日本で初めてシロワニの赤ちゃんが水族館で誕生!貴重な繁殖研究で何が分かったのか?

サメ解説

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

先日、世界有数・日本唯一の水族館展示をやっと見に行くことができました!

サメ好きの方であればだいたい予想がつくと思いますが、今年の6月、アクアワールド茨城県大洗水族館にて、シロワニというサメの赤ちゃんが誕生しました!!

人口飼育下でシロワニの繁殖に成功したのは、今回の事例が世界で5例目、日本では初めてということで、非常に貴重な展示であり、日本サメ研究における偉業と言ってもいいと思います。

10月にはすでにこの赤ちゃんが一般公開されていて、すでに見に行ったという方もいると思います。

今回はまだ観に行っていない方、そして見に行ったけどより深く学びたいという方のために、簡単にまとめてきました!ぜひ楽しんでもらえると幸いです!よろしくお願いします!

日本のシロワニ飼育

そもそもこのシロワニとはどんなサメか?以前に解説記事をアップしていますが、おさらいしていきましょう。

シロワニは、ネズミザメ目オオワニザメ科に分類される大型種で、大きいものでは3m前後になります。アクアワールド大洗にいる子たちは260~300cmほどでかなり迫力があります。

体が大きくて歯をむき出しにしていて「恐い」とか「人食い」とか言われてしまうことも多いのですが、実際は非常にゆっくりと泳ぐ大人しいサメで、魚やイカ、大きくても小型のサメなど、人間よりずっと小さい動物を食べて暮らしています。

よく「人食いザメ」扱いされますが、実際は大人しいサメです。

このシロワニが分類されるネズミザメ目というグループの仲間は、そのほとんどがホホジロザメや、ミツクリザメ、メガマウスザメなど、飼育が極めて難しい、あるいは前例がないサメたちです。

しかし、シロワニは例外的に人口環境に慣れやすく、成熟した後も長生きしてくれます。この理由としては、彼らが非常にゆっくりと泳ぐサメで、水深10~30mほどの、かなり浅い沿岸環境を主な生息域としているためと考えられます。

ただ、繁殖させるとなると、その難易度はぐんと上がります。

サメの中でも、ネコザメやイヌザメなど、小型で卵を産み落とす、つまり卵生タイプのサメたちは、割と簡単に卵を産んでくれるので、数多くの水族館で繁殖が進んでいます。

一方で、シロワニは、アクアワールド大洗以外の水族館でも雌雄ペア、またはそれ以上の複数個体で飼育しているにもかかわらず、繁殖の実績がありませんでした。

海外では実績がありましたが、クウェート、オーストラリア、南アフリカの水族館で4件だけです。ちなみに、大洗の子たちは全て南アフリカ出身で、子供の時に連れてこられました。

大洗のシロワニ繁殖

そんな繁殖が難しいシロワニなのですが、冒頭で言った通り、今年2021年6月、ついに待望の赤ちゃんが、アクアワールド大洗で誕生しました。

とにかくめちゃくちゃ可愛いです!模様や体つきは親とほぼ同じで、親をそのまま縮めたような姿です。今まで見たシロワニの中で一番小さくて、あどけなさがあって愛らしいです。

産まれた当初の体長は92cm、体重は4.3㎏。重さだけで言えば僕の実家のワンコくらいです。

実家のワンコ。体重約5kgのポメラニアンです。

当初は餌を食べなくて心配な時期もあったそうですが、現在は無事に成長していて、10月にバックヤードから展示水槽に移されました。この記事を書いている時点で体長は108cm、体重7.6㎏に成長しています。とはいえまだまだ小さいですね。

この子は親を含む大型サメ類とは別の、隣の水槽に展示されているのですが、比べてみると大きさの違いが分かります。サメを見慣れていない人であればこれでも大きいと思いますが、シロワニとしてはめちゃくちゃ可愛いサイズです。

この子がいる水槽が、もともと小型のサメ類が沢山いる水槽だったんですが、今回この赤ちゃんのために、ほとんどがバックヤードにお引越しをしました。シロワニベビーは完全VIP待遇です。

シロワニの赤ちゃんが泳ぐ水槽。シュモクザメ3種以外はバックヤードや別水槽にお引越ししました。

ちなみに、アクアワールド大洗はシロワニの各個体にナンバリングしていて、この赤ちゃんはNo.3のメスとNo.4の間に生まれました。今回生まれた子は番号で言えばNo.9なので、飼育員さんからはキューちゃんと呼ばれているそうです。

実際にシロワニ出産の瞬間を収めた映像が公開されているのですが、飼育委員さんの興奮とか緊張感が伝わってきましたね。「あ、産まれた!」と水槽前で連絡とり合う様子や、担架に入れて赤ちゃんを予備水槽に運ぶシーンは、プロジェクトXのような番組作れそうな雰囲気でした。

公式が公開している映像がコチラ↓

実際大洗は長年シロワニ繁殖に取り組む中で、水温や照明を彼らの出身地に合わせるよう工夫したり、2015年に日本初の妊娠を確認するも死産になったりと、色々なドラマがありました。

本当にキューちゃんが無事に生まれて、そして今のところ元気そうで良かったです。

繁殖についての考察

では、今回の繁殖で何が分かり、どんな謎が生まれたのか?

