川に人食いザメ現る?淡水にも現れる危険ザメNo.3!オオメジロザメを徹底解説!

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おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです。

皆さんがもしサメに会いに行くとすれば、恐らく海に行くと思いますが、実は川にも出没する、非常に危険とされるサメがいます。そのサメというのが、オオメジロザメです。

川に危険なサメが出るというのはインパクトがありますし、昨今のB級サメ映画を彷彿とさせますが、なぜ川に現れるのか?どんな川にも来るのか?どのくらい危険なのか?きちんと考えたことがあるでしょうか。

今回はホホジロ、イタチに並ぶ危険ザメNo.3、オオメジロザメを解説していきます!

 

 

オオメジロザメはどんなサメ?

まずはオオメジロザメがどんなサメか見ていきましょう。

オオメジロザメは、メジロザメ目メジロザメ科メジロザメ属に分類されるサメです。

大きさは2〜2.5m、大きくても3m前後です。

後で詳しく話す通りオオメジロザメは人間にとって非常に危険なサメとされていますが、同じく危険ザメとして有名なホホジロザメやイタチザメに比べると、大きさは少し小ぶりです。

このメジロザメの仲間というのは、非常に見分けが難しく、ヒレとヒレの微妙な位置関係や口の幅など細かいところを見ないと正確に種を同定することができないことがよくあります。しかし、オオメジロザメは、その中ではかなり特徴的で分かりやすいと思います。

以下に、オオメジロザメの特徴をいくつか紹介してみます。

体が太くがっしりしている

他のサメ類と比較すると顕著ですが、オオメジロの方がマッチョというか頑強というか、明らかに体格が違うのが分かると思います。

オオメジロザメとツマジロの比較。共にメジロザメ属ですが、体高などが明らかに違います。

さっきオオメジロは小ぶりって言いましたが、あくまでホホジロとかと比べた時の話であって、泳ぐ姿はめちゃくちゃ迫力があります。

丸みを帯びた短い吻

そして、サメの絵を描くときに、多くの人が吻先を尖って描くことが多いですが、オオメジロザメの吻は非常に短くて丸みを帯びています。そして、太くて迫力のある体に対して目が小さいのも特徴です。

”サメらしい”大きな背鰭

個人的には背鰭も特徴的だと思います。

実はサメの背鰭は、種によって色々な形をしています。背鰭が丸みを帯びているもの、背鰭の基底部分が広い代わりに高さが低いもの、背鰭が小さすぎるものまで様々です。

トラフザメ。背鰭の基底部が広く、四角い背鰭をしています。

その中でオオメジロザメは、第一背鰭が先の尖った幅の広い三角形という、まさに世間的にイメージされるザ・サメの背鰭、という形をしています。

以上のような特徴から、慣れてくればオオメジロは顔つきなどで割と簡単に見分けられます。

ただ、結構マニアックな話をすると、オオメジロザメに外見も歯の形も似ているタイワンヤジブカ、英語だとPigeye sharkまたはJava sharkと呼ばれるサメがいます。このサメが背鰭の高さが第二背鰭の3.5倍ほど(オオメジロザメはそこまで高くない)、脊椎骨の数が93~95と少ない(オオメジロザメは101~129)という、本当に勘弁してほしいくらい微妙な違いしかありません。

現時点では日本にタイワンヤジブカはいないとされていますし、基本的に僕たちが出会うのはオオメジロの方だと思いますが、もし皆さんの家にオオメジロザメが届くようなことがあれば、念のため脊椎骨の数を確認するようお願いします。

川に登ってくるサメ?

オオメジロザメの有名な生態として、川に入って来るというものがあります。ここも深掘りしていきましょう。

最近のサメ映画ではサメが皮に現れたり、空を飛んだり、地上にあがってくるのが当たり前になってきているので一応確認しておきますが、世界に生息するサメの90%以上は海に住んでいます。

そもそも「なぜ多くの魚が淡水と海水を行き来できないのか?」という問題は以前に別の記事で扱っているので今回はざっくりと紹介しますが、浸透圧というものが関係しています。

サメは海水の浸透圧、つまり水を引っ張る力に適応するため、体に尿素を溜め込んで、体を塩辛くしています。

この体のままで淡水に入ってしまうと、体の浸透圧が高いせいで水がどんどん体内に入ってきて、体の機能がおかしくなってしまいます。人間も海水を飲み続けると、余計に水が欲しくなってしまって、最終的に体の機能がおかしくなって死に至りますが、簡単に言えばあれの逆のことが起きてしまうようなものです。

しかし、オオメジロザメを含むごく一部のサメは川に入ってくることができます。

海水と淡水が混じり合う浅瀬や河口近くに現れるサメは他にもいるのですが、オオメジロザメはミシシッピ川やアマゾン川の上流、ニカラグア湖という湖でも確認されています。さらに、オーストラリアの洪水で流されたと思しきオオメジロザメが、いつの間にかゴルフコースの池に棲みついていた、なんてこともありました。

オオメジロザメが住むゴルフコースについてはコチラ↓

実際に僕も、沖縄県のとある川に入ってくるオオメジロザメを見たことがあります。

沖縄の市街地の川を泳ぐオオメジロザメ

川に現れるサメの3つの謎

では、一体、なぜ入ってくるのか?なぜ入ってこられるのか?そして、どんな川にも入ってこられるのか?

