生きた化石?シン・ゴジラのモデル?大人気の深海ザメ、ラブカの謎を解説!

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おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

今回はサメが好きでない人も一度は名前を聞いたことがあるサメ、ラブカについて解説をしていきます!

メディアやネットでもよく取り上げられていて「幻のサメ」や「激レアな深海ザメ」などと紹介されることもありますが、実際はどんなサメなのか?

今回はラブカについてよく紹介される情報をなるべく分かりやすく深堀していきます!

 

 

 

【ラブカはどんなサメ?】

まずはラブカの基本情報から見ていきましょう。

ラブカは9目あるサメのグループのうち、カグラザメ目というグループに分類されるサメで、別名シン・ゴジラ第二形態です。

僕が描いたシン・ゴジラ第二形態のイラストです(下手なのはご愛敬)

実際にシン・ゴジラの蒲田くんはラブカがモデルになっているそうです。

ただし、全長は大きくても2mくらいで、ゴジラはもちろん、他の多くのサメよりも小さな体をしています。

そんなラブカに対して、「あまりサメっぽくない」と感じる人も多いと思います。実際にラブカは、他の多くのサメと異なる特徴をいくつか持っています。

よくイメージされるサメと言うのは吻先がとがっていて体が流線形で顎を引いたようなカッコいい顔をしています。

僕の推しザメの一種であるツマジロ。

ラブカは体がウナギのように細長くて、吻先は丸っこく、口も顔の前の方に開いていて、表情や体つきからして、他のサメとかなり違っています。

また、ほとんどのサメが大きさや位置は違えど、背鰭が二基ついていて、それを水面から出して泳いでいるイメージが一般に強いと思いますが、ラブカを含むカグラザメ目のサメは背鰭が一基しかなく、それがかなり体の後ろの方についています。

ラブカの標本。体は細長く、尾鰭の直前に一基だけ背鰭がついています。

さらに、たいていのサメのエラ穴は5対ですが、カグラザメ目のサメは6対以上あって、ラブカは6対です。しかも、ラブカはエラ穴の部分がひだ状になっていて、一番前のエラ穴、第一鰓孔が喉の部分で繋がっています。このエラの見た目がフリルをしているように見えることから、英語ではFrilled sharkと言います。なんかお洒落ですね。

ラブカを下から見た構図。第一鰓孔がつながっています。

こんな見た目のラブカは、水深500〜1000mほどの深海に生息することから「深海ザメ」というイメージがありますが、実は日本の駿河湾などではもう少し浅い水深でも漁獲されています。

ちなみに、新種を見つけて論文に記載する際に、その論文の拠り所になる標本、タイプ標本というのがあるんですが、ラブカのタイプ標本は駿河湾で獲れた個体です。

つい先日も「ヨコヅナイワシ」という新種の大型魚が発見されましたし、駿河湾は深海魚好きのメッカと言えそうですね。

 

 

【ラブカは2種類いる?】

これからさらに詳しくラブカの特徴や生態を紹介していきますが、実は「ラブカ」と呼ばれるサメが2種いるのはご存知でしょうか。

ラブカというサメは日本だけでなく、北米・南米・アフリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなど、世界各地で確認されていますが、10年くらいまで前は全て同じ種のラブカ、Chlamydoselachus anguineus だと考えられてきました。

しかし、2009年に、南アフリカに住んでいるラブカは別種であるとし、Chlamydoselachus africanaという学名をつけた論文が発表されました。

表面的な見た目は日本にいるラブカとそこまで変わりませんが、脊椎骨の数や、腸の中にある螺旋弁という腸の表面積を広げる役割を持つ弁の数が、ミナミアフリカラブカの方が多いそうです。

エドアブラザメの腸。外側からも螺旋弁が見えます。

脊椎骨や螺旋弁はきちんとした解剖では都度データを取っているので、複数のラブカを調べていくうちに統計的に有意な差が出たんでしょうけど、それにしてもよく分かったなという感じですね笑。ほんと分類学を極めている人は凄いなって思います・・・。

ラブカの分類については今後もっと種が分かれる可能性もゼロではないですが、とりあえず今回の記事は、日本にも生息しているラブカ、Chlamydoselachus anguineusのことを紹介していると思ってください。

 

【何を食べているの?】

サメっぽくない奇妙な見た目のせいか、ラブカを怖い生物のように取り上げたり、恐ろしい人食いモンスターのようにしたコラ画像が出回っているのですが、実際にラブカは何を食べているのでしょうか。

