【都市伝説】メガマウスやリュウグウノツカイは大地震の前兆なのか?深海魚による地震予知を徹底解説!

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おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

2011年の東日本大震災をはじめとする数々の地震で痛感させられますが、日本は地震とその対策というのが日常生活に密接に関わる島国と言えます。

そんな国だからこそ生まれたのかもしれませんが、「深海生物の出現は地震の前兆である」という都市伝説があります。

リュウグウノツカイやメガマウスザメなど、いわゆる”激レア深海生物”とよばれる生き物たちが浅瀬で発見または漁獲されると、「地震の前兆ではないか?」とネットで騒がれ、週刊誌が記事を出したりすることがあります。

都市伝説系のYouTuberでも、地震系の話をする際に、メガマウスを紹介するようになってきました。

もし深海生物の行動によって巨大地震を事前に知ることができれば、防災における重要な指針になることは間違いないです。

では、果たして深海生物の出現は本当に地震の前兆なのか?信じるに値する根拠が存在するのか?今回はこのテーマで解説をしていきます。

地震予知説の起源

深海魚が地震の前兆という話はいつから始まったのでしょうか?

一般には、江戸時代に出版された『諸国里人談』だと言われています。これは当時の奇談・怪談をまとめたものなんですが、この中に「若狭の人魚」という話があります。

簡単にまとめると、漁師が岩の上にいる人魚を見つけ、大して考えもせず殴り殺した。すると、大風が吹いて海は荒れ、30日後には大地震が来た、という感じの話です(前兆とか予知というよりも祟り系に聞こえますが・・)。

では、この話がなぜ深海魚になるのか?

人魚のモデルは一般にジュゴンやマナティとされることが多いですが、若狭の人魚については赤い鶏冠のようなヒラヒラを身につけていたと記載があるので、この人魚のモデルは、同じく赤く長いヒレを持つリュウグウノツカイである可能性があります。

リュウグウノツカイ。液浸標本なので白くなっていますが、実際は銀色の体に赤いヒレを持っています。

冷静に考えると、どう考えても人間と勘違いするような要素がない見た目ですが、非常に細長く銀色に輝く体、長く鮮やかな赤いヒレは美しく、珍しいことも相まって神秘的な魚なのは間違いです。人魚かどうかはともかく、何かしらの伝説の元ネタにはなりそうです。

日本には深海魚以外にもナマズが暴れたら地震が起こる、人面の牛が生まれて災害を予言して死ぬという件の話など、地震と動物に関する伝承は他にもありますが、深海魚については、この「若さの人魚」が最初だと言われています。

リュウグウノツカイの地震予知

では、実際にリュウグウノツカイの出現は地震の前兆なのか?なんとこのテーマを実際に調べた研究があります。

静岡県立大学と東海大学が共同で、深海魚が現れた後にどれくらい大地震が起きていたのか、その関連性を調査しました。静岡といえば、深海魚が豊富で、つい最近もヨコヅナイワシという新種の巨大魚が発見されて話題になった駿河湾がありますから、まさに今回の調査にぴったりですね。

調査ではリュウグウノツカイ、サケガシラ、ユキフリソデウオなど、普段浅瀬や表層で確認されることが少なく、地震と結びつけられがちな深海魚8種が選定されました。そして、1928年11月26日〜2011年3月11日までで彼らが漁獲・目撃された全国の記録と、その場所から半径100kmで、30日以内にマグニチュード6.0以上の地震が起きたかどうかが調べられました。

ここまで調べて一定数の当たりがあれば、深海生物による地震予知が濃厚になり、本気で防災にも活かせそうですが、結果はどうだったのか。

今回の調査では合計で336件の記録が調べられたのですが、条件に当てはまる地震は、2007年7月の新潟中越沖地震のみ、地震の30日前に、震央から30km離れた沖でサケガシラが漁獲されただけでした。

ネットで今散々大騒ぎしているにも関わらず、80年以上の期間、300件以上の事例を調べて、激レア深海魚出現後の大地震なんてほとんどなかったわけです。これでは地震予知なんて無理だし、もちろん防災にもいかせません。研究報告そのものでも「深海魚出現が地震の前触れ」という説は迷信である、と結論づけています。

これは「人食いザメ」みたいなあらゆる生物への偏見に言えそうですが、イメージや噂だけで勝手にあれこれ言うのではなく、ちゃんとデータを取って調べるのが大事だといいうのが分かりますね。

メガマウス地震予知

リュウグウノツカイと地震の関連は否定されましたが、メガマウスザメはどうでしょうか?