完全に解明されているわけではないですが、現状わかっていることを見ていきましょう。

何故入ってくるのか?

西表島などで行われた研究によると、基本的に河川を遡上してくるのは全長1mにも満たない生まれたばかりの幼魚であることが多いです。

また、捕獲した赤ちゃんの胃の内容物を調べた調査では、淡水域に生息する大きな魚や甲殻類などを沢山食べていることがわかっています。

さらに、妊娠したオオメジロザメが河口近くや入江で出産することも確認されています。

オオメジロザメは赤ちゃんと言っても70cm近くあり、魚全体で見れば極めて襲われにくい状態で生まれてきますが、それでも他のオオメジロや大型サメ類などに襲われる危険がありますし、珊瑚礁は大型捕食者にとっては意外に獲物が少ないこともあります。

オオメジロザメが河川に現れるのは、子供が安全で豊富な獲物がある場所で育ち、大きくなってから海に行けるようにするから、ということが考えられます。

何故入ってこれるのか?

オオメジロザメの生理機能についてはまだ分からない事も多いですが、これまで行われた研究によれば、オオメジロザメは淡水環境になると、腎臓で塩化ナトリウムの取り込みに関わる遺伝子が多く発現、塩化ナトリウムの再吸収量が増加、淡水に移行することで尿素の値は下がってしまうものの、一定の水準を保つことが確認されました。

東京大学大気海洋研究所の発表はコチラ↓

少し雑ですが分かりやすくまとめると、淡水に入ったオオメジロザメは海水にいた時には動いてなかった腎臓の機能が活性化して、塩類を失わないように、そして水膨れにならないように、海水にいた頃よりも塩類を回収して、たくさん薄めのおしっこをしているということです。

どんな川でも入ってこられるのか?

西表島のオオメジロザメを調べた研究によると、オオメジロザメの幼魚は河川の中でも塩水楔、つまり、塩類濃度が高い場所を好んでいることが分かりました。

実際に僕が沖縄でオオメジロを観察した場所も、ティアピアなどの魚と一緒に小さなロウニンアジが泳いでいました。

一般向けの図鑑だと「淡水でも生きられる」とだけ書いてあることが多いですが、生物の能力は0か1かではなく、50%ならOKだけど20%はダメのような、程度の問題があります。

オオメジロザメは他のサメに比べれば淡水に対して極めて優れた適応能力がありますが、ある程度塩辛い場所の方が居心地がいいようです。

オオメジロザメは危険なサメなのか?

オオメジロザメは危険なサメなのか。ここまでの情報も踏まえて、改めて考えてみましょう。

結論から言えば、非常に危険なサメというのは否定できないと思います。

オオメジロザメの大きさは大体2.5m前後で、いわゆる人食いザメと呼ばれがちなサメの中では小さめですが、同種を含めた他のサメなど、大型の動物を捕食します。イタチザメほどではないようですが、ウミガメや海鳥、鯨の死体など、割と見境なく色々なものを食べているようです。

オオメジロザメの歯を見てみると、多くのメジロザメの仲間のように上顎歯が幅広い鋸歯、つまりノコギリみたいにギザギザしていて、下顎歯は細長いのですが、他のメジロザメよりも歯が幅広で大きい気がします。

オオメジロザメの上顎歯

オオメジロザメの下顎歯

また、オオメジロザメは非常に攻撃的なサメとして知られています。

生き物が他の生き物を襲うのは至極ありふれたことなので、「攻撃的」や「凶暴」という言葉を安易に動物に使いたくないのですが、オオメジロザメを40年以上飼育している美ら海水族館では、水槽内の様々な生物がオオメジロザメの犠牲になってきました。

元館長の内田詮三さんも以下のように述べています。

このサメくらい同居魚を襲う例が多い種は、ほかにいない。(中略)とにかく、ジンベエザメ以外は全て喰ったと言っても過言ではない (沖縄美ら海水族館が日本一になった理由 p24~25より引用)

この美ら海のオオメジロザメは、体重40kgのアカシュモクザメを頭だけ残して平らげたり、観客の目の前で体重50kgのヨゴレの頭を食いちぎるなど、色々な伝説が残っているので、凶暴と言われても仕方ない気もします・・・。

さらに、オオメジロザメはイタチザメと同じく熱帯や亜熱帯など暖かい海の比較的浅い場所に住んでいて、先ほど述べた通り塩類濃度が低い場所への適応能力をもっています。つまり、マリンスポーツの人気スポットや人間が簡単に行ける浅瀬にも現れる可能性が十分にあります。さらに、浅瀬や河口付近は泥や砂で視界が悪いことも多く、そのような場所ではシャークアタックが起きやすいとされています。

