学名とは何か?生き物好きなら知っておきたい基礎知識を解説!

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おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

僕の動画や他の生き物系の動画を見ている方は生き物の図鑑とか水族館の魚名版を
見る機会が多いと思いますが、その中によるこんな文字が書いてあります。

魚名版とか図鑑によくあるこの文字。画像はイメージです。

英語でもなさそうな、なんだかよく分からない文字だと思って気にしていない方も多いですが、これは「学名」というもので、生き物を語る上でなくてはならない名前です。

今回は「生物の学名とは何か?」というテーマで、なるべく分かりやすく解説をしていきます。

 

 

【分類学について】

学名について知る上で欠かせないのが分類学です。

分類学を平たく言えば、「生き物をグループ化して名前をつける学問」です。

僕たちの周りにはいろんな生物がいます。海の中だけ見ても、海を漂うクラゲ、変幻自在に色を変えるイカ、大海原を泳ぐサメ、海底を動き回るナマコ・・・。今あげたのは全て動物ですが、もちろん植物や菌類も含め、本当に多種多様、外見も体の構造も様々な生物で地球は溢れています。

東海大学海洋科学博物館の標本展示。魚だけでも多様な生物がいます。

そうした様々な生物たちの中でも、似たような骨格を持っていたり、近い遺伝子を持っていたり、共通点のある生物たちがいます。それらを“同じ仲間”としてグループ分けしていくのが分類学のお仕事です。

分類学のグループ分けはこのようになっています。

生物の最小単位を種と言います。近い種同士が集まって属を作り、近い属が集まって科を作り、近い科が集まって目を作り、というように、より大きなグループになっていきます。そして、より大きなグループの方が骨格とか内臓の配置、細胞など、より根本的な部分で分けられています。

ややこしく見えるかもしれませんが、要は住所みたいなものです。

日本国という大きな塊の中にも47都道府県という大まかなグループがあって、さらにそれを細かく分ける市区町村というグループがあり、細かいグループほど具体的に特定のものを指し示すようになりますよね。

生物の分類もこれと同じで、例えば『ジョーズ』のモデルで有名なホホジロザメは真核生物ドメイン・動物界・脊索動物門・軟骨魚綱・板鰓亜綱・ネズミザメ目・ネズミザメ科・ホホジロザメ属のホホジロザメという種、という風になります。

亜綱というのは、簡単に言えば綱と目の間です。この辺は僕も深く突っ込みたくないので、数字で言う0.5みたいなものがあるんだなってくらいにとりあえず覚えてください。

 

【学名はなぜ必要か?】

ここまで分類学の基本を説明しましたが、こうして分類するだけでなく、グループ化の結果新しい種が見つかった時に名前をつけるのも分類学者の仕事です。そして、その名前というのが学名です。

では、なぜ学名が必要なのか?「ホホジロザメはホホジロザメと呼べばいいじゃん」と思う人もいるかもしれません。しかし、そうもいかないんです。

ホホジロザメは極地を除く世界中の海に分布しています。一緒に泳げるスポットとしては南アフリカやオーストラリアが有名ですが、日本の沖縄や北海道でも確認されています。だからというわけではないですが、数々の国や地域で違った名前がつけられています。

また、そもそも日本語での呼び方存在しない生物たちも沢山います。例えばサメは現在500種程度確認されていますが、そのうち半分くらいは標準和名がありません。そのため、英語のカタカナ読みをしてみたり、シュモクザメの仲間、なんて言い方をしていたりします。

「なら世界で通じる英語にとりあえず統一してしましょう」みたいな意見も出てきそうですが、英語でも名前が統一されていなかったりします。

例えばホホジロザメの英名はGreat white sharkとよく紹介されますが、ただ単にwhite sharkと呼ばれることもありますし、オーストラリアではWhite pointerという呼び方もあります。

日本でも、ネズミザメというサメは食用として市場に出回る際はモウカザメと呼ばれますし、そもそも出世魚なんかはいくつも名前を持っていたりします。

逆に、全く違う種なのに同じ呼び方が存在する事例もあります。

例えば日本近海に生息しているサメの中にネコザメとナヌカザメというサメがいます。ネコザメはネコザメ目、ナヌカザメはメジロザメ目なので大きな分類からして全く違うサメなのですが、一部の地方でナヌカザメのことをネコザメと呼びます。