企画展で出ている情報をもとに、僕なりに紹介していきます。

胎動と妊娠期間

シロワニの繁殖について「出産の約1か月前に赤ちゃんが動く様子が確認できた」と海外の文献に記載されていたそうですが、アクアワールド大洗の飼育員さんが観察した記録によれば2月12日時点でお腹が動くのを確認できたそうです。

今回赤ちゃんが産まれたのは6月ですから、約4カ月前には胎動していたことになります。

そして、この胎動が深夜は少なく、夜明けから夕方にかけて多くなること、出産の前日には回数が多くなることも分かりました。

さらに、シロワニの妊娠期間はこれまで9~12か月ほどとされてきましたが、今回の妊娠期間はなんと15カ月にも及びました。これが個体差なのか、飼育下における特異なものなのか、原因については分からないそうです。

今回を含めても実例が少ないので断言はできませんが、もしシロワニ妊娠のニュースが今後入った時は、お腹の動きに注目し、特に妊娠9カ月~15か月の期間は水族館に通い詰めた方が良いかもしれないですね。

もう一尾の行方

今回生まれたのはキューちゃんだけのようですが、シロワニは二つある子宮から一匹ずつ赤ちゃんを産むサメだとされています。

サメの生殖器官についておさらいすると、卵巣や輸卵管、俗に子宮と呼ばれる発達部分が対になっていて、種にも寄りますが、それぞれの子宮で育ちます。

フトツノザメの雌の生殖器官。

そして、シロワニは卵食型、つまりママから提供される他の卵を子宮内で食べて成長します。さらに、シロワニの場合は、卵だけでなく他の赤ちゃんを食べていることが確認されたので、”子宮内で共食いするサメ”として紹介されることも多いです(子宮内共食いについてはコチラ)。

となると、もう一方の子宮にも赤ちゃんはいたのか?いた場合どうなったのか?

出産直後のニュースメディアだと「2匹目も期待される」や「自然産出を待っている状況」と記載があったのですが、その後公式の情報は出ていないようでした。

この件について職員さんに確認を取ったところ、もう一尾もお腹にはいたのですが、逆子(頭から産まれるはずが尾鰭から出てくる)の状態で、そもそも体自体が未発達のような状態だったそうで、結局死んでしまったそうです。

原因はまだはっきりとはしていないようですが、無事に生まれてきたのはキューちゃんだけのようです。

白濁色の液体

出産した直後、母親の総排出孔から、白く濁った液が大量に出てきて、約7時間も断続的に排出が続いたそうです。

企画展の展示だと「白濁液」とだけなっていたんですが、正体が気になります・・・。

サメ好きの方が真っ先に連想するのが、ホホジロザメの子宮内ミルクだと思います。

ホホジロザメは、シロワニと同じくネズミザメ目の仲間です。この子たちも卵食で胎仔が育つのですが、近年の研究で、子宮内でミルクのような液体を分泌し、卵をミルク的な液体、この両方を使って子育てしていることが分かりました。

シロワニの白い液体については公式の見解は示されていませんし、もしかすると、今回確認された白濁色の液体も繁殖に関係する重要なものかもしれません。

これは科学的根拠のない憶測ですし、僕も決して断言はしませんが、シロワニを含むサメの繁殖に関してはまだまだ分からないことも多いので、今回のような事例から更なる大発見が生まれる可能性も十分にあると思います。

サメの繁殖に関する研究は、野生に生きる子たちの保全にも役立つ重要なものですから、これからもアクアワールド大洗の飼育そして研究を応援していきたいですね。

 

★イベント告知★

2022年2月5日「第2回いきものフェス」に出展します!

<詳細>
https://ikimonofes.jp
2022年2月5日 11:00~17:00

〒111-0033 東京都台東区花川戸2丁目6−5
東京都立産業貿易センター 台東館 4F・5F

当日はグッズ販売はせず、標本や解説の展示を行います。

 

投稿者プロフィール

1992年東京都生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。アメリカ合衆国、ポートランド州立大学に留学。

HPやYouTubeでサメなどの海洋生物・水族の生態を紹介、環境問題の解説を行っている。サメや関連イベント参加、水族館巡り、ダイビング、標本作製などサメや生き物活中心の生活を送る。水族館のボランティアスタッフの経験あり。トークイベントのプレゼンターやライターとしても活動。

ライティングやトークイベントのご依頼・その他お問い合わせはコチラ↓
shark.sociology.ricky@gmail.com

サメ社会学者Rickyをフォローする
サメ解説
サメ社会学者Rickyをフォローする
The World of Sharks

コメント

タイトルとURLをコピーしました