このような特徴をもつオオメジロザメは、サメによる事故をまとめているInternational Shark Attack Fileにて、ホホジロザメ、イタチザメに次いで、世界で三番目に多く人を襲っているサメとしてリストアップされています。

International Shark Attack Fileはコチラ↓

もちろんオオメジロザメはホホジロやイタチに比べれば見分けが難しいので、他のサメの襲撃がオオメジロのものとしてカウントされている可能性はあります。しかし、1996年に宮古島で起きた死亡事故のように、科学的な検証でオオメジロザメが犯人の可能性が高いと示されたものもあります。

オオメジロザメが人を襲う危険性のあるサメであることは間違い無いです。

ただ、一般的に「好奇心が強く凶暴」と紹介されがちなオオメジロザメですが、実は用心深いという一面も持っています。

オオメジロザメを長年飼育、研究している美ら海水族館によれば、オオメジロザメは警戒心が強いためか、なかなか延縄にかからないそうです。

さらに、大型サメ類を餌で誘き寄せて観察するシャークダイブに参加したダイバーの方曰く、レモンザメやイタチザメは見える範囲に現れたりちょっかい出してきますが、オオメジロザメはかすかに見えるような遠くの方でグルグル回っていて、なかなか近づいてこないそうです。

僕も沖縄でオオメジロを観察させていただく時、現地の方が生き餌を使って釣りをしてくれるのですが、目の前に弱った動きをする魚がいるのになかなか噛み付かなかったです。噛み付く時もいきなりガブって丸呑みにするのではなく、ハムハムっと部分的に食いちぎることもよくあるみたいです。

オオメジロザメとの上手な付き合い方

オオメジロザメの危険性ばかり強調してしまいましたが、だからといって彼らを見境なく駆除してしまっていい理由にはなりません。

先ほども述べた通り、沖縄の川にはオオメジロザメの幼魚が遡上してくることがあるのですが、この幼魚を釣り上げて殺してしまい「川の平和を守ったぜ」などと言うYouTuberや「人食いザメが川に現れる!」といたずらに危険性を煽るテレビ番組などを時たま見かけます。

結論から言いますが、こういう人たちはアンポンタンです。

オオメジロザメは確かに人を襲うことがあるサメですが、川に遡上してくるのは全長60〜70cm程度の子供、ほとんど生まれたばかりの赤ちゃんです。こちらから意図的に刺激したりしない限り、積極的に人を襲う可能性は極めて低いですし、噛まれても大怪我にはなりますが、致命傷になることは考えづらいです。

そもそも沖縄に限って言えば、オオメジロが出るとよく紹介される川は、言っちゃ悪いですが水が汚いうえ護岸工事もされているので、命知らずや酔っ払いでもない限り人が入ることはない川です。そんな場所のオオメジロザメの赤ちゃんを危険視するのは過剰反応ですし、釣り上げても川の平和には何の関係もありません。

むしろ、日本でオオメジロザメの遡上が確認されているのは沖縄県の一部地域のみですし、一度に産む子供の数も7〜12尾程度と少ないですから、遊び半分で赤ちゃんをキャッチ&キルするのは、希少な野生生物の個体数に悪影響を与える危険があります。

もちろん意図せずに釣ってしまう場合は仕方ないので即リリースすれば良いと思いますが、視聴率や視聴回数を得るためにいたずらに危険性を強調しながらサメを殺して発信するのは、非常に頭の悪い環境破壊です。

これはオオメジロザメに限った話ではないですが、人間にとって直接的に害を及ぼすことがある生物でも、生態系という複雑な生き物同士の繋がりの中では重要な役割を担っています。

人を襲うことがあるサメやクマ、ハチ。人に嫌われがちなクモ、ゴキブリ、ムカデ・・・。こうした生物が滅んでしまえば、他の生物が増えすぎて人間に害をおよぼしたり、直接的に利益をもたらす動物が連鎖的に絶滅する危険があります。

好きなものだけ食べていても健康を維持できないように、世間一般で人気の生物、害のない生物だけを保護して後は滅ぼすという、いいとこどりはできないんです。

また、浸透圧調節は僕たち人間の生存にとっても重要なものですが、オオメジロザメの淡水適応能力は、今後の生理学研究の鍵になる可能性を秘めています。あくまで想像の話ですが、腎臓の病気の治療薬や、脱水症状を抑える薬が、オオメジロザメの研究がきっかけで開発されるかもしれません。

こうしたメリットを抜きにしてもめちゃくちゃカッコいいサメなので、危険生物として警戒はしつつも、無闇に殺したりせず、うまく付き合って行ければいいなと思います。

 

関連書籍紹介

 

投稿者プロフィール

1992年東京都生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国、ポートランド州立大学に留学。

HPやYouTubeでサメなどの海洋生物・水族の生態を紹介、環境問題の解説を行っている。サメや関連イベント参加、水族館巡り、ダイビング、標本作製などサメや生き物活中心の生活を送る。水族館のボランティアスタッフの経験あり。トークイベントのプレゼンターやライターとしても活動。

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