ナヌカザメ

確かにナヌカザメはネコっぽい顔つきと模様をしているような気がしますが、これだとどっちのネコザメの話をしているのか分からないです。

こうして考えてみると分かりますが、誤解や勘違いのないように一つの種を表すというのは案外大変だということが分かります。この問題の解決策として、「絶対に迷わない、世界でただ一つの名前を作る」というのがあります。それがまさに学名なんです。

 

【学名の基礎】
ではここで、学名とはどんなものかを見ていきましょう。

ここでも一番有名なサメ、ホホジロザメに登場してもらいましょう。

ホホジロザメ

ホホジロザメの学名は、Carcharodon carchariasと言います。

種を表す学名は、このように属名と種小名という二つの名前が合わさって作られ、このルールを二名法と言います。最初のCarcharodonがホホジロザメ属、そのあとのcarchariasがホホジロザメ属のどの種なのかを表します。そして、明確に学名であることがわかるように、どの言語の文章で書く際も、イタリック体にするのがルールです。

一応言っておくと、より正確に学名を書くとこのようになります。

Carcharodon carcharias (Linnaeus, 1758)

カッコ内はホホジロザメという種を論文に記載した著者の名前、および発表した年が記されています。通常はカッコで括らずに書くのですが、最初に論文が発表されてから属名が変更になるとカッコで括られます。ホホジロザメはかつてネズミザメ属に分類されていたのをホホジロザメ目という新たな属を作って分類し直したので、このような表記になるわけです。

なお、最初の部分が属名なので、当然同じ属の生物の場合は同じ属名がつきます。例えば、ツマグロとヤジブカはどちらも同じ目ジロザメ属なので、Carcharhinusという属名がついています。

ツマグロ

ちなみに、生き物について調べていると、3つの単語で構成されている学名が出てきます。人気テレビ番組の『トリビアの泉』でも「ゴリラ(ニシローランドゴリラ)の学名はGorilla gorilla gorilla」というのが紹介されていました。

これはルール違反ではなくて、同じ種だけど完全に一緒とするにはちょっと・・・というグループ、つまり亜種である際には、学名のさらに後ろにもう一つ言葉を足して、どの亜種なのかを表します。

例えばトラの仲間はベンガルトラやアムールトラ、スマトラトラとか色々な名前を聞きますが、全てPanthera tigrisという一つの種の亜種だとされています。ベンガルトラの場合はPanthera tigris tigris、スマトラトラはPanthera tigris sumatraeになります。

「ベンガルトラ」という名前だけ言われると、それが種なのか亜種なのか、そもそも単なる地方名、あるいはネットスラングなのか分からなかったりしますが、学名をで示すとクリアになるので、そういう意味でも学名は便利ですね。

 

【学名は何語?】

学名についてもう一つ大事なことを述べておくと、学名は原則ラテン語、一部ギリシャ語で書かれています。

何でラテン語なんて誰も使っていない言語を用いるんだと言いたくなりますが、この「誰も使っていない」というのが重要なんです。

言語というのは自然と同じで極め流動的です。新しい言葉が増え、使われていない言葉が埋れていき、文法が次々に変化します。大学受験において、平安時代の文章を読ませるというだけで入試問題が成立するのは、それだけ当時と今で日本語の作りも意味も変わっているからだとも言えます。

ただ、学名は唯一無二、世界共通で生物の名前を指し示す名前なので、コロコロ言葉の意味や文法が変わったりしたら困るわけです。そういう意味では、実質死んだ言語であるラテン語は安定感があります。

ただ、このラテン語には大きな問題が一つあります。それが、発音が分からないということです。

誰も日常で話していない言語なので、正しい発音をしろと言われても、どこで学んでいいのか分かりません。

何となく英語っぽく読めそうな学名ならまだマシです。ホホジロザメの学名はまだ読みやすいし、オナガザメの仲間であるマオナガの学名Alopias vulpinusに至っては、もはや何かの必殺技みたいでカッコいいです。

もっと読みやすいのがミツクリザメ(Mitsukurina owstoni)です。以前の記事でも紹介しましたが、属名が日本人の箕作佳吉博士、種小名が彼に標本を寄贈したアラン・オーストンと、二つとも人名が元になっているので、どう発音するかも何となく分かります。

これがラブカ(Chlamydoselachus anguineus)やエビスザメ(Notorynchus cepedianus)になってくるとマジで読みづらいです笑。

