというかそもそも生きたままあまり手に入らないのか展示例をあまり聞きません。米国ジョージア水族館では常設展示として飼育されており、先述の泳ぎ方の研究でも貢献しています。

世間一般の風潮として「サメ=人食いマシーン」のような偏りすぎた見方が強くシュモクザメもいわゆる「人食いザメ」になぜか含まれることが多いです。しかしながら、最大種のこのヒラシュモクザメをはじめシュモクザメは積極的に人を襲うことはありません。事実、ヒラシュモクザメは一部のダイバーに人気なサメで、フロリダやバハマでは一緒に泳ぐこともできるようです。

むしろ、ヒラシュモクザメの鰭はフカヒレとして高級であり、その大きさからゲームフィッシングでも人気のため、人間によって彼らにもたらされる被害の方が甚大です。この大きくて美しい動物がいなくならないように僕たちで守っていく必要があるでしょう。

【チャームポイント】
他のシュモクザメの仲間も魅力的ですが、ヒラシュモクザメは頭の形が厳つく尾鰭がシャープで特にカッコいいサメです。大きさや体格からも惹きつけられるものがあり非常に魅力的なサメだと思います。

【その他紹介】

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【参考文献】
Jose I. Castro 『The Sharks of North America』 2011年 p516~520
Leonard Compagno, Marc Dando, and Sarah Fowler 『Sharks of the World』2005年  p325
田中彰 『美しき捕食者 サメ図鑑』2016年 p82
国立極地研究所 『横に傾いて泳ぐ奇妙なサメを発見し、理由を解明』2020年4月26日アクセス

【ギャラリー】
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