死滅回遊魚とは何か?外来種との違いは?採集しても良いのか?呪術廻戦でも話題になった言葉を解説【ありがとう油壺②】

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おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

今回は、先日投稿した「ありがとう油壺企画」の第二弾です。前回の記事ではチョウザメについて解説しましたが、今回深掘りする油壺の展示は「死滅回遊魚」についてです。

油壺の水槽がたくさん並んでいる廊下に、こんな水槽があったのを覚えていますでしょうか?

「黒潮の流れってハンパねー!と書いてありますが、これは油壺マリンパークが位置する三浦半島にやってくる「死滅回遊魚」の展示だったんです。

では、死滅回遊魚とは何なのか?

単語だけ聞くとちょっと怖いですが、日本の海の面白さや自然環境について学ぶいい題材だと思うので、今回簡単に解説していきます!

 

死滅回遊魚とは何か?

死滅回遊魚とはどんな魚を指すでしょうか。

簡単にいえば、南の方から北の方に流れてくるけど、そのまま定着することができずに死んでしまう魚たちです。

日本列島の太平洋側には、黒潮が流れています。九州や沖縄など暖かい海域の魚の卵や稚魚が、この黒潮の流れに乗って、伊豆半島や三浦半島、或いはさらに北の方に流されてきます。冒頭でお見せした油壺の展示が表しているのがまさにこれです。

黒潮のざっくりイメージです。

こうした魚たちは、夏から秋、つまり水温が高い季節の間は元気な姿を見せてくれます。しかし、冬になって水温が下がり始めると、低水温に適応できない彼らは、冬を越せずに死んでしまいます。

 

海の流れに乗って回遊するが、冬を越せずに死滅してしまう・・・。これが「死滅回遊魚」と呼ばれる理由です。

死滅回遊魚として油壺に展示されていたのはチョウチョウウオの仲間、そしてシマキンチャクフグなどの魚でしたが、この他にもナンヨウツバメウオ、カクレクマノミ、スズメダイやハタ、ギンポの仲間など、さまざまな死滅回遊魚がいます。

油壺に展示されていたシマキンチャクフグ

定着できないのは可哀想ですが、こうした多様な魚が一時的にでも流れ着くのは、日本の海の多様性や海のダイナミックさが感じられて面白いですね。

ちなみに、「死滅」という言葉を嫌うためか、一部の人が「季節回遊魚」と呼ぶこともありますが、これは学術的な言葉ではないそうです。

そもそも流れ着いた生物が環境に適応できずに死んでしまうのは大きな自然の流れの一部であって忌み嫌う理由はないので、普通に死滅回遊魚と呼んで良いと思います(現在は無効分散と呼ばれることも多いです)。

 

死滅回遊魚は外来種なのか?

ここで注意して頂きたいのが、死滅回遊魚は外来種ではないということです。

僕は時々外来種問題も取り上げており、一部のYouTube動画や記事が物議を醸して炎上商法扱いされることもあります(僕としては批判すべきものを批判しているだけのつもりです)。そう言った事情もあるので、この辺の違いはハッキリさせておこうと思います。

以前に書いたブラックバス問題の解説はコチラ↓

回遊魚と外来種、どちらも本来の生息域の外から来たという点では同じなので、”外から来た種、つまり外来種”という風にまとめたくなりますが、これらには重要な違いがあります。それは、「外来種は人間の活動によって持ち込まれた生物である」ということです。

死滅回遊魚も自分の意思で黒潮に乗っかったわけではないですが、海流という自然の要因によって分布を広げています。

しかし、外来種の場合は、船が排出するバラスト水や、無責任な飼育者の放流など、人間の活動によって分布を拡大します。

この外来種拡大を、グローバル化した世界で完全に防ぐのは不可能ですが、その外来種の中でも特に悪影響が大きいもの、すなわち侵略的外来種については、持ち込みや拡大を防ぎ、場合によっては駆除する必要があります。

ここの違いをしっかり覚えておかないと、ブラックバス擁護派みたいな人たちが「外来種の拡大は回遊と同じだから何も問題ない」みたいなトンデモ論を主張した際にうまく反論できず、彼らがつけ上がってしまったり、「そう考えると外来種の駆除は間違っているのでは?」という浅い理解に基づくズレた考えを持ってしまいかねません。

論破するため、というわけではないですが、騙されたり誤解したりしないように、言葉の定義は正しく覚えておきましょう。

 

死滅しない死滅回遊魚?