サメの食性というのは、歯の形状や大きさに表れます。謎に満ちたサメでも、歯を見ることでどんなものをどんな風に食べているかある程度予想がつくわけです。

では、ラブカがどんな歯をしているかというと、こんな感じです。

非常に面白い歯をしています。尖った一本の歯が横に三つ並んでいるのではなく、一つの歯が三又に分かれています。神話のポセイドンなどが持ってる武器の先みたいです。

独特でカッコいい歯だと思いますが、大きな獲物の肉を食いちぎるには向いていなそうです。切り裂くというよりは刺す歯ですね。そしてよく見ると、口の内側に向かって尖っています。

この歯の形状から、ラブカは一口で収まるような小さな獲物を襲い、この歯で突き刺して、丸呑みにしていると推測できます。歯が内側を向いているのは、口に入った獲物が外に逃げられないようにする構造ですね。

ラブカは漁獲される際に胃の中身がほとんど入っていないことが多いのですが、実際に駿河湾で漁獲された個体で、イカや小魚を食べているのが確認されています。

そもそも、ラブカは顎の構造上、ホホジロザメがやるような食べ方はできません。

『ジョーズ』のモデルになったホホジロザメやいわゆる「フツーのサメ」と呼ばれるメジロザメの仲間を見れば分かりますが、彼らは顎を引いたような顔つきをしています。口が前に出ていないので一見物を噛みにくい気もしますが、噛む場所が顎の関節に近いことで、より強い力で噛みつくことができます。

メジロザメの仲間。アゴを引いたような顔つきをしています。

対してラブカは口が前端に出ていて噛む場所と顎の関節が離れていますから、そこまで強い力を発揮できないです。こうしたことからも、ラブカが小さな獲物を丸呑みするようなサメであることがわかります。

 

以上のことから、ラブカは人を襲ったりするモンスターでは断じてなく、小さな獲物を襲っている中型捕食者と言えます。もし「深海のヤバイ危険生物!」みたいな動画のサムネとかでラブカが大きく表示されていたら「あ、三流なんだな」って思ってあげて下さい笑。

 

 

【ラブカは生きた化石?】

ラブカはよく「原始的なサメ」とか「生きた化石」と言われます。なんか響きだけ聞くと凄そうですが、なぜそう呼ばれるのか、この辺も紹介していきます。

生きた化石という言葉の定義をおさらいしますが、化石でしか見つからない祖先と外見的な特徴がほとんど変わらない生物を指して使われます。

有名な例をあげるとシーラカンスやカブトガニですが、夏になると台所の影などから長い触覚をのぞかせる黒光りしたあの昆虫たちも、実は生きた化石です。

シーラカンスは化石で見つかる祖先からほとんどその外見が変わっていません。

では、サメの祖先はそもそもどんな姿だったのか。

最も有名なものは「クラドセラケ」と呼ばれる軟骨魚類です。

メガロドンの解説動画で述べたとおり、サメやその他の軟骨魚類の化石は歯以外が残っていることは稀ですが、クラドセラケは全身の化石が見つかっています。

クラドセラケのイメージ。

ラブカが「原始的なサメ」とか「生きた化石」と呼ばれるのは、主にはこのクラドセラケと見た目が似ていることが理由です。

確かに頭の前端に口が開いていて顎が飛び出さない、三又の歯をしているなど、ラブカは化石で確認されているクラドセラケと似た特徴を持っています。

しかし、最近の研究によれば、「最古のサメ」と呼ばれていたクラドセラケは、胸鰭の構造などの特徴からして、そもそもサメではないとされています。確かに骨格のほとんどが軟骨でできている軟骨魚類ではありますが、サメやエイが含まれる板鰓類とは別の仲間、全頭類とするのが妥当なようです。

そうなると、クラドセラケがラブカに進化したのではなく、同じような環境で同じような生活をしていたから、離れた系統の動物がたまたま姿形が似たものになった、いわゆる収斂進化ということになりそうです。

そもそもサメの歯の化石を見ると、現生のサメの歯に似ているものがたくさんあるので、この基準で言えば、恐らくほとんどのサメが「生きた化石」ということになります。

個人的な感想としてラブカに古代ザメのロマンを抱くのはアリだと思いますが、ラブカばっかり持ち上げると他のサメたちが置いてけぼりな気がするので、この辺も一応知っておいてください。

 

 

【驚異的な妊娠期間】

ラブカの紹介で「生きた化石」と同じくらいよくでてくるのが、長い妊娠期間です。

サメには卵を生む卵生のタイプと、お腹の中で赤ちゃんを育てる胎生のタイプがいますが、ラブカは胎生のサメです。そのため、お腹の中で赤ちゃんが育って、成魚のミニチュア版になるまで成長してから生まれてきます。