ただ、アカデミックな場でも学名の発音についてはそこまで厳しくないという話は聞くので、間違いが起きないように気をつけつつそれっぽく言えば問題ないのだと思います。肝心なのは、一つの種を示す、唯一無二の名前であることです。

 

【実は面白い学名】

学名は確かに発音しづらいし日本人にとって馴染みのない言葉で記されていますが、意味のない呪文ではありませんから、ちゃんとそれぞれの学名には意味があります。この意味を調べてみると意外に面白いです。

例えばホホジロザメのCarcharodon carchariasですが、Carcharo の部分が荒い、donは歯、carchariasが人喰いザメを意味をしています。縁がギザギザした歯を持っていて人くらい大型の獲物を捕食することができるホホジロザメにかなりマッチした名前です。

他にもアオザメのIsrus oxyrinchusには等しい尾、尖った吻先という意味があります。尾鰭の上葉と下葉がほぼ等しい三日月型になっていてシャープな顔立ちのアオザメにぴったりですね。

アオザメ

他にも、シュモクザメ属を示すSphyrnaはハンマーという意味だったり、ちゃんとその生物の特徴やイメージに合った学名が与えられることが多いです。

逐一全て調べて覚えるのは難しいと思いますが、推しの生物の学名とかその意味を正直知らないという方は、この機会に調べて見てください。

 

【生物学では原則学名を使う理由】

最後になりますが、科学における学名の役割について触れておきます。

生物の論文を読んだことがある人は分かると思いますが、きちんとした論文で生物の名前が描かれる際は基本的に学名が用いられます。

ただでさえ日本人にとって読みづらい英語で書かれた論文の中で生物の名前が全部学名なので辛いという人もいるかもしれませんが、これは非常に重要なことです。

科学における大切な要素の一つとして「再現性」というものあります。シンプルに言えば、同じ条件で実験を起こった場合、誰がやっても同じ結果が得られるということです。

科学論文の場合、大体「Materials and methods」つまり「材料と方法」という項目があります。生物学なら、どんな生物を使って・どんな手法を用いて・何を調べたかが明確に記載されています。

もしこの論文の内容が正しいのかを検証してさらなる発見のために追加で実験を行う場合、同じ生物を間違いなく用いる必要があるし、違う生物で同じ効果が得られるかの検証なら、確実に違う種を用意しなければなりません。

そのため、論文内で生物名を書くときは、絶対に他の種と混同してされることがない名前である学名にする必要があるんです。

以前の記事で「サメに毒があるのか」というテーマを解説したことがありますが、これもきちんと証明するなら「ネコザメ 」ではなくて「Hetrodontus japonicus」と論文に書く必要があります。そうでないとネコザメの仲間のどの種を用いたのか、そもそも地方名がネコザメのナヌカザメなのか、なんだかよくわからない論文が出来上がってしまいます。これでは再現性がないも同然なので、科学的には認められません。

こういうことを考えると、生物をグループ分けして学名をつける分類学というのは、あらゆる生物学分野の前提を支える大事な学問であることがわかります。

「学名って難しくて覚えるの大変」とか「分類学って細かくて面倒くさい」とか思う人もいるかもしれませんし、ぶっちゃけたまに僕もそれは感じますが、分類学あってこその生物学なので、まずは好きな生物の分類や学名を調べてみるとか、とっつきやすいところから理解を深めて欲しいなと思います。

 

【あとがきにかえて】

以上が「学名とは何か」の解説でした。

最後に一応言っておくと、今回の動画はかなり分かりやすさ重視で浅く紹介しています。実際には学名にはもっと細かいルールがあり、そもそも僕が紹介した分類階級も厳密には最新ではなかったり、学名をどっちにするかで論争が起きている生き物もかなりいます。

ただ、それをここで紹介すると恐ろしいことになりそうなので、今回はなるべく簡単に解説しています笑。

なので、本格的に生物学の道に進みたい人や、もっと詳しく知りたい方は、僕の動画で止まらずに自分なりに色々調べてみてください。

 

 

 

投稿者プロフィール
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1992年東京都生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国、ポートランド州立大学に留学。

HPやYouTubeでサメなどの海洋生物・水族の生態を紹介、環境問題の解説を行っている。サメや関連イベント参加、水族館巡り、ダイビング、標本作製などサメや生き物活中心の生活を送る。水族館のボランティアスタッフの経験あり。トークイベントのプレゼンターやライターとしても活動。

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