死滅回遊魚は冬を越せずに定着できない魚という紹介をしましたが、今この前提が崩れ始めているかもしれません。

実は、死滅回遊魚とされている魚たちが、これまでであれば姿を見せなかった時期にまだ残っていたり、死滅せずに越冬する事例が次々に確認され始めています。

死滅回遊魚は、文字通り冬になると死滅してしまうので、このような回遊は「無効分散」、つまり、行き着いた先で成魚になれず繁殖もできない、生物の分布拡大という観点では意味がないような回遊とされてきました。

しかし、これまで越冬できなかったはずの死滅回遊魚たちが、本来南の海でしか見られない成魚の姿を見せたり、繁殖までしていることが確認されました。

死滅回遊魚が越冬できた原因は地球温暖化や黒潮の大蛇行などの要因が考えられますが、原因がどうあれこのような事態が続けば、もはやその魚は死滅回遊魚ではなくなります。

魚たちの視点で言えば、流されて死ぬ運命にあった子達が生きながらえるので良いことに思えますが、僕たちにどう関係してくるのか、ここも考えていきましょう。

死滅回遊魚が越冬する未来を考える

まず、南の島の魚たちが関東で見られるのを喜ぶ人も多いと思いますが、南の海にいる危険生物の分布域も今後拡大する可能性があります。また、毒を持つ魚というのは食べる餌によって毒を蓄積するものも多く、生息環境によって色や模様の変化が激しい魚も沢山存在します。

油壺に展示されていたイシガキダイ。食べる餌を通して体にシガテラ毒を蓄積させることも。

あくまでこれは妄想に近い仮定の話ですが、海水温上昇で生態系が変わる中で、これまで毒を持っていなかった魚が毒を獲得したり、猛毒を持つ魚が、関東圏の海では南方の海と全然見た目が違って、知らない釣り人が食べてしまう・・・なんて事態もあるかもしれません。

次に、採集についてです。死滅回遊魚はいずれ死んでしまうということもあって、彼らを捕まえて飼育したり標本にする採集家の方が多いです。実際にYouTubeで「死滅回遊魚」というワードで調べると、採集動画が沢山出てきました。

採集という活動から生き物について学べることも多いので、そういう活動を僕は否定するつもりはないです。ただ、もし死滅回遊魚と呼ばれている魚たちが、環境変化によって定着しつつあるのであれば、彼らを採りすぎてしまうことは、今まさに起こっている生物種の大移動を妨げることになってしまうのではないか、という気がしてきます。

「自然環境を守る」と僕たちが言う時、大体”変化させないこと”を表しますし、人間活動による地球温暖化が死滅回遊魚越冬の理由かも知れないので、ここは僕の中でも結論がまとまっていないです。

ただ、明らかに人間の身勝手で直接移入された外来種ではなく、地球環境の大きな流れで生物たちの生き方や分布が変わっていくなら、それを目撃したい、今後どうなるか見てみたい、という知的好奇心的も僕の中にあります。

死滅回遊魚の変化は地球温暖化の深刻さを示す警告なのか?

これまでにない自然な分布拡大の兆しなのか?

僕たちにとって良いことなのか?悪いことなのか?

分からないことだらけですが、海の環境保全や生物との関わりを考える上で、重要かつ面白いテーマなのは間違いないかと思います。

投稿者プロフィール

1992年東京都生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国、ポートランド州立大学に留学。

HPやYouTubeでサメなどの海洋生物・水族の生態を紹介、環境問題の解説を行っている。サメや関連イベント参加、水族館巡り、ダイビング、標本作製などサメや生き物活中心の生活を送る。水族館のボランティアスタッフの経験あり。トークイベントのプレゼンターやライターとしても活動。

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