メガマウスザメ。口を平げた顔が有名ですが、通常時はこんな感じです。

都市伝説界隈では南海トラフの予言や人工地震の陰謀論なども人気とピックの一つですが、ブログやYouTube動画で、メガマウスを取り上げる人も増えてきました。

ざっと見た感じではありますが、その多くの発信の元となっているのが、超常現象研究家を自称するM氏のブログだと思われます。トラブル防止のためにフルネームは伏せますが、「メガマウス 地震」でググれば、おそらくこの人の記事がトップの方に出てくると思います。

このM氏によれば、「メガマウスは大地震の前触れ」であり、「メガマウスの水揚げに対応する大地震が連発している」そうです。日本でトップレベルのサメ研究者の一人である仲谷先生がテレビ番組内でメガマウスと地震の関連性を否定したことについても、M氏は疑問をぶつけています。

そしてM氏は、メガマウスが目撃されてから地震が起きた事例を羅列しています。一部引用してみます。

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1989年1月23日に静岡県浜松市の海岸で目撃→同年3月6日に千葉県東方沖でM6.2の地震

2005年1月23日に三重県の沖で目撃→同年3月20日に福岡県西方沖でM7.0の地震

2011年1月14日に三重県沖で目撃→同年3月11日、東日本大震災

※「【警告】「メガマウス出現と地震発生は無関係」NHK報道に疑問! 過去データで完全反証、深海ザメの予知能力をナメるな!」を参考に記載

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さらに、M氏は、メガマウスには電気を感じ取るロレンチーニ器官があり、これによって地震の際に発生する微弱な電磁波を感じ取って日本近海に現れているのかもしれない、と指摘しています。そこには、武蔵野学院大学の特任教授の言葉も引用されていて、「メガマウスは地中の岩石が破壊される際に出る微弱な電磁波を『日本近海に餌がある』と勘違いしているかもしれない」とのことです。

ここまで聞いて「リュウグウノツカイは迷信だったけど、メガマウスはデータがあるからそれっぽい」と思った方もいるかもしれませんが、サメ好きとしてもう少し深掘りしていこうと思います。

ガバガバな関係性

メガマウスの出現は地震の前兆なのか?

結論から先に言ってしまいますが、このメガマウス地震前兆説は完全にオワコンです。証拠不足の自論にそれっぽい説明を付け加えて騒いでいる、低レベルなこじつけ都市伝説の域を出ません。

まず、メガマウス目撃と地震の実例を並べてさも関連があるように見せかけていますが、この時点でツッコミどころが満載です。

並べられている事例には、静岡に現れてから2ヶ月後に千葉で地震、三重県で目撃された13日後に鹿児島で地震、三重で目撃されて2ヶ月後に福岡で地震など、メガマウス目撃の場所・時間が、かなり離れた地震が含まれています。

一応1989年6月12日に静岡焼津の定置網に入った5日後に伊豆諸島で地震が起きたという場所・時間ともに近い事例もありますが、先ほどあげたようなバラバラに見える事例をなぜ同列に扱っていいのか、M氏のブログの中ではその根拠が全く示されていません。

さらに、メガマウス出現の後に起きた地震として挙げられているものの中には、震度1〜3のものも多く含まれていました。

ググれば簡単にデータは出てきますが、震度3以下の地震であれば1日に平均3回程度は起きています。小さなものを含めれば、日本では1ヶ月に100回ほど地震が起きているんです。

2ヶ月という長いスパンで、月100回起きている現象と結びつける、しかも日本国内なら場所が離れていてもOK。こんなガバガバな基準では、メガマウス出現だけでなくあらゆる出来事が地震の前兆になってしまいます。恐らくですが、僕が二郎ラーメンを食べて2ヶ月以内に大きな地震が起きるという説も成り立つと思います。

ちなみに、M氏は別の記事で、M6.0以上の地震に絞って事例を紹介していますが、日本気象協会のデータを見ると、M6.0以上の地震も、だいたい2ヶ月に1回くらいの割合で発生していました。仮に大きめの地震に限定したとしても、論理の支えにはならないと思います。

ロレンチーニ器官について

次に、M氏が根拠に使っているロレンチーニ器官についてですが、これも別に因果関係の説明にはなっていないです。

ロレンチーニ器官という言葉を初めて聞いた方のために話すと、サメの顔、主には吻先にたくさんついている小さな穴のことです。

サメの顔の周りにある青髭を思わせる小さな穴がロレンチーニ器官です。

この中にはゼリー状の物質が詰まっていて、サメはこの感覚器官を使って、獲物が発する微弱な電気を感じ取ることができます。さらに、サメは獲物の電気だけでなく、地球の磁場を感じて回遊に役立てているという説もあります。

ここまで聞くと、このロレンチーニ器官で地震の電気を感じ取って予知している可能性もありそうですが、ここで疑問が浮かびます。

ロレンチーニ器官は、メガマウスザメだけのものではありません。なぜメガマウスだけが地震の前に姿を現すのでしょうか?そして、なぜ地震の電気が「人間の前に姿を現す」という行動につながるのでしょうか?

