ウチワシュモクザメ (Sphyrna tiburo)

和名:ウチワシュモクザメ
学名:Sphyrna tiburo
英名:Bonnethead shark
分類:メジロザメ目シュモクザメ科シュモクザメ属
CITES:記載なし
生殖方法:母体依存型胎生・胎盤タイプ
飼育難易度:★★★☆☆(水族館などで飼育可)
見れる場所(野生):南北アメリカ大陸の太平洋・大西洋の温帯地域
見れる場所(飼育):アクアワールド大洗水族館、

【特徴】
通称サメ界のマリア様!・・・というのは嘘で、僕が勝手に名付けました(笑)。ある程度分厚いサメ図鑑なら必ず載っている処女懐胎エピソードで有名なシュモクザメです。全長は70㎝~1mほどで、最大でも1.5mと言われていて、シュモクザメの中では最小種です。目が離れている独特の頭の形はシュモクザメらしいですが、撞木と言えるほどハンマーの形をしておらず、どちらかと言うと和名の通り団扇、あるいはシャベルのような形をしています。アカシュモクザメをはじめとする他のシュモクザメと異なり、頭部前縁にくぼみがないのも特徴です。同じく前縁部にくぼみのないシュモクザメとしてシロシュモクザメ(学名:Sphyrna zygaena)が挙げられますが、頭の形も体の大きさも全然違うので、こちらの見分けは問題ないと思います。

@アクアワールド大洗水族館

ちなみにサメ分類のバイブル『Sharks of the World』には「体の上部が灰色で、よく黒い斑点が見られる」と記載がありますが、現在僕が大洗水族館で見ているウチワシュモクザメの体色は白っぽく、斑点も見られません。レモンザメの体色と同じく人工飼育環境にいるためだと思われますが、元々見えにくい斑点とも言われており、はっきりとしたことは分かりません・・・。

【生態・行動など】
水深25mより浅いかなり浅瀬に生息し、時に波打ち際まで来ることもあるそうです。また、このウチワシュモクザメも群れを作り、しかもその群れの中では一定の社会性があるとされています。

ウチワシュモクザメを語るうえで外せないその生態は、なんと言っても処女懐胎でしょう。2001年、アメリカのネブラスカ州オマハにあるヘンリードリー動物園で展示されていたウチワシュモクザメの一匹が子供を出産しました。これだけならそこまで珍しくないのですが、この水槽では同種のサメは全て雌だったのです。

考えられる可能性として、別種との間に生まれた雑種(水槽内には他種の雄がいた)、捕獲され水槽に入れられる前に受け取った精子で受精などの説もあがったそうです。しかし、サメの種をまたいだ交尾はこれまでに例がなく、そもそも交尾痕がない(サメは交尾の際雄が雌に噛みつく)ので交尾したとも考えにくい。さらにこのサメは捕獲されてから3年以上経過していて、そんな長期間精子を保持できるとは思えない、などの理由からこれらの説は却下され、DNA判定の結果、この子ザメは母親ザメと全く同一のDNAをもっていることが判明しました。つまり、このサメは単為生殖、精子を使わない生殖方法で生まれたサメだということになります。

単為生殖自体は膜翅目(アリ・ハチの仲間)をはじめとする多くの動物で知られている生殖方法でしたが、軟骨魚類では初の事例でした。まして、哺乳類のように胎盤で子供を育てるシュモクザメで起こるというのは、実に興味深いです。

もちろん、遺伝子の多様性という面では単為生殖はあまり望ましいことではないですが、クマノミの性転換のように自然でも見られることなのか、水族館という特殊な環境で起きた特例、ある種のバグなのか、はっきりとしたことは研究されている最中です。

ちなみにこの単為生殖は、トラフザメなど他の種でも観察されています。

単為生殖だけでも生き物として面白いウチワシュモクザメですが、2018年にさらに面白いニュースがでました。ウチワシュモクザメは、なんと植物を食べるサメだというのです。

10年ほど前にウチワシュモクザメの胃の中身の半分以上が海草だったという研究はあったそうですが、カリフォルニア大学のサマンサ・リー(Samantha Leigh)さんが今回それをさらに研究しました。実験の結果、ウチワシュモクザメは海草を食べるだけでなく消化して栄養を吸収しており(口に入れるだけならイタチザメもやっていそうです)、さらにセルロースを分解する酵素も体内から発見されました。

単為生殖に草食・・・。ウチワシュモクザメが今後どんな面白いテーマを僕たちに提示してくれるのか、楽しみでなりません。

 

【人間との関り】
アカシュモクザメほどメジャーではないですが、ウチワシュモクザメも小型で飼育しやすいらしく、他のシュモクザメと比べれば水族館などでよく見かけるサメと言えます。

【チャームポイント】
ウチワシュモクザメの魅力は、カッコいいシュモクザメの仲間でありながら頭の形が丸くて体が小さくてとにかく可愛いことと、先述した処女懐胎エピソードが生き物について勉強する者としてやはり興味深いことですね。あと、このウチワシュモクザメも、アカシュモクザメと同じ第二背鰭のチョロンチョロンがあって、見ていると癒されます。

【トリビア】
募集中です。

 

【参考文献】
Josh Gabbatiss 『Scientists have found a shark that can survive on a mostly vegetable diet』 2018年1月18日アクセス
Leonard Compagno, Marc Dando, and Sarah Fowler 『Sharks of the World』2005年 p325
Shark Newz 『Do sharks also eat vegetables?』  2018年1月18日アクセス
Steve Parker 『The Encyclopedia of Sharks』2008年 p180
仲谷一宏 『サメ ー海の王者たちー 改訂版』2016年 p180

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