成長途中のラブカの赤ちゃんです。大きな卵黄がついていますが、成魚とほとんど同じ姿になっていますね。

胎生であることはサメの中では特に珍しいことではないのですが、ラブカの妊娠期間は3年以上とされており、サメはおろか、現在知られている全ての脊椎動物で最長です。実際、ラブカは最も妊娠期間の長い動物としてギネス認定されています。

ただ、知っている人も多いと思いますが、ラブカは水族館に搬入されても数日しか生きられないくらい飼育困難な深海魚です。なので、水槽内でラブカのカップルがエッチしたのを確認して、そこから子供が生まれるまで何日かかるか?みたいな方法で妊娠期間を測るのは不可能です。

ではどうやって3年以上と推定したのか。

ラブカが生まれる時のサイズは55cmほどだとされています。そして、駿河湾で漁獲されたラブカのメス125尾を調べた論文によれば、メスが持つ卵の状態などから判断して、胚の初期発達が非常に遅いことが示唆されています。

さらに、卵殻に包まれた状態の赤ちゃんを母胎から取り出して飼育してみると、1ヶ月で1.4cmしか成長しなかったそうです。

実際の論文はコチラ↓

最後まで胎仔を育てたわけではないですし、ラブカは体についている卵黄以外の栄養を母体からもらっている可能性が示されているので確実なことは言えませんが、仮に55cmほどで生まれるとして、1ヶ月に1.4cmしか大きくならないとしたら、単純計算で生まれるまで39ヶ月、ざっくり3年以上かかることになります。これが、妊娠期間3年という説の理由です。

もちろん今後の研究でこの説が覆されたり、もっと長い妊娠期間を持つサメが発見される可能性はありますが、低水温という代謝速度が遅くなる環境で赤ちゃんを育てている以上、長い妊娠期間であることは間違いないと思います。

 

 

【ラブカは絶滅危惧種?】

この妊娠の話に関連して、ラブカが絶滅危惧種かどうかも触れておきます。

ラブカがメディアで紹介されるときに、幻の深海ザメ!みたいに言われるので、ラブカはすごく珍しいサメ、絶滅危惧種のサメというイメージを持つ人がいるみたいです。

確かにラブカは水族館で展示を始めても2〜3日くらいしか生きてくれないので、一般人が泳いでいる生の姿を見られるかどうか、という点では超激レア種と呼んでいいと思います。

一方で、生息数そのものについて言えば、正直なところ情報不足です。ラブカは数多くの地域に生息していますが、分布域が点在しているような感じで、各地にどれくらい生息しているのか、はっきりしたことは分かっていません。

日本に限って言えば、駿河湾・相模湾などで一定数が漁獲されているので、ある程度まとまった個体数が生息していると思われます。

こうした現状で、生物の保全状況を評価しているIUCNレッドリストにおいては、ラブカ、ミナミアフリカラブカ共にLC、つまり絶滅の懸念は低いとしています。

しかし、だからと言って何も心配がいらないかと言えばちょっと疑問です。

確かにラブカの数がどれくらいいて、それが減っているのかそうでもないのか、はっきりした情報はありませんが、ラブカの妊娠期間が非常に長いことは事実として分かっています。また、ラブカが一度に出産する子供の数はせいぜい6尾程度と、魚の中ではかなり少ないです。

子供を産むのに長い年月がかかり、産む子供の数も少ない生物は、人間の手によって数を大きく減らされると、もとの個体数まで回復するまでとてつもない時間がかかります。

これはサメ全般に言えることですが、ラブカのような種は特に心配です。

あくまで可能性の話なので、今すぐラブカの漁獲をゼロにすべきみたいな話ではないのですが、「幻の深海ザメが、いつの間にか本当に幻になっていた」なんてことがないように、今後も彼らの研究、そして生息環境の保全に力を入れていくべきだなと思います。

 

 

投稿者プロフィール

1992年東京都生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国、ポートランド州立大学に留学。

HPやYouTubeでサメなどの海洋生物・水族の生態を紹介、環境問題の解説を行っている。サメや関連イベント参加、水族館巡り、ダイビング、標本作製などサメや生き物活中心の生活を送る。水族館のボランティアスタッフの経験あり。トークイベントのプレゼンターやライターとしても活動。

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shark.sociology.ricky@gmail.com

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  1. […] 以前に大人気の深海ザメであるラブカを紹介しましたが、今回はラブカと並んで大人気のあの深海ザメ、ミツクリザメを解説します! […]

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