日本近海にはメガマウスザメ以外にもホホジロザメ、ウバザメ、イタチザメ、アオザメ、アカシュモクザメなど、広い海を泳ぎ回る大型サメ類がたくさん生息しています。

つまり、メガマウスが地震の前兆だとする根拠の一つにロレンチーニ器官をあげるなら、同じくロレンチーニ器官を持つ他の大型サメ類の出現多発や異常行動が見られてもおかしくありません。しかし、そのような事例は聞いたことがないですし、少なくともM氏は何の説明も果たしていません。

そもそも深海ザメではない?

これについて、某都市伝説系のYouTuberが「メガマウスは深海に住むサメなので、より地盤の変化を感じやすい」的なことを主張していました(これまた名前は伏せますが、登録者40万人越えでそれなりに有名なチャンネルです)。

これも詳しくない方だと納得できる反論に聞こえるかもしれませんが、実はメガマウスは深海ザメではないかもしれません。

そもそも深海ザメという言葉自体が生物学的に定まっていない非常に曖昧なものですが、仮に「一般に深海とされることが多い水深200mより深い場所を主な生息域とする変な見た目のサメ」と定義します。

かつてメガマウスに行われたトラッキング調査によれば、夜は水深12〜27mほどの表層を泳ぎ、昼になっても水深120〜160mほどの場所を泳いでいることが確認されました。

メガマウスの生態は分かっていないことが多いですが、現状手に入るデータを元に言えば、メガマウスは最近発見された珍しい、面白い見た目のサメだから「深海ザメ」扱いされているだけで、深海が主な生息水深ではない可能性があります。こうなると「深海ザメだから特に電磁場を感じやすい」という反論も崩れ去ります。

余談ですが、一般に深海ザメのイメージが薄いホホジロザメやジンベエザメも、水深200mより深い海に潜っていることが確認されています。

そもそも、引用されている学者の仮説では、電磁場を餌と勘違いして集まるという話でしたが、それなら電気が発生している地盤に近い深みに潜るはずで、人間に見つかりやすい表層や浅瀬に現れる理由が分かりません。

「電磁場」などの科学的な単語や「ロレンチーニ器官」という専門用語で飾り付けてそれっぽく見せていますが、細かい部分の説明がボコッと抜け落ちています。これでは血液型占いなどの馬鹿馬鹿しいニセ科学と同レベルです。

まとめると、メガマウス出現が地震の前兆だというのは、幅広すぎて比較も不十分なデータを出して無理やり関係があると思わせ、科学的な用語で細かい因果関係を誤魔化してさもそれっぽく見せているだけ。つまり、サメに関する知識が乏しいオカルトマニアの戯言ということになります。

もちろん、科学において完全な否定というのは難しいですから、今後の研究で深海生物の行動と地震の関連性が証明される日が来るかもしれません。しかし、現状M氏や肯定派が出している証拠や説明はあまりにもお粗末で、とても信じるには値しません。

地震というのは人の命や国の安全に関わるテーマですからデマを許すべきではないですし、今回取り上げたM氏や他の都市伝説界隈の主張の仕方は、反ワクチンのような有害なニセ科学にも通じる部分があります。

フィクションとしてオカルトや都市伝説を楽しむのは別にいいし、僕もそういうコンテンツは好きなのですが、さも本当かのように主張するのであれば、「価値観の自由」などという逃げ道を許さず、科学的な厳しい基準を求めて突き詰めていくべきだと僕は思います。

最後に

以上が、深海魚地震前兆説または深海魚の地震予知と呼ばれるものの解説でした。

否定するばかりでは可哀想なので、最後にメガマウス地震前兆説を証明するのに必要であろうことを挙げておきます。

・時期や距離をもう少し絞った上でデータを集め直す。

・その上で、データの比較を行う。例えば、メガマウスが出現した後の地震発生だけでなく、メガマウスが出現後1ヶ月、100km圏内でM6以上の地震が起きなかった事例も集めて比べてみる。

・地震により起こる電気がサメに本当に影響を及ぼすのか、どんな影響があり、種によってばらつきがあるのか、実験により検証する。

・仮にメガマウスが地震で起こる電気に影響されて人間に目撃されやすくなるとして、そのメカニズムは何か?なぜ他のサメでは起きないのか?科学的に分析する。

ざっと思いつく程度ですが、最低限これくらいのことを調べて、十分な根拠に支えられた査読論文を出していただければ、僕も素直に受け入れようと思います。

多分そんな論文が出たらすぐに僕の耳にも届くと思いますが、もしこれらをすでに検証している人がいたら、ぜひ僕にご連絡ください。

 

参考文献・関連書籍

 

 

投稿者プロフィール

1992年東京都生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国、ポートランド州立大学に留学。

HPやYouTubeでサメなどの海洋生物・水族の生態を紹介、環境問題の解説を行っている。サメや関連イベント参加、水族館巡り、ダイビング、標本作製などサメや生き物活中心の生活を送る。水族館のボランティアスタッフの経験あり。トークイベントのプレゼンターやライターとしても活動。

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